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高等学校数学C/ベクトル
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2026-05-03T11:01:39Z
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{{pathnav|frame=1|メインページ|高等学校の学習|高等学校数学|高等学校数学C|pagename=ベクトル|small=1}}
理科において、力は大きさと向きを持つ量であると習っただろう。大きさと向きを持つ量は、力の他にも、速度や風の吹き方などがある。
例えば、ある地点ある時刻における風の吹き方は、風速と風向から成り立つ。このように、大きさと向きを持つ量を導入すると、これらを効率よく扱える。
このページでは、大きさと向きを持つ量である'''ベクトル'''を扱う。
また、図形の問題に対して代数的なアプローチを取れるのもベクトルの利点の一つである。
大学では、ベクトルを拡張した[[高等学校数学C/数学的な表現の工夫#行列による表現とその演算|行列]]とともに、[[線形代数学]]という分野でより一般に扱うことになる。
本項の学習後、同じく数学Cの[[高等学校数学C/数学的な表現の工夫|数学的な表現の工夫]]も参照されたし。ベクトルの回転移動などについて取り扱っている。
== 平面上のベクトル ==
[[ファイル:SameVectors.png|サムネイル]]
平面上の点 <math>\mathrm{S}</math> から点 <math>\mathrm{T}</math> へ向かう矢印を考える。このような矢印のように向きを持つ線分を'''有向線分'''という。
このとき、点 <math>\mathrm{S}</math> を'''始点'''、点 <math>\mathrm{T}</math> を'''終点'''という。
有向線分で、大きさと方向が同じものはベクトルとして同じものとする。
有向線分は位置、長さ(大きさ)、向きという情報を持つ。ベクトルは、有向線分の持つ情報のうち、'''位置'''の情報を忘れて、'''大きさ'''、'''向き'''だけに着目したものと考えることができる。
有向線分 <math>\mathrm{ST}</math> で表されるベクトルを <math>\mathrm{\vec{ST}}</math> とかく。ベクトルは一文字で <math>\vec a</math> などと表されることがある<ref>または、太文字で <math>\bold a</math> などと表記されることもある。しかし、日本の高等学校、大学入試では <math>\vec \cdot</math> がほとんどである。</ref>。ベクトル <math>\vec a</math> の大きさを <math>|\vec a|</math> で表す。
有向線分 <math>\mathrm{ST}</math>、有向線分 <math>\mathrm{S'T'}</math> に対し、大きさが等しく、向きが等しいなら、位置が違っていても、ベクトルとして等しく、<math>\mathrm{\vec{ST}} = \mathrm{\vec{S'T'}}</math> である。<ref>ベクトルとして等しくても、有向線分として等しいとは限らない</ref>(ベクトルの'''相等''')
大きさが 1 であるベクトルを'''単位ベクトル'''という。
単位ベクトルのうち座標軸の正方向を向くものを特に'''基本ベクトル'''という。
[[ファイル:Vector-negation.png|サムネイル|ベクトル <math>\vec A</math> の逆ベクトル]]
ベクトル <math>\vec a</math> に対し、ベクトル <math>\vec a</math> と方向が'''逆'''で、大きさが等しいベクトルを'''逆ベクトル'''といい、<math>-\vec a</math> とかく。
始点と終点が等しいベクトルを'''{{ruby|零|ゼロ}}ベクトル'''といい、<math>\vec 0 </math> で表す。任意の点 <math>\mathrm{A}</math> に対し、<math>\mathrm{\vec{AA}} = \vec 0</math> である。零ベクトルの大きさは 0 で、向きは考えないものとする。
=== ベクトルの加法 ===
[[ファイル:Vector addition explain.svg|サムネイル|ベクトルの和]]
ベクトル <math>\vec a, \vec b</math> に対し、<math>\vec a = \mathrm{\vec{AB}}, \vec b = \mathrm{\vec{BC}}</math> となる点をとる。このときベクトルの加法を <math>\vec a + \vec b = \mathrm{\vec{AC}}</math> で定める。
ベクトルの加法について以下が成り立つ。
* <math>\vec a + \vec b = \vec b + \vec a</math>
* <math>(\vec a + \vec b) + \vec c = \vec a +(\vec b + \vec c)</math>
[[ファイル:Vector commutative.svg|サムネイル|ベクトルの加法は可換である]]
また、<math>\vec a + \vec 0 = \vec a</math> とする。
ほか、上述のベクトルを位置表示をもちいて書き換えただけだが、
* <math>\vec {AB} + \vec {BC} = \vec {AC}</math>
である。もし、Bの代わりに別の位置 G を経由したとしても、
* <math>\vec {AG} + \vec {GC} = \vec {AC}</math>
このように、途中の経路の位置(上述の位置 Bや 位置 G など)に関係なく、ベクトルは最初と最後の点だけで決まる。
もちろん、1個目のベクトルの終点と、2個目のベクトルの始点とが、同じ位置でなければいけない。
ほか、
* <math>\vec {AB} + \vec {BC} + \vec {CD} = \vec {AD}</math>
のように、3つ以上の場合でも成り立つ。もちろん、足しあうベクトルの始点と終点とは連続していないといけない。
上式は、下記のように、文字式でいう結合法則を前提とすれば証明できる。
<math>\vec {AB} + \vec {BC} + \vec {CD} = ( \vec {AB} + \vec {BC}) + \vec {CD} = ( \vec {AC}) + \vec {CD} = \vec {AD}</math>
と計算すれば良い。
なお、大文字 A ,B , C や原点 Oなどで位置を表した場合の、<math>\vec {AB} </math> や <math>\vec {OA} </math> などのようなベクトルの書式を、位置ベクトルと言う。
位置ベクトルの書式の場合は、対応する'''始点'''と'''終点'''の2点を書くことで、ベクトルの向きと大きさを示す。
<math>\vec {AB} </math> の始点はAであり、終点はBである。
<math>\vec {BA} </math> の始点はBであり、終点はAである。
<math>\vec {OA} </math> の始点はOであり、終点はAである。
=== ベクトルの減法 ===
ベクトル <math>\vec a, \vec b</math> に対し、 <math>\vec a - \vec b = \vec a+ (-\vec b)</math> と書く。
[[ファイル:Vector's subtraction.svg|サムネイル|ベクトルの減法]]
位置ベクトルの表示で書けば、
* <math>\vec {OA} - \vec {OB} = \vec {BA} </math>
である。なお、<math> O </math>とは原点のこと。
=== ベクトルの実数倍 ===
零ベクトルでないベクトル <math>\vec a</math> と実数 <math>k</math> に対し、ベクトルの実数倍 <math>k\vec a</math> を以下のように定める。
# <math>k > 0</math> のとき、ベクトル <math>\vec a</math> と方向が同じで、大きさが <math>k</math> 倍されたベクトル
# <math>k = 0</math> のとき、零ベクトル <math>\vec 0</math>
# <math>k < 0</math> のとき、逆ベクトル <math>-\vec a</math> と方向が同じで、大きさが <math>k</math> 倍されたベクトル
また零ベクトル <math>\vec 0</math> に対し、実数倍を <math>k\vec 0 = \vec 0</math> で定める。
任意の実数 <math>k,l</math> に対して、以下の性質が成り立つ。
* <math>(k+l)\vec a = k\vec a + l\vec a</math>
* <math>k(\vec a + \vec b) = k\vec a + k\vec b</math>
* <math>(kl)\vec a = k(l\vec a) = kl \vec{a}</math>
== ベクトルの平行・垂直 ==
零ベクトルではないベクトル <math>\vec a, \vec b \, (\neq \vec 0)</math> に対し、<math>\vec a = \vec{\mathrm{AA'}}, \vec b = \vec{\mathrm{BB'}}</math> となる点をとる。
このとき、直線 <math>\mathrm{AA'}</math> と直線 <math>\mathrm{BB'}</math> が平行であるとき、ベクトル <math>\vec a, \vec b</math> は平行であるといい、 <math>\vec a \parallel \vec b</math> で表す。
また、直線 <math>\mathrm{AA'}</math> と直線 <math>\mathrm{BB'}</math> が垂直であるとき、ベクトル <math>\vec a, \vec b</math> は垂直であるといい、<math>\vec a \perp \vec b</math> で表す。
ベクトル <math>\vec a, \vec b</math> が平行のとき、明らかに、片方のベクトルを実数倍すれば大きさと向きが一致するから、
<math>\vec a \parallel \vec b </math> とは<math> \vec b = k\vec a</math> となる実数 <math>k</math> が存在することと同値である。
[[ファイル:Scalar multiplication of vectors.png|サムネイル|337x337ピクセル|ベクトルの実数倍]]
== ベクトルの分解 ==
ベクトル <math>\vec a, \vec b</math> がともに零ベクトルでなく(<math>\vec a, \vec b \neq \vec 0</math>) 、平行でないとき、任意のベクトル <math>\vec p</math> に対して、 <math>\vec p = s\vec a + t \vec b</math> となる実数 <math>s,t</math> を取ることができる。このとき、<math>\vec a, \vec b</math>は「'''一次独立'''である」という。一次独立でないときは「'''一次従属'''である」という。一次従属であるとき、各ベクトルは平行である。
'''証明'''<!-- 図 -->
<math>\vec a = \vec{\mathrm{OA}},\vec b = \vec{\mathrm{OB}},\vec p = \vec{\mathrm{OP}}</math> となる点をとる。点 <math>\mathrm{P}</math> を通り、直線 <math>\mathrm{OB},\mathrm{OA}</math> に平行な直線が、それぞれ 直線 <math>\mathrm{OA},\mathrm{OB}</math> と交わる点をそれぞれ <math>\mathrm{S,T}</math> と置く。
このとき、 <math>\vec \mathrm{OS} = s\vec a,\vec \mathrm{OT} = t\vec b</math> となる実数 <math>s,t</math> を取ることができる。ここで、四角形 <math>\mathrm{OSPT}</math> は平行四辺形なので、 <math>\vec p = s\vec a + t \vec b</math> が成り立つ。
== ベクトルの成分表示 ==
ベクトル <math>\vec a</math> に対して、座標平面上の原点を <math>\mathrm O</math> とするとき、<math>\vec a = \mathrm{\vec{OA}}</math> となる点 <math>\mathrm A(a_x,a_y)</math> を取ることができる。そこで、 <math>(a_x,a_y)</math> をベクトル <math>\vec a</math> の成分表示とし、座標と同様に<math>\vec{a} = (a_x,a_y)</math>、または「,」を取り除いて<math>\vec{a}= \begin{pmatrix} a_x & a_y \end{pmatrix}</math>、または縦に並べて <math>\vec{a} = \begin{pmatrix} a_x \\ a_y \end{pmatrix}</math> と書く。
:※後者二つはそれぞれ「行ベクトル」「列ベクトル」という。詳しくは[[高等学校数学C/数学的な表現の工夫#行列による表現|行列]]で扱う。
ベクトル <math>\vec a , \vec b</math> に対して、<math>\vec a = \mathrm{\vec{OA}},\, \vec b = \mathrm{\vec{OB}}</math> となる点 <math>\mathrm{A},\mathrm{B}</math> をとり、<math>\vec a = (a_x,a_y),\, \vec b = (b_x,b_y)</math> とするとき
<math>\vec a = \vec b \iff \vec{\mathrm{OA}} = \vec{\mathrm{OB}} \iff </math>点 <math>\mathrm A ,\, \mathrm B</math> が一致する <math>\iff a_x = b_x </math> かつ <math>a_y = b_y</math>
また、 <math>\vec a = (a_x, a_y)</math> に対して、<math>\vec a = \mathrm{\vec{OA}}</math> とするとき、 <math>|\vec a|=\overline{\mathrm{OA}}</math>なので、
<math>|\vec a| = \sqrt{a_x^2 + a_y ^2}</math>
である。
[[ファイル:Vector in 2D space.png|サムネイル]]
ベクトル <math>\vec a = (a_x, a_y) ,\vec b = (b_x, b_y)</math> に対して、以下の性質が成り立つ。
* <math>\vec a + \vec b = (a_x + b_x, a_y + b_y)</math>
* <math>\vec a - \vec b = (a_x-b_x,a_y-b_y)</math>
* <math>k\vec a = (ka_x , ka_y)</math>
練習問題として、基本ベクトルを成分表示してみよう。基本ベクトルとは、大きさが1であり、向きがそれぞれの座標軸の正方向と平行のものである。
基本ベクトルを成分表示すれば、
<math> \vec e_x = (1 , 0 ) </math>
<math> \vec e_y = (0 , 1) </math>
の2種類が存在する。
このように、基本ベクトルは、単に平行な座標軸の成分だけが値が1で、他の軸の値は 0 とすれば良い。
なお、混同しやすいが「単位ベクトル」とは、向きが必ずしも座標軸と平行とは限らない、大きさが1のベクトルの事である。
== 位置ベクトル ==
ある点を基準にして、その点を始点とするベクトルについて考えることにより、ベクトルを用いて点の位置関係について考察することができる。
点の位置関係基準となる点 <math>\rm O</math> を予め定める。このとき、点 <math>\rm A</math> に対して、ベクトル <math>\vec{\rm {OA }}</math> を点 <math>\rm A</math> の位置ベクトルという。位置ベクトル <math>\vec{a}</math> で与えられる点 <math>\rm A</math> を <math>\mathrm{A}(\vec a)</math> で表す。
また、点 <math>\mathrm A (\vec a),\,\mathrm B(\vec b)</math> のとき、<math>\vec{\rm{AB}} = \vec{\rm{OB}} - \vec{\rm{OA}} = \vec b- \vec a</math> が成り立つ。
=== 内分点・外分点の位置ベクトル ===
以下、位置ベクトルの基準点を点 <math>\rm O</math> とする。
点 <math>\rm A (\vec a),\,\rm B(\vec b)</math> を通る線分 <math>\mathrm{AB}</math> を <math>m:n</math> に内分する点 <math>\mathrm{P}(\vec p)</math> を求める。<!-- 図 -->
<math>\vec{\mathrm{AP}} = \frac{m}{m+n}\vec{\mathrm{AB}}</math> より、<math>\vec p - \vec a = \frac{m}{m+n}(\vec b - \vec a)</math> したがって、<math>\vec p = \frac{n\vec a + m\vec b}{m+n}</math> である。<ref><math>\vec p =\frac{m}{m+n}(\vec b - \vec a) + \vec a = \left(1-\frac{m}{m+n}\right)\vec a + \frac{m}{m+n}\vec b = \frac{n\vec a + m\vec b}{m+n} </math></ref>
次に、点 <math>\rm A (\vec a),\,\rm B(\vec b)</math> を通る線分 <math>\mathrm{AB}</math> を <math>m:n</math> に外分する点 <math>\mathrm{Q}(\vec q)</math> を求める。<!-- 図 -->
<math>m > n</math> の場合は、 <math>\vec{\mathrm{AQ}} = \frac{m}{m-n}\vec{\mathrm{AB}}</math> より、<math>\vec q - \vec a = \frac{m}{m-n}(\vec b - \vec a) </math> したがって、<math>\vec q = \frac{-n\vec a + m\vec b}{m-n}</math> である。<ref><math>\vec q = \frac{m}{m-n}(\vec b - \vec a) + \vec a = \left(1-\frac{m}{m-n}\right)\vec a + \frac{m}{m-n}\vec b = \frac{-n\vec a + m\vec b}{m-n} </math></ref>
<math>m < n</math> の場合は、<math>\vec{\mathrm{BQ}} = \frac{n}{n-m}\vec{\mathrm{BA}}</math> に注意して同様に計算すれば、前と同じ、 <math>\vec q = \frac{-n\vec a + m\vec b}{m-n}</math> が得られる。<ref><math>m = n</math> の場合、つまり線分を <math>1:1</math> に外分する点は存在しない。なぜなら、任意の線分ABに対してAP:BP=1:1となる点Pは線分ABの直角二等分線上にあるが、点Pが線分AB上にある場合、これは内分点であり、点Pが線分AB上にない場合、これは外分点ではありえない。</ref>
=== 三角形の重心の位置ベクトル ===
三角形 <math>\mathrm{ABC}</math> に対し、 <math>\mathrm{A}(\vec a),\, \mathrm{B}(\vec b),\, \mathrm{C}(\vec c)</math> と置く。この三角形 <math>\mathrm{ABC}</math> の重心 <math>\mathrm{G}({\vec g})</math> を求める。<!-- 図 -->
線分 <math>\mathrm{BC}</math> の中点を <math>\mathrm{M}(\vec m)</math> とすると、点 <math>\mathrm M</math> は線分 <math>\mathrm{BC}</math> を <math>1:1</math> に内分する点なので、 <math>\vec m = \frac{\vec b + \vec c}{2}</math> である。
点 <math>\mathrm{G}</math> は線分 <math>\mathrm{AM}</math> を <math>2:1</math> に内分する点なので、 <math>\vec g = \frac{\vec a + \vec b + \vec c}{3}</math> である。<ref><math>\vec g = \frac{\vec a + 2\vec m}{2+1} = \frac{\vec a + \vec b + \vec c}{3}</math></ref>
=== 三角形の内心の位置ベクトル ===
三角形 <math>\mathrm{ABC}</math> に対し、 <math>\mathrm{A}(\vec a),\, \mathrm{B}(\vec b),\, \mathrm{C}(\vec c)</math> と置く。さらに、<math>\mathrm{AB} = c,\,\mathrm{BC} = a,\, \mathrm{CA} = b</math> と置く。三角形 <math>\mathrm{ABC}</math> の内心の位置ベクトル <math>\mathrm{I}(\vec i)</math> を求める。<ref>ここで、線分の長さと頂点の位置ベクトルを同じアルファベットで置いているが、記号 <math>\vec \bullet</math> のついているものは、ベクトル。記号 <math>\vec \bullet</math> のついていないものは実数であることに注意せよ。</ref><!-- 図 -->
<math>\rm A</math> の二等分線と線分 <math>\rm{BC}</math> の交点を <math>\mathrm{D}(\vec d)</math> とする。このとき、三角形の二等分線の性質より<math>\overline{\mathrm{BD}}:\overline{\mathrm{DC}} = c:b</math> したがって、<math>\vec d = \frac{b\vec b + c\vec c}{b+c}</math> である。
ここで、<math>\overline{\mathrm{AI}}:\overline{\mathrm{ID}} = \overline{\mathrm{BA}}:\overline{\mathrm{BD}} = c:\frac{ac}{b+c} = (b+c):a</math><ref><math>\overline{\mathrm{BD}}:\overline{\mathrm{DC}} = c:b</math> より <math>\overline{\mathrm{BD}} = \frac{c}{b+c}a</math></ref> である。
したがって、<math>\vec i = \frac{a\vec a + (b+c)\vec d}{a+b+c} = \frac{a\vec a + b\vec b + c\vec c}{a+b+c}</math> である。
== ベクトルの内積 ==
中学理科または高校物理の力学では、力学的な仕事の定義を習ったことがあるだろう。この仕事では、移動方向以外の力は、仕事に寄与しなかった。このような力の仕事の計算をベクトルの観点からみれば、内積という新しい概念が定義できる。<ref>[[物理数学I]]などを参照</ref><ref>これは、内”積”という名前がついているが、実数の”積”とは様子が違い、単純に実数の積をベクトルに拡張したものが内積というわけではない。実数の積は実数から実数への演算であるが、ベクトルの内積はベクトルから実数への演算である。</ref>
ベクトル <math>
\vec a,\vec b
</math> に対し、 <math>\vec a = \vec{\mathrm{OA}}, \vec b = \vec{\mathrm{OB}}</math> となる点 <math>\mathrm{O,A,B}</math> をとる。このとき、 <math>\angle \mathrm{AOB}</math> を'''ベクトル <math>
\vec a,\vec b
</math> のなす角'''という。
ベクトルの内積の導入には、いくつかの流儀がある。ここでは、[[高等学校数学I/図形と計量#余弦定理|余弦定理]]を使う流儀を紹介する。
まず、<math>\triangle \mathrm{OAB}</math> において余弦定理を適用すると、
<math>\overline{\mathrm{BA}}^2 = \overline{\mathrm{OA}}^2 + \overline{\mathrm{OB}}^2 - 2\, \overline{\mathrm{OA}} \cdot \overline{\mathrm{OB}} \cos \theta</math> ・・・・(1)
なお,OAとOB のなす角を {{ruby|θ|シータ}} と置いた。
次に、点Aの位置が直交座標上で (a<sub>x</sub>, a<sub>y</sub>) とする。
同様に、点Bの位置が直交座標上で (b<sub>x</sub>, b<sub>y</sub>) とする。
余弦定理で表した(1)式の右辺と左辺は、上述の座標を用いれば、ピタゴラスの定理(三平方の定理)により、両辺をそれぞれ次のように置換できる。
<math>\mathrm{lhs} = \overline{\mathrm{BA}}^2 = { (b_x - a_x)^2 + (b_y - a_y)^2 } </math> = <math> ( b_x{}^2 - 2 b_x {} a_x + a_x{}^2 ) + ( b_y{} ^2 - 2 b_y {} a_y + a_y{}^2 )</math>
<math>\mathrm{rhs} = ( a_x{} ^2 + a_y{} ^2 ) + ( b_x{} ^2 + b_y{} ^2 ) -2 \sqrt{ a_x {}^2 + a_y {}^2 } \sqrt{ b_x{} ^2 + b_y{} ^2 } \cos \theta </math>
両辺が等しいので、それぞれの辺の結論同士をまとめれば、
<math> ( b_x{} ^2 - 2 b_x {} a_x + a_x{}^2 ) + ( b_y{} ^2 - 2 b_y {} a_y + a_y{}^2 )</math> =
<math> ( a_x{} ^2 + a_y{} ^2 ) + ( b_x{} ^2 + b_y{} ^2 ) -2 \sqrt{ a_x{} ^2 + a_y{} ^2 } \sqrt{ b_x {} ^2 + b_y{} ^2 } \cos \theta </math>
両辺から同じもの同士を引き算すれば、
<math> ( - 2 b_x {} a_x ) + ( - 2 b_y {} a_y )</math> =
<math> -2 \sqrt{ a_x {}^2 + a_y {}^2 } \sqrt{ b_x {} ^2 + b_y {} ^2 } \cos \theta </math>
整理すれば
<math> ( b_x {} a_x ) + ( b_y {} a_y )</math> =
<math> \sqrt{ a_x {} ^2 + a_y {} ^2 } \sqrt{ b_x {} ^2 + b_y {} ^2 } \cos \theta </math>
今後の説明の都合で、式中の文字の順序を下記のように並び変える。
<math> a_x {} b_x + a_y {} b_y </math> =
<math> \sqrt{ a_x {} ^2 + a_y {} ^2 } \sqrt{ b_x {}^2 + b_y {}^2 } \cos \theta </math>
さて、ここでベクトルの内積を定義する。
ベクトル <math>
\vec a,\vec b
</math> のなす角を <math>\theta</math> とするとき、内積 <math>\vec a \cdot \vec b</math><sup>※</sup> を
:<math>
\vec a \cdot \vec b = |\vec a||\vec b| \cos \theta
</math>
で定める。念のため注記するが、内積はベクトルではなく実数である。
:※内積 <math>\vec a \cdot \vec b</math> を <math>\vec a \times \vec b</math> のように表記してはいけない。<math>\vec a \times \vec b</math> はベクトルの外積(範囲外)を表す。
さて、上述の余弦定理を用いた式変形の結論から、
:<math>
\vec a \cdot \vec b = |\vec a||\vec b| \cos \theta = a_x b_x + a_y b_y
</math>
となるので、ベクトルの内積は、'''直交座標上では'''、同じ座標同士の積の和として求められることが分かる。
また、ベクトルの大きさ(ベクトルの長さ、ベクトルの絶対値)は、自分自身との内積として下記のように定義し直す事もできる。
まず、余弦定理の式を再掲。
:<math> \overline{\mathrm{BA}}^2 = \overline{\mathrm{OA}}^2 + \overline{\mathrm{OB}}^2 -2 \overline{\mathrm{OA}} \cdot \overline{\mathrm{OB}} \cos \theta </math> ・・・・(1)
これをベクトルで書き換える。
:<math> |\vec b - \vec a|^2 = |\vec a|^2 + |\vec b|^2 -2 \vec a \cdot \vec b </math> ・・・(2)
とりあえず図形的な意味は無視して、左辺を文字式の分配法則のように展開してみると、
:<math> |\vec b - \vec a|^2 = (\vec b - \vec a) \cdot (\vec b - \vec a) = \vec{a}\cdot\vec{a}+\vec{b}\cdot\vec{b}-\vec{a}\cdot\vec{b}-\vec{b}\cdot\vec{a} = |\vec a|^2 + |\vec b|^2 -2 \vec a \cdot \vec b </math>
となる(この計算は後述の内積の性質 <math>\vec{a}\cdot\vec{b}=\vec{b}\cdot\vec{a},\; \vec{a}\cdot\vec{a}=|\vec{a}|^2</math>から正当化できる)。これは(2)式の右辺に等しい。
このように、ベクトルの内積は、文字式の分配法則のように展開してよい事が分かる
発展的だが、正射影を使った考え方を紹介する。大学では、こちらの考え方を使って4次元以上のベクトルの内積を定義する。
; '''補足:正射影'''
<math>\triangle \mathrm{OAB}</math>において、<math>\angle \mathrm{AOB} = \theta</math>とする。また、<math>\vec{ \mathrm{OC} } = \vec{c}</math>のように表記する。
OBからOAへ伸ばした垂線の足をHとするとき、「線分OHは、線分OBの線分OAへの'''正射影'''である」という。また、線分OHをベクトルとしてみた<math>\vec{h}</math>を'''正射影ベクトル'''という。このとき、<math>|\vec{h}| = |\vec{b}| \cos \theta</math>が成り立つ。
つまり、内積<math>\vec{a} \cdot \vec{b}</math>は<math>\vec{b}</math>を<math>\vec{a}</math>に正射影したときの、<math>\vec{a}</math>の大きさ<math>|\vec{a}|</math>と正射影ベクトルの長さ<math>|\vec{h}|</math>の積<math>|\vec{a}| |\vec{h}|</math>でも定義される。
正射影ベクトルを内積を用いて表現してみよう。
:<math>\vec{a}</math>の長さは<math>|\vec{a}|</math>なので、<math>\vec{a}</math>に平行な単位ベクトルは<math>\frac{\vec{a}}{|\vec{a}|}</math>である。
:正射影ベクトルは<math>\vec{a}</math>に平行で長さが<math>|\vec{b}| \cos \theta</math>なので、<math>|\vec{b}| \cos \theta \times \frac{\vec{a}}{|\vec{a}|} = \frac{|\vec{b}| \cos \theta}{|\vec{a}|} \vec{a}</math>と表現できる。
:分母分子に<math>|\vec{a}|</math>を掛けると<math>\frac{|\vec{a}| |\vec{b}| \cos \theta}{|\vec{a}|^2} \vec{a}</math>であり、
:後述の内積の性質を用いることにより、<math>\frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{\vec{a} \cdot \vec{a}} \vec{a}</math>と内積のみを用いて表現できる。
(図)
=== 成分表示された内積 ===
ベクトル <math>
\vec a,\vec b
</math> を <math>\vec a = (a_x,a_y),\vec b = (b_x,b_y)</math> と成分表示したときの、内積 <math>\vec a \cdot \vec b</math> について考えてみよう。
ベクトル <math>
\vec a,\vec b
</math> に対し、 <math>\vec a = \vec{\mathrm{OA}}, \vec b = \vec{\mathrm{OB}}</math> となる点 <math>\mathrm{O,A,B}</math> をとり、ベクトル <math>
\vec a,\vec b
</math> のなす角を <math>\theta </math> とする。このとき <math>\triangle \mathrm{OAB}</math> に対し余弦定理を用いて
<math>\overline{\mathrm{AB}}^2 = \overline{\mathrm{OA}}^2 + \overline{\mathrm{OB}}^2 - 2 \cdot \overline{\mathrm{OA}} \cdot \overline{\mathrm{OB}} \cos \theta </math>
(図)
ここで、 <math>\overline{\mathrm{AB}} = |\vec b - \vec a|,\overline{\mathrm{OA}} = |\vec a|,\overline{\mathrm{OB}} = |\vec b|</math> と、<math>\overline{\mathrm{OA}} \cdot \overline{\mathrm{OB}} \cos \theta = |\vec a||\vec b|\cos\theta = \vec a \cdot \vec b</math> より
<math>|\vec b - \vec a|^2 = |\vec a|^2 + |\vec b|^2 - 2 \vec a \cdot \vec b</math> であるので、 <math>\vec a \cdot \vec b = \frac{1}{2}(|\vec a|^2 + |\vec b|^2 - |\vec b - \vec a|^2)</math> である。
ここで、 <math>|\vec a|^2 = a_x^2 + a_y^2,|\vec b|^2 = b_x^2 + b_y^2,|\vec b - \vec a|^2 = |(b_x - a_x, b_y - a_y)|^2 = (b_x - a_x)^2 + (b_y - a_y)^2</math> なので、これを代入すれば
<math>\vec a \cdot \vec b = \frac{1}{2}(|\vec a|^2 + |\vec b|^2 - |\vec b - \vec a|^2)</math> <math>= \frac{1}{2}\left[(a_x^2 + a_y^2) + (b_x^2 + b_y^2 )- (b_x - a_x)^2 + (b_y - a_y)^2\right] </math> <math>= a_xb_x + a_yb_y </math> である。
したがって <math>\vec a \cdot \vec b = a_x b_x + a_y b_y</math> が得られた。
=== 内積の性質 ===
内積の計算法則
{{math_theorem|内積の性質|ベクトル <math> {\vec {a}},{\vec {b}},{\vec {c}}</math> と実数 <math> k</math> に対し以下が成り立つ。
# <math> {\vec {a}}\cdot {\vec {b}}={\vec {b}}\cdot {\vec {a}}</math>
# <math> {\vec {a}}\cdot ({\vec {b}}+{\vec {c}})={\vec {a}}\cdot {\vec {b}}+{\vec {a}}\cdot {\vec {c}}</math>
# <math> (k{\vec {a}})\cdot {\vec {b}}=k({\vec {a}}\cdot {\vec {b}})</math>
# <math> 0 \leqq {\vec {a}}\cdot {\vec {a}}=|{\vec {a}}|^{2}</math>}}
これらはベクトルを成分表示して計算すれば証明できる。
{{Math proof|
<math>\vec a = (a_x,a_y),\vec b = (b_x,b_y),\vec c = (c_x,c_y)</math> とする。
# <math>\vec a \cdot \vec b = a_x b_x+a_y b_y = \vec b \cdot \vec a</math>
# <math>{\vec {a}}\cdot ({\vec {b}}+{\vec {c}})=(a_x,a_y)\cdot(b_x+c_x,b_y+c_y) = (a_x b_x+a_x c_x )+ (a_y b_y+a_y c_y ) = {\vec {a}}\cdot {\vec {b}}+{\vec {a}}\cdot {\vec {c}}</math>
# <math>(k{\vec {a}})\cdot {\vec {b}}= (ka_x, ka_y)\cdot (b_x, b_y) =k(a_x b_x+a_y b_y) = k({\vec {a}}\cdot {\vec {b}})</math>
# <math>{\vec {a}}\cdot {\vec {a}} = a_x{}^2 + a_y{}^2 = |{\vec {a}}|^{2} \ge 0</math>}}
なお、
:4 <math> 0 \leqq {\vec {a}}\cdot {\vec {a}}=|{\vec {a}}|^{2}</math>
について、内積は一次元の実数であるので、不等号や大小関係を考える事ができる。
内積を取っていないベクトルそのものは、不等号や大小関係が定義されない。
ベクトルの次元は、高校では、必ず2以上の自然数とする(つまり、2次元、3次元、4次元、5次元、・・・)。図形への応用を考えるなら、2次元ベクトル(a,b)と3次元ベクトル(a,b,c)だけを考えればよい( 4次元ベクトル(a,b,c,d)またはそれ以上の次元は、この単元では考えない )。
また、「 1次元のベクトル 」の存在については考えない事とする(実数の係数 k などとの混同を避けるため。1次元のベクトルについては考えない方が合理的である)。
さて、計算法則ではないが、頻繁に使う計算結果として、次の結果がある。
:0ベクトルでない2本のベクトル <math>\vec {a}</math> と <math>\vec {b}</math> について、
:: <math>\vec {a}</math> と <math>\vec {b}</math> が垂直に交わる ⇔ <math>\vec a \cdot \vec b = \vec 0</math>
ただし、少なくとも片方が0ベクトルだとすると、θの値に関わらず積が0になってしまうので、0ベクトルがある場合は除外する。
上記の公式の結果は、公式のように証明なしで用いて良い。
なお、念のため証明すると、
:<math>\vec a \cdot \vec b = |\vec a||\vec b| \cos \theta = a_x b_x + a_y b_y</math> ・・・(3)
の式から証明できる。上(3)式の2番目の辺 の θ に90°を代入すれば、
:<math>\vec a \cdot \vec b = |\vec a||\vec b| \cos 90^{\circ} = |\vec a||\vec b| \cdot 0 = 0</math>
内積の値は、直交座標の座標軸を回転させても変わらない。内積の値は、両ベクトルの大きさと、図形的な「なす角」によってのみ決まる。
この性質は、物理学の力学などで内積の計算を使うときに重要である。物理学で用いる座標軸は、直交でありさえすれば、計算しやすいような向きに自由に設定してよい。具体的に言えば、力学の「仕事」は、座標系を直交座標で定義さえすれば、どのような向きで座標系を置いても、仕事の値は同じ結果になる。
ほか、x軸方向の基本ベクトル <math> \vec e_x = </math>(1,0) と y軸方向の基本ベクトル<math> \vec e_y = </math>(0,1)の内積は、成分同士の積として内積を計算すれば
:<math>\vec e_x \cdot \vec e_y = 1 \cdot 0 + 0 \cdot 1 = 0</math>
となり、上述の議論のように結果は 0 になり、上述の議論(垂直に交わるベクトル同士の内積はゼロ)と整合性がある。
ほか、
<math>\vec a = \vec 0 = (0 , 0) </math> または <math>\vec b = \vec 0 = (0 , 0) </math> なら、<math>\vec a \cdot \vec b = 0 </math>
である。証明は、それぞれの場合の両ベクトルの成分同士の積による。入試などでは、公式として証明なしで用いてよい。
なお、少なくとも片方のベクトルが零ベクトルである時の「なす角」については、考えない事とする。
{{演習問題|円<math>x^2+y^2=1</math>上の点<math>\mathrm{A}(\cos \theta, \sin \theta)</math>における円の接線をベクトルを利用して求めよ|
円の中心を<math>\mathrm{O}</math>, 接線上の任意の点を<math>\mathrm{P}(x, y)</math>とする。
Oは原点なので<math>\vec{\mathrm{OP}}=(x, y)</math>である。ここでOPのOAへの正射影ベクトル<math>\vec{h}</math>を考えると、円の接線の性質より<math>\angle \mathrm{OAP} = 90^\circ</math>なのでAはPから線分OAに下ろした垂線の足であり、<math>\vec{h} = \vec{\mathrm{OA}}</math>である。
よって<math>\vec{\mathrm{OA}}\cdot\vec{\mathrm{OP}} = |\vec{\mathrm{OA}}| |\vec{h}| =|\vec{\mathrm{OA}}| \times |\vec{\mathrm{OA}}| = |\vec{\mathrm{OA}}|^2</math>。
ここで左辺を成分表示して計算すると<math>\vec{\mathrm{OA}} \cdot \vec{\mathrm{OP}} = (\cos \theta) x + (\sin \theta) y</math>であり、右辺について<math>|\vec{\mathrm{OA}}|</math>は円の半径に等しいので<math>|\vec{\mathrm{OA}}|^2=1</math>が成り立つ。
よって、接線上にある点<math>\mathrm{P}(x, y)</math>は関係式<math>(\cos \theta) x + (\sin \theta) y=1</math>を満たす。逆に、この関係式を満たす点<math>\mathrm{P}(x, y)</math>は全て接線上にある。
故に、この関係式は求める接線の方程式そのものである。
}}
ベクトル(x,y)のような2次元ベクトルのことを「平面ベクトル」とも言う。平面上の位置や変化量を表す事が出来るからである。
ベクトル(x, y, z)のような3次元ベクトルのことを「空間ベクトル」または「立体ベクトル」などとも言う。空間上の位置や変化量を表すことが出来るからである。
このように、2次元、3次元のベクトルは、図形的に解釈する事もできる。
4次元以上については、通常は図形的な意味合いについては考えない。
図形的な意味を考えれば、数直線は1次元のベクトルのように思えそうだが、しかし係数 k などとの混同を避けるため、1次元のベクトルについては考えないのが一般的である。
== ベクトル方程式 ==
数学では、全ての図形を「点の集合」と考える。数学Ⅱで習ったように、「任意の点<math>\mathrm{P}(x, y)</math>について<math>x, y</math>がある方程式(*)を満たす」ことが「<math>\mathrm{P}</math>の集合が図形<math>\mathcal{F}</math>である」ことの必要十分条件であるとき、(*)を「図形の方程式」と呼んだ。
同様に、「<math>\mathrm{P}</math>の位置ベクトル<math>\vec{\mathrm{OP}}</math>がある方程式(**)を満たす」ことが「<math>\mathrm{P}</math>の集合が図形<math>\mathcal{F}</math>である」ことの必要十分条件であるとき、(**)を'''ベクトル方程式'''(vector equation)という。
{{演習問題|
<math>\mathrm A (\vec a),\, \mathrm B (\vec b)</math>とする。
このとき、線分OAを1:3に分ける点と、線分OBを5:2に分ける点をそれぞれ、A',B'とする。
(1) ベクトル <math>\vec{\mathrm{OA'}},\, \vec{\mathrm{OB'}}</math> をベクトル<math>\vec a,\, \vec b</math>を用いてあらわせ。
(2) 線分AB'と、BA'の交点 M の位置ベクトルをベクトル<math>\vec a,\, \vec b</math>を用いてあらわせ。|
ベクトル
:<math>\vec a</math>
と、
ベクトル
:<math>\vec b</math>
は互いに1次独立な2本のベクトルなので、
これらを用いてあらゆる図形上の点が表されるはずである。
図形上のそれぞれの点は、点Oからの位置ベクトルで表される。
例えば、ベクトル
:<math>\vec{\mathrm{OA'}}</math>
は、点Oから見て
:<math>\vec a</math>
と平行な方向のベクトルであり、その大きさが、
:<math>\frac 1 4</math>
であるので、
:<math>\vec{\mathrm{OA'}}= \frac 1 4 \vec a</math>
で表される。
同様に、ベクトル
:<math>\vec{\mathrm{OB'}}</math>
は、点Oから見て
:<math>\vec b</math>
と平行な方向のベクトルであり、その大きさが、
:<math>\frac 2 7</math>
であるので、
:<math>\vec{\mathrm{OB'}}= \frac 2 7 \vec b</math>
で表される。
次に、点A'を通過し、線分A'Bに平行な直線を
ベクトル
:<math>\vec a</math>
と
:<math>\vec b</math>
を用いて記述する方法を考える。
ここでは、
この直線上の点は、
ある定数<math>s</math>を用いて、
:<math>\vec{\mathrm{OA'}} + s(\vec{\mathrm{A'B}})</math>
で表せることに注目する。
例えば、
:<math>s=0</math>
のとき、この式が表す点は
:<math>\vec{\mathrm{OA'}}</math>
に等しく、
:<math>s=1</math>
のとき、
:<math>\vec{\mathrm{OB}}</math>
に等しく、いずれも直線A'B上の点である。
これらに先ほど求めた
:<math>\vec{\mathrm{OA'}}</math>
と、
:<math>\vec{\mathrm{OB}}</math>
の値を用いると、
:<math>\vec{\mathrm{OA'}} + s(\vec{\mathrm{A'B}})</math>
:<math>= \frac 1 4 \vec a + s(\vec b - \frac 1 4 \vec a)</math>
:<math>= \frac 1 4 (1 -s ) \vec a + s \vec b</math>
が得られる。
同様に、線分AB'上の点はある定数
<math>t</math>を用いて、
:<math>\vec{\mathrm{OB'}} + t\vec{\mathrm{B'A}}</math>
で表される。
ここに先ほど得た値を代入すると、
:<math>\vec{\mathrm{OB'}} + t\vec{\mathrm{B'A}}</math>
:<math>= \frac 2 7 \vec b + t(\vec a - \frac 2 7 \vec b)</math>
:<math>=(1-t) \frac 2 7 \vec b + t \vec a</math>
となる。
このようにそれぞれの直線上の点が<math>s</math>,<math>t</math>を
用いて表された。
次に、これらの式が同じ点を示すように
<math>s</math>,<math>t</math>を定める。
そのためには、
:<math>\vec{\mathrm{OM}}= \frac 1 4 (1 -s ) \vec a + s \vec b</math>
,
:<math>\vec{\mathrm{OM}}=(1-t) \frac 2 7 \vec b + t \vec a</math>
を等しいとおいて、
<math>s</math>,<math>t</math>に関する連立方程式を作り、それを解けばよい。
上の式で
:<math>\vec a</math>
の係数を等しいとおくと、
:<math>\frac 1 4 (1-s) = t</math>
が得られ、
:<math>\vec b</math>
の係数を等しいとおくと、
:<math>\frac 2 7 (1-t) = s</math>
が得られる。
この式を連立して解くと、
:<math>\begin{cases} s = \frac 3 {13} \\ t = \frac 5 {26} \end{cases}</math>
が得られる。
この式を
:<math>\vec{\mathrm{OM}}= \frac 1 4 (1 -s ) \vec a + s \vec b</math>
,
:<math>\vec{\mathrm{OM}} =(1-t) \frac 2 7 \vec b + t \vec a</math>
のどちらかに代入すると、求める位置ベクトルが得られるのである。
代入すると、求めるベクトルは、
:<math>\vec{\mathrm{OM}}= \frac 1 4 (1 -\frac 3 {13} ) \vec a + \frac 3 {13} \vec b</math>
:<math>= \frac 5 {26} \vec a + \frac 3 {13} \vec b</math>
となる。
:答え
:<math>\vec{\mathrm{OA'}} = \frac 1 4 \vec a</math>
:<math>\vec{\mathrm{OB'}}= \frac 2 7 \vec b</math>
:<math>\vec{\mathrm{OM}} = \frac 5 {26} \vec a + \frac 3 {13} \vec b</math>
}}
=== 直線のベクトル方程式 ===
点 <math>\mathrm{A}(\vec a)</math> を通り、ベクトル <math>\vec {d} \, (\neq \vec 0)</math> に平行な直線を <math>g</math> とする。<math>g</math> 上の点を <math>\mathrm{P}(\vec p)</math> とすると、<math>\vec \mathrm{AP} = \vec {0}</math>または<math>\vec \mathrm{AP} \parallel \vec d</math> だから
:<math>\vec \mathrm{AP} = t \vec {d}</math><!-- 図 -->
となる実数 <math>t</math> がある。
すなわち、
:<math>\vec {p} - \vec {a} = t \vec {d}</math>
よって、
:<math>\vec {p} = \vec {a} + t \vec {d}</math>
これを、'''直線 <math>g</math> のベクトル方程式'''といい、 <math>\vec{d}</math> を <math>g</math> の'''方向ベクトル'''という。また、<math>t</math> を{{Ruby|'''媒介変数'''|ばいかいへんすう}}('''パラメータ''')という。
点Aの座標を<math>(x_1\ ,\ y_1)</math>、<math>\vec{d} = (a\ ,\ b)</math>、点Pの座標を<math>(x\ , \ y)</math>とおくと、ベクトル方程式 <math>\vec {p} = \vec {a} + t \vec {d}</math> は
:<math>(x\ , \ y) = (x_1\ , \ y_1) + t (a\ , \ b) </math>
となる。したがって
<math>\begin{cases} x = x_1 +at \\ y = y_1 +bt\end{cases}</math>
これを直線 <math>g</math> の'''媒介変数表示'''('''パラメータ表示''')という。
{{演習問題|
点A<math>(1\ ,\ 2)</math>を通り、<math>\vec{d} = (3\ ,\ 5)</math>に平行な直線の方程式を、媒介変数tを用いて表せ。
また、tを消去した式で表せ。|
この直線のベクトル方程式は
:<math>(x\ , \ y) = (1\ , \ 2) + t (3\ , \ 5) = (1+3t\ , \ 2+5t)</math>
したがって
:<math>x = 1+3t\ ,\ y = 2+5t</math>
tを消去すると、次のようになる。
:<math>5x-3y+1=0</math>}}
2点 <math>\mathrm{A}(\vec a),\, \mathrm{B}(\vec b)</math> を通る直線のベクトル方程式を考える。
直線ABは、点Aを通り、<math>\vec{\mathrm{AB}} = \vec{b} - \vec{a}</math>を方向ベクトルとする直線と考えられるから、そのベクトル方程式は
:<math>\vec {p} = \vec {a} + t \left(\vec{b} - \vec{a} \right)</math>
となる。これは次のように書ける。
:<math>\vec {p} = (1-t) \vec {a} + t \vec{b}</math>
{{演習問題|
2点A<math>(2\ ,\ 5)</math>,B<math>(-1\ ,\ 3)</math>を通る直線の方程式を、媒介変数tを用いて表せ。|
この直線のベクトル方程式は
:<math>(x\ , \ y) = (1-t)(2\ , \ 5) + t (-1\ , \ 3) = (2-3t\ , \ 5-2t)</math>
したがって
:<math>x = 2-3t\ ,\ y = 5-2t</math>}}
点Aを通るベクトル<math>\vec{n}(\neq \vec{0})</math>に垂直な直線をgとする。g上の点をPとすると、<math>\vec{\mathrm{AP}} = \vec {0}</math>または<math>\vec{\mathrm{AP}} \perp \vec {n}</math>だから
:<math>\vec{\mathrm{AP}} \cdot \vec {n} =0</math>…(1)
である。
点A,Pの位置ベクトルをそれぞれ、<math>\vec{a}\ ,\ \vec{p}</math>とすると、<math>\vec{\mathrm{AP}} = \vec {p} - \vec {a}</math>だから、(1)は
:<math>\vec {n} \cdot (\vec {p} - \vec {a}) = 0</math>…(2)
となる。(2)が点Aを通って、<math>\vec {n}</math>に垂直な直線gのベクトル方程式であり、<math>\vec{n}</math>をこの直線の'''{{ruby|法線|ほうせん}}ベクトル'''(normal vector)という。
点Aの座標を<math>(x_1\ ,\ y_1)</math>、<math>\vec{n} = (a\ ,\ b)</math>、点Pの座標を<math>(x\ , \ y)</math>とおくと、<math>\vec {p} - \vec {a} = (x-x_1\ , \ y-y_1)</math>だから、(2)は次のようになる。
<center><math>a(x-x_1)+b(y-y_1)=0</math></center>
この方程式は、<math>-ax_1-by_1=c</math>とおくと、<math>ax+by+c=0</math>となるから、次のことがいえる。
'''直線<math>ax+by+c=0</math>の法線ベクトルは、<math>\vec{n} = (a\ ,\ b)</math>である。'''
{{演習問題|
点A<math>(2\ ,\ 5)</math>を通り、<math>\vec{n} = (4\ ,\ 3)</math>に垂直な直線の方程式を求めよ。|:<math>4(x-2)+3(y-5)=0</math>
つまり
:<math>4x+3y-23=0</math>}}
===円のベクトル方程式===
円の数学的な定義は「ある点からの距離が等しい点の集合」である。
よって、中心をC, 円上の任意点をPとすると、<math>|\vec{\mathrm{CP}}|</math>が一定値(半径rの値)をとるならばPの軌跡は円であるといえる。
これを位置ベクトルを用いて書き換えると'''円のベクトル方程式'''を得る。
:<math>|\vec{p}-\vec{c}|=r</math>
これを両辺2乗して成分表示すると[[高等学校数学II/図形と方程式#円の方程式|座標平面上での円の方程式]]を得る。
また、以下のような考え方をしても良い。
直径ABに対する円周角が常に<math>90^\circ</math>であることから、円上の任意点をPとすると常に<math>\vec{\mathrm{AP}}\cdot\vec{\mathrm{BP}}=0</math>である。
これは位置ベクトルを用いて以下のように表せる。
:<math>(\vec{p}-\vec{a})\cdot(\vec{p}-\vec{b})=0</math>
これもまた、'''円のベクトル方程式'''であり、先ほどの形に変形することができる。
*変形できることの証明
:<math>(\vec{p}-\vec{a})\cdot(\vec{p}-\vec{b})=|\vec{p}|^2-(\vec{a}+\vec{b})\cdot\vec{p}+\vec{a}\cdot\vec{b}</math>
:平方完成して<math>\left| \vec{p}-\frac{\vec{a}+\vec{b}}{2} \right|^2 - \frac{|\vec{a}+\vec{b}|^2}{4} + \vec{a}\cdot\vec{b}=0</math>
:ここで<math>\frac{|\vec{a}+\vec{b}|^2}{4}-\vec{a}\cdot\vec{b}=\frac{|\vec{a}|^2+2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2-4\vec{a}\cdot\vec{b}}{4}=\frac{|\vec{a}|^2-2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2}{4}=\frac{|\vec{a}-\vec{b}|^2}{4}</math>より、
:<math>\left| \vec{p}-\frac{\vec{a}+\vec{b}}{2} \right|^2=\left( \frac{|\vec{a}-\vec{b}|}{2} \right)^2</math>
:<math>\therefore \left| \vec{p}-\frac{\vec{a}+\vec{b}}{2} \right|=\frac{|\vec{a}-\vec{b}|}{2}</math>
:よって、これは中心<math>\frac{\vec{a}+\vec{b}}{2}</math>、半径<math>\frac{1}{2}|\vec{a}-\vec{b}|=\frac{1}{2}\overline{\mathrm{AB}}</math>の円を表す。
一般にABを直径とする円は中心がABの中点で半径は<math>\overline{\mathrm{AB}}</math>(直径)の半分である。よって、式を変形して得られた結論は妥当である。
円の接線のベクトル方程式も以下の二つの考え方で得る。
:(以下、接線上の任意点をP, 円の中心をC, 接点をA, 半径をrとする。)
円の接点を通る半径と接線は常に垂直であることから、<math>\vec{\mathrm{CA}}\cdot\vec{\mathrm{CP}}=0</math>
これを成分表示して、<math>(\vec{p}-\vec{c})\cdot(\vec{a}-\vec{c})=0</math>//
<math>\vec{\mathrm{CP}}</math>の<math>\vec{\mathrm{CA}}</math>への正射影ベクトルは、接点を通る半径と接線が必ず垂直であることから常に<math>\vec{\mathrm{CA}}</math>と等しい。
よって<math>\vec{\mathrm{CP}} \cdot \vec{\mathrm{CA}} = |\vec{\mathrm{CA}}| \cdot |\vec{\mathrm{CA}}| = |\vec{\mathrm{CA}}|^2 = r^2</math>。
最左辺を位置ベクトル表示して<math>(\vec{p}-\vec{c})\cdot(\vec{a}-\vec{c})=r^2</math>//
これを座標表示すると[[高等学校数学C/平面上の曲線#二次曲線の接線|座標平面上での円の接線の方程式]]を得る。
円のベクトル方程式と同様、片方の形からもう片方の形に変形することができる。
*証明
:<math>(\vec{p}-\vec{a})\cdot(\vec{a}-\vec{c})=0</math>より、
:<math>\{ (\vec{p}-\vec{c}) - (\vec{a}-\vec{c}) \} \cdot (\vec{a}-\vec{c})=0</math>
:<math>\mathrm{lhs} = (\vec{p}-\vec{c})\cdot(\vec{a}-\vec{c})-|\vec{a}-\vec{c}|^2</math>
:ここで<math>|\vec{a}-\vec{c}|=\overline{\mathrm{CA}}=r</math>より、
:<math>(\vec{p}-\vec{c})\cdot(\vec{a}-\vec{c})=r^2</math>
== 空間座標とベクトル ==
ここまでは、平面上のベクトルについて考えてきたが、ここからは3次元空間上のベクトルについて考える。より一般にベクトルはn次元(ユークリッド)空間上で定義することができるが、このようなものは高校では扱わない。
===== 空間座標 =====
(空間座標については2022年度施行課程から[[高等学校数学A/数学と人間の活動#座標の考え方|数学A「数学と人間の活動」]]に移されたが、当該範囲を履修していない生徒が出る可能性を考慮してこちらの記述も残すことにした。)
今までは、平面上の図形をベクトルや数式を用いて表現する方法を学んで来た。ここでいう2次元とは、平面のことである。平面上の任意の点を指定するには最低でも2以上の実数が必要だからこのように呼ばれている。
もちろん容易に分かる通り、2つ以上の次元を持っている図形も存在する。例えば、直方体は縦、横、高さの3つの長さを持っているので3次元立体の1つであり、3次元図形である。
(図 - 空間座標の座標軸の図。およびxy平面、yz平面、zx平面の図)
空間内に点<math>\mathrm{O}</math>を通る1つの平面をとり、その上に直交する座標軸<math>\mathrm{O}_x , \mathrm{O}_y</math>をとる。次に<math>\mathrm{O}</math>を通りこの平面に垂直な直線<math>\mathrm{O}_z</math>をひき、その直線上で、<math>\mathrm{O}</math>を原点とする座標を考える。
この3直線<math>\mathrm{O}_x , \mathrm{O}_y , \mathrm{O}_z</math>は、どの2つも互いに垂直である。これらを'''座標軸'''といい、それぞれ'''x軸'''、'''y軸、'''z軸'''という。
:(単に、2次元の座標軸の「x軸」,「y軸」の最後に、「z軸」が追加で加わっただけである。「x軸」や「y軸」の用語は、2次元でも3次元でも共通である。)
また、x軸とy軸とで定まる平面を'''xy平面'''といい、y軸とz軸とで定まる平面を'''yz平面'''といい、z軸とx軸とで定まる平面を'''zx平面'''といい、これらを'''座標平面'''という。
空間内の点<math>\mathrm{A}</math>に対して、<math>\mathrm{A}</math>を通って各座標平面に平行な3つの平面をつくり、それらがx軸、y軸、z軸と交わる点を<math>\mathrm{A}_1 , \mathrm{A}_2 , \mathrm{A}_3</math>とし、<math>\mathrm{A}_1 , \mathrm{A}_2 , \mathrm{A}_3</math>のそれぞれの軸上での座標を<math>a_1\ , \ a_2\ , \ a_3</math>とする。
このとき、3つの数の組
:<math>(a_1\ , \ a_2\ , \ a_3)</math>を点<math>\mathrm{A}</math>の'''座標'''といい、<math>a_1</math>を'''x座標'''といい、<math>a_2</math>を'''y座標'''といい、<math>a_3</math>を'''z座標'''という。
ある点の位置を座標の値であらわす時、3次元の場合は、単に
:(x座標、y座標、z座標)
のように、3つ目の座標の値が追加されるだけである。
たとえば、座標が(1, 4, 2) なら、x=1, y=4, z=2 の位置にある点である。
上述のように座標の定められた空間を'''座標空間'''と呼び、点<math>\mathrm{O}</math>を座標空間の'''原点'''という。
上述のような3次元の座標空間のことを「xyz空間」とも言う。由来は、座標名の「x座標」・「y座標」・「z座標」から由来している。なお、このxyz空間と言う呼び方をした場合は、当然だが座標軸の名前も「x座標」や「y座標」など対応する名前を用いないといけない。(「a座標、b座標、c座標」とか「u座標、v座標、w座標」のような、空間名に用いてない座標軸を用いてはいけない。)
:(参考)コンピュータ・グラフィック業界では「uv座標」「uv空間」などの語もあるが、高校数学の科目の範囲内では、座標名・空間名は「xy座標」や「xyx座標」や「xyz空間」のようにxyzだけを用いるほうが、採点者に誤解がなく無難であろう。
ほか、xyz空間のことを座標軸が3本あるので(x軸、y軸、z軸で合計3本)、「3次元空間」とも言う。なお、4次元以上の場合も、図示はできないが「4次元空間」のように言ってよい。
入試の答案で、立体図形や空間ベクトルを扱う際には、「xyz空間」や「3次元空間」などの語を用いても大丈夫である。
'''2点間の距離'''は平面座標でも空間座標でも、ピタゴラスの定理により下記のような公式になる。
平面座標での2点<math>\mathrm{A}(x_1, y_1), \mathrm{B}(x_2, y_2)</math>間の距離は<math>\overline{\mathrm{AB}} = \sqrt{(x_1-x_2)^2+(y_1-y_2)^2}</math> である。
空間座標での2点<math>\mathrm{A}(x_1, y_1, z_1), \mathrm{B}(x_2, y_2, z_2)</math>間の距離は<math>\overline{\mathrm{AB}} = \sqrt{(x_1-x_2)^2+(y_1-y_2)^2+(z_1-z_2)^2}</math> である。
説明は省略する(座標平面上の距離は数学Ⅱ「図形と方程式」で、空間座標上の図形は[[高等学校数学A/数学と人間の活動#座標の考え方|数学A「数学と人間の活動」]]で詳しく習う)。
上記の距離の公式の計算練習も兼ねて、原点から空間内の点Pまでの距離も考えてみよう。
空間座標で、原点<math>\mathrm{O}</math>から点<math>\mathrm{P}(x_1, y_1, z_1)</math>までの距離は <math>\overline{\mathrm{OP}} = \sqrt{ x_1{}^2+y_1{}^2+z_1{}^2 }</math>である。
証明は、単に上記の2点間の距離の公式で、片方の点の位置を原点座標である <math> x_2 = 0 , y_2 = 0, z_2 =0 </math> と置いて公式に代入すれば良い。
===== 空間ベクトルの諸公式 =====
平面ベクトルで成り立った多くの公式や概念が、空間ベクトルでも成り立つ。(平面ベクトルの解説と同じような解説になるので、理解しているならば読み飛ばしてもいい。念のため、下記に公式を明示する。)
まず、いくつかの計算の、定義式を明示する。
空間ベクトルの加算、減算、および実数倍は、下記のように定義される。なお、下記の公式の内容は、単に、平面ベクトルの最後にz軸の成分が追加されただけである。
* <math>\vec a + \vec b = (a_x + b_x, a_y + b_y , a_z + b_z)</math>
* <math>\vec a - \vec b = (a_x-b_x, a_y-b_y , a_z - b_z)</math>
* <math>k\vec a = (k a_x , k a_y , k a_z)</math>
また、上記の公式の場合は(単にz軸を追加すれば空間ベクトルの公式になるため)、平面ベクトルで成り立った下記の性質は、空間ベクトルでも成り立つ。
任意の実数 <math>k,l</math> に対して、以下の性質が成り立つ。
* <math>(k+l)\vec a = k\vec a + l\vec a</math>
* <math>k(\vec a + \vec b) = k\vec a + k\vec b</math>
* <math>(kl)\vec a = k(l\vec a) = kl \vec{a}</math>
上記の証明は、成分をひとつひとつ計算すれば可能だが、しかし平面の場合と同じような公式が多いので、本wikiでは省略する。
なお、ベクトルの加算と減算について、基本的には同じ次元のベクトル同士でしか、加算、減算は出来ない。
つまり、計算できない例を挙げると、3次元の空間ベクトル <math>(a_x , a_y , a_z )</math> と 2次元の平面ベクトル <math>(b_ x, b_y )</math> をそのままの形で加算・減算しあう事は不可能である。
どうしても、図形の応用問題などで平面ベクトル(2次元)の計算結果を空間ベクトル(3次元)で使用したい場合は、たとえば <math>(b_ x, b_y , 0)</math> のように次元の不足しているほうのベクトルに、不足している座標軸に 0 などの適切な値を設定すれば良い(設定する値は問題ごとに異なる)。
ほか、3次元の零ベクトル <math>\vec 0 =(0, 0, 0)</math> や逆ベクトル <math> -\vec{a} = ( -a_x , - a_y , - a_z )</math> なども同様に、単に座標軸を1つ増やす方法で定義されるので、平面の場合と同じような下記の性質が成り立つ(証明は省略)。
* <math>\vec{a} + \vec{0} = \vec{a}</math>
* <math>\vec{a} + (-\vec{a}) = \vec{0}</math>
* <math>0 \cdot \vec{a} = \vec{0}</math>
内積も同様に定義できる。空間ベクトル同士の内積は、成分表示を用いれば、次の公式になる。(3次元の作図が難しいので、余弦定理との関係式の紹介よりも先に、成分表示の公式を紹介する)
<math>\vec a = (a_x,a_y,a_z), \vec b = (b_x, b_y, b_z )</math> と成分表示されるベクトル <math>\vec a </math>と <math>\vec b </math> があるとする。このとき、下記の公式が成り立つ。
* <math>\vec a \cdot \vec b = a_x b_x + a_y b_y + a_z b_z = \vec b \cdot \vec a </math>
また、ベクトルのなす角θも、平面ベクトルと同様に内積をもちいて算出できて、下記の式が成り立つ。
:<math>
\vec a \cdot\vec b
= |\vec a||\vec b| \cos \theta
</math>
ただし、三次元の作図は難しいので、本書では余弦定理の作図は省略する。作図は難しいが余弦定理そのものは空間ベクトルでも成り立つので、上記のθの公式が成り立つ。
3次元らしく見えるように、上述の成分表示から求める内積の公式と、なす角θの式を合わせれば、
:<math>
\vec a \cdot\vec b = a_x b_x + a_y b_y + a_z b_z
= |\vec a||\vec b| \cos \theta
</math>
のように書ける。文章題などで「なす角」θ を求めたい場合は、この式を活用すれば解ける場合が多い。
本書では、後述の単元でより詳しく空間ベクトルの公式や性質を説明しているので、今の単元ではこれ以上の深入りを省略する。今の段階では、平面ベクトルの性質の多くが空間ベクトルでも成り立つ事さえ、分かれば良い。
単位ベクトルや基本ベクトルの概念も、空間ベクトルでも存在する。なお、基本ベクトルとは、大きさ1のベクトルであり、さらに座標軸と平行のものである。
つまり、基本ベクトルとは、成分表示すれば、
<math> \vec e_x = (1 , 0 ,0) </math>
<math> \vec e_y = (0 , 1 ,0) </math>
<math> \vec e_z = (0 , 0 ,1) </math>
の3種類が存在する。このように、基本ベクトルは、単に平行な座標軸の成分だけが値が1で、他の軸の値は 0 とすれば良い。
なお、ある空間ベクトル <math> \vec a </math> の成分表示を、 <math> \vec a = (x , y , z) </math> のようにxyzで表すとは限らず、たとえば <math> \vec a = (a_1 , a_2 , a_3) </math> のように番号で書く場合もある。大学数学では、4次元以上のベクトルへの応用も考慮して、番号で書く場合の方が多い。
高校生向けの教材などでも、番号で書く書式の教材があるので、番号の書式にも慣れておくと良い。なお、座標軸の名前は、そのまま「x軸」「y軸」「z軸」のように呼び続ける(「1軸」「2軸」といった呼び方は存在しない)。 「xy平面」や「xyz空間」などの用語も、そのまま呼び続ける。
よく、基本ベクトルを番号の書式で書く事がある。それを紹介すると
:<math> \vec e_1 = (1 , 0 ,0) </math>
:<math> \vec e_2 = (0 , 1 ,0) </math>
:<math> \vec e_3 = (0 , 0 ,1) </math>
となる。このように、eの右下の番号と、左の成分から数えた1の位置が対応している。
[[高等学校数学B/数列|数列]]と同様に、ベクトルの成分を左から第1項、第2項、・・・と呼ぶ場合がある。それを用いれば、「<math>\vec{e}_k</math>は第k項に1という成分を持つ基本ベクトルである」といえる。なお、第n項まで存在するベクトルをn項(行/列)ベクトルと呼んだりする。
===== 球面の方程式 =====
ここでは、特に3次元空間の図形に注目する。
まずはベクトルを用いる前に3次元空間の空間図形を、数式によって記述する方法を考察する。
2次元空間において、もっとも簡単な図形は直線であり、その式は一般的に
:<math>
a x + by = c
</math>
で表わされた。
(<math>a</math>,<math>b</math>,<math>c</math>は任意の定数。)
ここで<math>x</math>,<math>y</math>は、2次元空間を代表する2つのパラメーターであり、3次元空間を用いたときには、これらは3つの文字で表わされることが期待される。
実際このような式で表わされる図形は、3次元空間でも基本的な図形である。つまり、
:<math>
a x + by + cz = d
</math>
が、上の式の類似物として得られる。
(<math>a</math>,<math>b</math>,<math>c</math>,<math>d</math>は任意の定数。)
このような図形はどんな図形に対応するだろうか?
実際にはこの図形を特徴づけるのは、後に学ぶ3次元ベクトルを用いるのがもっとも簡単であるので、これは後にまわすことにする。
しかし、ただ1つこの式から分かることは、3次元空間の座標を表わすパラメーター
:<math>
x,y,z
</math>
のうちに1つの関係
:<math>
f(x,y,z)=0
</math>
を与えることで、3次元空間上の図形を指定できるということである。この場合は、
:<math>
f(x,y,z) =a x + by + cz - d
</math>
を用いていた。
ベクトルを使わなくても図形的解釈が得られる式として、
:<math>
(x -a)^2 +
(y -b)^2 +
(z -c)^2
= r^2
</math>
が挙げられる。
(<math>a</math>,<math>b</math>,<math>c</math>,<math>r</math>は任意の定数。)
この式は、2次元でいうところの
:<math>
(x -a)^2 +
(y -b)^2 +
= r^2
</math>
の式の類似物である。2次元の場合はこの式は、
中心<math>
(a,b)
</math>半径<math>
r
</math>の円に対応していた。
3次元のこの式は、結論をいうと中心<math>
(a,b,c)
</math>半径<math>
r
</math>の円に対応しているのである。
*説明
上の式
:<math>
(x -a)^2 +
(y -b)^2 +
(z -c)^2
= r^2
</math>
を満たすある点<math>
(x,y,z)
</math>を取り、その点と点<math>
(a,b,c)
</math>との距離を考える。
空間座標に置ける<math>x</math>軸、
<math>y</math>軸、
<math>z</math>軸はそれぞれ直交しているので、2点の距離は3平方の定理を用いて
:<math>
\sqrt{ (x -a)^2 + (y -b)^2 + (z -c)^2 }
</math>
で与えられる。
しかし、上の式からここで選んだ点<math>
(x,y,z)
</math>は、条件
:<math>
(x -a)^2 +
(y -b)^2 +
(z -c)^2
= r^2
</math>
を満たしているので、2点の距離は
:<math>
\sqrt{ (x -a)^2 + (y -b)^2 + (z -c)^2 }
</math>
:<math>
= \sqrt{r^2}
</math>
:<math>
= r
</math>
である。
(<math>r>0</math>を用いた。)
よって、上の式を満たす点は全て点<math>
(a,b,c)
</math>からの距離が<math>
r
</math>である点であり、これは中心<math>
(a,b,c)
</math>半径<math>
r
</math>の円に他ならない。
{{演習問題|
中心
:<math>
(3,7,-2)
</math>
半径
:<math>
1
</math>
の球の式を求めよ。|:<math>
(x -a)^2 +
(y -b)^2 +
(z -c)^2
= r^2
</math>
に代入することで、
:<math>
(x -3)^2 +
(y -7)^2 +
(z +2)^2
= 1
</math>
が求められる。}}
{{演習問題|
:<math>
x ^ 2 + 2x + y ^ 2 - 8y + z ^ 2 + 6z - 9 = 0
</math>
がどのような
球に対応するか計算せよ。|このような数式が球に対応するとき、
:<math>
x^2,
y^2,
z^2
</math>
の係数は必ず等しくなくてはならない。そうでない場合はこの図形は楕円体に対応するのだが、これは指導要領の範囲外である。
ここでは上の式はその条件を満たしている。
ここでは、この式を
:<math>
(x -a)^2 +
(y -b)^2 +
(z -c)^2
= r^2
</math>
の形に持って行くことが重要である。
:<math>
x,y,z
</math>
のそれぞれについてこの式を平方完成すると、
:<math>
x ^ 2 + 2x + y ^ 2 - 8y + z ^ 2 + 6z - 9 = 0
</math>
:<math>
(x +1 ) ^2 - 1 + (y -4) ^2 -16 +(z +3)^2 -9 -9=0
</math>
:<math>
(x +1 ) ^2 + (y -4) ^2 +(z +3)^2 = 35
</math>
が得られる。よって、上の式
:<math>
x ^ 2 + 2x + y ^ 2 - 8y + z ^ 2 + 6z - 9 = 0
</math>
は、
中心
:<math>
(-1,4,-3)
</math>
、半径
:<math>
\sqrt{35}
</math>
の球に対応する。}}
=====空間におけるベクトル=====
次に3次元空間上におけるベクトルを考察する。
2次元空間上ではベクトルは2つの量の組み合わせで表わされた。
これは1つのベクトルはx軸方向に対応する量とy軸方向に対応する量の2つを持っている必要があったからである。
このことから、3次元空間のベクトルは3つの量の組み合わせで書けることが予想される。
特に<math>x</math>軸方向の成分<math>a</math>,
<math>y</math>軸方向の成分<math>b</math>,
<math>z</math>軸方向の成分<math>c</math>
(<math>a</math>,<math>b</math>,<math>c</math>は任意の定数。)
で表わされるベクトルを、
:<math>
(a,b,c)
</math>
と書いて表わすことにする。
2次元平面では
あるベクトル
:<math>
\vec a =(a,b)
</math>
は、
(<math>a</math>,<math>b</math>は任意の定数。)
2本の基本ベクトル
:<math>
\vec e _1 = (1,0)
</math>
:<math>
\vec e _2 = (0,1)
</math>
を用いて、
:<math>
\vec a = a\vec e _1 + b\vec e _2
</math>
で表わされた。
3次元空間でもこのような記述法があり、上で用いたベクトル
:<math>
\vec a = (a,b,c)
</math>
は、
3本の基本ベクトル
:<math>
\vec e _1 = (1,0,0)
</math>
:<math>
\vec e _2 = (0,1,0)
</math>
:<math>
\vec e _3 = (0,0,1)
</math>
を用いて
:<math>
\vec a = a \vec e _1 + b \vec e _2 + c\vec e _3
</math>
と表すことができる。
3次元ベクトルに対しても2次元ベクトルで定めた定義や性質がほぼそのまま成立する(一般のn次元でも)。
3次元ベクトルの加法は、それぞれのベクトル要素を独立に足し合わせることによって定義する。
:<math>
(x _1,y _1,z _1)+(x _2,y _2,z _2)
</math>
:<math>
=
(x _1+x _2,y _1+y _2,z _1+z _2)
</math>
また、それぞれのベクトルの要素が全て等しいベクトルを"ベクトルとして等しい(ベクトルの相等)"と表現する。
{{演習問題|
ベクトルの和
:<math>
(1,2,3)+(4,5,6)
</math>
を計算せよ。|:<math>
(1,2,3)+(4,5,6)
</math>
:<math>
=(1+4,2+5,3+6)
</math>
:<math>
=(5,7,9)
</math>
が得られる。}}
=====空間ベクトルの内積=====
ベクトル<math>\vec a</math>,<math>\vec b</math>間のベクトルの内積も平面の場合と同様に
:<math>
\vec a \cdot\vec b
= |\vec a||\vec b| \cos \theta
</math>
(<math>\theta</math>は、ベクトル<math>\vec a</math>,<math>\vec b</math>のなす角。)
分配法則や1次独立の性質もそのまま成り立つ。
ただし、3次元空間の全てのベクトルを張るには、3つの一次独立なベクトルを持って来る必要がある。
{{演習問題|
2つのベクトルの内積
:<math>
(1,2,3) \cdot
(4,5,6)
</math>
を計算せよ。|
2次元の場合と同じようにここでもそれぞれの要素は基本ベクトル
:<math>
\vec e _1\ ,\ \vec e _2\ ,\ \vec e _3
</math>
によって張られている。そのため以前と同じく要素ごとの計算が可能であり、
:<math>
(1,2,3) \cdot
(4,5,6)
</math>
:<math>
=1\times 4 + 2 \times 5 + 3 \times 6
</math>
:<math>
= 32
</math>
となる。
もうすこし細かく計算を行なうと、
:<math>
(1,2,3) \cdot
(4,5,6)
</math>
:<math>
=( \vec e _1
+2\vec e _2
+3\vec e _3)
\cdot
(4\vec e _1
+5\vec e _2
+6\vec e _3)
</math>
が得られる。それぞれのベクトルを
:<math>
(a+b+c)(x+y+z)
= (ax+ay+az + bx+by+bz+cx+cy+cz)
</math>
に従って展開し、
:<math>
\vec e _ i \cdot \vec e _j
</math>
(<math>i</math>,<math>j</math>は1,2,3のどれか。)
を代入することで上の式が計算できるはずである。
しかし、
<math>i</math>と<math>j</math>が等しくないときには
:<math>
\vec e _ i \cdot \vec e _j
</math>
:<math>
=0
</math>
が成り立つことから、上の展開した後の9個の項のうちで、6つは
:<math>
0
</math>
に等しい。
また、
<math>i</math>と<math>j</math>が等しいときには
:<math>
\vec e _ i \cdot \vec e _j
</math>
:<math>
=1
</math>
が成り立つことから、上の式
:<math>
=( \vec e _1
+2\vec e _2
+3\vec e _3)
\cdot
(4\vec e _1
+5\vec e _2
+6\vec e _3)
</math>
の展開は
:<math>
= 4 + 2 \times 5 + 3 \times 6
</math>
:<math>
= 32
</math>
となって確かに要素ごとの計算と一致する。}}
{{演習問題|
2次元空間のベクトルは2本の1次独立なベクトルがあれば、必ずそれらの線形結合によって計算できるはずである。
ここで、
:<math>
\vec a _1= (1,2)
</math>
と
:<math>
\vec a _2= (-5,3)
</math>
を用いて、
:<math>
\vec b = (10,7)
</math>
を、
:<math>
\vec b = c \vec a _1
+d \vec a _2
</math>
の形に書いてみよ。
(<math>c</math>,<math>d</math>は、何らかの定数。)|2次元のベクトルの係数を求める問題である。
<math>c</math>,<math>d</math>の文字をそのまま用いると、<math>c</math>,<math>d</math>の満たす条件は
:<math>
c(1,2) + d(-5,3)
= (10,7)
</math>
つまり
:<math>
(c-5d , 2c + 3d) =(10,7)
</math>
となる。これは
<math>c</math>,<math>d</math>に関する連立1次方程式で書き換えられる。
:<math>\begin{cases}
c -5d = 10\\
2c + 3d = 7
\end{cases}</math>
これを解くと、
:<math>
c = 5
</math>
:<math>
d = -1
</math>
が得られる。
よって、
上の式は
:<math>
5(1,2) -(-5,3)
= (10,7)
</math>
と書け、確かに2本の線形独立なベクトルによって他のベクトルが書き表されることが分かった。
*注意
このような計算は3次元ベクトルに対しても可能であるが、計算手法として行列を用いた3元1次連立方程式を扱う必要があり、数学C「ベクトル」の範囲外である。計算方法は[[高等学校数学C/数学的な表現の工夫#連立一次方程式|数学C「数学的な表現の工夫」]]を参照。}}
この表式を用いて、以前見た
:<math>
a x + by + cz = d
</math>
の図形的解釈を述べる。
この図形上の任意の点を<math>
(x,y,z)
</math>で表わす。
この点は原点Oに対する位置ベクトルを用いると<math>
(x,y,z)
</math>で与えられる。
便宜のために
このベクトルを<math>
\vec x
</math>と書くことにする。
一方、ベクトル<math>
\vec a = (a,b,c)
</math>を用いると、上の式はベクトルの内積を用いて<math>
\vec a \cdot \vec x = d
</math>で与えられる。
つまり、この式で表わされる図形はあるベクトル
<math>
\vec a
</math>
との内積を一定に保つ図形である。
この図形は、実際には
<math>
\vec a
</math>
に直交する平面で与えられる。
なぜならこのような平面上の点は、必ず平面上のある一点の位置ベクトルに加えて、
ベクトル
<math>
\vec a
</math>
に直交するベクトルを加えたもので書くことが出来る。
しかし、
ベクトル
<math>
\vec a
</math>
に直交するベクトルと
ベクトル
<math>
\vec a
</math>
の内積は必ず0であるので、
このような点の集合は
ベクトル
<math>
\vec a
</math>
と一定の内積を持つのである。
よって元の式
:<math>
a x + by + cz = d
</math>
は、
ベクトル<math>
\vec a =(a,b,c)
</math>に直交する平面に対応することが分かった。
次に<math>d</math>が、図形が表わす平面と、原点との距離に関係があることを示す。
特に、ベクトル<math>
\vec a
</math>に比例する位置ベクトルを持つ点<math>
\vec x
</math>を考える。このときこの点と原点との距離は、
平面
:<math>
a x + by + cz = d
</math>
と原点との距離に対応する。
なぜなら、位置ベクトル<math>
\vec x
</math>は、原点から平面
:<math>
a x + by + cz = d
</math>
に垂直に下ろした線に対応するからである。
このことから仮に<math>
\vec a
</math>方向の単位ベクトルを<math>
\vec n
</math>と書き、平面と原点との距離を<math>
m
</math>と書くと、<math>
\vec x = m \vec n
</math>が得られる。
この式を
:<math>
\vec a \cdot \vec x = d
</math>
に代入すると、
:<math>
\vec a \cdot m\vec n = d
</math>
:<math>
m|\vec a| = d
</math>
が得られる。よって、<math>
d
</math>は、
平面と原点の距離<math>
m
</math>とベクトル<math>
\vec a
</math>の大きさをかけたものである。
<!-- 上では割合一般的に3次元の平面を扱ったがこれは -->
<!-- 少し難しい内容であった。実際の指導要領ではもう少し -->
<!-- 簡単な内容を -->
{{演習問題|
特にベクトル
:<math>
\vec a = (0,0,1)
</math>
を取ると、どのような式が得られて、その式は
どのような図形に対応するか。|このとき
:<math>
\vec a \cdot \vec x = d
</math>
は、
:<math>
(0,0,1)\cdot (x,y,z) = d
</math>
:<math>
z =d
</math>
に対応する。
この式は<math>z</math>座標が<math>d</math>に対応し、それ以外の<math>x</math>,<math>y</math>座標を任意に動かした
平面に対応しているが、これは
<math>xy</math>平面に平行であり、
<math>xy</math>平面からの距離が<math>d</math>である平面である。
また、<math>xy</math>平面とベクトル
:<math>
\vec a = (0,0,1)
</math>
は直交しているので、そのことからもこの式は正しい。}}
:答
:: <math>xy</math>平面に平行であり、<math>xy</math>平面からの距離が<math>d</math>である平面。
== 発展:外積 ==
外積は高校数学範囲外で入試には出ないが、外積は数学や物理などに応用でき、便利なのでここで扱う。
三次元ベクトル <math>\vec a ,\, \vec b</math> に対し、外積 <math>\vec a \times \vec b</math> を次を満たすものとする。
# <math>\vec a \times \vec b</math> は <math>\vec a ,\, \vec b</math> それぞれと垂直<ref>数式で表すと <math>\vec a \times \vec b \perp \vec a </math> かつ <math>\vec a \times \vec b \perp \vec b </math></ref>
# フレミングの左手の法則の格好をする。このとき、中指を <math>\vec a</math> 、人差し指を <math>\vec b</math> 、としたとき、<math>\vec a \times \vec b</math> は親指の方向である。
# ベクトル <math>\vec a ,\, \vec b</math> のなす角を <math>\theta</math> とする。<math>|\vec a \times \vec b| = |\vec a ||\vec b|
\sin\theta</math><ref><math>|\vec a ||\vec b|
\sin\theta</math> はベクトル <math>\vec a ,\, \vec b</math> の作る平行四辺形の面積に等しい。</ref>
[[ファイル:Cross product parallelogram.svg|サムネイル|外積の方向を表した図。上の→記号がないが、これはベクトルである。]]
次に外積の成分表示を考えてみよう。この定義から成分表示を直接導くのは面倒なので、天下り的に成分表示を与えてから、それが外積の定義を満たすことを確認する。
<math>\vec a = \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \\ a_3 \end{pmatrix}</math> 、<math>\vec b = \begin{pmatrix} b_1 \\ b_2 \\ b_3 \end{pmatrix}</math> としたとき、<math>\vec a \times \vec b = \begin{pmatrix} a_2b_3 - a_3b_2 \\ a_3b_1 - a_1b_3 \\ a_1b_2 - a_2b_1 \end{pmatrix}</math> である。
まずは、<math>\vec a \times \vec b</math> は <math>\vec a ,\, \vec b</math> それぞれと垂直であることを確認する。これは、<math>(\vec a \times \vec b) \cdot \vec a = 0</math> と <math>(\vec a \times \vec b) \cdot \vec b = 0</math> であることを成分表示を代入すれば証明できる。
次に、 <math>|\vec a \times \vec b| = |\vec a ||\vec b|
\sin\theta</math> を証明する。<math>|\vec a \times \vec b|^2 = |\vec a |^2|\vec b|^2
\sin^2\theta = \vec | a |^2|\vec b|^2
(1-\cos^2\theta)</math> 。ここで、 <math>\cos^2 \theta = \frac{(\vec a \cdot \vec b)^2}{|\vec a|^2|\vec b|^2}</math> を代入し、<math>|\vec a \times \vec b|^2 = \vec |a |^2|\vec b|^2
-(\vec a \cdot \vec b)^2</math> を得る。この式に、成分表示を代入すれば、両辺が等しいことが確認できる。
最後に、フレミングの左手の法則で <math>\vec a \times \vec b</math> は親指の方向であることを確認する。
<math>\vec a = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0\end{pmatrix}</math>、 <math>\vec b = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}</math> のとき、<math>\vec a \times \vec b = \begin{pmatrix} 0\\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}</math> である。これより、二番目の性質も確認できた。
'''外積の応用'''
2つのベクトルに垂直なベクトルを求めたいときなどは、外積の成分表示から計算すれば、面倒な計算をしなくても求められる。
四面体 <math> \mathrm{OABC}</math> の体積は <math> \frac 1 6 |(\vec \mathrm{OA} \times \vec \mathrm{OB})\cdot \vec \mathrm{OC} | </math>
である。
実際、 <math> \frac 1 6 |(\vec \mathrm{OA} \times \vec \mathrm{OB})\cdot \vec \mathrm{OC} | = \frac 1 3 \left|\frac 1 2 \vec \mathrm{OA} \times \vec \mathrm{OB}\right||h|</math>である。ただし、 h はΔABCを底面としたときの四面体の高さである。
また、物理学に於いて[[高等学校物理/力学#剛体のつり合い|力学のモーメント]]、[[高校物理 電磁気学#ローレンツ力|電磁気学のローレンツ力]]は外積を使うとそれぞれ<math>\vec{N}=\vec{r}\times\vec{F}</math>、<math>\vec F = q(\vec v \times \vec B)</math> と簡潔に表せる。
外積は行列を用いて表記できる。具体的には[[高等学校数学C/数学的な表現の工夫#行列式|こちら]]を参照。
'''覚え方'''
図のように要素をかけ合わせる。
[[ファイル:Cross product mnemonic a b.svg|フレームなし]]
== コラムなど ==
{{コラム|ベクトルの理論の歴史|2=[[File:WilliamRowanHamilton.jpeg|thumb|ハミルトン]]
複素数とベクトルの理論はそれぞれ独立した理論として教えられているが、歴史的にはハミルトンによって複素数を拡張した四元数が発見され、四元数を元にギブスなどによってベクトルが発見された。
[[多元数/四元数|四元数]]は、
:a + bi + cj + dk (a,b,c,dは実数)
のように、実数と3つの虚数単位i,j,kをもちいて表される数である。
ここで、i,j,k は i^2=-1, j^2=-1, k^2=-1 を満たす数で、i,j,k は互いに異なる。
実数の単位1個に加えて、さらに3つの単位 i, j, k をもっているので、合計で4個の単位があるので四元数といわれるわけである。
さて、ハミルトンによる四元数の発見後、さらに研究が進むと、図形や物理学などの問題を解く際には 2乗して-1になる性質はほとんどの空間・立体(3次元の図形)の問題を解く応用の場合には不要であることが分かり、学校教育の場ではベクトルと複素数を別々に教えるようになったわけである。
そして、四元数の公式のうち、ベクトルでも類似の公式が成り立つ場合には、その四元数の公式がベクトル用に改良されてベクトルの公式として輸入されたので、結果的にハミルトンはベクトルの公式の発見者としても紹介されることになった。
また、四元数は現代では3DCGなどの分野で応用されている。}}
{{コラム|五心の位置ベクトル・オイラー線|
<math>\Delta ABC</math>の五心の位置ベクトルはそれぞれ以下のように表される。ただし、各頂点の位置ベクトルを<math>\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}</math>とし、面積を<math>S</math>とおく。
*内心
:<math>\vec{i} = \frac{(\sin A) \vec{a} + (\sin B) \vec{b} + (\sin C) \vec{c}}{\sin A + \sin B + \sin C}</math>
:<math>= \frac{a \vec{a} + b \vec{b} + c \vec{c}}{a+b+c}</math>
*外心
:<math>\vec{o} = \frac{(\sin 2A) \vec{a} + (\sin 2B) \vec{b} + (\sin 2C) \vec{c}}{\sin 2A + \sin 2B + \sin 2C}</math>
:<math>= \frac{a^2(b^2+c^2-a^2) \vec{a} + b^2(c^2+a^2-b^2) \vec{b} + c^2(a^2+b^2-c^2) \vec{c}}{a^2(b^2+c^2-a^2) + b^2(c^2+a^2-b^2) + c^2(a^2+b^2-c^2)}</math>
:<math>= \frac{a^2(b^2+c^2-a^2) \vec{a} + b^2(c^2+a^2-b^2) \vec{b} + c^2(a^2+b^2-c^2) \vec{c}}{16S^2}</math>
*重心
:<math>\vec{g} = \frac{\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}}{3}</math>
*垂心
:<math>\vec{h} = \frac{(\tan A) \vec{a} + (\tan B) \vec{b} + (\tan C) \vec{c}}{\tan A + \tan B + \tan C}</math>
:<math>= \frac{ \{a^4-(b^2-c^2)^2\} \vec{a} + \{b^4-(c^2-a^2)^2 \} \vec{b} + \{c^4-(a^2-b^2)^2\} \vec{c} }{a^4-(b^2-c^2)^2+b^4-(c^2-a^2)^2+c^4-(a^2-b^2)^2}</math>
:<math>= \frac{ \{a^4-(b^2-c^2)^2\} \vec{a} + \{b^4-(c^2-a^2)^2 \} \vec{b} + \{c^4-(a^2-b^2)^2\} \vec{c} }{16S^2}</math>
*傍心
:<math>\vec{j_A} = \frac{(-\sin A) \vec{a} + (\sin B) \vec{b} + (\sin C) \vec{c}}{-\sin A + \sin B + \sin C}</math>
:<math>= \frac{-a \vec{a} + b \vec{b} + c \vec{c}}{-a+b+c}</math>
:<math>\vec{j_B} = \frac{(\sin A) \vec{a} - (\sin B) \vec{b} + (\sin C) \vec{c}}{\sin A - \sin B + \sin C}</math>
:<math>= \frac{a \vec{a} - b \vec{b} + c \vec{c}}{a-b+c}</math>
:<math>\vec{j_C} = \frac{(\sin A) \vec{a} + (\sin B) \vec{b} - (\sin C) \vec{c}}{\sin A + \sin B - \sin C}</math>
:<math>= \frac{a \vec{a} + b \vec{b} - c \vec{c}}{a+b-c}</math>
これらの式を見ると、全て<math>\vec{p} = \frac{w_A \vec{a} + w_B \vec{b} + w_C \vec{c}}{w_A+w_B+w_C}</math>の形('''加重平均''')となっていることがわかる。
外心と垂心の分母が一致していることに注目すると、以下の定理を見つけられる。
:<math>\vec{g} = \frac{2\vec{o} + \vec{h}}{3}</math>
この式から、重心は外心と垂心を結んだ線分を1:2に内分することがわかる。すなわち、'''重心・外心・垂心は必ず一直線上に存在する'''ことが言える。この直線を'''オイラー線'''という。
}}
== 関連項目 ==
*[[初等数学公式集/解析幾何/コラム#外積とは]]
*[[線型代数学/ベクトル#外積]]
== 脚注 ==
<references/>
{{DEFAULTSORT:こうとうかつこうすうかくC へくとる}}
[[Category:高等学校数学C|へくとる]]
[[カテゴリ:ベクトル]]
qp5amevnq2fwgtph178hokuaejiwgk4
物理数学I ベクトル解析
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299060
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2026-05-03T10:53:11Z
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/* 直交座標系でないときの計算 */ 関連項目の追加です。>そう、どこかで見た覚えがないであろうか。です。
299060
wikitext
text/x-wiki
<small> [[物理数学I]] > ベクトル解析</small>
==ベクトル解析==
ここでは、ベクトル解析に就て解説を行なう。[[解析学基礎/ベクトル解析]]も参照。
ベクトル解析は、主に多変数関数の微積分と関連しているが、
特にそれらのうちには計算自体に明確な物理的意味を
持つものがいくつか見られる。歴史的にもこの分野は
数学と物理の間のフィードバックを通して発展して来た。
<!-- 現代では数学と物理の間は広がってしまっているが、 -->
そのため、計算においては物理的な意味を強調していきたい。
また、特にいくつかの定理は数学的に厳密な証明をすることが
難しい。その様なときには常識的に古典的な物理学の範囲で
起こる現象で適用できる程度に、一般的に
書くことにしたいと思う。
また、現代的にはこの分野は微分形式を用いて書かれることが多いが、
ここではまず最初に古典的な計算法を扱う。
これは、特に物理を専攻としない学習者に配慮するためである。
例えば、電気技術者や機械技術者もベクトル解析は依然として学ばねば
ならず、彼らに取っては微分形式の理論はそれほど有用とはいえないものと
思われる。
ベクトル解析の理論は特に電磁気学と関連が深いが、これらの結果は
流体力学や量子力学など、様々な分野で登場する物理の根幹を成す計算法であり、
学習者は十分これらの手法に習熟することが求められる。
なお、ベクトル自体の性質に就ては[[線型代数学/ベクトル]]を参照していただきたい。
===ベクトル関数の定義===
====ベクトル関数の定義====
例えば3次元ベクトルで
:<math>
\vec r=(x,y,z)
</math>
とするとき、ある変数tに就て
x,y,z が、
:<math>
(x,y,z)=(x(t),y(t),z(t))
</math>
で表わされるとき、
:<math>
\vec r
</math>
を、ベクトル関数と呼ぶ。
これは、tを時間と見做すときにはある3次元空間中を
物体が動いて行く軌跡と見なすことが出来る。
例えば、
:<math>
x= t, y=0,z=0
</math>
という軌跡を与えたとき、この値は
物体がxの方向に速度1で等速直線運動しているものとみなすことが
できる。
但し、この定義自体は3次元にとどまらず容易にn次元に拡張することが
出来る。
例えば、
:<math>
(x_1,x_2,\cdots ,x_n)=(x_1(t),x_2(t),\cdots ,x_n(t))
</math>
のようにn次元のベクトルを取ったときに、そのうちの各要素が
ある独立変数tだけに依存すると考えることが出来るとき
これは、n次元空間の中の物体の軌跡と考えることが出来る。
====ベクトルの微分====
ここでは、ベクトルの微分を定義する。
例えば、1次元においては、物体の速度は
:<math>
\dot x=\frac {x(t+dt) - x(t)}{dt}
</math>
で与えられた。この値はある時間における物体の
位置の変化率という直接的な物理的意味を持っている。
これらの自然な拡張として一般的な次元において、
:<math>
\dot r=\frac {\vec r(t+dt) - \vec r(t)}{dt}
</math>
によって、ベクトルの微分を定義する。
例えば、1次元空間に限ったときにはこの結果は上の式と一致することが分かる。
このことによって、例えば
:<math>
(x,y)=(x(t), y(t))
</math>
という2次元ベクトルを取ったとき、
物体の速度のx方向成分は
:<math>
\dot x=\frac {x(t+dt) - x(t)}{dt}
</math>
によって与えられ、物体の位置のx方向成分のみによることが示唆される。
同様に
物体の速度のy方向成分は
物体の位置のy方向成分のみによっている。
このことは一見当然のように思えるが、実際にはそうではなく
我々が用いている座標系によっている。
例えば、2次元の極座標を用いてみると、
:<math>
\vec x=x \vec e_x + y \vec e_y=r \vec e_r
</math>
と書けるが、
この式を正しく微分すると、
:<math>
\vec v=\dot r \vec e_r + r \dot \theta \vec e_\theta
</math>
が得られ、速度の<math>\theta</math>成分は、物体のr成分にも依存している。
このことは、直接的には<math>\vec e_r, \vec{e}_\theta</math>自身が時間依存性を持っていることを示す。
実際に、<math>\vec{e}_r=\cos\theta \vec{e}_x + \sin\theta\vec{e}_y, \vec{e}_\theta=-\sin\theta\vec{e}_x + \cos\theta \vec{e}_y</math>且つ<math>\theta</math>は時間の関数<math>\theta(t)</math>なので、この正規直交基底は時間依存である。
我々が通常用いる(x,y,z)という座標系は
通常直交座標系と呼ばれるが、(デカルト座標系と呼ばれることも多い。)
これらの座標軸の方向は時間的に変わることが無いので、
微分の性質が非常に簡単になっている。
しかし、実際にある物体の動きを記述するとき、直交座標系を用いるより、
その動きに特徴的な量をパラメーターとして用いた方が記述が簡明になることがある。例えば、太陽の周りを円運動する惑星の動きを記述するとき、極座標を用いることで最も簡便となる。
この様に運動の種類によって用いるべき座標系が変わって来るため、それぞれの間の緒量の変化則ち微積分の性質を調べることが重要になる。
====関数の勾配====
ここまでで一般的な微分の方法を見た。
ここでは、特に物理的に重要なベクトルの作り方を
見る。
3次元空間上に位置の関数<math>f(x, y, z)</math>
があるものとする。
このとき、
:<math>
\mathrm{grad} f=\begin{pmatrix} \frac{\partial{f}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{f}}{\partial{y}} \\ \frac{\partial{f}}{\partial{z}}\end{pmatrix}
</math>
を<math>f</math>の勾配と呼ぶ。
また、同様にしてn次元では
:<math>
\mathrm{grad} f(x_1, \cdots , x_n)=\begin{pmatrix} \frac{\partial{f}}{\partial{x_1}} \\ \vdots \\ \frac{\partial{f}}{\partial{x_n}} \end{pmatrix}
</math>
によって定義される。
ここで、勾配はこの式の意味によって付けられた名前である。
例えば、
:<math>y= z=0</math>
に限ってこの式を書いてみる。
このとき
:<math>\mathrm{grad} f=\begin{pmatrix} \frac{\partial{f}}{\partial{x}} \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math>
となるが、これはこの関数fのx方向の傾きに等しい。
つまり、この式は傾きを求める式の複数の方向を用いた場合への一般化と
なっている。
より一般的な例として2次元の場合の
例を考えてみる。ここでは
:<math>f(x,y)=x^2 + y^2</math>
とおく。
このときこの式の勾配は簡単に計算でき、
:<math>\mathrm{grad} f=\begin{pmatrix} 2x \\ 2y \end{pmatrix}</math>
となる。
例えば、この式を
:<math>x=a(= \mathrm{const}.), y=0</math>
に就て考えてみる。
このとき、勾配ベクトルは
:<math>\mathrm{grad} f=\begin{pmatrix} 2a \\ 0 \end{pmatrix}</math>
となるが、これの符号はxの符号に依存する。
つまり、この式はこの関数のx座標軸上で見たときに、
x=0で極小値となる擂鉢形のグラフとなっており、更に
原点から離れれば離れるほどグラフの傾きが増すことを示唆している。
実際この式を数値的にプロットすると、この主張が確かめられる。
*TODO
プロットを作製。
次に、この式を
:<math>x=0, y=b(=\mathrm{const}.)</math>
に就て考えてみる。
このときにも全く同じ主張が出来、y方向に見ても
このグラフは擂鉢状になっている。
また、この式を
:<math>x=y=\frac c {\sqrt 2}</math>
に就て考えてみる。このときには
:<math>\mathrm{grad} f=2 \begin{pmatrix} \frac c {\sqrt 2} \\ \frac c {\sqrt 2} \end{pmatrix}</math>
が得られ、この点では勾配はx軸から<math>\frac{\pi}{4}</math>の方向を向いていることが分かる。
一般に勾配ベクトルは関数fが最も大きな傾きで増加する方向を
向いており、その絶対値はその点でそちらへの微分を取った値に等しい。
また、ある点でのある方向への微分(方向微分)を求めたいときには、
求めたい方向の単位ベクトルを
:<math>\vec n</math>
として
:<math>\mathrm{grad} f \cdot \vec {n}</math>
で求まる。
*説明
勾配の計算では、全ての独立変数に対する微分を求めており、
これらの微分を組み合わせることであらゆる方向への微分を
作ることが出来ることが期待される。
微分の最も低いオーダーでは、それぞれの方向への微分は
それぞれの方向の単位ベクトルにそちらの方向への微分の大きさを
かけたものに等しいので、ある方向に対する微分を
計算するにはそれらを適切な方向への重みをつけて足し合わせることが
求められる。このとき、ある方向に対する単位ベクトルと
ある軸の方向に対する単位ベクトルは、2つの方向の重みを表わしていると
考えられるので、確かにこの値は、そちらの方向への微分となっている。
例えば、
:<math>x=a,y=0</math>
でのy方向の傾きは、
:<math>\mathrm{grad} f \cdot \vec {n}= \begin{pmatrix} 2a \\ 0 \end{pmatrix} \cdot \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}=0</math>
となるが、
これは、この関数の等高線が円形になっていることを考えると
確かにこの点ではy方向の傾きは0になっていなくてはいけない。
====ベクトルの発散====
次には逆にあるベクトルを取ったとき、
あるスカラー量を作りだす計算を導入する。
後に示される通り、この量はある点から流れ出す
粒子や場の束の和という物理的意味を持っており、
電磁気学や流体力学で頻繁に用いられる。
実際前者では磁束や電束に就ての計算に用いられ、
後者では流体中の湧出や吸い込みなどのまわりで
流体の性質を表わすベクトルがnon-zeroになることが
知られている。
あるベクトル関数
:<math>\vec a</math>
があるとき、
:<math>\mathrm{div} \vec a=\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}} +\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}} + \frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
を、<math>\vec a</math>の発散と呼ぶ。
また、この量もn次元で定義することが出来、そのときの定義は、
:<math>\mathrm{div} \vec a= \sum_{i} \frac{\partial{a_{i}}}{\partial{x_i}}</math>
で与えられる。
但し <math>a_i</math> は<math>\vec a</math> の第i成分である。
この式の物理的意味は上で述べた通りだが、そのことの導出は
ガウスの定理の導出によって与えられるため、ここでは扱わない。
====ベクトルの回転====
ここでもう1つ、物理的に重要な演算を導入する。
この量も電磁気学や流体力学で使われており、ある経路に沿って積分した値がその経路の中のある量の積分によって与えられるという定理である。
実際には電磁気学では古典的にある回路を突き抜ける磁束の時間変化が、その回路内に電流を引き起こすことがレンツの法則として知られている。この法則は、このようなベクトルの演算によって上手く記述される現象の例である。
流体力学では、この量は流体中に巻き起こる渦に対応している。
つまり、渦が流れるルートに沿って、流体の速度を積分していけば0でない値が得られることが期待される。一方、そうでない場合この値は全ての寄与が打ち消し合い、0になると思われる。つまり、この量を用いることで、流体中の渦を記述する方法が得られるわけである。
但し、実際には流体の運動を考えるときには渦が一切発生しないとした方が計算が簡単になることも多い。このような流れは渦無しの流れと呼ばれ、その性質はよく知られている。
ここからはベクトルの回転の定義を述べる。
あるベクトル関数
:<math>\vec a</math>
があるとき、
:<math>\mathrm{rot} \vec a=
\begin{pmatrix}\frac{\partial{a_z}}{\partial{y}} -\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}}\\ \frac{\partial{a_x}}{\partial{z}} -\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}}
\\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}} -\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{pmatrix} = \begin{vmatrix} \vec e_x & \vec e_y & \vec e_z \\ \frac{\partial}{\partial{x}} & \frac{\partial}{\partial{y}}& \frac{\partial}{\partial{y}} \\ a_1 & a_2 & a_3 \end{vmatrix}</math>
を
:<math>\vec a</math>
の回転と呼ぶ。
=== 記法 ===
場の量 <math>f(t, \boldsymbol r)</math> は時間 <math>t</math> と位置 <math>\boldsymbol r</math> に関する量だが、混乱の虞れがないときは変数を省略して <math>f</math> のように書く。ベクトルの量は <math>\boldsymbol E, \boldsymbol B</math> のように太字で書く。また、ベクトル量の大きさを同じ文字で <math>E,B</math> のように書く。例えば、<math>E^2=|\boldsymbol E|^2</math> である。
ベクトル量による微分は、ベクトル量の各々の成分による偏微分で作られるベクトルのことである。
例えば、 <math>\frac{\partial A}{\partial \boldsymbol r}</math> は(<math>\boldsymbol{r}</math>の各方向単位ベクトルが直交基底であるとき)勾配に等しい。
また、
<math>\frac{\partial A}{\partial \boldsymbol v}=\begin{pmatrix} \frac{\partial A}{\partial v_x} \\ \frac{\partial A}{\partial v_y} \\ \frac{\partial A}{\partial v_z} \end{pmatrix}</math>
この記法は[[解析力学]]で必要となるが、そのとき<math>\boldsymbol r, \boldsymbol v</math> は独立であるとして扱われる。
場の量 <math>A(t,\boldsymbol r)</math> に就て、ある粒子の軌跡 <math>\boldsymbol r_a</math> に沿った <math>A</math> の変化
:<math>\frac{dA(t,\boldsymbol r_a(t))}{dt}</math>
は、
:<math>\frac{dA(t,\boldsymbol r_a(t))}{dt}=\frac{\partial A} {\partial t} + \frac{d\boldsymbol r_a}{dt} \cdot \frac{\partial A(t,\boldsymbol r)}{\partial \boldsymbol r}</math>
である。物理では、態々 <math>\boldsymbol r_a</math>と記号を新しく導入することをせずに
:<math>\frac{dA}{dt}=\frac{\partial A} {\partial t} + \frac{d \boldsymbol r}{dt} \cdot \frac{\partial A}{\partial \boldsymbol r}</math>
と書く。右辺の第一項は場の時間変化、第二項は粒子の移動による場の変化に対応している。<math>\frac{dA}{dt}</math> を完全導関数、<math>\frac{\partial A}{\partial t}, \frac{\partial A}{\partial \boldsymbol r}</math> を偏導関数といい区別する。なお、完全導関数は両辺に<math>dt</math>を掛ければ完全微分の表記に一致する。
また、例えば、関数 <math>U(x,y,z)=\frac{\alpha}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}</math> は極座標では、<math>U'(r,\theta,\varphi)=\frac{\alpha}{r}</math> である。<math>U,U'</math> は数学的に異なる関数であるが、物理では座標系による関数の違いを書き分けることはほとんどない。つまり、<math>U'</math>もそのまま <math>U</math> と書くことになる。
== ベクトル解析の公式 ==
ここでは、ベクトル解析の公式を証明する。これらの公式はベクトルを成分表示して単純に計算することでも証明できるが、この方法ではあまりにも煩雑になってしまうためレヴィ・チヴィタ記号を導入して証明する。
=== クロネッカーのデルタ ===
クロネッカーのデルタ <math>\delta_{ij}</math>を
{{式番号|<math>\delta_{ij}=\begin{cases} 1 & i=j\\ 0 & i \ne j\end{cases}</math>|1}}
で定義する。
=== レヴィ・チヴィタ記号 ===
レヴィ・チヴィタ記号 <math>\varepsilon_{ijk}</math> を
{{式番号|<math>\varepsilon_{ijk}=\begin{cases}
1 & \, (i, j, k)=(1, 2, 3), (2, 3, 1), (3, 1, 2) \\
-1 & \, (i, j, k)=(1, 3, 2), (3, 2, 1), (2, 1, 3) \\
0 & \mathrm{otherwise}
\end{cases}</math>|2}}
と定義する。則ち、置換 <math>\sigma=\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
i & j & k \end{pmatrix}</math> (但し <math>i,j,k</math> は互いに異なる)が偶置換のとき、<math>\varepsilon_{ijk}=1</math>、奇置換のとき<math>\varepsilon_{ijk}=-1</math> である。また、レヴィ・チヴィタ記号 <math>\varepsilon_{ijk}</math> は <math>\varepsilon_{123}=1</math> であり、2つの添字を入れ替えると -1 倍される(反対称)もの (e.g. <math>\varepsilon_{213}=-\varepsilon_{123}=-1 ,\,\varepsilon_{231}=-\varepsilon_{213}=1 </math>)と理解できる。添字に同じ数字があるときはレヴィ・チヴィタ記号は 0 である(e.g. <math>\varepsilon_{111}=0,\,\varepsilon_{322}=0</math>)。
基本ベクトル <math>\boldsymbol e_i</math> を <math>\boldsymbol e_i=\begin{pmatrix} \delta_{1i} \\ \delta_{2i} \\ \delta_{3i} \end{pmatrix}</math> とする。則ち、<math>\boldsymbol e_1=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix},\boldsymbol e_2=\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix},\boldsymbol e_3=\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}</math> である。
空間偏微分作用素 <math>\nabla =
\begin{pmatrix}
\frac{\partial}{\partial x} \\
\frac{\partial}{\partial y} \\
\frac{\partial}{\partial z}
\end{pmatrix}</math> をナブラという。これは記号的な表記である。ナブラを通常のベクトル量と同じように扱うと、勾配・発散・回転は簡単に
:<math>\mathrm{grad } f=\nabla f</math>
:<math>\mathrm{div} \vec a=\nabla \cdot \vec a</math>
:<math>\mathrm{rot} \vec a=\nabla \times \vec a</math>
と書くことが出来る。
<!-- デルタ(U+394)ではなく増分記号(U+2206)である。 --><math> \text{∆} := \nabla \cdot \nabla=\frac{\partial^2}{\partial x^2} + \frac{\partial^2}{\partial y^2} + \frac{\partial^2}{\partial z^2}
</math> をラプラシアンという。スカラー関数 <math> f
</math> に就て <math> \text{∆} f =\frac{\partial^2f}{\partial x^2} + \frac{\partial^2f}{\partial y^2} + \frac{\partial^2f}{\partial z^2}
</math> であり、ベクトル関数 <math> \boldsymbol A
</math> に就て <math> \text{∆} \boldsymbol A=\begin{pmatrix}
\frac{\partial^2A_x}{\partial x^2} + \frac{\partial^2A_x}{\partial y^2} + \frac{\partial^2A_x}{\partial z^2} \\
\frac{\partial^2A_y}{\partial x^2} + \frac{\partial^2A_y}{\partial y^2} + \frac{\partial^2A_y}{\partial z^2} \\
\frac{\partial^2A_z}{\partial x^2} + \frac{\partial^2A_z}{\partial y^2} + \frac{\partial^2A_z}{\partial z^2}
\end{pmatrix}
</math> である。
以下では、簡単のためにベクトル <math>\boldsymbol A</math>の <math>x</math> 成分 <math>A_x</math> を <math>A_1</math>、 <math>y</math> 成分 <math>A_y</math> を <math>A_2</math>、 <math>z</math> 成分 <math>A_z</math> を <math>A_3</math> と書く。偏微分に就ても <math>\frac{\partial}{\partial x}=\partial_x=\partial_1</math> などとする。ベクトル <math>\boldsymbol A</math> の 第i成分 <math>A_i</math> を <math>[\boldsymbol A]_i</math> と書く。また、アインシュタインの縮約記法を採用する。これは同じ項の中に同じ添字が2つ存在したらその添字に就ての総和を取るというものである。例えば、
<math>A_iB_i=\sum_{i=1}^3 A_iB_i</math>
である。
ベクトルの外積 <math>\boldsymbol A \times \boldsymbol B</math> の第i成分 <math>[\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_i</math> は
<math>[\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_i=\varepsilon_{ijk}A_jB_k</math>
と書ける。
実際に、展開して確認すると、
<math>\begin{align}\varepsilon_{1jk}A_jB_k
&= \varepsilon_{123}A_2B_3 + \varepsilon_{132}A_3B_2 \\
&= A_2B_3 - A_3B_2 \\
&= [\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_1
\end{align}</math>
<math>\begin{align}\varepsilon_{2jk}A_jB_k
&= \varepsilon_{213}A_1B_3 + \varepsilon_{231}A_3B_1 \\
&= A_3B_1 - A_1B_3 \\
&= [\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_2
\end{align}</math>
<math>\begin{align}\varepsilon_{3jk}A_jB_k
&= \varepsilon_{312}A_1B_2 + \varepsilon_{321}A_2B_1 \\
&= A_1B_2 - A_2B_1 \\
&= [\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_3
\end{align}</math>
となる。上の式において、 <math>\varepsilon_{1jk}A_jB_k</math> を展開すると9つの項が出てくるが、その内の7つの <math>\varepsilon_{1jk}</math> が0となるため、2つの項だけが残る。則ち、<math>j=2,j=3</math> に対応する項(対応する <math>k</math> は <math>\{1,2,3\}</math> のうち1でも <math>j</math> でもないもの)、 <math>\varepsilon_{123},\varepsilon_{132}</math> の項のみが残る。<math>\varepsilon_{2jk},\varepsilon_{3jk}</math> に就ても同様である。
'''定理'''
<math>\varepsilon_{ijk}=|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k|=\begin{vmatrix}
\delta_{1i} & \delta_{1j}& \delta_{1k}\\
\delta_{2i} & \delta_{2j}& \delta_{2k}\\
\delta_{3i} & \delta_{3j}& \delta_{3k}
\end{vmatrix} </math> が成り立つ。
'''証明'''
<math>|\boldsymbol e_1 \, \boldsymbol e_2 \, \boldsymbol e_3|=\begin{vmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{vmatrix}=1=\varepsilon_{123}</math> である。
これと、行列式の性質より、<math>|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k| </math> は反対称であることから、<math>\varepsilon_{ijk}=|\boldsymbol e_i \, \boldsymbol e_j\, \boldsymbol e_k| </math> を得る。
基本ベクトルの定義 <math>\boldsymbol e_i=\begin{pmatrix} \delta_{1i} \\ \delta_{2i} \\ \delta_{3i} \end{pmatrix}</math> を代入して、<math>|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k|=\begin{vmatrix}
\delta_{1i} & \delta_{1j}& \delta_{1k}\\
\delta_{2i} & \delta_{2j}& \delta_{2k}\\
\delta_{3i} & \delta_{3j}& \delta_{3k}
\end{vmatrix} </math> を得る。
'''定理'''
<math>\varepsilon_{ijk}\varepsilon_{lmn}=\begin{vmatrix}
\delta_{il} & \delta_{im}& \delta_{in}\\
\delta_{jl} & \delta_{jm}& \delta_{jn}\\
\delta_{kl} & \delta_{km}& \delta_{kn}
\end{vmatrix}
= \delta_{il}\left( \delta_{jm}\delta_{kn} - \delta_{jn}\delta_{km} \right)
+ \delta_{im}\left( \delta_{jn}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{kn} \right)
+ \delta_{in}\left( \delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl} \right) </math> である。
'''証明'''
<math>\varepsilon_{ijk}=|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k|,\, \varepsilon_{lmn}=|\boldsymbol e_l \,\boldsymbol e_m \, \boldsymbol e_n| </math> より
<math>\varepsilon_{ijk}\varepsilon_{lmn}=|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k||\boldsymbol e_l \,\boldsymbol e_m \, \boldsymbol e_n|=\begin{vmatrix}\boldsymbol e_i^T \\ \boldsymbol e_j^T \\ \boldsymbol e_k^T \end{vmatrix}|\boldsymbol e_l \, \boldsymbol e_m \, \boldsymbol e_n|=\begin{vmatrix}
\boldsymbol e_i^T\boldsymbol e_l & \boldsymbol e_i^T\boldsymbol e_m& \boldsymbol e_i^T\boldsymbol e_n\\
\boldsymbol e_j^T\boldsymbol e_l & \boldsymbol e_j^T\boldsymbol e_m& \boldsymbol e_j^T\boldsymbol e_n\\
\boldsymbol e_k^T\boldsymbol e_l & \boldsymbol e_k^T\boldsymbol e_m& \boldsymbol e_k^T\boldsymbol e_n
\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}
\delta_{il} & \delta_{im}& \delta_{in}\\
\delta_{jl} & \delta_{jm}& \delta_{jn}\\
\delta_{kl} & \delta_{km}& \delta_{kn}
\end{vmatrix}. </math>
また、 余因子展開をして、 <math>\begin{vmatrix}
\delta_{il} & \delta_{im}& \delta_{in}\\
\delta_{jl} & \delta_{jm}& \delta_{jn}\\
\delta_{kl} & \delta_{km}& \delta_{kn}
\end{vmatrix}
= \delta_{il}\left( \delta_{jm}\delta_{kn} - \delta_{jn}\delta_{km} \right)
+ \delta_{im}\left( \delta_{jn}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{kn} \right)
+ \delta_{in}\left( \delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl} \right) </math> を得る。
'''定理'''
# <math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ilm}=\delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl} </math>
# <math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijl}=2\delta_{kl} </math>
# <math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijk}=6 </math>
が成り立つ。
'''証明'''
次の式ではアインシュタインの規約を使わない。つまり <math>i </math> に就ての和を取らないとする。
<math>\varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ilm}=\begin{vmatrix}
1 & \delta_{il}& \delta_{im}\\
\delta_{ji} & \delta_{jl}& \delta_{jm}\\
\delta_{ki} & \delta_{kl}& \delta_{km}
\end{vmatrix}=(\delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl}) - \delta_{il}(\delta_{ji}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{ki}) + \delta_{im}(\delta_{ji}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{ki}) </math>
となる。この式の <math>i=1,2,3 </math> に就て和を取り、アインシュタインの規約を復活させると
<math>\begin{align} \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ilm} &= 3(\delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl}) - (\delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl}) + (\delta_{jm}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{km}) \\
&= \delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl} \end{align} </math>
を得る。また、
<math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijl}= \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijl}= (\delta_{jj}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{kj})=3\delta_{kl} - \delta_{kl}=2\delta_{kl} </math>
<math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijk}= \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijk}= 2\delta_{kk}=6 </math>
となる。
<math>\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{kml}</math> の組み合わせは、ベクトルとの積の形でよく出てくるからこれを計算する。ここで <math>T_{ijlm}</math> は添字 <math>l,m</math> のベクトルを含み、 <math>i,j</math> を任意で含むベクトルの積(一般にはテンソル)である。要するに <math>T_{ijlm}=A_iB_jC_lD_m,\, B_jC_lD_m,\, C_lD_m</math> の形である。
<math>\begin{align}
\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{klm} T_{ijlm} &= \varepsilon_{kij} \varepsilon_{klm}T_{ijlm}\\
&= (\delta_{il}\delta_{jm} - \delta_{im}\delta_{jm})T_{ijlm} \\
&= T_{ijij} - T_{ijji}
\end{align}</math>となる。
つまり、<math>\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{kml}</math> が出てきたら、それを含む項は
(<math>l,m \to i,j</math> と置き換えた式) − (<math>l,m \to j,i</math> と置き換えた式)
に等しい。
=== 三重積と四重積 ===
'''定理'''
次の式が成り立つ。
# スカラー三重積 <math>\boldsymbol A \cdot (\boldsymbol B \times \boldsymbol C)=\boldsymbol B \cdot (\boldsymbol C \times \boldsymbol A)=\boldsymbol C \cdot (\boldsymbol A \times \boldsymbol B)</math>
# ベクトル三重積 <math>\boldsymbol A \times (\boldsymbol B \times \boldsymbol C)=(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol C)\boldsymbol B - (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)\boldsymbol C</math>
# スカラー四重積 <math>(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \cdot (\boldsymbol C \times \boldsymbol D)=(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol C) (\boldsymbol B \cdot \boldsymbol D) - (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol D) (\boldsymbol B \cdot \boldsymbol C)</math>
# ベクトル四重積 <math>(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \times (\boldsymbol C \times \boldsymbol D)
= [(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \cdot \boldsymbol D] \boldsymbol C - [(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \cdot \boldsymbol C] \boldsymbol D </math>
# ヤコビ恒等式 <math>\boldsymbol{A} \times ( \boldsymbol{B} \times \boldsymbol{C} ) + \boldsymbol{B} \times ( \boldsymbol{C} \times \boldsymbol{A} ) + \boldsymbol{C} \times ( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} )=0</math>
'''証明'''
*スカラー三重積の証明
<math>\begin{align}\boldsymbol A \cdot (\boldsymbol B \times \boldsymbol C) &= A_i[\boldsymbol B \times \boldsymbol C]_i \\
&= \varepsilon_{ijk}A_iB_jC_k. \\
\boldsymbol B \cdot (\boldsymbol C \times \boldsymbol A) &= B_j[\boldsymbol C \times \boldsymbol A]_j\\
&= B_j\varepsilon_{jki}C_kA_i \\
&= \varepsilon_{ijk}A_iB_jC_k.\\
\boldsymbol C \cdot (\boldsymbol A \times \boldsymbol B) &= C_k[\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_k \\
&= C_k\varepsilon_{kij}A_iB_j \\
&= \varepsilon_{ijk}A_iB_jC_k.
\end{align}</math>
*ベクトル三重積の証明
<math>\begin{align}
{[}\boldsymbol A \times (\boldsymbol B \times \boldsymbol C)]_i &= \varepsilon_{ijk}A_j[\boldsymbol B \times \boldsymbol C]_k \\
&= \varepsilon_{ijk}A_j\varepsilon_{klm}B_lC_m \\
&= A_jB_iC_j - A_jB_jC_i\\
&= (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol C)B_i - (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)C_i
\end{align}</math>
途中で <math>\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{klm} T_{ijlm}=T_{ijij} - T_{ijji}</math> の公式を <math>T_{jlm}=A_jB_lC_m</math> に対して使った。
*スカラー四重積の証明
スカラー三重積及びベクトル三重積を使うと
<math>(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \cdot (\boldsymbol C \times \boldsymbol D)
= \boldsymbol C \cdot [\boldsymbol D \times (\boldsymbol A \times \boldsymbol B)]=\boldsymbol C \cdot [(\boldsymbol D \cdot \boldsymbol B ) \boldsymbol A - (\boldsymbol D \cdot \boldsymbol A) \boldsymbol B]
= (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol C)\boldsymbol B - (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)\boldsymbol C.</math>
*ベクトル四重積の証明
ベクトル三重積よりほとんど自明である。
*ヤコビ恒等式の証明
ベクトル三重積の公式を代入して計算するだけである。
=== 微分公式 ===
上の表式を用いると、複雑な微分の計算を簡便に行なうことが出来る。
'''定理'''
<math>\nabla \times (\nabla f)=0</math>
<math>\nabla \cdot (\nabla \times \boldsymbol A)=0 </math>
が成り立つ。
'''証明'''
<math>\begin{align}
{[\nabla \times (\nabla f)]}_i &= \varepsilon_{ijk}\partial_j[\nabla f]_k \\
&= \varepsilon_{ijk}\partial_j\partial_kf
\end{align} </math>
ここで、<math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jf </math> に就て、<math>i>j </math> の項は、 <math>\varepsilon_{jik}\partial_j \partial_if=-\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jf </math>と打ち消し合う(<math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jf + \varepsilon_{jik}\partial_j \partial_if=0 </math>)。 <math>i=j </math> の項は <math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jf=\varepsilon_{iik}\partial_i \partial_if=0 </math> となるので、結局最後の式は 0 である。
則ち、<math>\nabla \times (\nabla f)=0</math> を得る。
<math>\begin{align}\nabla \cdot (\nabla \times \boldsymbol A) &= \partial_i[\nabla \times \boldsymbol A]_i \\
&= \partial_i \varepsilon_{ijk}\partial_jA_k \\
&= \varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k \\
\end{align} </math>
ここで、<math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k </math> に就て、<math>i>j </math> の項は、 <math>\varepsilon_{jik}\partial_j \partial_iA_k=-\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k </math>と打ち消し合う(<math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k + \varepsilon_{jik}\partial_j \partial_iA_k=0 </math>)。 <math>i=j </math> の項は <math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k=\varepsilon_{iik}\partial_i \partial_iA_k=0 </math> となるので、結局最後の式は 0 である。
則ち、<math>\nabla \cdot (\nabla \times \boldsymbol A)=0 </math> を得る。
'''定理'''
<math>
\nabla \cdot (\boldsymbol A \times \boldsymbol B ) =
(\nabla \times \boldsymbol A) \cdot \boldsymbol B - \boldsymbol A \cdot (\nabla \times \boldsymbol B)
</math>
<math>\nabla \times ( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} )=( \boldsymbol{B} \cdot \nabla ) \boldsymbol{A} - ( \boldsymbol{A} \cdot \nabla ) \boldsymbol{B} + \boldsymbol{A} ( \nabla \cdot \boldsymbol{B} ) - \boldsymbol{B} ( \nabla \cdot \boldsymbol{A} ) </math>
<math>\nabla(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)=\boldsymbol A \times (\nabla \times B) + \boldsymbol B \times (\nabla \times \boldsymbol A) + (\boldsymbol A \cdot \nabla)\boldsymbol B + (\boldsymbol B \cdot \nabla)\boldsymbol A </math>
が成り立つ。
'''証明'''
<math>
\begin{align}
\nabla \cdot (\boldsymbol A \times \boldsymbol B ) &= \partial_i (\varepsilon_{ijk} A_j B_k) \\
&= \varepsilon_{ijk}(\partial _i A_j) B_k + \varepsilon_{ijk} A_j (\partial _i B_k)\\
&= (\nabla \times \boldsymbol A)\cdot \boldsymbol B - \boldsymbol A \cdot (\nabla \times \boldsymbol B) .
\end{align}
</math>
<math>\begin{align}
{[\nabla \times ( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} )}]_i &= \varepsilon_{ijk}\partial_j[ \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B}]_k \\
&= \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{klm}\partial_j(A_lB_m) \\
&= \partial_j(A_iB_j) - \partial_j(A_jB_i) \\
&= B_j\partial_jA_i + A_i\partial_jB_j - B_i\partial_jA_j - A_j\partial_jB_i \\
&= (\boldsymbol B \cdot \nabla)A_i + A_i(\nabla \cdot \boldsymbol B) - (\boldsymbol A \cdot \nabla)B_i - B_i(\nabla \cdot \boldsymbol A)
\end{align} </math><ref name=":0"><math>\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{klm} T_{ijlm}=T_{ijij} - T_{ijji}</math> の公式を使った。</ref>
より、<math>\nabla \times ( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} )=( \boldsymbol{B} \cdot \nabla ) \boldsymbol{A} - ( \boldsymbol{A} \cdot \nabla ) \boldsymbol{B} + \boldsymbol{A} ( \nabla \cdot \boldsymbol{B} ) - \boldsymbol{B} ( \nabla \cdot \boldsymbol{A} ) </math> が成り立つ。
<math>\begin{align}{[\nabla(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)]}_i &= \partial_i(A_jB_j)\\
&= B_j\partial_iA_j + A_j\partial_iB_j.\\
\end{align} </math>
ここで、<math>[\boldsymbol A \times(\nabla \times \boldsymbol B)]_i= A_j \partial_iB_j - (\boldsymbol A \cdot \nabla) \boldsymbol B_i </math> が成り立つので<ref>この式の導出に困ったらベクトル三重積の導出を参考すること。但し、微分の扱いに注意すること。ベクトル三重積の導出の六行目までは、Bを∇に読み替えても成立するが、七行目の式変形は成立しない。なぜなら、偏微分とベクトルの成分を入れ替えて <math>\partial_i C_j=C_j \partial_i</math> とすることは当然不可能だからである。</ref>、これを第二項に代入する。第一項に就ても同様の式が成り立つため、これを代入すると結局、 <math>\nabla(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)=\boldsymbol A \times (\nabla \times B) + \boldsymbol B \times (\nabla \times \boldsymbol A) + (\boldsymbol A \cdot \nabla)\boldsymbol B + (\boldsymbol B \cdot \nabla)\boldsymbol A </math> が得られる。
'''定理'''
<math>
\nabla \cdot(f\boldsymbol A )= \nabla f \cdot \boldsymbol A + f \nabla \cdot \boldsymbol A
</math>
<math>\nabla \times(f\boldsymbol A)=\nabla f \times \boldsymbol A + f\nabla \times \boldsymbol A </math>
が成り立つ。
'''証明'''
<math>
\begin{align}
\nabla \cdot (f \boldsymbol A) &= \partial_i (fA_i)\\ &= (\partial_i f ) A_i + f (\partial_i A_i)\\ &= \nabla f \cdot \boldsymbol A + f\nabla \cdot \boldsymbol A
\end{align}
</math>
<math>
\begin{align}
{[\nabla \times f \boldsymbol A]}_i &= \varepsilon_{ijk}\partial_j(fA_k)\\
&= \varepsilon_{ijk}\partial_jf \,A_k + \varepsilon_{ijk}f\partial_j \,A_k \\
&= {[\nabla f \times \boldsymbol A]}_i + {[f\nabla \times \boldsymbol A]}_i
\end{align}
</math>
'''定理'''
<math>\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A} )=\nabla (\nabla \cdot \boldsymbol{A} ) - \text{∆} \boldsymbol{A} </math> が成り立つ。
'''証明'''
<math>\begin{align} {[}\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A}){]}_i &= \varepsilon_{ijk}\partial_j[\nabla \times \boldsymbol A]_k \\
&= \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{klm}\partial_j\partial_l{ A}_m \\
&= \partial_i\partial_jA_j - \partial_j\partial_jA_i
\end{align} </math><ref name=":0" />
それぞれの成分に就て展開すると
<math> {[}\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A}){]}_1=\partial_1(\partial_1A_1+\partial_2A_2+\partial_3A_3) - (\partial_1^2+\partial_2^2+\partial_3^2)A_1
</math>
<math> {[}\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A}){]}_2=\partial_2(\partial_1A_1+\partial_2A_2+\partial_3A_3) - (\partial_1^2+\partial_2^2+\partial_3^2)A_2
</math>
<math> {[}\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A}){]}_3=\partial_3(\partial_1A_1+\partial_2A_2+\partial_3A_3) - (\partial_1^2+\partial_2^2+\partial_3^2)A_3
</math>
である。これは <math>\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A} )=\nabla (\nabla \cdot \boldsymbol{A} ) - \text{∆} \boldsymbol{A} </math> であることを意味する。
これらの計算は、電磁気学等で頻繁に用いられるので、よく練習しておかねばならない。
'''定理'''
位置ベクトル <math>
\boldsymbol r
</math> に就て <math>
r=|\boldsymbol r| =\sqrt{x^2+y^2 + z^2}
</math> とすると、<math>
\nabla r^n=n r^{n-2}{\boldsymbol r}
</math>である。
'''証明'''
<math>
\frac{\partial}{\partial x}r^n=nr^{n-1}\frac{\partial}{\partial x}\sqrt{x^2 + y^2 + z^2}=nr^{n-1} \frac x r=nr^{n-2}x
</math>
<math>
y,z
</math> に就ても同様である。
則ち、<math>
\nabla r^n=\begin{pmatrix} nr^{n-2}x \\nr^{n-2}y \\nr^{n-2}z\end{pmatrix}=nr^{n-2}\boldsymbol r.
</math>
=== 極座標系 ===
ここでは、極座標での勾配、発散、ラプラシアンを求める。
極座標では、位置ベクトルは <math>\boldsymbol r = \begin{pmatrix} x\\ y\\ z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} r\sin\theta\cos\varphi\\ r\sin\theta\sin\varphi\\ r\cos\theta \end{pmatrix}
</math> となる。正規直交基底は <math>\boldsymbol e_r := \frac{\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial r}}{\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial r}\right|} = \begin{pmatrix}\sin\theta\cos\varphi\\ \sin\theta\sin\varphi\\ \cos\theta\end{pmatrix}
</math>,<math>\boldsymbol e_\theta
:= \frac{\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \theta}}{\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \theta}\right|}
= \frac 1 r \begin{pmatrix}r\cos\theta\cos\varphi\\ r\cos\theta\sin\varphi\\ -r\sin\theta\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}\cos\theta\cos\varphi\\ \cos\theta\sin\varphi\\ -\sin\theta\end{pmatrix}
</math>,<math>\boldsymbol e_\varphi
:= \frac{\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \varphi}}{\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \varphi}\right|}
= \frac{1}{r\sin\theta}\begin{pmatrix}-r\sin\theta\sin\varphi\\ r\sin\theta\cos\varphi\\ 0 \end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}-\sin\varphi\\ \cos\varphi\\ 0 \end{pmatrix}
</math>である。
微小変位ベクトル <math>d\boldsymbol r = dx\boldsymbol e_x + dy\boldsymbol e_y + dz\boldsymbol e_z
</math> は極座標では、
<math>\begin{align}d\boldsymbol r &= \frac{\partial \boldsymbol r}{\partial r}dr + \frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \theta}d\theta + \frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \varphi}d\varphi\\
&= \left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial r}\right|\boldsymbol e_r dr +\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \theta}\right|\boldsymbol e_\theta d\theta + \left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \varphi}\right|\boldsymbol e_\varphi d\varphi\\
&= \boldsymbol e_r dr + r\boldsymbol e_\theta d\theta + r\sin\theta\boldsymbol e_\varphi d\varphi
\end{align}
</math>
と書ける。
関数 <math>f
</math> の全微分 <math>df
</math> は <math>df = \frac{df}{dx}dx + \frac{df}{dy}dy + \frac{df}{dz}dz = \nabla f \cdot d\boldsymbol r
</math> となる。
極座標での発散を <math>\nabla f = \nabla_r f \, \boldsymbol e_r + \nabla_\theta f \, \boldsymbol e_\theta + \nabla_\varphi f \, \boldsymbol e_\varphi
</math> とすると、<math>\begin{align}df &= \nabla f \cdot d\boldsymbol r \\
&= (\nabla_r f \, \boldsymbol e_r + \nabla_\theta f \, \boldsymbol e_\theta + \nabla_\varphi f \, \boldsymbol e_\varphi)\cdot (\boldsymbol e_r dr + r\boldsymbol e_\theta d\theta + r\sin\theta\boldsymbol e_\varphi d\varphi)\\
&=\nabla_r f\, dr + r\nabla_\theta f \, d\theta + r\sin\theta\nabla_\varphi f \, d\varphi
\end{align}
</math>
である。これと極座標での全微分 <math>df = \frac{\partial f}{\partial r}dr + \frac{\partial f}{\partial \theta}d\theta + \frac{\partial f}{\partial \varphi}d\varphi
</math> と比較すると、
<math>\nabla_r f = \frac{\partial f}{\partial r},\nabla_\theta f = \frac{1}{r}\frac{\partial f}{\partial \theta},\nabla_\varphi f = \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial f}{\partial \varphi}{}
</math> を得る。
すなわち、極座標での発散は <math>\nabla f =\frac{\partial f}{\partial r} + \frac{1}{r}\frac{\partial f}{\partial \theta} + \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial f}{\partial \varphi}{}
</math> である。
基底ベクトルの微分は、
<math>\frac{\partial \boldsymbol e_r}{\partial r} = 0,\frac{\partial \boldsymbol e_r}{\partial \theta} = \boldsymbol e_\theta,\frac{\partial \boldsymbol e_r}{\partial \varphi} = \sin\theta \boldsymbol e_\varphi
</math>
<math>\frac{\partial \boldsymbol e_\theta}{\partial r} = 0,\frac{\partial \boldsymbol e_\theta}{\partial \theta} = -\boldsymbol e_r,\frac{\partial \boldsymbol e_\theta}{\partial \varphi} = \cos\theta\boldsymbol e_\varphi
</math>
<math>\frac{\partial \boldsymbol e_\varphi}{\partial r} = 0,\frac{\partial \boldsymbol e_\varphi}{\partial \theta} = 0,\frac{\partial \boldsymbol e_\varphi}{\partial \varphi} = -\cos\theta\boldsymbol e_r - \sin\theta \boldsymbol e_\theta
</math>
であることを使って極座標でのベクトル <math>\boldsymbol A
</math> の発散を計算すると、
<math>\begin{align}\nabla \cdot A
&= \left(\boldsymbol e_r\frac{\partial f}{\partial r} + \boldsymbol e_\theta \frac{1}{r}\frac{\partial }{\partial \theta} + \boldsymbol e_\varphi \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial f}{\partial \varphi}\right)\cdot (A_r\boldsymbol e_r + A_\theta \boldsymbol e_\theta + A_\varphi \boldsymbol e_\varphi)\\
&= \boldsymbol e_r \cdot \left(\frac{\partial A_r}{\partial r}\boldsymbol e_r\right) + \frac 1 r \boldsymbol e_\theta \cdot \left( \frac{\partial A_\theta}{\partial \theta}\boldsymbol e_\theta + A_r\boldsymbol e_\theta\right) + \frac{1}{r\sin\theta}\boldsymbol e_\varphi \cdot \left( \frac{\partial A_\varphi}{\partial \varphi}\boldsymbol e_\varphi + A_r\sin\theta \boldsymbol e_\varphi + A_\theta\cos\theta\boldsymbol e_\varphi\right)\\
&= \frac{1}{r^2}\frac{\partial (r^2 A_r)}{\partial r} + \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial (\sin\theta A_\theta)}{\partial \theta} + \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial A_\varphi}{\partial \varphi}
\end{align}
</math>
となる。
また、ラプラシアンに極座標での勾配と発散を代入すると、
<math>\triangle f = \nabla \cdot \nabla f =\frac{1}{r^2}\frac{\partial }{\partial r}\left(r^2 \frac{\partial f}{\partial r}\right) + \frac{1}{r^2\sin\theta}\frac{\partial }{\partial \theta}\left(\sin\theta\frac{\partial f}{\partial \theta}\right) + \frac{1}{r^2\sin^2\theta}\frac{\partial^2 f}{\partial \varphi^2}
</math>
となり、ラプラシアンの極座標表示が得られた。
===テンソル代数===
====テンソルの定義====
物理の計算においては、テンソルと呼ばれる量が
頻繁に用いられる。これは3次元における電磁気学の計算や、
古典力学における慣性モーメントなどで用いられるが、
特殊相対論、一般相対論においても用いられる。
但し、特に一般相対論においては、計量テンソルと呼ばれる
特殊なテンソルが導入されるため、計算が非常に複雑になる。
ここでは、主に3次元のテンソル計算を扱うが、
特殊相対論における計算も少し扱う。
まずは、テンソルを定義する。
あるn次元のベクトルを考える。
このベクトルに対して、一般にあるベクトルからそれと同じ
次元のベクトルに変換するような線形変換を考えることが出来る。
この変換は、そのベクトルを同じ次元のベクトルに変換することから、
n*nの行列で書けることが分かる。
さて、次にこれらのベクトルのいくつかの(m個とする。)直積を取って、
mn個の要素を含む列ベクトルを作ることを考える。
直積の取り方に就ては、[[物理数学I]]を参照。
:<math>
V \times V \times \cdots \times V
</math>
この操作によってできたmnベクトルは、上の行列によって表わされる
n行のベクトルから出来たm次のテンソルの一種となっている。
但し、一般のテンソルはもう少し複雑で、
既に上で得たベクトルとのつながりを忘れてしまったmn次元のベクトルが
上と同じ様な変換性を持つとき、これを上のベクトルに対する
m次のテンソルと呼ぶ。
ここでは、さらにこれらのテンソルが従う変換の行列を
構成することを考える。
ここで、先ほど定めたmn行のベクトルの成分のうち、直積を取られる前は別の
ベクトルだった部分のそれぞれが、直積を取られる前と同じように変換するような
mn*mn次の変換行列を作りたい。
このためには、先ほど定めたn*nの行列による変換のm回の直積を取って、
mn*mnの行列を作ればよい。
このとき行列の直積の性質
:<math>
(A_1 \times B_1) \cdot (A_2 \times B_2 ) =
A_1 A_2 \times B_1 B_2
</math>
から、
この行列が先ほどの性質を満たすことが分かる。
ここで、これらの行列やベクトルは添字を上手くつけることによって
書き表すことが出来る。
先ほど述べたうち、元々のベクトルを
:<math>
A^\mu
</math>
と書く。
次に、元々のベクトルを変換する行列を
:<math>
\Lambda ^{\mu\nu}
</math>
と書くと、この行列により変換された後のベクトルは、
:<math>
\Sigma_{\nu=1}^{n} \Lambda ^{\mu\nu} A^\nu
</math>
で表わされる。
ここで、行列を添字を用いて計算する方法を使った。
但し、物理の計算においては、
"同じ式の中に同じ添字が2回出て来たとき、この2つの添字を
足し合わせる"という規約を用いることが多い。
これをEinsteinの規約と呼び、一般相対論でEinsteinが用いてから
よく使われるようになった。
この規約を用いると、上の式は簡単に、
:<math>
\Lambda ^{\mu\nu} A^\nu
</math>
と書かれる。以下の計算では、常にこの規約を用い、
この規約が適用されないところでは、注意書きを行なうこととする。
さらに、元々のベクトルの直積は、
:<math>
A^\mu A^\nu
</math>
となる。
但し、ここでは、簡単にするためm=2と定めた。
これらを変換するmn*mn行列は
:<math>
\Lambda ^{\mu\rho} \Lambda ^{\nu\sigma}
</math>
となる。
また、これらの行列によって変換されたベクトルは、
:<math>
\Lambda ^{\mu\rho} \Lambda ^{\nu\sigma} A^\rho A^\sigma
</math>
で表わされる。
これらの変換則から一般的なテンソルを構成することが出来る。
例えば、ここでもm =2と定める。上の議論からこの量は
2つの添字を用いて、
:<math>
T^{\mu\nu}
</math>
と書くことが出来、この量が従う変換則は、
:<math>
\Lambda ^{\mu\rho} \Lambda ^{\nu\sigma}
T^{\rho\sigma}
</math>
となることがわかる。この量をある変換<math>\Lambda </math>に対する、
2次のテンソルと呼ぶ。
ここでは、テンソルの代数を定義した。このことを用いて、
ここからはより複雑な微分を見て行く。
===多変数関数の積分===
多変数関数の積分は1変数の場合の拡張によって定義される。
特に、いくつかの計算は物理的な意味が明確であるので
物理数学においても扱われることが多い。
====ガウスの定理====
ここで直交座標系を用いた場合に就て、
ある定理を導出する。
この定理は、ベクトルの発散という量の物理的意味を
与えてくれる点で重要である。
:<math>
\iiint_V dxdydz \mathrm{div} \vec A=\iint d\vec s \vec A
</math>
が成り立つ。
ここで、左辺の体積積分はある領域に就て行なわれ、
右辺の表面積分は、その領域を囲む面積全体に対して
行なわれる。
この定理をガウスの定理と呼ぶ。
{{w|ガウス}}は19世紀の非常に有名な数学者の名前である。
導出に移る前に、この定理の意味を述べる。
まずは右辺に注目する。右辺の被積分関数
:<math>
d\vec s \vec A
</math>
は、ある点での面積要素に垂直な
:<math>
\vec A
</math>
の値を表わしている。これは例えば、
:<math>
\vec A
</math>
が、流体力学でいう流体の流れる速度を表わすベクトルだったとするなら、
その流れのうちで今定めた面積要素から流れだす流量を表わしている。
この量を領域Vを囲む表面全体で足し合わせることから、この量は
領域Vから流れ出す流体の流量の和に等しいことが分かる。
ここで、領域Vの中に流体が湧出て来るような場所が合ったとすると、このとき
領域Vから流れ出す流量は、有限になると考えられる。
このためには、左辺で
:<math>\mathrm{div} \vec A</math>
が流体の湧出の周りで有限になっていなければならない。
これらのことからベクトルの発散は、
:<math>
\mathrm{div} \vec A
</math>
の意味は、ベクトルAの湧出に対応していることが分かる。
発散という名前は、ベクトルAがどこからか現われて、周りに広がって行く
様子から来ている。
ここからは、この定理の導出に移る。但し、ここでの導出は直観的なものであり、
局限移行等に就ては数学的に厳密なものではないことを注意しておく。
*導出
まず、ある領域Vを非常に小さい立方体の領域<math>v_i</math>に分割する。
領域Vがどんな形であっても、このことは常に可能だと期待される。
ここで、ある互いに接し合う2つの小さい領域<math>v_1</math>と<math>v_2</math>に就て
この定理が示されたとする。
このとき、領域<math>v_1</math>と領域が<math>v_2</math>接している面を考える。
それぞれの領域からの寄与は、その点でのベクトルの大きさと
その面積要素の大きさが同じであることから同じであると考えられ、
また、それらは互いに接しているので、面積分の性質から見て、
それらの寄与は互いに異なった符合を持っている。
ここで、今考えている領域2つを張りつけて新しい領域
<math>v_3</math>を作り、この領域に就て元の式の左辺を計算すると、
その量は、
:<math>
\iiint_{v_1+v_2} dxdydz \mathrm{div} \vec A
</math>
となる。ここで、右辺に就ても互いに重なった部分の寄与が打ち消し合うことから、
:<math>
\iint_{\partial v_3} d\vec s \vec A
</math>
のように<math>v_3</math>の周りに就て元の式の表式が成り立っている。
ここで<math>v_3</math>の囲む領域の表面として
:<math>
\partial v_3
</math>
という表式を導入した。実際にはこの表式は数学の本から来ており、
物理の本でも割合よく用いられる。
結局、小さい立方体に就てこの定理が示されれば、元の領域に就ても
この定理が正しいことが分かった。
次にこのことが実際小さい立方体に就て正しいことを見る。
立方体の辺の長さを<math>\epsilon</math>とする。
このとき、元の式に就て
:<math>
\begin{matrix}
\mathrm{lhs}=\int _v \mathrm{div} \vec A\\
= \epsilon^3 \mathrm{div} \vec A
\end{matrix}
</math>
となる。
更に、右辺に就ては
:<math>
\begin{matrix}
\mathrm{rhs}=A_x(x+\epsilon,y+\epsilon /2,z+\epsilon /2) \epsilon^2 - A_x(x,y+\epsilon /2,z+\epsilon /2) \epsilon^2\\
+A_y(x+\epsilon/2, y+\epsilon,z+\epsilon/2) \epsilon^2 - A_y(x+\epsilon /2,y+\epsilon,z+\epsilon/2) \epsilon^2\\
+A_z(x+\epsilon/2, y+\epsilon/2,z+\epsilon) \epsilon^2 - A_z(x+\epsilon/2, y+\epsilon/2,z) \epsilon^2
\end{matrix}
</math>
のような表式が得られる。この式は、それぞれの面に対する面積分をあからさまに
積分したものである。ここで、特にそれぞれの面の中心を通るように
積分の点を選んでいる。これは、局限移行を上手く行なうためだが、
もう少し違った点を選んでも結果を得ることは出来る。
次に、上の表式を<math>\epsilon</math>に就てテイラー展開する。このとき、
:<math>
= \epsilon^2( \epsilon(\frac{\partial{A_x(x,y,z)}}{\partial{x}} ))
+ \epsilon^2( \epsilon(\frac{\partial{A_y(x,y,z)}}{\partial{y}} ))
+ \epsilon^2( \epsilon(\frac{\partial{A_z(x,y,z)}}{\partial{z}} ))
</math>
が得られる。
これを纏めると、
:<math>
= \epsilon^3 \mathrm{div} \vec A
</math>
が得られるが、これは丁度左辺からの式と一致している。
よって、小さい立方体に就てはこの定理は正しい。
====ストークスの定理====
次にベクトルの回転の物理的意味を特徴づける定理を扱う。
まずは定理を述べる。
:<math>
\iint dS \mathrm{rot} \vec A =\int d\vec l \vec A
</math>
が成り立つ。
ここで、この式の左辺はある面積Sに就て積分し、
この式の右辺は、その面積の外周に就ての線積分を行なう。
ここでも、ある面積Sの外周のことを、
:<math>
\partial S
</math>
と書くことがある。
この定理をストークスの定理と呼ぶ。
例えば、
:<math>
\vec A
</math>
を流体の速度ベクトルとしてみる。このとき、速度ベクトルをある面積の
外周に就て積分したとき、その値はその面積内の速度の回転の積分に
等しい。このことは、速度ベクトルの回転が、これらの流体の渦のような
ものに対応していることを示している。
実際、流体力学では
:<math>
\mathrm{rot} \vec u
</math>
のことを渦度と呼び、流体中の渦の様子を示す重要な量となっている。
この様に、ベクトルの回転はそのベクトルに就てある閉じた経路に就て
積分したものに対応している。
:<math>
\mathrm{rot} \vec A
</math>
が全ての点で成り立つ場合、全ての閉経路に対する線積分は0に等しくなる。
これは、流体でいうと渦無しの流れに対応している。
また、この結果は複素解析の線積分の定理の1つに対応しており、その面からも
重要である。複素解析に就ては、[[物理数学II]]で扱う予定である。
*導出
まず、ある面積Sを辺の長さが<math>\epsilon</math>に等しい小さな正方形に分ける。
正方形の大きさが十分小さいとき、このことは常に可能であると期待できる。
ここで、互いに接している小さい正方形に就てそれぞれの辺からの線積分の寄与は、
大きさが等しく、符合が反対であることが分かる。このことは、線積分の
経路を反時計周りに取るというきまりを守っていると、その辺で接するためには
積分の向きが逆になっていなくてはいけないということによる。
ここで、今挙げた小さな2つの正方形を張り付けた長方形に就て
同じ計算を行なう。このとき、互いに張りついた1つの辺からの寄与は打ち消し
あうので、同じ計算が張りつけた後の長方形に就ても成り立つ。
このことを繰りかえせば、小さな正方形に就てこの定理が成り立ったとき、
元々の領域に就てもこの定理が成り立つと期待できる。
さて、ここで、辺の長さが<math>\epsilon</math>に等しい正方形に就てこの定理が
成り立っていることを示す。
これらの正方形の各辺に平行になるように、x,y軸を取って
:<math>
\iint dS \mathrm{rot} \vec A =\int d\vec l \vec A
</math>
の左辺を計算すると、
:<math>
(\mathrm{lhs})=\epsilon ^2 \mathrm{rot} \vec A (x+ \epsilon/2,y+\epsilon/2)
</math>
が成り立つ。
次に右辺に就て、
:<math>
\begin{matrix}
(\mathrm{rhs}) =\epsilon \{A_x(x+\epsilon/2,y ) - A_x(x+\epsilon/2,y+\epsilon) \}\\
+ \epsilon \{A_y(x+\epsilon ,y+\epsilon/2 ) - A_y(x,y+\epsilon/2) \} \\
=\epsilon^2 \{ - \frac{\partial{A_x }}{\partial{y}} + \frac{\partial{A_y}}{\partial{x}} \} \\
= \epsilon^2 \mathrm{rot } \vec A
\end{matrix}
</math>
が得られるが、これは右辺の表式と等しい。
よって、小さい正方形に就てこの定理は示された。
また、以前の議論からこのとき元の領域に就てもこの定理は正しいことが
分かっている。よって、全ての領域に就て、この定理は正しいことが
示された。
===直交座標系でないときの計算===
直交座標系でないときにも
grad,div,rotを計算することが出来る。
ここではまず、座標系の定義を行なうことから始める。
また、上の議論からこのことは全ての領域Vに対してもこの定理が正しいことを
示している。
この定理は電磁気学で頻繁に用いられる重要な定理である。
== 関連項目 ==
*[[初等数学公式集/解析幾何/コラム#外積の計算]]
*[[線型代数学/ベクトル#スカラー・ベクトル三重積]]
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{{DEFAULTSORT:へくとるかいせき}}
[[カテゴリ:ベクトル解析]]
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299060
2026-05-03T11:14:02Z
Tkkn46tkkn46
89925
/* 関連項目 */ レベル2 == 脚注 == の追加
299064
wikitext
text/x-wiki
<small> [[物理数学I]] > ベクトル解析</small>
==ベクトル解析==
ここでは、ベクトル解析に就て解説を行なう。[[解析学基礎/ベクトル解析]]も参照。
ベクトル解析は、主に多変数関数の微積分と関連しているが、
特にそれらのうちには計算自体に明確な物理的意味を
持つものがいくつか見られる。歴史的にもこの分野は
数学と物理の間のフィードバックを通して発展して来た。
<!-- 現代では数学と物理の間は広がってしまっているが、 -->
そのため、計算においては物理的な意味を強調していきたい。
また、特にいくつかの定理は数学的に厳密な証明をすることが
難しい。その様なときには常識的に古典的な物理学の範囲で
起こる現象で適用できる程度に、一般的に
書くことにしたいと思う。
また、現代的にはこの分野は微分形式を用いて書かれることが多いが、
ここではまず最初に古典的な計算法を扱う。
これは、特に物理を専攻としない学習者に配慮するためである。
例えば、電気技術者や機械技術者もベクトル解析は依然として学ばねば
ならず、彼らに取っては微分形式の理論はそれほど有用とはいえないものと
思われる。
ベクトル解析の理論は特に電磁気学と関連が深いが、これらの結果は
流体力学や量子力学など、様々な分野で登場する物理の根幹を成す計算法であり、
学習者は十分これらの手法に習熟することが求められる。
なお、ベクトル自体の性質に就ては[[線型代数学/ベクトル]]を参照していただきたい。
===ベクトル関数の定義===
====ベクトル関数の定義====
例えば3次元ベクトルで
:<math>
\vec r=(x,y,z)
</math>
とするとき、ある変数tに就て
x,y,z が、
:<math>
(x,y,z)=(x(t),y(t),z(t))
</math>
で表わされるとき、
:<math>
\vec r
</math>
を、ベクトル関数と呼ぶ。
これは、tを時間と見做すときにはある3次元空間中を
物体が動いて行く軌跡と見なすことが出来る。
例えば、
:<math>
x= t, y=0,z=0
</math>
という軌跡を与えたとき、この値は
物体がxの方向に速度1で等速直線運動しているものとみなすことが
できる。
但し、この定義自体は3次元にとどまらず容易にn次元に拡張することが
出来る。
例えば、
:<math>
(x_1,x_2,\cdots ,x_n)=(x_1(t),x_2(t),\cdots ,x_n(t))
</math>
のようにn次元のベクトルを取ったときに、そのうちの各要素が
ある独立変数tだけに依存すると考えることが出来るとき
これは、n次元空間の中の物体の軌跡と考えることが出来る。
====ベクトルの微分====
ここでは、ベクトルの微分を定義する。
例えば、1次元においては、物体の速度は
:<math>
\dot x=\frac {x(t+dt) - x(t)}{dt}
</math>
で与えられた。この値はある時間における物体の
位置の変化率という直接的な物理的意味を持っている。
これらの自然な拡張として一般的な次元において、
:<math>
\dot r=\frac {\vec r(t+dt) - \vec r(t)}{dt}
</math>
によって、ベクトルの微分を定義する。
例えば、1次元空間に限ったときにはこの結果は上の式と一致することが分かる。
このことによって、例えば
:<math>
(x,y)=(x(t), y(t))
</math>
という2次元ベクトルを取ったとき、
物体の速度のx方向成分は
:<math>
\dot x=\frac {x(t+dt) - x(t)}{dt}
</math>
によって与えられ、物体の位置のx方向成分のみによることが示唆される。
同様に
物体の速度のy方向成分は
物体の位置のy方向成分のみによっている。
このことは一見当然のように思えるが、実際にはそうではなく
我々が用いている座標系によっている。
例えば、2次元の極座標を用いてみると、
:<math>
\vec x=x \vec e_x + y \vec e_y=r \vec e_r
</math>
と書けるが、
この式を正しく微分すると、
:<math>
\vec v=\dot r \vec e_r + r \dot \theta \vec e_\theta
</math>
が得られ、速度の<math>\theta</math>成分は、物体のr成分にも依存している。
このことは、直接的には<math>\vec e_r, \vec{e}_\theta</math>自身が時間依存性を持っていることを示す。
実際に、<math>\vec{e}_r=\cos\theta \vec{e}_x + \sin\theta\vec{e}_y, \vec{e}_\theta=-\sin\theta\vec{e}_x + \cos\theta \vec{e}_y</math>且つ<math>\theta</math>は時間の関数<math>\theta(t)</math>なので、この正規直交基底は時間依存である。
我々が通常用いる(x,y,z)という座標系は
通常直交座標系と呼ばれるが、(デカルト座標系と呼ばれることも多い。)
これらの座標軸の方向は時間的に変わることが無いので、
微分の性質が非常に簡単になっている。
しかし、実際にある物体の動きを記述するとき、直交座標系を用いるより、
その動きに特徴的な量をパラメーターとして用いた方が記述が簡明になることがある。例えば、太陽の周りを円運動する惑星の動きを記述するとき、極座標を用いることで最も簡便となる。
この様に運動の種類によって用いるべき座標系が変わって来るため、それぞれの間の緒量の変化則ち微積分の性質を調べることが重要になる。
====関数の勾配====
ここまでで一般的な微分の方法を見た。
ここでは、特に物理的に重要なベクトルの作り方を
見る。
3次元空間上に位置の関数<math>f(x, y, z)</math>
があるものとする。
このとき、
:<math>
\mathrm{grad} f=\begin{pmatrix} \frac{\partial{f}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{f}}{\partial{y}} \\ \frac{\partial{f}}{\partial{z}}\end{pmatrix}
</math>
を<math>f</math>の勾配と呼ぶ。
また、同様にしてn次元では
:<math>
\mathrm{grad} f(x_1, \cdots , x_n)=\begin{pmatrix} \frac{\partial{f}}{\partial{x_1}} \\ \vdots \\ \frac{\partial{f}}{\partial{x_n}} \end{pmatrix}
</math>
によって定義される。
ここで、勾配はこの式の意味によって付けられた名前である。
例えば、
:<math>y= z=0</math>
に限ってこの式を書いてみる。
このとき
:<math>\mathrm{grad} f=\begin{pmatrix} \frac{\partial{f}}{\partial{x}} \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}</math>
となるが、これはこの関数fのx方向の傾きに等しい。
つまり、この式は傾きを求める式の複数の方向を用いた場合への一般化と
なっている。
より一般的な例として2次元の場合の
例を考えてみる。ここでは
:<math>f(x,y)=x^2 + y^2</math>
とおく。
このときこの式の勾配は簡単に計算でき、
:<math>\mathrm{grad} f=\begin{pmatrix} 2x \\ 2y \end{pmatrix}</math>
となる。
例えば、この式を
:<math>x=a(= \mathrm{const}.), y=0</math>
に就て考えてみる。
このとき、勾配ベクトルは
:<math>\mathrm{grad} f=\begin{pmatrix} 2a \\ 0 \end{pmatrix}</math>
となるが、これの符号はxの符号に依存する。
つまり、この式はこの関数のx座標軸上で見たときに、
x=0で極小値となる擂鉢形のグラフとなっており、更に
原点から離れれば離れるほどグラフの傾きが増すことを示唆している。
実際この式を数値的にプロットすると、この主張が確かめられる。
*TODO
プロットを作製。
次に、この式を
:<math>x=0, y=b(=\mathrm{const}.)</math>
に就て考えてみる。
このときにも全く同じ主張が出来、y方向に見ても
このグラフは擂鉢状になっている。
また、この式を
:<math>x=y=\frac c {\sqrt 2}</math>
に就て考えてみる。このときには
:<math>\mathrm{grad} f=2 \begin{pmatrix} \frac c {\sqrt 2} \\ \frac c {\sqrt 2} \end{pmatrix}</math>
が得られ、この点では勾配はx軸から<math>\frac{\pi}{4}</math>の方向を向いていることが分かる。
一般に勾配ベクトルは関数fが最も大きな傾きで増加する方向を
向いており、その絶対値はその点でそちらへの微分を取った値に等しい。
また、ある点でのある方向への微分(方向微分)を求めたいときには、
求めたい方向の単位ベクトルを
:<math>\vec n</math>
として
:<math>\mathrm{grad} f \cdot \vec {n}</math>
で求まる。
*説明
勾配の計算では、全ての独立変数に対する微分を求めており、
これらの微分を組み合わせることであらゆる方向への微分を
作ることが出来ることが期待される。
微分の最も低いオーダーでは、それぞれの方向への微分は
それぞれの方向の単位ベクトルにそちらの方向への微分の大きさを
かけたものに等しいので、ある方向に対する微分を
計算するにはそれらを適切な方向への重みをつけて足し合わせることが
求められる。このとき、ある方向に対する単位ベクトルと
ある軸の方向に対する単位ベクトルは、2つの方向の重みを表わしていると
考えられるので、確かにこの値は、そちらの方向への微分となっている。
例えば、
:<math>x=a,y=0</math>
でのy方向の傾きは、
:<math>\mathrm{grad} f \cdot \vec {n}= \begin{pmatrix} 2a \\ 0 \end{pmatrix} \cdot \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}=0</math>
となるが、
これは、この関数の等高線が円形になっていることを考えると
確かにこの点ではy方向の傾きは0になっていなくてはいけない。
====ベクトルの発散====
次には逆にあるベクトルを取ったとき、
あるスカラー量を作りだす計算を導入する。
後に示される通り、この量はある点から流れ出す
粒子や場の束の和という物理的意味を持っており、
電磁気学や流体力学で頻繁に用いられる。
実際前者では磁束や電束に就ての計算に用いられ、
後者では流体中の湧出や吸い込みなどのまわりで
流体の性質を表わすベクトルがnon-zeroになることが
知られている。
あるベクトル関数
:<math>\vec a</math>
があるとき、
:<math>\mathrm{div} \vec a=\frac{\partial{a_x}}{\partial{x}} +\frac{\partial{a_y}}{\partial{y}} + \frac{\partial{a_z}}{\partial{z}}</math>
を、<math>\vec a</math>の発散と呼ぶ。
また、この量もn次元で定義することが出来、そのときの定義は、
:<math>\mathrm{div} \vec a= \sum_{i} \frac{\partial{a_{i}}}{\partial{x_i}}</math>
で与えられる。
但し <math>a_i</math> は<math>\vec a</math> の第i成分である。
この式の物理的意味は上で述べた通りだが、そのことの導出は
ガウスの定理の導出によって与えられるため、ここでは扱わない。
====ベクトルの回転====
ここでもう1つ、物理的に重要な演算を導入する。
この量も電磁気学や流体力学で使われており、ある経路に沿って積分した値がその経路の中のある量の積分によって与えられるという定理である。
実際には電磁気学では古典的にある回路を突き抜ける磁束の時間変化が、その回路内に電流を引き起こすことがレンツの法則として知られている。この法則は、このようなベクトルの演算によって上手く記述される現象の例である。
流体力学では、この量は流体中に巻き起こる渦に対応している。
つまり、渦が流れるルートに沿って、流体の速度を積分していけば0でない値が得られることが期待される。一方、そうでない場合この値は全ての寄与が打ち消し合い、0になると思われる。つまり、この量を用いることで、流体中の渦を記述する方法が得られるわけである。
但し、実際には流体の運動を考えるときには渦が一切発生しないとした方が計算が簡単になることも多い。このような流れは渦無しの流れと呼ばれ、その性質はよく知られている。
ここからはベクトルの回転の定義を述べる。
あるベクトル関数
:<math>\vec a</math>
があるとき、
:<math>\mathrm{rot} \vec a=
\begin{pmatrix}\frac{\partial{a_z}}{\partial{y}} -\frac{\partial{a_y}}{\partial{z}}\\ \frac{\partial{a_x}}{\partial{z}} -\frac{\partial{a_z}}{\partial{x}}
\\ \frac{\partial{a_y}}{\partial{x}} -\frac{\partial{a_x}}{\partial{y}} \end{pmatrix} = \begin{vmatrix} \vec e_x & \vec e_y & \vec e_z \\ \frac{\partial}{\partial{x}} & \frac{\partial}{\partial{y}}& \frac{\partial}{\partial{y}} \\ a_1 & a_2 & a_3 \end{vmatrix}</math>
を
:<math>\vec a</math>
の回転と呼ぶ。
=== 記法 ===
場の量 <math>f(t, \boldsymbol r)</math> は時間 <math>t</math> と位置 <math>\boldsymbol r</math> に関する量だが、混乱の虞れがないときは変数を省略して <math>f</math> のように書く。ベクトルの量は <math>\boldsymbol E, \boldsymbol B</math> のように太字で書く。また、ベクトル量の大きさを同じ文字で <math>E,B</math> のように書く。例えば、<math>E^2=|\boldsymbol E|^2</math> である。
ベクトル量による微分は、ベクトル量の各々の成分による偏微分で作られるベクトルのことである。
例えば、 <math>\frac{\partial A}{\partial \boldsymbol r}</math> は(<math>\boldsymbol{r}</math>の各方向単位ベクトルが直交基底であるとき)勾配に等しい。
また、
<math>\frac{\partial A}{\partial \boldsymbol v}=\begin{pmatrix} \frac{\partial A}{\partial v_x} \\ \frac{\partial A}{\partial v_y} \\ \frac{\partial A}{\partial v_z} \end{pmatrix}</math>
この記法は[[解析力学]]で必要となるが、そのとき<math>\boldsymbol r, \boldsymbol v</math> は独立であるとして扱われる。
場の量 <math>A(t,\boldsymbol r)</math> に就て、ある粒子の軌跡 <math>\boldsymbol r_a</math> に沿った <math>A</math> の変化
:<math>\frac{dA(t,\boldsymbol r_a(t))}{dt}</math>
は、
:<math>\frac{dA(t,\boldsymbol r_a(t))}{dt}=\frac{\partial A} {\partial t} + \frac{d\boldsymbol r_a}{dt} \cdot \frac{\partial A(t,\boldsymbol r)}{\partial \boldsymbol r}</math>
である。物理では、態々 <math>\boldsymbol r_a</math>と記号を新しく導入することをせずに
:<math>\frac{dA}{dt}=\frac{\partial A} {\partial t} + \frac{d \boldsymbol r}{dt} \cdot \frac{\partial A}{\partial \boldsymbol r}</math>
と書く。右辺の第一項は場の時間変化、第二項は粒子の移動による場の変化に対応している。<math>\frac{dA}{dt}</math> を完全導関数、<math>\frac{\partial A}{\partial t}, \frac{\partial A}{\partial \boldsymbol r}</math> を偏導関数といい区別する。なお、完全導関数は両辺に<math>dt</math>を掛ければ完全微分の表記に一致する。
また、例えば、関数 <math>U(x,y,z)=\frac{\alpha}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}</math> は極座標では、<math>U'(r,\theta,\varphi)=\frac{\alpha}{r}</math> である。<math>U,U'</math> は数学的に異なる関数であるが、物理では座標系による関数の違いを書き分けることはほとんどない。つまり、<math>U'</math>もそのまま <math>U</math> と書くことになる。
== ベクトル解析の公式 ==
ここでは、ベクトル解析の公式を証明する。これらの公式はベクトルを成分表示して単純に計算することでも証明できるが、この方法ではあまりにも煩雑になってしまうためレヴィ・チヴィタ記号を導入して証明する。
=== クロネッカーのデルタ ===
クロネッカーのデルタ <math>\delta_{ij}</math>を
{{式番号|<math>\delta_{ij}=\begin{cases} 1 & i=j\\ 0 & i \ne j\end{cases}</math>|1}}
で定義する。
=== レヴィ・チヴィタ記号 ===
レヴィ・チヴィタ記号 <math>\varepsilon_{ijk}</math> を
{{式番号|<math>\varepsilon_{ijk}=\begin{cases}
1 & \, (i, j, k)=(1, 2, 3), (2, 3, 1), (3, 1, 2) \\
-1 & \, (i, j, k)=(1, 3, 2), (3, 2, 1), (2, 1, 3) \\
0 & \mathrm{otherwise}
\end{cases}</math>|2}}
と定義する。則ち、置換 <math>\sigma=\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
i & j & k \end{pmatrix}</math> (但し <math>i,j,k</math> は互いに異なる)が偶置換のとき、<math>\varepsilon_{ijk}=1</math>、奇置換のとき<math>\varepsilon_{ijk}=-1</math> である。また、レヴィ・チヴィタ記号 <math>\varepsilon_{ijk}</math> は <math>\varepsilon_{123}=1</math> であり、2つの添字を入れ替えると -1 倍される(反対称)もの (e.g. <math>\varepsilon_{213}=-\varepsilon_{123}=-1 ,\,\varepsilon_{231}=-\varepsilon_{213}=1 </math>)と理解できる。添字に同じ数字があるときはレヴィ・チヴィタ記号は 0 である(e.g. <math>\varepsilon_{111}=0,\,\varepsilon_{322}=0</math>)。
基本ベクトル <math>\boldsymbol e_i</math> を <math>\boldsymbol e_i=\begin{pmatrix} \delta_{1i} \\ \delta_{2i} \\ \delta_{3i} \end{pmatrix}</math> とする。則ち、<math>\boldsymbol e_1=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix},\boldsymbol e_2=\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix},\boldsymbol e_3=\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}</math> である。
空間偏微分作用素 <math>\nabla =
\begin{pmatrix}
\frac{\partial}{\partial x} \\
\frac{\partial}{\partial y} \\
\frac{\partial}{\partial z}
\end{pmatrix}</math> をナブラという。これは記号的な表記である。ナブラを通常のベクトル量と同じように扱うと、勾配・発散・回転は簡単に
:<math>\mathrm{grad } f=\nabla f</math>
:<math>\mathrm{div} \vec a=\nabla \cdot \vec a</math>
:<math>\mathrm{rot} \vec a=\nabla \times \vec a</math>
と書くことが出来る。
<!-- デルタ(U+394)ではなく増分記号(U+2206)である。 --><math> \text{∆} := \nabla \cdot \nabla=\frac{\partial^2}{\partial x^2} + \frac{\partial^2}{\partial y^2} + \frac{\partial^2}{\partial z^2}
</math> をラプラシアンという。スカラー関数 <math> f
</math> に就て <math> \text{∆} f =\frac{\partial^2f}{\partial x^2} + \frac{\partial^2f}{\partial y^2} + \frac{\partial^2f}{\partial z^2}
</math> であり、ベクトル関数 <math> \boldsymbol A
</math> に就て <math> \text{∆} \boldsymbol A=\begin{pmatrix}
\frac{\partial^2A_x}{\partial x^2} + \frac{\partial^2A_x}{\partial y^2} + \frac{\partial^2A_x}{\partial z^2} \\
\frac{\partial^2A_y}{\partial x^2} + \frac{\partial^2A_y}{\partial y^2} + \frac{\partial^2A_y}{\partial z^2} \\
\frac{\partial^2A_z}{\partial x^2} + \frac{\partial^2A_z}{\partial y^2} + \frac{\partial^2A_z}{\partial z^2}
\end{pmatrix}
</math> である。
以下では、簡単のためにベクトル <math>\boldsymbol A</math>の <math>x</math> 成分 <math>A_x</math> を <math>A_1</math>、 <math>y</math> 成分 <math>A_y</math> を <math>A_2</math>、 <math>z</math> 成分 <math>A_z</math> を <math>A_3</math> と書く。偏微分に就ても <math>\frac{\partial}{\partial x}=\partial_x=\partial_1</math> などとする。ベクトル <math>\boldsymbol A</math> の 第i成分 <math>A_i</math> を <math>[\boldsymbol A]_i</math> と書く。また、アインシュタインの縮約記法を採用する。これは同じ項の中に同じ添字が2つ存在したらその添字に就ての総和を取るというものである。例えば、
<math>A_iB_i=\sum_{i=1}^3 A_iB_i</math>
である。
ベクトルの外積 <math>\boldsymbol A \times \boldsymbol B</math> の第i成分 <math>[\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_i</math> は
<math>[\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_i=\varepsilon_{ijk}A_jB_k</math>
と書ける。
実際に、展開して確認すると、
<math>\begin{align}\varepsilon_{1jk}A_jB_k
&= \varepsilon_{123}A_2B_3 + \varepsilon_{132}A_3B_2 \\
&= A_2B_3 - A_3B_2 \\
&= [\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_1
\end{align}</math>
<math>\begin{align}\varepsilon_{2jk}A_jB_k
&= \varepsilon_{213}A_1B_3 + \varepsilon_{231}A_3B_1 \\
&= A_3B_1 - A_1B_3 \\
&= [\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_2
\end{align}</math>
<math>\begin{align}\varepsilon_{3jk}A_jB_k
&= \varepsilon_{312}A_1B_2 + \varepsilon_{321}A_2B_1 \\
&= A_1B_2 - A_2B_1 \\
&= [\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_3
\end{align}</math>
となる。上の式において、 <math>\varepsilon_{1jk}A_jB_k</math> を展開すると9つの項が出てくるが、その内の7つの <math>\varepsilon_{1jk}</math> が0となるため、2つの項だけが残る。則ち、<math>j=2,j=3</math> に対応する項(対応する <math>k</math> は <math>\{1,2,3\}</math> のうち1でも <math>j</math> でもないもの)、 <math>\varepsilon_{123},\varepsilon_{132}</math> の項のみが残る。<math>\varepsilon_{2jk},\varepsilon_{3jk}</math> に就ても同様である。
'''定理'''
<math>\varepsilon_{ijk}=|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k|=\begin{vmatrix}
\delta_{1i} & \delta_{1j}& \delta_{1k}\\
\delta_{2i} & \delta_{2j}& \delta_{2k}\\
\delta_{3i} & \delta_{3j}& \delta_{3k}
\end{vmatrix} </math> が成り立つ。
'''証明'''
<math>|\boldsymbol e_1 \, \boldsymbol e_2 \, \boldsymbol e_3|=\begin{vmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{vmatrix}=1=\varepsilon_{123}</math> である。
これと、行列式の性質より、<math>|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k| </math> は反対称であることから、<math>\varepsilon_{ijk}=|\boldsymbol e_i \, \boldsymbol e_j\, \boldsymbol e_k| </math> を得る。
基本ベクトルの定義 <math>\boldsymbol e_i=\begin{pmatrix} \delta_{1i} \\ \delta_{2i} \\ \delta_{3i} \end{pmatrix}</math> を代入して、<math>|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k|=\begin{vmatrix}
\delta_{1i} & \delta_{1j}& \delta_{1k}\\
\delta_{2i} & \delta_{2j}& \delta_{2k}\\
\delta_{3i} & \delta_{3j}& \delta_{3k}
\end{vmatrix} </math> を得る。
'''定理'''
<math>\varepsilon_{ijk}\varepsilon_{lmn}=\begin{vmatrix}
\delta_{il} & \delta_{im}& \delta_{in}\\
\delta_{jl} & \delta_{jm}& \delta_{jn}\\
\delta_{kl} & \delta_{km}& \delta_{kn}
\end{vmatrix}
= \delta_{il}\left( \delta_{jm}\delta_{kn} - \delta_{jn}\delta_{km} \right)
+ \delta_{im}\left( \delta_{jn}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{kn} \right)
+ \delta_{in}\left( \delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl} \right) </math> である。
'''証明'''
<math>\varepsilon_{ijk}=|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k|,\, \varepsilon_{lmn}=|\boldsymbol e_l \,\boldsymbol e_m \, \boldsymbol e_n| </math> より
<math>\varepsilon_{ijk}\varepsilon_{lmn}=|\boldsymbol e_i \,\boldsymbol e_j \, \boldsymbol e_k||\boldsymbol e_l \,\boldsymbol e_m \, \boldsymbol e_n|=\begin{vmatrix}\boldsymbol e_i^T \\ \boldsymbol e_j^T \\ \boldsymbol e_k^T \end{vmatrix}|\boldsymbol e_l \, \boldsymbol e_m \, \boldsymbol e_n|=\begin{vmatrix}
\boldsymbol e_i^T\boldsymbol e_l & \boldsymbol e_i^T\boldsymbol e_m& \boldsymbol e_i^T\boldsymbol e_n\\
\boldsymbol e_j^T\boldsymbol e_l & \boldsymbol e_j^T\boldsymbol e_m& \boldsymbol e_j^T\boldsymbol e_n\\
\boldsymbol e_k^T\boldsymbol e_l & \boldsymbol e_k^T\boldsymbol e_m& \boldsymbol e_k^T\boldsymbol e_n
\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}
\delta_{il} & \delta_{im}& \delta_{in}\\
\delta_{jl} & \delta_{jm}& \delta_{jn}\\
\delta_{kl} & \delta_{km}& \delta_{kn}
\end{vmatrix}. </math>
また、 余因子展開をして、 <math>\begin{vmatrix}
\delta_{il} & \delta_{im}& \delta_{in}\\
\delta_{jl} & \delta_{jm}& \delta_{jn}\\
\delta_{kl} & \delta_{km}& \delta_{kn}
\end{vmatrix}
= \delta_{il}\left( \delta_{jm}\delta_{kn} - \delta_{jn}\delta_{km} \right)
+ \delta_{im}\left( \delta_{jn}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{kn} \right)
+ \delta_{in}\left( \delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl} \right) </math> を得る。
'''定理'''
# <math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ilm}=\delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl} </math>
# <math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijl}=2\delta_{kl} </math>
# <math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijk}=6 </math>
が成り立つ。
'''証明'''
次の式ではアインシュタインの規約を使わない。つまり <math>i </math> に就ての和を取らないとする。
<math>\varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ilm}=\begin{vmatrix}
1 & \delta_{il}& \delta_{im}\\
\delta_{ji} & \delta_{jl}& \delta_{jm}\\
\delta_{ki} & \delta_{kl}& \delta_{km}
\end{vmatrix}=(\delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl}) - \delta_{il}(\delta_{ji}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{ki}) + \delta_{im}(\delta_{ji}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{ki}) </math>
となる。この式の <math>i=1,2,3 </math> に就て和を取り、アインシュタインの規約を復活させると
<math>\begin{align} \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ilm} &= 3(\delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl}) - (\delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl}) + (\delta_{jm}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{km}) \\
&= \delta_{jl}\delta_{km} - \delta_{jm}\delta_{kl} \end{align} </math>
を得る。また、
<math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijl}= \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijl}= (\delta_{jj}\delta_{kl} - \delta_{jl}\delta_{kj})=3\delta_{kl} - \delta_{kl}=2\delta_{kl} </math>
<math> \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijk}= \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{ijk}= 2\delta_{kk}=6 </math>
となる。
<math>\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{kml}</math> の組み合わせは、ベクトルとの積の形でよく出てくるからこれを計算する。ここで <math>T_{ijlm}</math> は添字 <math>l,m</math> のベクトルを含み、 <math>i,j</math> を任意で含むベクトルの積(一般にはテンソル)である。要するに <math>T_{ijlm}=A_iB_jC_lD_m,\, B_jC_lD_m,\, C_lD_m</math> の形である。
<math>\begin{align}
\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{klm} T_{ijlm} &= \varepsilon_{kij} \varepsilon_{klm}T_{ijlm}\\
&= (\delta_{il}\delta_{jm} - \delta_{im}\delta_{jm})T_{ijlm} \\
&= T_{ijij} - T_{ijji}
\end{align}</math>となる。
つまり、<math>\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{kml}</math> が出てきたら、それを含む項は
(<math>l,m \to i,j</math> と置き換えた式) − (<math>l,m \to j,i</math> と置き換えた式)
に等しい。
=== 三重積と四重積 ===
'''定理'''
次の式が成り立つ。
# スカラー三重積 <math>\boldsymbol A \cdot (\boldsymbol B \times \boldsymbol C)=\boldsymbol B \cdot (\boldsymbol C \times \boldsymbol A)=\boldsymbol C \cdot (\boldsymbol A \times \boldsymbol B)</math>
# ベクトル三重積 <math>\boldsymbol A \times (\boldsymbol B \times \boldsymbol C)=(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol C)\boldsymbol B - (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)\boldsymbol C</math>
# スカラー四重積 <math>(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \cdot (\boldsymbol C \times \boldsymbol D)=(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol C) (\boldsymbol B \cdot \boldsymbol D) - (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol D) (\boldsymbol B \cdot \boldsymbol C)</math>
# ベクトル四重積 <math>(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \times (\boldsymbol C \times \boldsymbol D)
= [(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \cdot \boldsymbol D] \boldsymbol C - [(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \cdot \boldsymbol C] \boldsymbol D </math>
# ヤコビ恒等式 <math>\boldsymbol{A} \times ( \boldsymbol{B} \times \boldsymbol{C} ) + \boldsymbol{B} \times ( \boldsymbol{C} \times \boldsymbol{A} ) + \boldsymbol{C} \times ( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} )=0</math>
'''証明'''
*スカラー三重積の証明
<math>\begin{align}\boldsymbol A \cdot (\boldsymbol B \times \boldsymbol C) &= A_i[\boldsymbol B \times \boldsymbol C]_i \\
&= \varepsilon_{ijk}A_iB_jC_k. \\
\boldsymbol B \cdot (\boldsymbol C \times \boldsymbol A) &= B_j[\boldsymbol C \times \boldsymbol A]_j\\
&= B_j\varepsilon_{jki}C_kA_i \\
&= \varepsilon_{ijk}A_iB_jC_k.\\
\boldsymbol C \cdot (\boldsymbol A \times \boldsymbol B) &= C_k[\boldsymbol A \times \boldsymbol B]_k \\
&= C_k\varepsilon_{kij}A_iB_j \\
&= \varepsilon_{ijk}A_iB_jC_k.
\end{align}</math>
*ベクトル三重積の証明
<math>\begin{align}
{[}\boldsymbol A \times (\boldsymbol B \times \boldsymbol C)]_i &= \varepsilon_{ijk}A_j[\boldsymbol B \times \boldsymbol C]_k \\
&= \varepsilon_{ijk}A_j\varepsilon_{klm}B_lC_m \\
&= A_jB_iC_j - A_jB_jC_i\\
&= (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol C)B_i - (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)C_i
\end{align}</math>
途中で <math>\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{klm} T_{ijlm}=T_{ijij} - T_{ijji}</math> の公式を <math>T_{jlm}=A_jB_lC_m</math> に対して使った。
*スカラー四重積の証明
スカラー三重積及びベクトル三重積を使うと
<math>(\boldsymbol A \times \boldsymbol B) \cdot (\boldsymbol C \times \boldsymbol D)
= \boldsymbol C \cdot [\boldsymbol D \times (\boldsymbol A \times \boldsymbol B)]=\boldsymbol C \cdot [(\boldsymbol D \cdot \boldsymbol B ) \boldsymbol A - (\boldsymbol D \cdot \boldsymbol A) \boldsymbol B]
= (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol C)\boldsymbol B - (\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)\boldsymbol C.</math>
*ベクトル四重積の証明
ベクトル三重積よりほとんど自明である。
*ヤコビ恒等式の証明
ベクトル三重積の公式を代入して計算するだけである。
=== 微分公式 ===
上の表式を用いると、複雑な微分の計算を簡便に行なうことが出来る。
'''定理'''
<math>\nabla \times (\nabla f)=0</math>
<math>\nabla \cdot (\nabla \times \boldsymbol A)=0 </math>
が成り立つ。
'''証明'''
<math>\begin{align}
{[\nabla \times (\nabla f)]}_i &= \varepsilon_{ijk}\partial_j[\nabla f]_k \\
&= \varepsilon_{ijk}\partial_j\partial_kf
\end{align} </math>
ここで、<math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jf </math> に就て、<math>i>j </math> の項は、 <math>\varepsilon_{jik}\partial_j \partial_if=-\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jf </math>と打ち消し合う(<math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jf + \varepsilon_{jik}\partial_j \partial_if=0 </math>)。 <math>i=j </math> の項は <math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jf=\varepsilon_{iik}\partial_i \partial_if=0 </math> となるので、結局最後の式は 0 である。
則ち、<math>\nabla \times (\nabla f)=0</math> を得る。
<math>\begin{align}\nabla \cdot (\nabla \times \boldsymbol A) &= \partial_i[\nabla \times \boldsymbol A]_i \\
&= \partial_i \varepsilon_{ijk}\partial_jA_k \\
&= \varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k \\
\end{align} </math>
ここで、<math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k </math> に就て、<math>i>j </math> の項は、 <math>\varepsilon_{jik}\partial_j \partial_iA_k=-\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k </math>と打ち消し合う(<math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k + \varepsilon_{jik}\partial_j \partial_iA_k=0 </math>)。 <math>i=j </math> の項は <math>\varepsilon_{ijk}\partial_i \partial_jA_k=\varepsilon_{iik}\partial_i \partial_iA_k=0 </math> となるので、結局最後の式は 0 である。
則ち、<math>\nabla \cdot (\nabla \times \boldsymbol A)=0 </math> を得る。
'''定理'''
<math>
\nabla \cdot (\boldsymbol A \times \boldsymbol B ) =
(\nabla \times \boldsymbol A) \cdot \boldsymbol B - \boldsymbol A \cdot (\nabla \times \boldsymbol B)
</math>
<math>\nabla \times ( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} )=( \boldsymbol{B} \cdot \nabla ) \boldsymbol{A} - ( \boldsymbol{A} \cdot \nabla ) \boldsymbol{B} + \boldsymbol{A} ( \nabla \cdot \boldsymbol{B} ) - \boldsymbol{B} ( \nabla \cdot \boldsymbol{A} ) </math>
<math>\nabla(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)=\boldsymbol A \times (\nabla \times B) + \boldsymbol B \times (\nabla \times \boldsymbol A) + (\boldsymbol A \cdot \nabla)\boldsymbol B + (\boldsymbol B \cdot \nabla)\boldsymbol A </math>
が成り立つ。
'''証明'''
<math>
\begin{align}
\nabla \cdot (\boldsymbol A \times \boldsymbol B ) &= \partial_i (\varepsilon_{ijk} A_j B_k) \\
&= \varepsilon_{ijk}(\partial _i A_j) B_k + \varepsilon_{ijk} A_j (\partial _i B_k)\\
&= (\nabla \times \boldsymbol A)\cdot \boldsymbol B - \boldsymbol A \cdot (\nabla \times \boldsymbol B) .
\end{align}
</math>
<math>\begin{align}
{[\nabla \times ( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} )}]_i &= \varepsilon_{ijk}\partial_j[ \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B}]_k \\
&= \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{klm}\partial_j(A_lB_m) \\
&= \partial_j(A_iB_j) - \partial_j(A_jB_i) \\
&= B_j\partial_jA_i + A_i\partial_jB_j - B_i\partial_jA_j - A_j\partial_jB_i \\
&= (\boldsymbol B \cdot \nabla)A_i + A_i(\nabla \cdot \boldsymbol B) - (\boldsymbol A \cdot \nabla)B_i - B_i(\nabla \cdot \boldsymbol A)
\end{align} </math><ref name=":0"><math>\varepsilon_{ijk} \varepsilon_{klm} T_{ijlm}=T_{ijij} - T_{ijji}</math> の公式を使った。</ref>
より、<math>\nabla \times ( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} )=( \boldsymbol{B} \cdot \nabla ) \boldsymbol{A} - ( \boldsymbol{A} \cdot \nabla ) \boldsymbol{B} + \boldsymbol{A} ( \nabla \cdot \boldsymbol{B} ) - \boldsymbol{B} ( \nabla \cdot \boldsymbol{A} ) </math> が成り立つ。
<math>\begin{align}{[\nabla(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)]}_i &= \partial_i(A_jB_j)\\
&= B_j\partial_iA_j + A_j\partial_iB_j.\\
\end{align} </math>
ここで、<math>[\boldsymbol A \times(\nabla \times \boldsymbol B)]_i= A_j \partial_iB_j - (\boldsymbol A \cdot \nabla) \boldsymbol B_i </math> が成り立つので<ref>この式の導出に困ったらベクトル三重積の導出を参考すること。但し、微分の扱いに注意すること。ベクトル三重積の導出の六行目までは、Bを∇に読み替えても成立するが、七行目の式変形は成立しない。なぜなら、偏微分とベクトルの成分を入れ替えて <math>\partial_i C_j=C_j \partial_i</math> とすることは当然不可能だからである。</ref>、これを第二項に代入する。第一項に就ても同様の式が成り立つため、これを代入すると結局、 <math>\nabla(\boldsymbol A \cdot \boldsymbol B)=\boldsymbol A \times (\nabla \times B) + \boldsymbol B \times (\nabla \times \boldsymbol A) + (\boldsymbol A \cdot \nabla)\boldsymbol B + (\boldsymbol B \cdot \nabla)\boldsymbol A </math> が得られる。
'''定理'''
<math>
\nabla \cdot(f\boldsymbol A )= \nabla f \cdot \boldsymbol A + f \nabla \cdot \boldsymbol A
</math>
<math>\nabla \times(f\boldsymbol A)=\nabla f \times \boldsymbol A + f\nabla \times \boldsymbol A </math>
が成り立つ。
'''証明'''
<math>
\begin{align}
\nabla \cdot (f \boldsymbol A) &= \partial_i (fA_i)\\ &= (\partial_i f ) A_i + f (\partial_i A_i)\\ &= \nabla f \cdot \boldsymbol A + f\nabla \cdot \boldsymbol A
\end{align}
</math>
<math>
\begin{align}
{[\nabla \times f \boldsymbol A]}_i &= \varepsilon_{ijk}\partial_j(fA_k)\\
&= \varepsilon_{ijk}\partial_jf \,A_k + \varepsilon_{ijk}f\partial_j \,A_k \\
&= {[\nabla f \times \boldsymbol A]}_i + {[f\nabla \times \boldsymbol A]}_i
\end{align}
</math>
'''定理'''
<math>\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A} )=\nabla (\nabla \cdot \boldsymbol{A} ) - \text{∆} \boldsymbol{A} </math> が成り立つ。
'''証明'''
<math>\begin{align} {[}\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A}){]}_i &= \varepsilon_{ijk}\partial_j[\nabla \times \boldsymbol A]_k \\
&= \varepsilon_{ijk}\varepsilon_{klm}\partial_j\partial_l{ A}_m \\
&= \partial_i\partial_jA_j - \partial_j\partial_jA_i
\end{align} </math><ref name=":0" />
それぞれの成分に就て展開すると
<math> {[}\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A}){]}_1=\partial_1(\partial_1A_1+\partial_2A_2+\partial_3A_3) - (\partial_1^2+\partial_2^2+\partial_3^2)A_1
</math>
<math> {[}\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A}){]}_2=\partial_2(\partial_1A_1+\partial_2A_2+\partial_3A_3) - (\partial_1^2+\partial_2^2+\partial_3^2)A_2
</math>
<math> {[}\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A}){]}_3=\partial_3(\partial_1A_1+\partial_2A_2+\partial_3A_3) - (\partial_1^2+\partial_2^2+\partial_3^2)A_3
</math>
である。これは <math>\nabla \times (\nabla \times \boldsymbol{A} )=\nabla (\nabla \cdot \boldsymbol{A} ) - \text{∆} \boldsymbol{A} </math> であることを意味する。
これらの計算は、電磁気学等で頻繁に用いられるので、よく練習しておかねばならない。
'''定理'''
位置ベクトル <math>
\boldsymbol r
</math> に就て <math>
r=|\boldsymbol r| =\sqrt{x^2+y^2 + z^2}
</math> とすると、<math>
\nabla r^n=n r^{n-2}{\boldsymbol r}
</math>である。
'''証明'''
<math>
\frac{\partial}{\partial x}r^n=nr^{n-1}\frac{\partial}{\partial x}\sqrt{x^2 + y^2 + z^2}=nr^{n-1} \frac x r=nr^{n-2}x
</math>
<math>
y,z
</math> に就ても同様である。
則ち、<math>
\nabla r^n=\begin{pmatrix} nr^{n-2}x \\nr^{n-2}y \\nr^{n-2}z\end{pmatrix}=nr^{n-2}\boldsymbol r.
</math>
=== 極座標系 ===
ここでは、極座標での勾配、発散、ラプラシアンを求める。
極座標では、位置ベクトルは <math>\boldsymbol r = \begin{pmatrix} x\\ y\\ z \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} r\sin\theta\cos\varphi\\ r\sin\theta\sin\varphi\\ r\cos\theta \end{pmatrix}
</math> となる。正規直交基底は <math>\boldsymbol e_r := \frac{\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial r}}{\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial r}\right|} = \begin{pmatrix}\sin\theta\cos\varphi\\ \sin\theta\sin\varphi\\ \cos\theta\end{pmatrix}
</math>,<math>\boldsymbol e_\theta
:= \frac{\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \theta}}{\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \theta}\right|}
= \frac 1 r \begin{pmatrix}r\cos\theta\cos\varphi\\ r\cos\theta\sin\varphi\\ -r\sin\theta\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}\cos\theta\cos\varphi\\ \cos\theta\sin\varphi\\ -\sin\theta\end{pmatrix}
</math>,<math>\boldsymbol e_\varphi
:= \frac{\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \varphi}}{\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \varphi}\right|}
= \frac{1}{r\sin\theta}\begin{pmatrix}-r\sin\theta\sin\varphi\\ r\sin\theta\cos\varphi\\ 0 \end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}-\sin\varphi\\ \cos\varphi\\ 0 \end{pmatrix}
</math>である。
微小変位ベクトル <math>d\boldsymbol r = dx\boldsymbol e_x + dy\boldsymbol e_y + dz\boldsymbol e_z
</math> は極座標では、
<math>\begin{align}d\boldsymbol r &= \frac{\partial \boldsymbol r}{\partial r}dr + \frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \theta}d\theta + \frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \varphi}d\varphi\\
&= \left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial r}\right|\boldsymbol e_r dr +\left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \theta}\right|\boldsymbol e_\theta d\theta + \left|\frac{\partial \boldsymbol r}{\partial \varphi}\right|\boldsymbol e_\varphi d\varphi\\
&= \boldsymbol e_r dr + r\boldsymbol e_\theta d\theta + r\sin\theta\boldsymbol e_\varphi d\varphi
\end{align}
</math>
と書ける。
関数 <math>f
</math> の全微分 <math>df
</math> は <math>df = \frac{df}{dx}dx + \frac{df}{dy}dy + \frac{df}{dz}dz = \nabla f \cdot d\boldsymbol r
</math> となる。
極座標での発散を <math>\nabla f = \nabla_r f \, \boldsymbol e_r + \nabla_\theta f \, \boldsymbol e_\theta + \nabla_\varphi f \, \boldsymbol e_\varphi
</math> とすると、<math>\begin{align}df &= \nabla f \cdot d\boldsymbol r \\
&= (\nabla_r f \, \boldsymbol e_r + \nabla_\theta f \, \boldsymbol e_\theta + \nabla_\varphi f \, \boldsymbol e_\varphi)\cdot (\boldsymbol e_r dr + r\boldsymbol e_\theta d\theta + r\sin\theta\boldsymbol e_\varphi d\varphi)\\
&=\nabla_r f\, dr + r\nabla_\theta f \, d\theta + r\sin\theta\nabla_\varphi f \, d\varphi
\end{align}
</math>
である。これと極座標での全微分 <math>df = \frac{\partial f}{\partial r}dr + \frac{\partial f}{\partial \theta}d\theta + \frac{\partial f}{\partial \varphi}d\varphi
</math> と比較すると、
<math>\nabla_r f = \frac{\partial f}{\partial r},\nabla_\theta f = \frac{1}{r}\frac{\partial f}{\partial \theta},\nabla_\varphi f = \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial f}{\partial \varphi}{}
</math> を得る。
すなわち、極座標での発散は <math>\nabla f =\frac{\partial f}{\partial r} + \frac{1}{r}\frac{\partial f}{\partial \theta} + \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial f}{\partial \varphi}{}
</math> である。
基底ベクトルの微分は、
<math>\frac{\partial \boldsymbol e_r}{\partial r} = 0,\frac{\partial \boldsymbol e_r}{\partial \theta} = \boldsymbol e_\theta,\frac{\partial \boldsymbol e_r}{\partial \varphi} = \sin\theta \boldsymbol e_\varphi
</math>
<math>\frac{\partial \boldsymbol e_\theta}{\partial r} = 0,\frac{\partial \boldsymbol e_\theta}{\partial \theta} = -\boldsymbol e_r,\frac{\partial \boldsymbol e_\theta}{\partial \varphi} = \cos\theta\boldsymbol e_\varphi
</math>
<math>\frac{\partial \boldsymbol e_\varphi}{\partial r} = 0,\frac{\partial \boldsymbol e_\varphi}{\partial \theta} = 0,\frac{\partial \boldsymbol e_\varphi}{\partial \varphi} = -\cos\theta\boldsymbol e_r - \sin\theta \boldsymbol e_\theta
</math>
であることを使って極座標でのベクトル <math>\boldsymbol A
</math> の発散を計算すると、
<math>\begin{align}\nabla \cdot A
&= \left(\boldsymbol e_r\frac{\partial f}{\partial r} + \boldsymbol e_\theta \frac{1}{r}\frac{\partial }{\partial \theta} + \boldsymbol e_\varphi \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial f}{\partial \varphi}\right)\cdot (A_r\boldsymbol e_r + A_\theta \boldsymbol e_\theta + A_\varphi \boldsymbol e_\varphi)\\
&= \boldsymbol e_r \cdot \left(\frac{\partial A_r}{\partial r}\boldsymbol e_r\right) + \frac 1 r \boldsymbol e_\theta \cdot \left( \frac{\partial A_\theta}{\partial \theta}\boldsymbol e_\theta + A_r\boldsymbol e_\theta\right) + \frac{1}{r\sin\theta}\boldsymbol e_\varphi \cdot \left( \frac{\partial A_\varphi}{\partial \varphi}\boldsymbol e_\varphi + A_r\sin\theta \boldsymbol e_\varphi + A_\theta\cos\theta\boldsymbol e_\varphi\right)\\
&= \frac{1}{r^2}\frac{\partial (r^2 A_r)}{\partial r} + \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial (\sin\theta A_\theta)}{\partial \theta} + \frac{1}{r\sin\theta}\frac{\partial A_\varphi}{\partial \varphi}
\end{align}
</math>
となる。
また、ラプラシアンに極座標での勾配と発散を代入すると、
<math>\triangle f = \nabla \cdot \nabla f =\frac{1}{r^2}\frac{\partial }{\partial r}\left(r^2 \frac{\partial f}{\partial r}\right) + \frac{1}{r^2\sin\theta}\frac{\partial }{\partial \theta}\left(\sin\theta\frac{\partial f}{\partial \theta}\right) + \frac{1}{r^2\sin^2\theta}\frac{\partial^2 f}{\partial \varphi^2}
</math>
となり、ラプラシアンの極座標表示が得られた。
===テンソル代数===
====テンソルの定義====
物理の計算においては、テンソルと呼ばれる量が
頻繁に用いられる。これは3次元における電磁気学の計算や、
古典力学における慣性モーメントなどで用いられるが、
特殊相対論、一般相対論においても用いられる。
但し、特に一般相対論においては、計量テンソルと呼ばれる
特殊なテンソルが導入されるため、計算が非常に複雑になる。
ここでは、主に3次元のテンソル計算を扱うが、
特殊相対論における計算も少し扱う。
まずは、テンソルを定義する。
あるn次元のベクトルを考える。
このベクトルに対して、一般にあるベクトルからそれと同じ
次元のベクトルに変換するような線形変換を考えることが出来る。
この変換は、そのベクトルを同じ次元のベクトルに変換することから、
n*nの行列で書けることが分かる。
さて、次にこれらのベクトルのいくつかの(m個とする。)直積を取って、
mn個の要素を含む列ベクトルを作ることを考える。
直積の取り方に就ては、[[物理数学I]]を参照。
:<math>
V \times V \times \cdots \times V
</math>
この操作によってできたmnベクトルは、上の行列によって表わされる
n行のベクトルから出来たm次のテンソルの一種となっている。
但し、一般のテンソルはもう少し複雑で、
既に上で得たベクトルとのつながりを忘れてしまったmn次元のベクトルが
上と同じ様な変換性を持つとき、これを上のベクトルに対する
m次のテンソルと呼ぶ。
ここでは、さらにこれらのテンソルが従う変換の行列を
構成することを考える。
ここで、先ほど定めたmn行のベクトルの成分のうち、直積を取られる前は別の
ベクトルだった部分のそれぞれが、直積を取られる前と同じように変換するような
mn*mn次の変換行列を作りたい。
このためには、先ほど定めたn*nの行列による変換のm回の直積を取って、
mn*mnの行列を作ればよい。
このとき行列の直積の性質
:<math>
(A_1 \times B_1) \cdot (A_2 \times B_2 ) =
A_1 A_2 \times B_1 B_2
</math>
から、
この行列が先ほどの性質を満たすことが分かる。
ここで、これらの行列やベクトルは添字を上手くつけることによって
書き表すことが出来る。
先ほど述べたうち、元々のベクトルを
:<math>
A^\mu
</math>
と書く。
次に、元々のベクトルを変換する行列を
:<math>
\Lambda ^{\mu\nu}
</math>
と書くと、この行列により変換された後のベクトルは、
:<math>
\Sigma_{\nu=1}^{n} \Lambda ^{\mu\nu} A^\nu
</math>
で表わされる。
ここで、行列を添字を用いて計算する方法を使った。
但し、物理の計算においては、
"同じ式の中に同じ添字が2回出て来たとき、この2つの添字を
足し合わせる"という規約を用いることが多い。
これをEinsteinの規約と呼び、一般相対論でEinsteinが用いてから
よく使われるようになった。
この規約を用いると、上の式は簡単に、
:<math>
\Lambda ^{\mu\nu} A^\nu
</math>
と書かれる。以下の計算では、常にこの規約を用い、
この規約が適用されないところでは、注意書きを行なうこととする。
さらに、元々のベクトルの直積は、
:<math>
A^\mu A^\nu
</math>
となる。
但し、ここでは、簡単にするためm=2と定めた。
これらを変換するmn*mn行列は
:<math>
\Lambda ^{\mu\rho} \Lambda ^{\nu\sigma}
</math>
となる。
また、これらの行列によって変換されたベクトルは、
:<math>
\Lambda ^{\mu\rho} \Lambda ^{\nu\sigma} A^\rho A^\sigma
</math>
で表わされる。
これらの変換則から一般的なテンソルを構成することが出来る。
例えば、ここでもm =2と定める。上の議論からこの量は
2つの添字を用いて、
:<math>
T^{\mu\nu}
</math>
と書くことが出来、この量が従う変換則は、
:<math>
\Lambda ^{\mu\rho} \Lambda ^{\nu\sigma}
T^{\rho\sigma}
</math>
となることがわかる。この量をある変換<math>\Lambda </math>に対する、
2次のテンソルと呼ぶ。
ここでは、テンソルの代数を定義した。このことを用いて、
ここからはより複雑な微分を見て行く。
===多変数関数の積分===
多変数関数の積分は1変数の場合の拡張によって定義される。
特に、いくつかの計算は物理的な意味が明確であるので
物理数学においても扱われることが多い。
====ガウスの定理====
ここで直交座標系を用いた場合に就て、
ある定理を導出する。
この定理は、ベクトルの発散という量の物理的意味を
与えてくれる点で重要である。
:<math>
\iiint_V dxdydz \mathrm{div} \vec A=\iint d\vec s \vec A
</math>
が成り立つ。
ここで、左辺の体積積分はある領域に就て行なわれ、
右辺の表面積分は、その領域を囲む面積全体に対して
行なわれる。
この定理をガウスの定理と呼ぶ。
{{w|ガウス}}は19世紀の非常に有名な数学者の名前である。
導出に移る前に、この定理の意味を述べる。
まずは右辺に注目する。右辺の被積分関数
:<math>
d\vec s \vec A
</math>
は、ある点での面積要素に垂直な
:<math>
\vec A
</math>
の値を表わしている。これは例えば、
:<math>
\vec A
</math>
が、流体力学でいう流体の流れる速度を表わすベクトルだったとするなら、
その流れのうちで今定めた面積要素から流れだす流量を表わしている。
この量を領域Vを囲む表面全体で足し合わせることから、この量は
領域Vから流れ出す流体の流量の和に等しいことが分かる。
ここで、領域Vの中に流体が湧出て来るような場所が合ったとすると、このとき
領域Vから流れ出す流量は、有限になると考えられる。
このためには、左辺で
:<math>\mathrm{div} \vec A</math>
が流体の湧出の周りで有限になっていなければならない。
これらのことからベクトルの発散は、
:<math>
\mathrm{div} \vec A
</math>
の意味は、ベクトルAの湧出に対応していることが分かる。
発散という名前は、ベクトルAがどこからか現われて、周りに広がって行く
様子から来ている。
ここからは、この定理の導出に移る。但し、ここでの導出は直観的なものであり、
局限移行等に就ては数学的に厳密なものではないことを注意しておく。
*導出
まず、ある領域Vを非常に小さい立方体の領域<math>v_i</math>に分割する。
領域Vがどんな形であっても、このことは常に可能だと期待される。
ここで、ある互いに接し合う2つの小さい領域<math>v_1</math>と<math>v_2</math>に就て
この定理が示されたとする。
このとき、領域<math>v_1</math>と領域が<math>v_2</math>接している面を考える。
それぞれの領域からの寄与は、その点でのベクトルの大きさと
その面積要素の大きさが同じであることから同じであると考えられ、
また、それらは互いに接しているので、面積分の性質から見て、
それらの寄与は互いに異なった符合を持っている。
ここで、今考えている領域2つを張りつけて新しい領域
<math>v_3</math>を作り、この領域に就て元の式の左辺を計算すると、
その量は、
:<math>
\iiint_{v_1+v_2} dxdydz \mathrm{div} \vec A
</math>
となる。ここで、右辺に就ても互いに重なった部分の寄与が打ち消し合うことから、
:<math>
\iint_{\partial v_3} d\vec s \vec A
</math>
のように<math>v_3</math>の周りに就て元の式の表式が成り立っている。
ここで<math>v_3</math>の囲む領域の表面として
:<math>
\partial v_3
</math>
という表式を導入した。実際にはこの表式は数学の本から来ており、
物理の本でも割合よく用いられる。
結局、小さい立方体に就てこの定理が示されれば、元の領域に就ても
この定理が正しいことが分かった。
次にこのことが実際小さい立方体に就て正しいことを見る。
立方体の辺の長さを<math>\epsilon</math>とする。
このとき、元の式に就て
:<math>
\begin{matrix}
\mathrm{lhs}=\int _v \mathrm{div} \vec A\\
= \epsilon^3 \mathrm{div} \vec A
\end{matrix}
</math>
となる。
更に、右辺に就ては
:<math>
\begin{matrix}
\mathrm{rhs}=A_x(x+\epsilon,y+\epsilon /2,z+\epsilon /2) \epsilon^2 - A_x(x,y+\epsilon /2,z+\epsilon /2) \epsilon^2\\
+A_y(x+\epsilon/2, y+\epsilon,z+\epsilon/2) \epsilon^2 - A_y(x+\epsilon /2,y+\epsilon,z+\epsilon/2) \epsilon^2\\
+A_z(x+\epsilon/2, y+\epsilon/2,z+\epsilon) \epsilon^2 - A_z(x+\epsilon/2, y+\epsilon/2,z) \epsilon^2
\end{matrix}
</math>
のような表式が得られる。この式は、それぞれの面に対する面積分をあからさまに
積分したものである。ここで、特にそれぞれの面の中心を通るように
積分の点を選んでいる。これは、局限移行を上手く行なうためだが、
もう少し違った点を選んでも結果を得ることは出来る。
次に、上の表式を<math>\epsilon</math>に就てテイラー展開する。このとき、
:<math>
= \epsilon^2( \epsilon(\frac{\partial{A_x(x,y,z)}}{\partial{x}} ))
+ \epsilon^2( \epsilon(\frac{\partial{A_y(x,y,z)}}{\partial{y}} ))
+ \epsilon^2( \epsilon(\frac{\partial{A_z(x,y,z)}}{\partial{z}} ))
</math>
が得られる。
これを纏めると、
:<math>
= \epsilon^3 \mathrm{div} \vec A
</math>
が得られるが、これは丁度左辺からの式と一致している。
よって、小さい立方体に就てはこの定理は正しい。
====ストークスの定理====
次にベクトルの回転の物理的意味を特徴づける定理を扱う。
まずは定理を述べる。
:<math>
\iint dS \mathrm{rot} \vec A =\int d\vec l \vec A
</math>
が成り立つ。
ここで、この式の左辺はある面積Sに就て積分し、
この式の右辺は、その面積の外周に就ての線積分を行なう。
ここでも、ある面積Sの外周のことを、
:<math>
\partial S
</math>
と書くことがある。
この定理をストークスの定理と呼ぶ。
例えば、
:<math>
\vec A
</math>
を流体の速度ベクトルとしてみる。このとき、速度ベクトルをある面積の
外周に就て積分したとき、その値はその面積内の速度の回転の積分に
等しい。このことは、速度ベクトルの回転が、これらの流体の渦のような
ものに対応していることを示している。
実際、流体力学では
:<math>
\mathrm{rot} \vec u
</math>
のことを渦度と呼び、流体中の渦の様子を示す重要な量となっている。
この様に、ベクトルの回転はそのベクトルに就てある閉じた経路に就て
積分したものに対応している。
:<math>
\mathrm{rot} \vec A
</math>
が全ての点で成り立つ場合、全ての閉経路に対する線積分は0に等しくなる。
これは、流体でいうと渦無しの流れに対応している。
また、この結果は複素解析の線積分の定理の1つに対応しており、その面からも
重要である。複素解析に就ては、[[物理数学II]]で扱う予定である。
*導出
まず、ある面積Sを辺の長さが<math>\epsilon</math>に等しい小さな正方形に分ける。
正方形の大きさが十分小さいとき、このことは常に可能であると期待できる。
ここで、互いに接している小さい正方形に就てそれぞれの辺からの線積分の寄与は、
大きさが等しく、符合が反対であることが分かる。このことは、線積分の
経路を反時計周りに取るというきまりを守っていると、その辺で接するためには
積分の向きが逆になっていなくてはいけないということによる。
ここで、今挙げた小さな2つの正方形を張り付けた長方形に就て
同じ計算を行なう。このとき、互いに張りついた1つの辺からの寄与は打ち消し
あうので、同じ計算が張りつけた後の長方形に就ても成り立つ。
このことを繰りかえせば、小さな正方形に就てこの定理が成り立ったとき、
元々の領域に就てもこの定理が成り立つと期待できる。
さて、ここで、辺の長さが<math>\epsilon</math>に等しい正方形に就てこの定理が
成り立っていることを示す。
これらの正方形の各辺に平行になるように、x,y軸を取って
:<math>
\iint dS \mathrm{rot} \vec A =\int d\vec l \vec A
</math>
の左辺を計算すると、
:<math>
(\mathrm{lhs})=\epsilon ^2 \mathrm{rot} \vec A (x+ \epsilon/2,y+\epsilon/2)
</math>
が成り立つ。
次に右辺に就て、
:<math>
\begin{matrix}
(\mathrm{rhs}) =\epsilon \{A_x(x+\epsilon/2,y ) - A_x(x+\epsilon/2,y+\epsilon) \}\\
+ \epsilon \{A_y(x+\epsilon ,y+\epsilon/2 ) - A_y(x,y+\epsilon/2) \} \\
=\epsilon^2 \{ - \frac{\partial{A_x }}{\partial{y}} + \frac{\partial{A_y}}{\partial{x}} \} \\
= \epsilon^2 \mathrm{rot } \vec A
\end{matrix}
</math>
が得られるが、これは右辺の表式と等しい。
よって、小さい正方形に就てこの定理は示された。
また、以前の議論からこのとき元の領域に就てもこの定理は正しいことが
分かっている。よって、全ての領域に就て、この定理は正しいことが
示された。
===直交座標系でないときの計算===
直交座標系でないときにも
grad,div,rotを計算することが出来る。
ここではまず、座標系の定義を行なうことから始める。
また、上の議論からこのことは全ての領域Vに対してもこの定理が正しいことを
示している。
この定理は電磁気学で頻繁に用いられる重要な定理である。
== 関連項目 ==
*[[初等数学公式集/解析幾何/コラム#外積の計算]]
*[[線型代数学/ベクトル#スカラー・ベクトル三重積]]
== 脚注 ==
{{DEFAULTSORT:へくとるかいせき}}
[[カテゴリ:ベクトル解析]]
k86wmwt4qg2vy6r9ksmtrqfhdr0chse
古語活用表
0
2766
299054
273704
2026-05-02T23:02:26Z
~2026-26754-58
91353
無駄字
299054
wikitext
text/x-wiki
{{pathnav|語学|日本語|frame=1}}
{{pathnav|高等学校の学習|高等学校古文|frame=1}}
日本語の古語の活用表
{| class="wikitable" style="background:#fff"
|+ 用言
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| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|命令形
|-
|rowspan="9"|動詞||四段活用||飽く||飽||か||き||く||く||け||け
|-
|下一段活用||蹴る||(蹴)||け||け||ける||ける||けれ||けよ
|-
|下二段活用||受く||受||け||け||く||くる||くれ||けよ
|-
|上一段活用||着る||(着)||き||き||きる||きる||きれ||きよ
|-
|上二段活用||起く||起||き||き||く||くる||くれ||きよ
|-
|カ行変格活用||来||(来)||こ||き||く||くる||くれ||こよ
|-
|サ行変格活用||為||(為)||せ||し||す||する||すれ||せよ
|-
|ナ行変格活用||死ぬ||死||な||に||ぬ||ぬる||ぬれ||ね
|-
|ラ行変格活用||有り||有||ら||り||り||る||れ||れ
|-
|rowspan="2"|形容詞||ク活用||多し||多||く<br>から||く<br>かり||し<br> ||き<br>かる||けれ<br>かれ|| <br>かれ
|-
|シク活用||美し||美||しく<br>しから||しく<br>しかり||し<br> ||しき<br>しかる||しけれ<br> || <br>しかれ
|-
|rowspan="2"|形容動詞||ナリ活用||静かなり||静か||なら<br> ||なり<br>に||なり<br> ||なる<br> ||なれ<br> ||なれ<br>
|-
|タリ活用||堂々たり||堂々||たら<br> ||たり<br>と||たり<br> ||たる<br> ||たれ<br> ||たれ<br>
|}
*上一段動詞はつぎのとおりである。着る、似る、煮る、干(ひ)る、乾(ひ)る、簸(ひ)る、嚏(ひ)る、見る、うしろみる、おもんみる、かへりみる、かんがみる、こころみる、回(み)る、射(い)る、鋳(い)る、癒(い)る、沃(い)る、居(ゐ)る、率(ゐ)る、率(ひき)ゐる、用(もち)ゐる。
*上一段は「きみにいゐひ」(君にいい日)と覚える。
*下一段活用は 蹴(け)る の1語のみである(←蹴(く)ゑる)。
*カ行変格活用は来(く)の1語のみである。
*ヤ行上二段活用の動詞は、老(お)ゆ、悔(く)ゆ、報(むく)ゆ の3語のみである。
*ア行下二段活用の動詞は、得(う)、心得(こころう)、所得(ところう) の3語のみである。
*ワ行下二段活用の動詞は、植(う)う、飢(う)う、据(す)う の3語のみである。
*ナ行変格活用は死ぬ、いぬ(往、去)のみである。
*ラ行変格活用は、あり、居(を)り、侍(はべ)り、いますが(か)り、いまそが(か)り のみである。
{| class="wikitable" style="background:#fff"
|+ 助動詞
|-
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|意味
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|語
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|接続
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|未然形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|連用形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|終止形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|連体形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|已然形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|命令形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|活用型
|-
|rowspan="2"|自発<br>可能<br>受身||る||四段・ナ変・ラ変動詞の未然形||れ||れ||る||るる||○||○||下二段型
|-
|らる||動詞「<ruby><rb>寝</rb><rp>(</rp><rt>ぬ</rt><rp>)</rp></ruby>」の未然形||られ||○||○||○||○||○||下二段型
|-
|尊敬||す||活用語の未然形||さ||し||す||す||せ||せ||四段型
|-
|反復・継続||ふ||四段動詞の未然形||は||ひ||ふ||ふ||へ||へ||四段型
|-
|rowspan="2"|自発・可能・<br>尊敬・受身。<br>動作・作用・状態の自然展開的<br>無作為的成立。||る||四段・ナ変・ラ変動詞の未然形||れ||れ||る||るる||るれ||れよ||下二段型
|-
|らる||四段・ナ変・ラ変以外の動詞の未然形||られ||られ||らる||らるる||らるれ||られよ||下二段型
|-
|rowspan="3"|使役<br>尊敬||す||四段・ナ変・ラ変動詞の未然形||せ||せ||す||する||すれ||せよ||下二段型
|-
|さす||四段・ナ変・ラ変以外の動詞の未然形||させ||させ||さす||さする||さすれ||させよ||下二段型
|-
|しむ||活用語の未然形||しめ||しめ||しむ||しむる||しむれ||しめよ||下二段型
|-
|打消||ず||活用語の未然形|| <br>ざら||に<br>ず<br>ざり||ず<br> ||ぬ<br>ざる||ね<br>ざれ|| <br>ざれ||特殊型<br>(無変化+四段+ラ変)
|-
|rowspan="2"|推量<br>意志<br>適当・勧誘<br>仮定・婉曲||む||活用語の未然形||○||○||む||む||め||○||四段型
|-
|むず||活用語の未然形||○||○||むず||むずる||むずれ||○||サ変型
|-
|反実仮想<br>実現不可能な願望・残念<br>ためらいの気持ち||まし||活用語の未然形||ましか<br>ませ||○||まし||まし||ましか||○||特殊型
|-
|打消推量<br>打消意志||じ||活用語の未然形||○||○||じ||じ||じ||○||無変化形
|-
|願望||まほし||活用語の未然形||まほしく<br>まほしから||まほしく<br>まほしかり||まほし<br> ||まほしき<br>まほしかる||まほしけれ<br> ||○||シク活用型
|-
|過去||き||活用語の連用形<br>カ変・サ変には特殊な接続<br>こし、こしか、きし、きしか<br>せし、せしか、しき||(せ)||○||き||し||しか||○||特殊型<br>未然形せには異説あり
|-
|過去<br> 詠嘆||けり||活用語の連用形||けら||○||けり||ける||けれ||○||ラ変型
|-
|rowspan="2"|完了<br>強意<br>並列||つ||活用語の連用形||て||て||つ||つる||つれ||てよ||下二段型
|-
|ぬ||活用語の連用形||な||に||ぬ||ぬる||ぬれ||ね||ナ変型
|-
|rowspan="2"|完了<br>存続||たり||活用語の連用形||たら||たり||たり||たる||たれ||たれ||ラ変型
|-
|り||四段の已然形<br>サ変の未然形<br>時枝文法では四段・サ変の命令形||ら||り||り||る||れ||れ||ラ変型
|-
|過去推量<br>過去の原因推量<br>過去の伝聞・婉曲||けむ||活用語の連用形||○||○||けむ||けむ||けめ||○||四段型
|-
|願望||たし||活用語の連用形||たく<br>たから||たく<br>たかり||たし<br> ||たき<br>たかる||たけれ<br> ||○||ク活用型
|-
|推量<br>意志<br>可能<br>当然・義務<br>命令<br>適当・勧誘||べし||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形||べく<br>べから||べく<br>べかり||べし<br> ||べき<br>べかる||べけれ<br> ||○||ク活用型
|-
|現在推量<br>原因推量<br>伝聞・婉曲||らむ||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形<br>上代は上一段動詞の連用形||○||○||らむ||らむ||らめ||○||四段型
|-
|推定||らし||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形<br>上代は上一段動詞の連用形||○||○||らし||らし<br>らしき||らし||○||無変化形
|-
|推定<br>婉曲||めり||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形||○||めり||めり||める||めれ||○||ラ変型
|-
|推定<br>伝聞||なり||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形||○||なり||なり||なる||なれ||○||ラ変型
|-
|打消推量<br>打消意志<br>不可能<br>打消当然<br>禁止<br>不適当||まじ||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形||まじく<br>まじから||まじく<br>まじかり||まじ<br> ||まじき<br>まじかる||まじけれ<br> ||○||シク活用型
|-
|断定<br>所在・存在||なり||活用語の連体形<br>体言||なら<br> ||なり<br>に||なり<br> ||なる<br> ||なれ<br> ||なれ<br> ||ナリ活用型
|-
|断定||たり||体言||たら<br> ||たり<br>と||たり<br> ||たる<br> ||たれ<br> ||たれ<br> ||タリ活用型
|-
|比況<br>例示||ごとし||活用語の連体形<br>体言<br>助詞「が」「の」||ごとく||ごとく||ごとし||ごとき||○||○||ク活用型
|-
|比況<br>例示<br>様子・状態<br>婉曲||やうなり||活用語の連体形<br>体言<br>助詞「が」「の」||やうなら<br> ||やうなり<br>やうに||やうなり<br> ||やうなる<br> ||やうなれ<br> ||○||ナリ活用型
|}
[[Category:日本語|ここかつようひよう]]
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299055
299054
2026-05-03T01:23:30Z
Tomzo
248
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273704
wikitext
text/x-wiki
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日本語の古語の活用表
{| class="wikitable" style="background:#fff"
|+ 用言
|-
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|品詞
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|活用の種類
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|例
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|語幹
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|未然形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|連用形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|終止形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|連体形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|已然形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|命令形
|-
|rowspan="9"|動詞||四段活用||飽く||飽||か||き||く||く||け||け
|-
|下一段活用||蹴る||(蹴)||け||け||ける||ける||けれ||けよ
|-
|下二段活用||受く||受||け||け||く||くる||くれ||けよ
|-
|上一段活用||着る||(着)||き||き||きる||きる||きれ||きよ
|-
|上二段活用||起く||起||き||き||く||くる||くれ||きよ
|-
|カ行変格活用||来||(来)||こ||き||く||くる||くれ||こ<br>こよ
|-
|サ行変格活用||為||(為)||せ||し||す||する||すれ||せよ
|-
|ナ行変格活用||死ぬ||死||な||に||ぬ||ぬる||ぬれ||ね
|-
|ラ行変格活用||有り||有||ら||り||り||る||れ||れ
|-
|rowspan="2"|形容詞||ク活用||多し||多||く<br>から||く<br>かり||し<br> ||き<br>かる||けれ<br>かれ|| <br>かれ
|-
|シク活用||美し||美||しく<br>しから||しく<br>しかり||し<br> ||しき<br>しかる||しけれ<br> || <br>しかれ
|-
|rowspan="2"|形容動詞||ナリ活用||静かなり||静か||なら<br> ||なり<br>に||なり<br> ||なる<br> ||なれ<br> ||なれ<br>
|-
|タリ活用||堂々たり||堂々||たら<br> ||たり<br>と||たり<br> ||たる<br> ||たれ<br> ||たれ<br>
|}
*上一段動詞はつぎのとおりである。着る、似る、煮る、干(ひ)る、乾(ひ)る、簸(ひ)る、嚏(ひ)る、見る、うしろみる、おもんみる、かへりみる、かんがみる、こころみる、回(み)る、射(い)る、鋳(い)る、癒(い)る、沃(い)る、居(ゐ)る、率(ゐ)る、率(ひき)ゐる、用(もち)ゐる。
*上一段は「きみにいゐひ」(君にいい日)と覚える。
*下一段活用は 蹴(け)る の1語のみである(←蹴(く)ゑる)。
*カ行変格活用は来(く)の1語のみである。
*ヤ行上二段活用の動詞は、老(お)ゆ、悔(く)ゆ、報(むく)ゆ の3語のみである。
*ア行下二段活用の動詞は、得(う)、心得(こころう)、所得(ところう) の3語のみである。
*ワ行下二段活用の動詞は、植(う)う、飢(う)う、据(す)う の3語のみである。
*ナ行変格活用は死ぬ、いぬ(往、去)のみである。
*ラ行変格活用は、あり、居(を)り、侍(はべ)り、いますが(か)り、いまそが(か)り のみである。
{| class="wikitable" style="background:#fff"
|+ 助動詞
|-
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|意味
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|語
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|接続
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|未然形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|連用形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|終止形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|連体形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|已然形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|命令形
| style="position: sticky;top: 0;border: solid #a2a9b1 1px;background: #eaecf0;vertical-align: bottom;"|活用型
|-
|rowspan="2"|自発<br>可能<br>受身||る||四段・ナ変・ラ変動詞の未然形||れ||れ||る||るる||○||○||下二段型
|-
|らる||動詞「<ruby><rb>寝</rb><rp>(</rp><rt>ぬ</rt><rp>)</rp></ruby>」の未然形||られ||○||○||○||○||○||下二段型
|-
|尊敬||す||活用語の未然形||さ||し||す||す||せ||せ||四段型
|-
|反復・継続||ふ||四段動詞の未然形||は||ひ||ふ||ふ||へ||へ||四段型
|-
|rowspan="2"|自発・可能・<br>尊敬・受身。<br>動作・作用・状態の自然展開的<br>無作為的成立。||る||四段・ナ変・ラ変動詞の未然形||れ||れ||る||るる||るれ||れよ||下二段型
|-
|らる||四段・ナ変・ラ変以外の動詞の未然形||られ||られ||らる||らるる||らるれ||られよ||下二段型
|-
|rowspan="3"|使役<br>尊敬||す||四段・ナ変・ラ変動詞の未然形||せ||せ||す||する||すれ||せよ||下二段型
|-
|さす||四段・ナ変・ラ変以外の動詞の未然形||させ||させ||さす||さする||さすれ||させよ||下二段型
|-
|しむ||活用語の未然形||しめ||しめ||しむ||しむる||しむれ||しめよ||下二段型
|-
|打消||ず||活用語の未然形|| <br>ざら||に<br>ず<br>ざり||ず<br> ||ぬ<br>ざる||ね<br>ざれ|| <br>ざれ||特殊型<br>(無変化+四段+ラ変)
|-
|rowspan="2"|推量<br>意志<br>適当・勧誘<br>仮定・婉曲||む||活用語の未然形||○||○||む||む||め||○||四段型
|-
|むず||活用語の未然形||○||○||むず||むずる||むずれ||○||サ変型
|-
|反実仮想<br>実現不可能な願望・残念<br>ためらいの気持ち||まし||活用語の未然形||ましか<br>ませ||○||まし||まし||ましか||○||特殊型
|-
|打消推量<br>打消意志||じ||活用語の未然形||○||○||じ||じ||じ||○||無変化形
|-
|願望||まほし||活用語の未然形||まほしく<br>まほしから||まほしく<br>まほしかり||まほし<br> ||まほしき<br>まほしかる||まほしけれ<br> ||○||シク活用型
|-
|過去||き||活用語の連用形<br>カ変・サ変には特殊な接続<br>こし、こしか、きし、きしか<br>せし、せしか、しき||(せ)||○||き||し||しか||○||特殊型<br>未然形せには異説あり
|-
|過去<br> 詠嘆||けり||活用語の連用形||けら||○||けり||ける||けれ||○||ラ変型
|-
|rowspan="2"|完了<br>強意<br>並列||つ||活用語の連用形||て||て||つ||つる||つれ||てよ||下二段型
|-
|ぬ||活用語の連用形||な||に||ぬ||ぬる||ぬれ||ね||ナ変型
|-
|rowspan="2"|完了<br>存続||たり||活用語の連用形||たら||たり||たり||たる||たれ||たれ||ラ変型
|-
|り||四段の已然形<br>サ変の未然形<br>時枝文法では四段・サ変の命令形||ら||り||り||る||れ||れ||ラ変型
|-
|過去推量<br>過去の原因推量<br>過去の伝聞・婉曲||けむ||活用語の連用形||○||○||けむ||けむ||けめ||○||四段型
|-
|願望||たし||活用語の連用形||たく<br>たから||たく<br>たかり||たし<br> ||たき<br>たかる||たけれ<br> ||○||ク活用型
|-
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|-
|現在推量<br>原因推量<br>伝聞・婉曲||らむ||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形<br>上代は上一段動詞の連用形||○||○||らむ||らむ||らめ||○||四段型
|-
|推定||らし||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形<br>上代は上一段動詞の連用形||○||○||らし||らし<br>らしき||らし||○||無変化形
|-
|推定<br>婉曲||めり||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形||○||めり||めり||める||めれ||○||ラ変型
|-
|推定<br>伝聞||なり||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形||○||なり||なり||なる||なれ||○||ラ変型
|-
|打消推量<br>打消意志<br>不可能<br>打消当然<br>禁止<br>不適当||まじ||活用語の終止形<br>ただしラ変型は連体形||まじく<br>まじから||まじく<br>まじかり||まじ<br> ||まじき<br>まじかる||まじけれ<br> ||○||シク活用型
|-
|断定<br>所在・存在||なり||活用語の連体形<br>体言||なら<br> ||なり<br>に||なり<br> ||なる<br> ||なれ<br> ||なれ<br> ||ナリ活用型
|-
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|-
|比況<br>例示||ごとし||活用語の連体形<br>体言<br>助詞「が」「の」||ごとく||ごとく||ごとし||ごとき||○||○||ク活用型
|-
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|}
[[Category:日本語|ここかつようひよう]]
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東京理科大対策
0
3035
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263785
2026-05-03T05:28:05Z
なまえみてい
90434
cl, 加筆
299058
wikitext
text/x-wiki
{{wikipedia|東京理科大学}}
*[[日本の大学受験ガイド]] > [[東京理科大対策]]
本項は、[[w:東京理科大学|東京理科大学]]の入学試験対策に関する事項である。
東京理科大学は、東京都にある理工系総合大学である。文系学部は経営学部だけである。略称は「理科大」。
理科大の入試問題は計算力・思考力を問う良問が多い。理系学部の入試科目は英語、数学、理科(地学以外から一科目選択)である。早慶や旧帝国大、東京科学大の理・工学部の併願として受験する場合、特別な対策は不要だが、農学部、医療系学部との併願である場合、問題の質が異なるので対策が必要。実質倍率はどの学部も3~4倍程度である。
== 共通テスト利用入試(A方式) ==
共通テストの成績のみで合否を決める入試である。
=== 理系学部(昼間学部) ===
数学ⅠA・ⅡB、英語、理科1科目+国語or情報の共通テスト科目の成績が求められる。合格するには、薬学部で85%、その他の学部学科で75%~82%必要である。
{| class="wikitable"
!数学!!外国語!!理科!!国語!!情報!!計
|-
||200||200||200
| colspan="2" |100
|700
|}
=== 経営学部 ===
英数国+選択1科目(理科、社会、情報)の共通テストの成績が求められる。合格するには80%必要である。
{| class="wikitable"
!数学!!外国語!!国語!!国語!!情報!!社会!!計
|-
|200||200||200
| colspan="3" |200
|800
|}
=== 理学部第二部 ===
数学科は数学ⅠA・ⅡB(400点)、外国語または国語または理科または情報(200点)の成績が求められる。合格するには65%必要である。
物理学科、化学科は外国語(200点)、数学ⅡB(100点)、理科(100点)、数学ⅠAまたは情報(100点)の成績が求められる。合格するには60~63%必要である。
== 個別入試(B方式) ==
=== 理系学部 ===
==== 英語 ====
(60分)数学や理科に比べると英語の問題は総じて平易だが、下記の特徴を持つ。
* 他大学と比べて長文が長く、整序英作文も難易度が高いため、それらへの対策が必要である。なお整序英作文は、配点が全体の3割を占める年(2008年)もある。
* 年によって文法問題が見受けられないこともあるが、多くは長文問題に隠れて重複している。
* 整序英作文以外は概ね平易なので、まずは基本文法、語彙をマスターすることが重要。
* 長文は大抵、受験する学科に関連した英文が出るため、志望学科の専門領域に関連した語彙を覚えること。文学部向けの小説読解や社会問題読解などに時間を費やす必要はない。
==== 理系数学 ====
出題範囲は数I・数A (図形の性質・場合の数と確率)・数II・数B(数列・統計的な推測)・数III・数C(ベクトル・平面上の曲線と複素数平面)
制限時間は100分。良問が多いが、解法パターンを暗記しただけの勉強法では解けない。マーク式+記述の併用試験である。解法の理解を前提として、それらを応用する力が問われる。数IIIの出題が多く、微分積分、数列、三角関数がよく出題される。この領域に関してはかなりの習熟度が必要である。学部学科での難易度の差が激しい。先進工学部の問題は易~標準程度の為満点争いになる。工学部や数学科専用の問題の難易度は極めて高い。
繁雑な計算を長々とさせられた挙句に出る答えが,ルートの中に t の4次式が入るなど汚いものであることが多いが,それに惑わされずに解き進めてゆく必要があろう。
==== 理科 ====
(80分)物理・化学・生物の中から1科目選択して受験する。学部学科によっては、指定された科目を受験する。
===== 物理 =====
力学、熱力学、波動、電磁気の分野からよく出題される。洗練された良問が多く、難易度の高い問題も出るが、悪問や奇問は出題されない。知識よりも思考力を試す問題である。
工学部では数値計算の大問がある上に他学科より難易度が高い。10⁰として答える問題もある。計算ミスをしてないか慎重に進めること。
===== 化学 =====
化学に対する基本的な理解、および素早い計算力が問われることが多い。計算量は多い。
; 【理学部】
: 計算力重視の問題が多い。知識問題での失点を最小限にとどめ、計算問題でどれだけ粘れるかが大切である。特に化学科受験生は計算練習をしっかりとしておくことが大切である。最近は無機化学の出題頻度は少ないが、対策しないで受験することは望ましくない。
; 【薬学部】
: 化学の配点が大きいので化学の出来が合否に大きく影響する。有機化学の分量がやや多い。知識問題が多いが有機の知識問題では高度なものが出題されることがある。過去問に類似していることが多いので過去問対策は重要である。
; 【工学部】
: 理学部に比べると知識問題の割合は多いが、計算量の多い問題もあるので素早く正確に解くことが重要である。
; 【創域理工学部】
: 他の学部に比べると知識問題の分量が多い。高得点が取りやすいので7割以上は確実に取りたい。
===== 生物 =====
分子生物学領域の問題が多い。応用生物科学科では遺伝の計算問題が出題されることもあり、思考力と計算力が問われる。知識問題は少ない。限られた時間で問題文を適切に判断、計算していく能力が問われる。生物工学科は応用生物科学科よりシンプルな問題が多い。現象に対する理解を確認するだけではなく、それらを応用する力が求められるため、暗記型の学習では対応できない。
=== 経営学部 ===
経営学部は学科によって入試方式が微妙に異なっている。
・経営学科は3教科(400点満点)である。
【国語】国語総合・現代文B(古文・漢文を除く)(100)、
【数学】数I・数A (図形の性質・場合の数と確率)・数II・数B(数列・統計的な推測)・数C(ベクトル)(100)、
【外国語】コミュ英I・コミュ英II・コミュ英III・英語表現I・英語表現II(100)。
3教科のうち、高得点の2科目を1.5倍にして、合否判定する。
・国際デザイン経営学科は3教科(400点満点)である。
【国語】国語総合・現代文B(古文・漢文を除く)(100)、
【数学】数I・数A (図形の性質・場合の数と確率)・数II・数B(数列・統計的な推測)・数C(ベクトル)(100)、
【外国語】コミュ英I・コミュ英II・コミュ英III・英語表現I・英語表現II(200)。
・ビジネスエコノミクス学科は2~3教科(300点満点)である。
【数学】数I・数A(図形の性質・場合の数と確率)・数II・数B(数列・統計的な推測)・数C(ベクトル)(100)、
【外国語】コミュ英I・コミュ英II・コミュ英III・英語表現I・英語表現II(100)を必須科目とし、最後の1科目は
《国語》国語総合・現代文B(古文・漢文を除く)(100)、と
《数学》数I・数A(図形の性質・場合の数と確率)・数II・数B(数列・統計的な推測)・数III・数C(ベクトル・平面上の曲線と複素数平面)(100)の中から1科目を選択する。
東京理科大学経営学部は都内キャンパスへの全面移転により競争率が近年上昇している。
==== 英語 ====
必須科目。理系学部の「英語」を参照。
==== 選択科目1 ====
国語か理系数学(3Cまで)から1科目選択する。
'''国語'''<br />
全国の国語の入試問題の中でも、驚くほどの長い文章を課す。その分量は大問1つにつき、本文は10ページにも及ぶものである。大問構成は大問2つでどちらも前述した量の文章量である。記述式の設問が多いので、思考力が試される。今までは試験時間が100分であったが2016年度の入試から試験時間が80分になってしまった。その2016年の入試では大問1つにつき8ページから9ページ程に文章量は減ったが、設問数は変わらず時間内に終わらせるには相当至難な問題となっていた。2017年度以降に注目である。受験生は読解速度の向上と記述式の設問に慣れ、解答速度を上げておく必要がある。本文本文の諺や国文法に関する知識も問われ、単独での古文、漢文の出題は例年見受けられないものの、現古融合文は年によって課されるため、古文と漢文の学習は必須である。
'''理系数学'''<br />
理系学部の「理系数学」を参照。
==== 選択科目2 ====
数学(2B)
'''文系数学'''<br />
理系数学に比べると平易。
== グローバル方式/共通テスト+個別入試(C方式) ==
グローバル方式は英語資格の提出が必須となる試験。英検やTEAPで一定以上の点数を取ると加算される(最大25点)
C方式は共通テストの成績と個別入試の成績の合計で合否を決める入試である。
なおどちらも問題は同じ。但し併願は不可。
=== 理系学部 ===
国語、英語の共通テスト2科目と数学(ⅢCまで)、理科1科目の個別入試2科目を合わせた4科目の成績で合否を決める。
=== 経営学部 ===
国語、英語の共通テストと数学(ⅢCまで)、理科1科目の個別入試2科目を合わせた4科目の成績で合否を決める。ただし、個別入試では理科を受験せず、数学の1科目だけの受験も可能である。その場合は、数学の得点が2倍される。
== 個別入試(S方式) ==
創域理工学部の数理学科と電気電子情報工学科のみで行われる。400点満点で問題はB方式と同じだが、違いは数理学科は数学の配点が3倍、電気電子工学科は物理の配点が2倍となる。さらに数理学科では理科の試験は実施されない。数学や物理がかなり得意ならばこちらを受験するのもありだろう。A方式との併願が可能。また、同一試験日でなければB方式とS方式の併願も可能。
{| class="wikitable"
|+S方式の配点表
!
!数学!!英語!!物理!!計
|-
|電気電子情報工学科||100||100||200||400
|-
|数理科学科||300||100||||400
|}
== 外部サイト ==
*[http://www.tus.ac.jp/ 理科大公式サイト]
[[Category:大学入試|とうきようりかたいたいさく]]
jgj1suvwvuhxzul9ehe5toqveieth9a
高校化学 化学平衡
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299052
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wikitext
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== 化学平衡 ==
可逆反応において、順方向の反応と逆方向との反応速度がつりあって反応物と生成物の組成比が巨視的に変化しなくなる状態を扱う分野である。
== 可逆反応 ==
水素とヨウ素の混合気体を容器に入れ、一定温度に保っておくと、一部が反応してヨウ化水素を生じ、水素・ヨウ素・ヨウ化水素の混合気体になる。また、この容器にヨウ化水素だけを入れて同じ温度に保っておくと、一部が分解して水素とヨウ素が生じ、やはり水素・ヨウ素・ヨウ化水素の混合気体になる。
このように、水素とヨウ素の化合、ヨウ化水素の分解のように、ある反応に対してその逆の反応も起こるとき、一方を正反応、他方を逆反応といい、このどちらも進むような反応を'''可逆反応'''とよぶ。また、一方向にしか進まない反応を'''不可逆反応'''という。
== 平衡移動 ==
=== ルシャトリエの原理 ===
可逆反応が平衡状態にあるとき、温度や圧力の条件を変化させると、正反応または逆反応のどちらかが進んで、新たな平衡状態になる。この現象を'''平衡移動'''という。
可逆反応が平衡状態にあるとき、濃度・温度・圧力といった条件を変化させると、条件の変化を和らげる向きに反応が進んで、平衡が移動する。これは、'''ルシャトリエの原理'''(平衡移動の原理)とよばれる。
条件変化を和らげる向きとは、条件変化の効果を打ち消す向きに反応が進むことを示している。つまり、圧力を上げれば、総気体分子数が少なくなる圧力が下がる向きに反応が進み、温度を上げれば吸熱する向きに反応が進むことになる。
例えば、<chem>N2 + 3H2 <=> 2NH3</chem> <math>\quad \Delta H = -92.2\,\mathrm{kJ}</math> について考える。
ここで、窒素 <chem>N2</chem> の濃度を増加させると、<chem>N2</chem> の増加をやわらげる方向、<chem>N2</chem> が減少する右へ平衡が移動する。<chem>N2</chem> の濃度を減少させると、<chem>N2</chem> の減少をやわらげる方向、<chem>N2</chem> が増加する左へ平衡が移動する。
圧力を大きくすると、圧力の増大をやわらげる、つまり、気体分子の数が減少する右に平衡が移動する。圧力を小さくすると、圧力の減少をやわらげる、つまり、気体分子の数が増加する左に平衡が移動する<ref>反応式を見てみると、左辺の気体分子は合計で4、右辺は2である。つまり、右の反応が進むと気体分子数が減り、左の反応が進むと気体分子数が増える。</ref>。
ほか、反応に関係のない気体が加わっても、平衡は変化しない。同様に、触媒を加えても、平衡は変化しない。
温度を上げると、温度の増加をやわらげる方向、つまり、吸熱反応の左に平衡が移動する。温度を下げると(冷却すると)、温度の減少をやわらげる方向、つまり、発熱反応の右に平衡が移動する。
ほか、温度・圧力など一定のままでアンモニア <chem>NH3</chem> の濃度を上げても、加えたアンモニアの一部はルシャトリエの原理により、<chem>N2</chem> や <chem>H2</chem> の生成で消費され、つまり上記の化学式で左方向の反応が一時的に強まり、やがて、また平衡に達する。
ルシャトリエの原理は、熱化学方程式にも、有効である。
<math> \mathrm{N_2} + \mathrm{3H_2} = \mathrm{2NH_3} + 92.2 kJ </math>
たとえば <chem>N2</chem> , <chem>H2</chem>, <chem>NH3</chem> の混合気体で、もし圧力一定のまま温度を上げた場合は、ルシャトリエの原理および上の式から、左側に進む反応( <chem>N2</chem>および<chem>H2</chem> のほうが生成される)が起き、言い換えれば(熱化学方程式ではなく化学反応式だが)平衡が左に移動する。
* 他の物質の例
<chem>2NO2 <=> N2O4 </chem>
<math> \mathrm{2NO_2} = \mathrm{N_2O_4} + 57.2 kJ </math>
上記の <chem>NO2</chem> , <chem>N2O4</chem> の混合気体を冷却すると、冷却とは温度の減少だから、ルシャトリエの原理により温度減少を打ち消すように温度上昇の反応が起きるはずなので、よって発熱反応である右方向の反応が進み、結果として <chem>N2O4</chem> の濃度が増える。
なお、<chem>NO2</chem> , <chem>N2O4</chem> の混合気体の(冷却ではなく)温度を上げると、左向きの反応が進む。
=== 平衡定数 ===
:<chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <=> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem>
のような可逆反応が起こるとき、この反応系が化学平衡に達すると、化学平衡のときの各物質の濃度の間には、Kを定数として、次の関係が成り立つ。
:<math>
\frac{[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y}{[\mathrm A]^a [\mathrm B]^b} = K
</math>
この関係を'''化学平衡の法則'''といい、そのときの定数Kを'''平衡定数'''という。1つの反応系では、温度が決まれば平衡定数は一定値をとる。あるいは、上で定義された平衡定数の定義が、濃度の平衡によることから'''濃度平衡定数'''ともいい、その意味で表す際には、記号K<sub>c</sub>を用いる。
化学平衡の法則の証明は簡単である。右向きの化学反応 <chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} -> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem> は <math>a</math> 個の分子 <chem>A</chem> と <math>b</math> 個の分子 <chem>B</chem> の衝突によって起こる。この衝突が起きる確率は、 <math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math> に比例する。たとえば、反応系の中に微小な区画を考えて、その微小区画の中に分子が存在するとき分子は衝突すると考えることにすると、1個の分子 <chem>A</chem> が微小区画に存在する確率は、 <math>[\mathrm A]</math> に比例する。また、2個の分子 <chem>A</chem> が微小区画に存在する確率(つまり、2個の分子 <chem>A</chem> が微小区画において衝突する確率)は、 <math>[\mathrm A]^2</math> に比例する。このように考えていくと、微小区画に <math>a</math> 個の分子 <chem>A</chem> と <math>b</math> 個の分子 <chem>B</chem> が存在する確率は、<math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math> に比例することがわかる。これは、ある微小区画において、分子が衝突する確率だが、微小区画がどこにあっても、そこで衝突が発生する確率は変わらないから、これが、反応系において衝突が発生する確率であることは明らかだろう。
次に、左向きの化学反応 <chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <- \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem> が起きる確率も、同様に <math>[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y</math> に比例する。平衡状態では、右向きの反応と左向きの反応が起きる確率は等しい。その反応の頻度は、それぞれ <math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math>、<math>[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y</math> に比例するのだから、この2つの量は比例する:
<math>
[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y = K [\mathrm A]^a [\mathrm B]^b
</math>
これは、化学平衡の法則に他ならない。
=== 圧平衡定数 ===
上で定義された濃度平衡定数とは異なる平衡定数として、各々の反応物・生成物の分圧 <math>p</math> をもとに定義する平衡定数がある。平衡時の分圧を考えると、次のように'''圧平衡定数''' <math>K_p</math> が定義される。
濃度平衡定数と圧平衡定数には、反応式が
<chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <=> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem>
で表わされる場合に、分圧がモル濃度と比例することから、次の関係式がある。
:<math>
K_p=\frac{p_C^x p_D^y}{p_A^ap_B^b}=K_c(RT)^{(x+y)-(a+b)}
</math>
この関係式を導出する。理想気体の状態方程式の
:<math>pV=nRT</math>
は、圧力Vを右辺に移動すれば、
:<math>p=\left(\frac{n}{V}\right)RT=cRT </math>
と、圧力 <math>p</math> とモル濃度 <math>c</math> の関係式となり、圧力と温度とが比例する。この <math>p = cRT</math> を状態方程式を、圧平衡定数の式に代入すれば、
:<math>
K_p=\frac{p_C^x p_D^y}{p_A^a p_B^b}=\frac{([C]RT)^x ([D]RT)^y}{([A]RT)^a ([B]RT)^b}=\frac{[C]^x [D]^y}{[A]^a [B]^b} \frac{(RT)^x (RT)^y}{(RT)^a (RT)^b}=K_c(RT)^{(x+y)-(a+b)}
</math>
以上の計算例は、2個の反応物から2個の生成物が生じる反応式の場合だったが、他の反応式でも同様に、圧平衡定数と濃度平衡定数の関係式がある。
== 電離平衡 ==
酢酸を水に溶かすと、次のように電離し平衡状態になる<ref>より正確には、<chem>CH3COOH + H2O<=> CH3COO- + H3O+</chem>であるが、このように略す。</ref>。
<chem>CH3COOH <=> CH3COO- + H+</chem>
このような化学平衡を'''電離平衡'''という。
酢酸の電離平衡についても、化学平衡の法則を当てはめると、
<math>\frac{[\mathrm{CH_3COO^-}][\mathrm{H^+}]}{[\mathrm{CH_3COOH}]} = K_a</math>
となる。この平衡係数を'''電離定数'''という。
弱塩基についても同様に考えることができる。アンモニアの電離では、
<chem>NH3 + H2O <=> NH4+ + OH-</chem>
より、
<math>\frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}][\mathrm{H_2O}]} = K</math>
となる。ここで、<math>[\mathrm{H_2O}]</math> は非常に大きいため一定と近似していい。電離定数 <math>K_b</math> を <math>K_b = K[\mathrm{H_2O}]</math> として、
<math>\frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}]} = K_b</math>
となる。
=== 弱酸・弱塩基の電離 ===
モル濃度 <math>c</math> の弱酸 <chem>HA</chem> の水溶液では、電離度を <math>\alpha</math> とすると、<chem>[H+]</chem> と <chem>[A-]</chem> は <math>c\alpha</math> に等しくなる。従って、電離定数 <math>K_a</math> は、次のように表される。
{| class="wikitable"
|+
!
!<chem>HA</chem>
!<chem><=></chem>
!<chem>A-</chem>
!<chem>H+</chem>
|-
|電離前
|<math>c</math>
|
|<math>0</math>
|<math>0</math>
|-
|電離
|<math>-c\alpha</math>
|
|<chem>c\alpha</chem>
|<chem>c\alpha</chem>
|-
|平衡
|<math>c(1-\alpha)</math>
|
|<chem>c\alpha</chem>
|<chem>c\alpha</chem>
|}
:<math>
K_a=\mathrm{\frac{[H^+][A^-]}{[HA]}}=\frac{c\alpha \cdot c\alpha}{(c-c\alpha)}=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha}
</math>
ここで、電離度 <math>\alpha</math> が1より十分に小さい場合、 <math>\frac{1}{1-\alpha} \approx 1</math> と近似して、<math>
K_a=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha} \approx c\alpha^2
</math> である。これより、<math>\alpha = \sqrt{\frac{K_a}{c}}</math>を得る。
(無限等比級数を知っている場合、この近似は次のように理解することが出来る。<math>0 \le \alpha < 1</math> のとき、無限等比級数の和より、<math>1 + \alpha + \alpha^2 + \alpha^3 + \cdots = \frac{1}{1-\alpha}</math> である。つまり、<math>
\frac{c\alpha^2}{1-\alpha} = c\alpha^2(1 + \alpha + \alpha^2 + \cdots) = c\alpha^2 + c\alpha^3 + c\alpha^4 + \cdots \approx c\alpha^2.
</math>)
この水溶液の水素イオン濃度は <math>[\mathrm{H^+}] = c\alpha = \sqrt{cK_a}</math> である。
次に、電離度 <math>\alpha</math> が1より十分に小さくない場合は、 <math>1-\alpha \approx 1</math> と近似することはできない。
<math>
K_a=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha}
</math> より、 二次方程式 <math>c\alpha^2 + K_a\alpha -K_a = 0</math> を <math>\alpha</math> について解いて、 <math>\alpha = \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2c}</math> である。
水素イオン濃度は <math>[\mathrm{H^+}] = c\alpha = \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2}</math> である。
この場合も濃度が電離定数よりも十分大きい場合 <math> c \gg K_a </math> と近似すると、
<math>[\mathrm{H^+}] = \sqrt{cK_a}</math>
となる。
電離度がだいたい <math>\alpha < 0.05</math> の場合、<math>\frac{1}{1-\alpha} \approx 1</math> の近似を行うことが出来るが。<math>\alpha \ge 0.05</math> のときは近似は行わない。
=== 水の電離 ===
水はわずかに電離して、'''電離平衡'''の状態になっている。
:<chem> H_2 O <=> H^+ + OH^- </chem>
:化学平衡の法則より、水の平衡定数 <math>K</math> は次のようになる。
:<math>
K=\mathrm{\frac{[H^+][OH^-]}{[H_2O]}}
</math>
水はわずかにしか電離しないので、濃度 <chem>[H2O]</chem> の値はほぼ一定とみなせる。そこで、<math>
K_{\mathrm w}=K\mathrm{[H_2O]}
</math> とすると、
<math>
K_{\mathrm w}=K\mathrm{[H_2O]=[H^+][OH^-]}
</math>
これより、<chem>[H+]</chem> と <chem>[OH- ]</chem> の積の値も温度一定のときに一定値となる。この <math>K_{\mathrm w}</math> を'''水のイオン積'''という。
25 ℃ における <math>K_{\rm w}</math>の値は
:<math>
K_{\mathrm w} = [\mathrm{H^+}][\mathrm{OH^-}] = 1.0 \times 10^{-14} \, \mathrm{mol^2/L^2}
</math><br />
このイオン積の値は酸や塩基中など常に成り立つ。
また、温度がかわると水のイオン積の値は変化する。
水のイオン積と常温付近の温度の関係は、下記のとおり。
{| class="wikitable"
|-
! 温度/℃ !! K<sub>w</sub>/(mol<sup>2</sup>/L<sup>2</sup>)
|-
| 20 || 0.29×10<sup>-14</sup>
|-
| 25 || 1.01×10<sup>-14</sup>
|-
| 30 || 1.47×10-<sup>14</sup>
|-
|}
:
また、水の電離は吸熱反応であり(※ 上の表と関連づけて覚えよう。)、熱化学方程式は
:<chem> H^+ + OH^- <=> H_2O </chem><math>\quad \Delta H = -56\,\mathrm{kJ}</math>
である。
=== pOH ===
水素イオン指数 <math>\rm pH</math> は <math>\mathrm{pH} = -\log_{10} [\mathrm{H^+}]</math> で定義されるものであった。
水酸化イオンについても、 <math>\mathrm{pOH} = -\log_{10} [\mathrm{OH^-}]</math> を定義する。<math>\rm pH</math> と <math>\rm pOH</math> について、イオン積から次の公式が成り立つ。
<math>
[\mathrm{H^+}][\mathrm{OH^-}] = 1.0 \times 10^{-14}
</math>
より両辺の対数をとって、
<math>
\log_{10}[\mathrm{H^+}]+\log_{10}[\mathrm{OH^-}] = -14
</math>
から
<math>\mathrm{pH} + \mathrm{pOH} = 14</math>
あるいは
:<math>\mathrm{pH} = 14 - \mathrm{pOH}</math>
を得る。
=== 加水分解 ===
弱酸と強塩基の塩、または弱塩基と強酸の塩は水に溶けると、ほとんど完全に電離し次のように加水分解する。
弱酸と強塩基の塩(酢酸ナトリウムの場合)
<chem>CH3COONa -> CH3COO^- + Na^+</chem>
<chem>CH3COO^- + H2O <=> CH3COOH + OH^-</chem>
弱塩基と強酸の塩(塩化アンモニウムの場合)
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
<chem>NH4^+ + H2O <=> NH3 + H3O^+</chem>
ここで、酢酸イオンの加水分解の平衡定数 <math>K</math> は
<math>K = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}\mathrm{[H_2O]}}</math>
である。 <chem>\mathrm{[H_2O]}</chem> は一定と考え、<math>K_{\mathrm h} = K\mathrm{[H_2O]}</math> と置くと
<math>K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}}</math>
が成り立つ。この <math>K_{\mathrm h}</math> を加水分解定数という。
アンモニウムイオンについても同様に考える。平衡定数 <math>K</math> は
<math>K = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H_3O^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}\mathrm{[H_2O]}}</math>
加水分解定数 <math>K_{\mathrm h} = K \mathrm{[H_2O]}</math> を定義すると
<math>K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H_3O^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}}</math>
加水分解定数 <chem>K_{\mathrm h}</chem> と、弱酸または弱塩基の電離定数 <math>K_{\mathrm a}</math> または <math>K_{\mathrm b}</math> について
<math>K_{\mathrm w} = K_{\mathrm a}K_{\mathrm h}</math>
<math>K_{\mathrm w} = K_{\mathrm b}K_{\mathrm h}</math>
が成り立つ。
実際、酢酸ナトリウムの場合、
<math>K_{\mathrm a} = \frac{[\mathrm{CH_3COO^-}][\mathrm{H^+}]}{[\mathrm{CH_3COOH}]},\quad K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}}</math>
より
<math>K_{\mathrm a}K_{\mathrm h} = \mathrm{[H^+]}\mathrm{[OH^-]} = K_{\mathrm w}</math>
また、塩化アンモニウムの場合、
<math>K_{\mathrm b} = \frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}]},\quad K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}}</math>
より
<math>K_{\mathrm b}K_{\mathrm h} = \mathrm{[H^+]}\mathrm{[OH^-]} = K_{\mathrm w} </math>
である。
=== 塩のpH ===
弱酸と強塩基の塩を水に溶かすと、塩は完全に電離し、一部が加水分解し水酸化物イオンが生じるため液性は塩基性を示す。
弱酸と強塩基の塩(酢酸ナトリウムの場合)
<chem>CH3COONa -> CH3COO^- + Na^+</chem>
<chem>CH3COO^- + H2O <=> CH3COOH + OH^-</chem>
同様に、弱塩基と強酸の塩の水溶液は酸性を示す。
弱塩基と強酸の塩(塩化アンモニウムの場合)
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
<chem>NH4^+ + H2O <=> NH3 + H3O^+</chem>
ここで、弱塩基と強酸の塩であるモル濃度 <math>c</math> の塩化アンモニウム水溶液の水素イオン濃度を求める。
塩化アンモニウムは完全に電離するため、電離後のアンモニウムイオンのモル濃度は <math>c </math> である。
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
電離したアンモニウムイオンの内、加水分解するアンモニウムイオンの物質量の割合 <math>\beta =</math> 加水分解した<chem>NH4^+</chem>/電離した<chem>NH4^+</chem> を定義し、<math>\beta</math> を加水分解度と呼ぶ。
アンモニウムイオンの加水分解の量的関係は次の表のとおりである。
{| class="wikitable"
|+
!
!<chem>NH4^+</chem>
!<chem>H2O</chem>
!<chem><=></chem>
!<chem>NH3</chem>
!<chem>H3O^+</chem>
|-
|電離後
|<math>c</math>
|
|
|<math>0</math>
|<math>0</math>
|-
|加水分解
|<math>-c\beta</math>
|
|
|<chem>c\beta</chem>
|<chem>c\beta</chem>
|-
|平衡
|<math>c(1-\beta)</math>
|
|
|<chem>c\beta</chem>
|<chem>c\beta</chem>
|}
加水分解度 <math>\beta</math> が1より十分に小さい場合
:<math>
K_{\mathrm h}=\mathrm{\frac{[NH_3][H^+]}{[NH_4^+]}}=\frac{c\beta \cdot c\beta}{(c-c\beta)}=\frac{c\beta^2}{1-\beta} \approx c\beta^2
</math><ref><chem>H^+ = H3O^+</chem> に注意</ref>
より、 <math>\beta = \sqrt{\frac{K_{\mathrm h}}{c}}</math> である。
水素イオン濃度は <math>\mathrm{[H^+]} = c \beta = \sqrt{cK_{\mathrm h}} = \sqrt{c\frac{K_{\mathrm w}}{K_{\mathrm b}}}</math> である。(<math>K_{\mathrm b}</math> はアンモニアの電離定数、<math>K_{\mathrm w}</math> は水のイオン積)
演習問題
モル濃度が <math>c</math> の酢酸ナトリウム水溶液のpHを、酢酸の電離定数 <math>K_{\mathrm a}</math>と水のイオン積 <math>K_{\mathrm w}</math> で表せ。
=== 緩衝液 ===
少量の酸や塩基を加えたり、薄めたりしてもpHがほとんど変化しない溶液を、'''{{Ruby|緩衝|かんしょう}}液'''あるいは'''緩衝溶液'''という。弱酸とその塩、または弱塩基とその塩の混合水溶液などが緩衝液として使われる。また、このようにpHを一定に保つような作用を'''緩衝作用'''という。
代表的な緩衝液として、酢酸 CH<sub>3</sub>COOH と酢酸ナトリウム CH<sub>3</sub>COONa との混合水溶液がある。この溶液中の酢酸ナトリウムは、電離してCH<sub>3</sub>COO<sup>-</sup>とNa<sup>+</sup>とを生じる。一方、酢酸も電離するが、酢酸ナトリウムの電離により生じるCH<sub>3</sub>COO<sup>-</sup>の影響で、ルシャトリエの原理により、電離平衡は大きく酢酸の側に偏る。従って、実際には酢酸はほとんど電離せず、酢酸分子として水中に存在している。このとき、[[高等学校化学基礎/酸と塩基の反応#ブレンステッド・ローリーによる酸・塩基の定義|ブレンステッド・ローリーの定義]]によると、酢酸はブレンステッド酸、酢酸イオンはブレンステッド塩基である。
まず、この混合溶液に酸を加えると、生じたH<sup>+</sup>は酢酸イオンと反応して、酢酸を生じる。これにより、[H<sup>+</sup>] はほとんど増加しない。また、この混合溶液に塩基を加えると、生じたOH<sup>-</sup>は酢酸分子と反応して中和される。従って、[OH<sup>-</sup>] もほとんど増加しない。
この溶液において緩衝作用が最大になるのは、酢酸と酢酸イオンのモル濃度が等しいときである。
生物は体内のpHの変化に弱いため、緩衝液を体液として持っている。詳しくは[[高等学校生物]]を参照。
== 溶解平衡 ==
例えば、塩化ナトリウムを水に加えていくと、やがて溶けきれなくなり、飽和溶液になる。このような状態を'''溶解平衡'''といい、<chem>NaCl ->Na+ +Cl-</chem> の電離平衡が成立する。ここで、この飽和溶液に濃塩酸を加えると、新たに塩化ナトリウムが沈殿してくる。これは、濃塩酸を加えることにより <chem>[Cl-]</chem> が増加し、ルシャトリエの原理により上式の平衡が左に移動するからである。濃塩酸の代わりに塩化水素ガスを吹き込んでも同様の結果が得られる。
このように、ある電解質の飽和溶液に、その電解質を構成するイオンと同じ種類のイオン(共通イオン)を生じる別の電解質を加えることで、もとの電解質の溶解度が減少して沈殿を生じる現象を、'''共通イオン効果'''という。
=== 溶解度積 ===
塩化銀AgClのような難溶性の塩でも、水に加えれば、わずかながら電離をする。
:<chem>AgCl -> Ag+ + Cl-</chem>
この難溶性の塩の場合も、以下のように平衡定数が定義できる。
:<math>
\frac{[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}]}{[\mathrm {AgCl}]}=K
</math>
[AgCl]の濃度の値は、一定値と見なせるから、これを右辺に移項して、
:<math>
[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}] = K[\mathrm {AgCl}] = K_{\rm SP}
</math>
として、式が得られる。この式の、
:<math>
[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}] = K_{\rm SP}
</math>
を塩化銀の'''溶解度積'''(solubility product)といい、記号 <math>K_{\rm SP}</math> で表す。
平衡定数Kが温度のみの関数であり、<chem>[AgCl]</chem> は一定と見なせることから、溶解度積 <math>K_{\rm SP}</math> もまた温度のみの関数で濃度に無関係である。
塩化銀以外の他の難溶性の塩に対しても、同様に溶解度積が定義できる。一般の塩 <chem>A_{\it m}B_{\it n}</chem> に対しては、溶解度積の定義 <math>K_{\rm SP}</math> は、反応式が次の式の場合、
<math>\mathrm{A}_m\mathrm{B}_n \rightleftharpoons m\mathrm{A^{{\it n}+}} + n\mathrm{B^{{\it m}-}}</math>
化学平衡の法則より <math>\frac{[\mathrm{A^{{\it n}+}}]^m[\mathrm{B^{{\it m}-}}]^n}{[\mathrm{A}_m\mathrm{B}_n]} = K</math>
溶解度積 <math>K_{\rm SP}</math> は、
:<math>
[\mathrm {A^{{\it n}+}}]^m [\mathrm {B^{{\it m}-}}]^n = K_{\mathrm{SP}}
</math>
で定義される。
塩化銀の水溶液に、塩化ナトリウムNaClを加えると、塩化ナトリウムは容易に電離することから、溶液中の塩素イオン濃度 [Cl]<sup>-</sup> が増える。すると、平衡定数を一定に保つには、 銀イオン濃度 <chem>[Ag+]</chem> を減らさなければならなくなる。従って、塩化銀の電離が減少し、塩化銀銀の沈殿が生じる。これは共通イオン効果の一種である。
塩化ナトリウムの代わりに、塩酸HClや塩化カリウムKClなどを加えても塩化銀の沈殿現象は起こる。
この場合、銀イオンと塩素イオンのイオン積[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup>が溶解度積 K<sub>SP</sub> よりも大きくなると沈殿を生じる。
:[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> > K<sub>SP</sub> ・・・沈殿を生じて、 [Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> = K<sub>SP</sub> となる。
:[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> ≦ K<sub>SP</sub> ・・・沈殿を生じない。
== 演習問題 ==
<quiz>
{次の水溶液の水素イオン濃度とpH を求めよ。
酢酸の電離定数を <math> K_{\mathrm a} = 1.8 \times 10^{5}\, \mathrm{mol/L}</math>、アンモニアの電離定数を <math> K_{\mathrm b} = 1.8 \times 10^{5}\, \mathrm{mol/L}</math>、水のイオン積を <math>K_{\mathrm w} = 1.0 \times 10^{-14}\, (\mathrm{mol/L})^2</math> とする。
<math>\sqrt{1.8}=1.3,\sqrt{3.6}=1.9,\sqrt{56}=7.5,\sqrt{39.2}=6.3,\log 1.3=0.1,\log 7.7=0.9,\log 2.3=0.4</math> とする。
解答は次の形式で行うこと。
<math>[\mathrm H^+] = A \times 10^{-B}\, \mathrm{mol/L}</math>
ここで、<math>A</math>は二桁の小数、<math>B</math> は整数である。
|type="{}"}
(1) <math>0.10 \mathrm{mol/L}</math> の酢酸水溶液
<math> A=</math> { 1.3 _5} <math> B=</math> { 3 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 2.9 _5}
(2) <math>0.10 \mathrm{mol/L}</math> のアンモニア水溶液
<math> A=</math> { 7.7 _5} <math> B=</math> { 12 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 11.1 _5}
(3) <math>0.10 \mathrm{mol/L}</math> の酢酸ナトリウム水溶液
<math> A=</math> { 1.3 _5} <math> B=</math> { 9 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 8.9 _5}
(4) <math>5.0 \times 10^{-5} \mathrm{mol/L}</math> の酢酸水溶液
<math> A=</math> { 2.3 _5} <math> B=</math> { 5 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 4.6 _5}
</quiz>
[[カテゴリ:高等学校化学|かかくへいこう]]
[[Category:高等学校教育]]
[[Category:化学]]
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== 化学平衡 ==
可逆反応において、順方向の反応と逆方向との反応速度がつりあって反応物と生成物の組成比が巨視的に変化しなくなる状態を扱う分野である。
== 可逆反応 ==
水素とヨウ素の混合気体を容器に入れ、一定温度に保っておくと、一部が反応してヨウ化水素を生じ、水素・ヨウ素・ヨウ化水素の混合気体になる。また、この容器にヨウ化水素だけを入れて同じ温度に保っておくと、一部が分解して水素とヨウ素が生じ、やはり水素・ヨウ素・ヨウ化水素の混合気体になる。
このように、水素とヨウ素の化合、ヨウ化水素の分解のように、ある反応に対してその逆の反応も起こるとき、一方を正反応、他方を逆反応といい、このどちらも進むような反応を'''可逆反応'''とよぶ。また、一方向にしか進まない反応を'''不可逆反応'''という。
== 平衡移動 ==
=== ルシャトリエの原理 ===
可逆反応が平衡状態にあるとき、温度や圧力の条件を変化させると、正反応または逆反応のどちらかが進んで、新たな平衡状態になる。この現象を'''平衡移動'''という。
可逆反応が平衡状態にあるとき、濃度・温度・圧力といった条件を変化させると、条件の変化を和らげる向きに反応が進んで、平衡が移動する。これは、'''ルシャトリエの原理'''(平衡移動の原理)とよばれる。
条件変化を和らげる向きとは、条件変化の効果を打ち消す向きに反応が進むことを示している。つまり、圧力を上げれば、総気体分子数が少なくなる圧力が下がる向きに反応が進み、温度を上げれば吸熱する向きに反応が進むことになる。
例えば、<chem>N2 + 3H2 <=> 2NH3</chem> <math>\quad \Delta H = -92.2\,\mathrm{kJ}</math> について考える。
ここで、窒素 <chem>N2</chem> の濃度を増加させると、<chem>N2</chem> の増加をやわらげる方向、<chem>N2</chem> が減少する右へ平衡が移動する。<chem>N2</chem> の濃度を減少させると、<chem>N2</chem> の減少をやわらげる方向、<chem>N2</chem> が増加する左へ平衡が移動する。
圧力を大きくすると、圧力の増大をやわらげる、つまり、気体分子の数が減少する右に平衡が移動する。圧力を小さくすると、圧力の減少をやわらげる、つまり、気体分子の数が増加する左に平衡が移動する<ref>反応式を見てみると、左辺の気体分子は合計で4、右辺は2である。つまり、右の反応が進むと気体分子数が減り、左の反応が進むと気体分子数が増える。</ref>。
ほか、反応に関係のない気体が加わっても、平衡は変化しない。同様に、触媒を加えても、平衡は変化しない。
温度を上げると、温度の増加をやわらげる方向、つまり、吸熱反応の左に平衡が移動する。温度を下げると(冷却すると)、温度の減少をやわらげる方向、つまり、発熱反応の右に平衡が移動する。
ほか、温度・圧力など一定のままでアンモニア <chem>NH3</chem> の濃度を上げても、加えたアンモニアの一部はルシャトリエの原理により、<chem>N2</chem> や <chem>H2</chem> の生成で消費され、つまり上記の化学式で左方向の反応が一時的に強まり、やがて、また平衡に達する。
ルシャトリエの原理は、熱化学方程式にも、有効である。
<math> \mathrm{N_2} + \mathrm{3H_2} = \mathrm{2NH_3} + 92.2 kJ </math>
たとえば <chem>N2</chem> , <chem>H2</chem>, <chem>NH3</chem> の混合気体で、もし圧力一定のまま温度を上げた場合は、ルシャトリエの原理および上の式から、左側に進む反応( <chem>N2</chem>および<chem>H2</chem> のほうが生成される)が起き、言い換えれば(熱化学方程式ではなく化学反応式だが)平衡が左に移動する。
* 他の物質の例
<chem>2NO2 <=> N2O4 </chem>
<math> \mathrm{2NO_2} = \mathrm{N_2O_4} + 57.2 kJ </math>
上記の <chem>NO2</chem> , <chem>N2O4</chem> の混合気体を冷却すると、冷却とは温度の減少だから、ルシャトリエの原理により温度減少を打ち消すように温度上昇の反応が起きるはずなので、よって発熱反応である右方向の反応が進み、結果として <chem>N2O4</chem> の濃度が増える。
なお、<chem>NO2</chem> , <chem>N2O4</chem> の混合気体の(冷却ではなく)温度を上げると、左向きの反応が進む。
=== 平衡定数 ===
:<chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <=> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem>
のような可逆反応が起こるとき、この反応系が化学平衡に達すると、化学平衡のときの各物質の濃度の間には、Kを定数として、次の関係が成り立つ。
:<math>
\frac{[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y}{[\mathrm A]^a [\mathrm B]^b} = K
</math>
この関係を'''化学平衡の法則'''といい、そのときの定数Kを'''平衡定数'''という。1つの反応系では、温度が決まれば平衡定数は一定値をとる。あるいは、上で定義された平衡定数の定義が、濃度の平衡によることから'''濃度平衡定数'''ともいい、その意味で表す際には、記号K<sub>c</sub>を用いる。
化学平衡の法則の証明は簡単である。右向きの化学反応 <chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} -> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem> は <math>a</math> 個の分子 <chem>A</chem> と <math>b</math> 個の分子 <chem>B</chem> の衝突によって起こる。この衝突が起きる確率は、 <math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math> に比例する。たとえば、反応系の中に微小な区画を考えて、その微小区画の中に分子が存在するとき分子は衝突すると考えることにすると、1個の分子 <chem>A</chem> が微小区画に存在する確率は、 <math>[\mathrm A]</math> に比例する。また、2個の分子 <chem>A</chem> が微小区画に存在する確率(つまり、2個の分子 <chem>A</chem> が微小区画において衝突する確率)は、 <math>[\mathrm A]^2</math> に比例する。このように考えていくと、微小区画に <math>a</math> 個の分子 <chem>A</chem> と <math>b</math> 個の分子 <chem>B</chem> が存在する確率は、<math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math> に比例することがわかる。これは、ある微小区画において、分子が衝突する確率だが、微小区画がどこにあっても、そこで衝突が発生する確率は変わらないから、これが、反応系において衝突が発生する確率であることは明らかだろう。
次に、左向きの化学反応 <chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <- \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem> が起きる確率も、同様に <math>[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y</math> に比例する。平衡状態では、右向きの反応と左向きの反応が起きる確率は等しい。その反応の頻度は、それぞれ <math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math>、<math>[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y</math> に比例するのだから、この2つの量は比例する:
<math>
[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y = K [\mathrm A]^a [\mathrm B]^b
</math>
これは、化学平衡の法則に他ならない。
=== 圧平衡定数 ===
上で定義された濃度平衡定数とは異なる平衡定数として、各々の反応物・生成物の分圧 <math>p</math> をもとに定義する平衡定数がある。平衡時の分圧を考えると、次のように'''圧平衡定数''' <math>K_p</math> が定義される。
濃度平衡定数と圧平衡定数には、反応式が
<chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <=> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem>
で表わされる場合に、分圧がモル濃度と比例することから、次の関係式がある。
:<math>
K_p=\frac{p_C^x p_D^y}{p_A^ap_B^b}=K_c(RT)^{(x+y)-(a+b)}
</math>
この関係式を導出する。理想気体の状態方程式の
:<math>pV=nRT</math>
は、圧力Vを右辺に移動すれば、
:<math>p=\left(\frac{n}{V}\right)RT=cRT </math>
と、圧力 <math>p</math> とモル濃度 <math>c</math> の関係式となり、圧力と温度とが比例する。この <math>p = cRT</math> を状態方程式を、圧平衡定数の式に代入すれば、
:<math>
K_p=\frac{p_C^x p_D^y}{p_A^a p_B^b}=\frac{([C]RT)^x ([D]RT)^y}{([A]RT)^a ([B]RT)^b}=\frac{[C]^x [D]^y}{[A]^a [B]^b} \frac{(RT)^x (RT)^y}{(RT)^a (RT)^b}=K_c(RT)^{(x+y)-(a+b)}
</math>
以上の計算例は、2個の反応物から2個の生成物が生じる反応式の場合だったが、他の反応式でも同様に、圧平衡定数と濃度平衡定数の関係式がある。
== 電離平衡 ==
酢酸を水に溶かすと、次のように電離し平衡状態になる<ref>より正確には、<chem>CH3COOH + H2O<=> CH3COO- + H3O+</chem>であるが、このように略す。</ref>。
<chem>CH3COOH <=> CH3COO- + H+</chem>
このような化学平衡を'''電離平衡'''という。
酢酸の電離平衡についても、化学平衡の法則を当てはめると、
<math>\frac{[\mathrm{CH_3COO^-}][\mathrm{H^+}]}{[\mathrm{CH_3COOH}]} = K_a</math>
となる。この平衡係数を'''電離定数'''という。
弱塩基についても同様に考えることができる。アンモニアの電離では、
<chem>NH3 + H2O <=> NH4+ + OH-</chem>
より、
<math>\frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}][\mathrm{H_2O}]} = K</math>
となる。ここで、<math>[\mathrm{H_2O}]</math> は非常に大きいため一定と近似していい。電離定数 <math>K_b</math> を <math>K_b = K[\mathrm{H_2O}]</math> として、
<math>\frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}]} = K_b</math>
となる。
=== 弱酸・弱塩基の電離 ===
モル濃度 <math>c</math> の弱酸 <chem>HA</chem> の水溶液では、電離度を <math>\alpha</math> とすると、<chem>[H+]</chem> と <chem>[A-]</chem> は <math>c\alpha</math> に等しくなる。従って、電離定数 <math>K_a</math> は、次のように表される。
{| class="wikitable"
|+
!
!<chem>HA</chem>
!<chem><=></chem>
!<chem>A-</chem>
!<chem>H+</chem>
|-
|電離前
|<math>c</math>
|
|<math>0</math>
|<math>0</math>
|-
|電離
|<math>-c\alpha</math>
|
|<chem>c\alpha</chem>
|<chem>c\alpha</chem>
|-
|平衡
|<math>c(1-\alpha)</math>
|
|<chem>c\alpha</chem>
|<chem>c\alpha</chem>
|}
:<math>
K_a=\mathrm{\frac{[H^+][A^-]}{[HA]}}=\frac{c\alpha \cdot c\alpha}{(c-c\alpha)}=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha}
</math>
ここで、電離度 <math>\alpha</math> が1より十分に小さい場合、 <math>\frac{1}{1-\alpha} \approx 1</math> と近似して、<math>
K_a=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha} \approx c\alpha^2
</math> である。これより、<math>\alpha = \sqrt{\frac{K_a}{c}}</math>を得る。
(無限等比級数を知っている場合、この近似は次のように理解することが出来る。<math>0 \le \alpha < 1</math> のとき、無限等比級数の和より、<math>1 + \alpha + \alpha^2 + \alpha^3 + \cdots = \frac{1}{1-\alpha}</math> である。つまり、<math>
\frac{c\alpha^2}{1-\alpha} = c\alpha^2(1 + \alpha + \alpha^2 + \cdots) = c\alpha^2 + c\alpha^3 + c\alpha^4 + \cdots \approx c\alpha^2.
</math>)
この水溶液の水素イオン濃度は <math>[\mathrm{H^+}] = c\alpha = \sqrt{cK_a}</math> である。
次に、電離度 <math>\alpha</math> が1より十分に小さくない場合は、 <math>1-\alpha \approx 1</math> と近似することはできない。
<math>
K_a=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha}
</math> より、 二次方程式 <math>c\alpha^2 + K_a\alpha -K_a = 0</math> を <math>\alpha</math> について解いて、 <math>\alpha = \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2c}</math> である。
水素イオン濃度は <math>[\mathrm{H^+}] = c\alpha = \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2}</math> である。
この場合も濃度が電離定数よりも十分大きい場合 <math> c \gg K_a </math> と近似すると、
<math>[\mathrm{H^+}] = \sqrt{cK_a}</math>
となる。
電離度がだいたい <math>\alpha < 0.05</math> の場合、<math>\frac{1}{1-\alpha} \approx 1</math> の近似を行うことが出来るが。<math>\alpha \ge 0.05</math> のときは近似は行わない。
=== 水の電離 ===
水はわずかに電離して、'''電離平衡'''の状態になっている。
:<chem> H_2 O <=> H^+ + OH^- </chem>
:化学平衡の法則より、水の平衡定数 <math>K</math> は次のようになる。
:<math>
K=\mathrm{\frac{[H^+][OH^-]}{[H_2O]}}
</math>
水はわずかにしか電離しないので、濃度 <chem>[H2O]</chem> の値はほぼ一定とみなせる。そこで、<math>
K_{\mathrm w}=K\mathrm{[H_2O]}
</math> とすると、
<math>
K_{\mathrm w}=K\mathrm{[H_2O]=[H^+][OH^-]}
</math>
これより、<chem>[H+]</chem> と <chem>[OH- ]</chem> の積の値も温度一定のときに一定値となる。この <math>K_{\mathrm w}</math> を'''水のイオン積'''という。
25 ℃ における <math>K_{\rm w}</math>の値は
:<math>
K_{\mathrm w} = [\mathrm{H^+}][\mathrm{OH^-}] = 1.0 \times 10^{-14} \, \mathrm{mol^2/L^2}
</math><br />
このイオン積の値は酸や塩基中など常に成り立つ。
また、温度がかわると水のイオン積の値は変化する。
水のイオン積と常温付近の温度の関係は、下記のとおり。
{| class="wikitable"
|-
! 温度/℃ !! K<sub>w</sub>/(mol<sup>2</sup>/L<sup>2</sup>)
|-
| 20 || 0.29×10<sup>-14</sup>
|-
| 25 || 1.01×10<sup>-14</sup>
|-
| 30 || 1.47×10-<sup>14</sup>
|-
|}
:
また、水の電離は吸熱反応であり(※ 上の表と関連づけて覚えよう。)、熱化学方程式は
:<chem> H^+ + OH^- <=> H_2O </chem><math>\quad \Delta H = -56\,\mathrm{kJ}</math>
である。
=== pOH ===
水素イオン指数 <math>\rm pH</math> は <math>\mathrm{pH} = -\log_{10} [\mathrm{H^+}]</math> で定義されるものであった。
水酸化イオンについても、 <math>\mathrm{pOH} = -\log_{10} [\mathrm{OH^-}]</math> を定義する。<math>\rm pH</math> と <math>\rm pOH</math> について、イオン積から次の公式が成り立つ。
<math>
[\mathrm{H^+}][\mathrm{OH^-}] = 1.0 \times 10^{-14}
</math>
より両辺の対数をとって、
<math>
\log_{10}[\mathrm{H^+}]+\log_{10}[\mathrm{OH^-}] = -14
</math>
から
<math>\mathrm{pH} + \mathrm{pOH} = 14</math>
あるいは
:<math>\mathrm{pH} = 14 - \mathrm{pOH}</math>
を得る。
=== 加水分解 ===
弱酸と強塩基の塩、または弱塩基と強酸の塩は水に溶けると、ほとんど完全に電離し次のように加水分解する。
弱酸と強塩基の塩(酢酸ナトリウムの場合)
<chem>CH3COONa -> CH3COO^- + Na^+</chem>
<chem>CH3COO^- + H2O <=> CH3COOH + OH^-</chem>
弱塩基と強酸の塩(塩化アンモニウムの場合)
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
<chem>NH4^+ + H2O <=> NH3 + H3O^+</chem>
ここで、酢酸イオンの加水分解の平衡定数 <math>K</math> は
<math>K = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}\mathrm{[H_2O]}}</math>
である。 <chem>\mathrm{[H_2O]}</chem> は一定と考え、<math>K_{\mathrm h} = K\mathrm{[H_2O]}</math> と置くと
<math>K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}}</math>
が成り立つ。この <math>K_{\mathrm h}</math> を加水分解定数という。
アンモニウムイオンについても同様に考える。平衡定数 <math>K</math> は
<math>K = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H_3O^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}\mathrm{[H_2O]}}</math>
加水分解定数 <math>K_{\mathrm h} = K \mathrm{[H_2O]}</math> を定義すると
<math>K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H_3O^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}}</math>
加水分解定数 <chem>K_{\mathrm h}</chem> と、弱酸または弱塩基の電離定数 <math>K_{\mathrm a}</math> または <math>K_{\mathrm b}</math> について
<math>K_{\mathrm w} = K_{\mathrm a}K_{\mathrm h}</math>
<math>K_{\mathrm w} = K_{\mathrm b}K_{\mathrm h}</math>
が成り立つ。
実際、酢酸ナトリウムの場合、
<math>K_{\mathrm a} = \frac{[\mathrm{CH_3COO^-}][\mathrm{H^+}]}{[\mathrm{CH_3COOH}]},\quad K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}}</math>
より
<math>K_{\mathrm a}K_{\mathrm h} = \mathrm{[H^+]}\mathrm{[OH^-]} = K_{\mathrm w}</math>
また、塩化アンモニウムの場合、
<math>K_{\mathrm b} = \frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}]},\quad K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}}</math>
より
<math>K_{\mathrm b}K_{\mathrm h} = \mathrm{[H^+]}\mathrm{[OH^-]} = K_{\mathrm w} </math>
である。
=== 塩のpH ===
弱酸と強塩基の塩を水に溶かすと、塩は完全に電離し、一部が加水分解し水酸化物イオンが生じるため液性は塩基性を示す。
弱酸と強塩基の塩(酢酸ナトリウムの場合)
<chem>CH3COONa -> CH3COO^- + Na^+</chem>
<chem>CH3COO^- + H2O <=> CH3COOH + OH^-</chem>
同様に、弱塩基と強酸の塩の水溶液は酸性を示す。
弱塩基と強酸の塩(塩化アンモニウムの場合)
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
<chem>NH4^+ + H2O <=> NH3 + H3O^+</chem>
ここで、弱塩基と強酸の塩であるモル濃度 <math>c</math> の塩化アンモニウム水溶液の水素イオン濃度を求める。
塩化アンモニウムは完全に電離するため、電離後のアンモニウムイオンのモル濃度は <math>c </math> である。
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
電離したアンモニウムイオンの内、加水分解するアンモニウムイオンの物質量の割合 <math>\beta =</math> 加水分解した<chem>NH4^+</chem>/電離した<chem>NH4^+</chem> を定義し、<math>\beta</math> を加水分解度と呼ぶ。
アンモニウムイオンの加水分解の量的関係は次の表のとおりである。
{| class="wikitable"
|+
!
!<chem>NH4^+</chem>
!<chem>H2O</chem>
!<chem><=></chem>
!<chem>NH3</chem>
!<chem>H3O^+</chem>
|-
|電離後
|<math>c</math>
|
|
|<math>0</math>
|<math>0</math>
|-
|加水分解
|<math>-c\beta</math>
|
|
|<chem>c\beta</chem>
|<chem>c\beta</chem>
|-
|平衡
|<math>c(1-\beta)</math>
|
|
|<chem>c\beta</chem>
|<chem>c\beta</chem>
|}
加水分解度 <math>\beta</math> が1より十分に小さい場合
:<math>
K_{\mathrm h}=\mathrm{\frac{[NH_3][H^+]}{[NH_4^+]}}=\frac{c\beta \cdot c\beta}{(c-c\beta)}=\frac{c\beta^2}{1-\beta} \approx c\beta^2
</math><ref><chem>H^+ = H3O^+</chem> に注意</ref>
より、 <math>\beta = \sqrt{\frac{K_{\mathrm h}}{c}}</math> である。
水素イオン濃度は <math>\mathrm{[H^+]} = c \beta = \sqrt{cK_{\mathrm h}} = \sqrt{c\frac{K_{\mathrm w}}{K_{\mathrm b}}}</math> である。(<math>K_{\mathrm b}</math> はアンモニアの電離定数、<math>K_{\mathrm w}</math> は水のイオン積)
演習問題
モル濃度が <math>c</math> の酢酸ナトリウム水溶液のpHを、酢酸の電離定数 <math>K_{\mathrm a}</math>と水のイオン積 <math>K_{\mathrm w}</math> で表せ。
=== 緩衝液 ===
少量の酸や塩基を加えたり、薄めたりしてもpHがほとんど変化しない溶液を、'''{{Ruby|緩衝|かんしょう}}液'''あるいは'''緩衝溶液'''という。弱酸とその塩、または弱塩基とその塩の混合水溶液などが緩衝液として使われる。また、このようにpHを一定に保つような作用を'''緩衝作用'''という。
代表的な緩衝液として、酢酸 CH<sub>3</sub>COOH と酢酸ナトリウム CH<sub>3</sub>COONa との混合水溶液がある。この溶液中の酢酸ナトリウムは、電離してCH<sub>3</sub>COO<sup>-</sup>とNa<sup>+</sup>とを生じる。一方、酢酸も電離するが、酢酸ナトリウムの電離により生じるCH<sub>3</sub>COO<sup>-</sup>の影響で、ルシャトリエの原理により、電離平衡は大きく酢酸の側に偏る。従って、実際には酢酸はほとんど電離せず、酢酸分子として水中に存在している。このとき、[[高等学校化学基礎/酸と塩基の反応#ブレンステッド・ローリーによる酸・塩基の定義|ブレンステッド・ローリーの定義]]によると、酢酸はブレンステッド酸、酢酸イオンはブレンステッド塩基である。
まず、この混合溶液に酸を加えると、生じたH<sup>+</sup>は酢酸イオンと反応して、酢酸を生じる。これにより、[H<sup>+</sup>] はほとんど増加しない。また、この混合溶液に塩基を加えると、生じたOH<sup>-</sup>は酢酸分子と反応して中和される。従って、[OH<sup>-</sup>] もほとんど増加しない。
この溶液において緩衝作用が最大になるのは、酢酸と酢酸イオンのモル濃度が等しいときである。
生物は体内のpHの変化に弱いため、緩衝液を体液として持っている。詳しくは[[高等学校生物]]を参照。
== 溶解平衡 ==
例えば、塩化ナトリウムを水に加えていくと、やがて溶けきれなくなり、飽和溶液になる。このような状態を'''溶解平衡'''といい、<chem>NaCl ->Na+ +Cl-</chem> の電離平衡が成立する。ここで、この飽和溶液に濃塩酸を加えると、新たに塩化ナトリウムが沈殿してくる。これは、濃塩酸を加えることにより <chem>[Cl-]</chem> が増加し、ルシャトリエの原理により上式の平衡が左に移動するからである。濃塩酸の代わりに塩化水素ガスを吹き込んでも同様の結果が得られる。
このように、ある電解質の飽和溶液に、その電解質を構成するイオンと同じ種類のイオン(共通イオン)を生じる別の電解質を加えることで、もとの電解質の溶解度が減少して沈殿を生じる現象を、'''共通イオン効果'''という。
=== 溶解度積 ===
塩化銀AgClのような難溶性の塩でも、水に加えれば、わずかながら電離をする。
:<chem>AgCl -> Ag+ + Cl-</chem>
この難溶性の塩の場合も、以下のように平衡定数が定義できる。
:<math>
\frac{[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}]}{[\mathrm {AgCl}]}=K
</math>
[AgCl]の濃度の値は、一定値と見なせるから、これを右辺に移項して、
:<math>
[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}] = K[\mathrm {AgCl}] = K_{\rm SP}
</math>
として、式が得られる。この式の、
:<math>
[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}] = K_{\rm SP}
</math>
を塩化銀の'''溶解度積'''(solubility product)といい、記号 <math>K_{\rm SP}</math> で表す。
平衡定数Kが温度のみの関数であり、<chem>[AgCl]</chem> は一定と見なせることから、溶解度積 <math>K_{\rm SP}</math> もまた温度のみの関数で濃度に無関係である。
塩化銀以外の他の難溶性の塩に対しても、同様に溶解度積が定義できる。一般の塩 <chem>A_{\it m}B_{\it n}</chem> に対しては、溶解度積の定義 <math>K_{\rm SP}</math> は、反応式が次の式の場合、
<math>\mathrm{A}_m\mathrm{B}_n \rightleftharpoons m\mathrm{A^{{\it n}+}} + n\mathrm{B^{{\it m}-}}</math>
化学平衡の法則より <math>\frac{[\mathrm{A^{{\it n}+}}]^m[\mathrm{B^{{\it m}-}}]^n}{[\mathrm{A}_m\mathrm{B}_n]} = K</math>
溶解度積 <math>K_{\rm SP}</math> は、
:<math>
[\mathrm {A^{{\it n}+}}]^m [\mathrm {B^{{\it m}-}}]^n = K_{\mathrm{SP}}
</math>
で定義される。
塩化銀の水溶液に、塩化ナトリウムNaClを加えると、塩化ナトリウムは容易に電離することから、溶液中の塩素イオン濃度 [Cl]<sup>-</sup> が増える。すると、平衡定数を一定に保つには、 銀イオン濃度 <chem>[Ag+]</chem> を減らさなければならなくなる。従って、塩化銀の電離が減少し、塩化銀銀の沈殿が生じる。これは共通イオン効果の一種である。
塩化ナトリウムの代わりに、塩酸HClや塩化カリウムKClなどを加えても塩化銀の沈殿現象は起こる。
この場合、銀イオンと塩素イオンのイオン積[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup>が溶解度積 K<sub>SP</sub> よりも大きくなると沈殿を生じる。
:[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> > K<sub>SP</sub> ・・・沈殿を生じて、 [Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> = K<sub>SP</sub> となる。
:[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> ≦ K<sub>SP</sub> ・・・沈殿を生じない。
== 演習問題 ==
次の水溶液の水素イオン濃度とpH を求めよ。
酢酸の電離定数を <math> K_{\mathrm a} = 1.8 \times 10^{-5}\, \mathrm{mol/L}</math>、アンモニアの電離定数を <math> K_{\mathrm b} = 1.8 \times 10^{-5}\, \mathrm{mol/L}</math>、水のイオン積を <math>K_{\mathrm w} = 1.0 \times 10^{-14}\, (\mathrm{mol/L})^2</math> とする。
<math>\sqrt{1.8}=1.3,\sqrt{3.6}=1.9,\sqrt{56}=7.5,\sqrt{39.2}=6.3,\log 1.3=0.1,\log 7.7=0.9,\log 2.3=0.4</math> とする。
解答は次の形式で行うこと。
<math>[\mathrm H^+] = A \times 10^{-B}\, \mathrm{mol/L}</math>
ここで、<math>A</math>は二桁の小数、<math>B</math> は整数である。
<quiz>
{<math>0.10 \,\mathrm{mol/L}</math> の酢酸水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 1.3 _5} <math> B=</math> { 3 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 2.9 _5}
{<math>0.10\, \mathrm{mol/L}</math> のアンモニア水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 7.7 _5} <math> B=</math> { 12 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 11.1 _5}
{<math>0.10\, \mathrm{mol/L}</math> の酢酸ナトリウム水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 1.3 _5} <math> B=</math> { 9 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 8.9 _5}
{<math>5.0 \,\times 10^{-5} \mathrm{mol/L}</math> の酢酸水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 2.3 _5} <math> B=</math> { 5 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 4.6 _5}
</quiz>
[[カテゴリ:高等学校化学|かかくへいこう]]
[[Category:高等学校教育]]
[[Category:化学]]
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== 化学平衡 ==
可逆反応において、順方向の反応と逆方向との反応速度がつりあって反応物と生成物の組成比が巨視的に変化しなくなる状態を扱う分野である。
== 可逆反応 ==
水素とヨウ素の混合気体を容器に入れ、一定温度に保っておくと、一部が反応してヨウ化水素を生じ、水素・ヨウ素・ヨウ化水素の混合気体になる。また、この容器にヨウ化水素だけを入れて同じ温度に保っておくと、一部が分解して水素とヨウ素が生じ、やはり水素・ヨウ素・ヨウ化水素の混合気体になる。
このように、水素とヨウ素の化合、ヨウ化水素の分解のように、ある反応に対してその逆の反応も起こるとき、一方を正反応、他方を逆反応といい、このどちらも進むような反応を'''可逆反応'''とよぶ。また、一方向にしか進まない反応を'''不可逆反応'''という。
== 平衡移動 ==
=== ルシャトリエの原理 ===
可逆反応が平衡状態にあるとき、温度や圧力の条件を変化させると、正反応または逆反応のどちらかが進んで、新たな平衡状態になる。この現象を'''平衡移動'''という。
可逆反応が平衡状態にあるとき、濃度・温度・圧力といった条件を変化させると、条件の変化を和らげる向きに反応が進んで、平衡が移動する。これは、'''ルシャトリエの原理'''(平衡移動の原理)とよばれる。
条件変化を和らげる向きとは、条件変化の効果を打ち消す向きに反応が進むことを示している。つまり、圧力を上げれば、総気体分子数が少なくなる圧力が下がる向きに反応が進み、温度を上げれば吸熱する向きに反応が進むことになる。
例えば、<chem>N2 + 3H2 <=> 2NH3</chem> <math>\quad \Delta H = -92.2\,\mathrm{kJ}</math> について考える。
ここで、窒素 <chem>N2</chem> の濃度を増加させると、<chem>N2</chem> の増加をやわらげる方向、<chem>N2</chem> が減少する右へ平衡が移動する。<chem>N2</chem> の濃度を減少させると、<chem>N2</chem> の減少をやわらげる方向、<chem>N2</chem> が増加する左へ平衡が移動する。
圧力を大きくすると、圧力の増大をやわらげる、つまり、気体分子の数が減少する右に平衡が移動する。圧力を小さくすると、圧力の減少をやわらげる、つまり、気体分子の数が増加する左に平衡が移動する<ref>反応式を見てみると、左辺の気体分子は合計で4、右辺は2である。つまり、右の反応が進むと気体分子数が減り、左の反応が進むと気体分子数が増える。</ref>。
ほか、反応に関係のない気体が加わっても、平衡は変化しない。同様に、触媒を加えても、平衡は変化しない。
温度を上げると、温度の増加をやわらげる方向、つまり、吸熱反応の左に平衡が移動する。温度を下げると(冷却すると)、温度の減少をやわらげる方向、つまり、発熱反応の右に平衡が移動する。
ほか、温度・圧力など一定のままでアンモニア <chem>NH3</chem> の濃度を上げても、加えたアンモニアの一部はルシャトリエの原理により、<chem>N2</chem> や <chem>H2</chem> の生成で消費され、つまり上記の化学式で左方向の反応が一時的に強まり、やがて、また平衡に達する。
ルシャトリエの原理は、熱化学方程式にも、有効である。
<math> \mathrm{N_2} + \mathrm{3H_2} = \mathrm{2NH_3} + 92.2 kJ </math>
たとえば <chem>N2</chem> , <chem>H2</chem>, <chem>NH3</chem> の混合気体で、もし圧力一定のまま温度を上げた場合は、ルシャトリエの原理および上の式から、左側に進む反応( <chem>N2</chem>および<chem>H2</chem> のほうが生成される)が起き、言い換えれば(熱化学方程式ではなく化学反応式だが)平衡が左に移動する。
* 他の物質の例
<chem>2NO2 <=> N2O4 </chem>
<math> \mathrm{2NO_2} = \mathrm{N_2O_4} + 57.2 kJ </math>
上記の <chem>NO2</chem> , <chem>N2O4</chem> の混合気体を冷却すると、冷却とは温度の減少だから、ルシャトリエの原理により温度減少を打ち消すように温度上昇の反応が起きるはずなので、よって発熱反応である右方向の反応が進み、結果として <chem>N2O4</chem> の濃度が増える。
なお、<chem>NO2</chem> , <chem>N2O4</chem> の混合気体の(冷却ではなく)温度を上げると、左向きの反応が進む。
=== 平衡定数 ===
:<chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <=> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem>
のような可逆反応が起こるとき、この反応系が化学平衡に達すると、化学平衡のときの各物質の濃度の間には、Kを定数として、次の関係が成り立つ。
:<math>
\frac{[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y}{[\mathrm A]^a [\mathrm B]^b} = K
</math>
この関係を'''化学平衡の法則'''といい、そのときの定数Kを'''平衡定数'''という。1つの反応系では、温度が決まれば平衡定数は一定値をとる。あるいは、上で定義された平衡定数の定義が、濃度の平衡によることから'''濃度平衡定数'''ともいい、その意味で表す際には、記号K<sub>c</sub>を用いる。
化学平衡の法則の証明は簡単である。右向きの化学反応 <chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} -> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem> は <math>a</math> 個の分子 <chem>A</chem> と <math>b</math> 個の分子 <chem>B</chem> の衝突によって起こる。この衝突が起きる確率は、 <math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math> に比例する。たとえば、反応系の中に微小な区画を考えて、その微小区画の中に分子が存在するとき分子は衝突すると考えることにすると、1個の分子 <chem>A</chem> が微小区画に存在する確率は、 <math>[\mathrm A]</math> に比例する。また、2個の分子 <chem>A</chem> が微小区画に存在する確率(つまり、2個の分子 <chem>A</chem> が微小区画において衝突する確率)は、 <math>[\mathrm A]^2</math> に比例する。このように考えていくと、微小区画に <math>a</math> 個の分子 <chem>A</chem> と <math>b</math> 個の分子 <chem>B</chem> が存在する確率は、<math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math> に比例することがわかる。これは、ある微小区画において、分子が衝突する確率だが、微小区画がどこにあっても、そこで衝突が発生する確率は変わらないから、これが、反応系において衝突が発生する確率であることは明らかだろう。
次に、左向きの化学反応 <chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <- \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem> が起きる確率も、同様に <math>[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y</math> に比例する。平衡状態では、右向きの反応と左向きの反応が起きる確率は等しい。その反応の頻度は、それぞれ <math>[\mathrm{A}]^a[\mathrm{B}]^b</math>、<math>[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y</math> に比例するのだから、この2つの量は比例する:
<math>
[\mathrm C]^x [\mathrm D]^y = K [\mathrm A]^a [\mathrm B]^b
</math>
これは、化学平衡の法則に他ならない。
=== 圧平衡定数 ===
上で定義された濃度平衡定数とは異なる平衡定数として、各々の反応物・生成物の分圧 <math>p</math> をもとに定義する平衡定数がある。平衡時の分圧を考えると、次のように'''圧平衡定数''' <math>K_p</math> が定義される。
濃度平衡定数と圧平衡定数には、反応式が
<chem>\it{a} \, \rm{A} \, {+} \, \it{b} \, \rm{B} <=> \it{x} \, \rm{C} \, {+} \, \it{y} \, \rm{D}</chem>
で表わされる場合に、分圧がモル濃度と比例することから、次の関係式がある。
:<math>
K_p=\frac{p_C^x p_D^y}{p_A^ap_B^b}=K_c(RT)^{(x+y)-(a+b)}
</math>
この関係式を導出する。理想気体の状態方程式の
:<math>pV=nRT</math>
は、圧力Vを右辺に移動すれば、
:<math>p=\left(\frac{n}{V}\right)RT=cRT </math>
と、圧力 <math>p</math> とモル濃度 <math>c</math> の関係式となり、圧力と温度とが比例する。この <math>p = cRT</math> を状態方程式を、圧平衡定数の式に代入すれば、
:<math>
K_p=\frac{p_C^x p_D^y}{p_A^a p_B^b}=\frac{([C]RT)^x ([D]RT)^y}{([A]RT)^a ([B]RT)^b}=\frac{[C]^x [D]^y}{[A]^a [B]^b} \frac{(RT)^x (RT)^y}{(RT)^a (RT)^b}=K_c(RT)^{(x+y)-(a+b)}
</math>
以上の計算例は、2個の反応物から2個の生成物が生じる反応式の場合だったが、他の反応式でも同様に、圧平衡定数と濃度平衡定数の関係式がある。
== 電離平衡 ==
酢酸を水に溶かすと、次のように電離し平衡状態になる<ref>より正確には、<chem>CH3COOH + H2O<=> CH3COO- + H3O+</chem>であるが、このように略す。</ref>。
<chem>CH3COOH <=> CH3COO- + H+</chem>
このような化学平衡を'''電離平衡'''という。
酢酸の電離平衡についても、化学平衡の法則を当てはめると、
<math>\frac{[\mathrm{CH_3COO^-}][\mathrm{H^+}]}{[\mathrm{CH_3COOH}]} = K_a</math>
となる。この平衡係数を'''電離定数'''という。
弱塩基についても同様に考えることができる。アンモニアの電離では、
<chem>NH3 + H2O <=> NH4+ + OH-</chem>
より、
<math>\frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}][\mathrm{H_2O}]} = K</math>
となる。ここで、<math>[\mathrm{H_2O}]</math> は非常に大きいため一定と近似していい。電離定数 <math>K_b</math> を <math>K_b = K[\mathrm{H_2O}]</math> として、
<math>\frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}]} = K_b</math>
となる。
=== 弱酸・弱塩基の電離 ===
モル濃度 <math>c</math> の弱酸 <chem>HA</chem> の水溶液では、電離度を <math>\alpha</math> とすると、<chem>[H+]</chem> と <chem>[A-]</chem> は <math>c\alpha</math> に等しくなる。従って、電離定数 <math>K_a</math> は、次のように表される。
{| class="wikitable"
|+
!
!<chem>HA</chem>
!<chem><=></chem>
!<chem>A-</chem>
!<chem>H+</chem>
|-
|電離前
|<math>c</math>
|
|<math>0</math>
|<math>0</math>
|-
|電離
|<math>-c\alpha</math>
|
|<chem>c\alpha</chem>
|<chem>c\alpha</chem>
|-
|平衡
|<math>c(1-\alpha)</math>
|
|<chem>c\alpha</chem>
|<chem>c\alpha</chem>
|}
:<math>
K_a=\mathrm{\frac{[H^+][A^-]}{[HA]}}=\frac{c\alpha \cdot c\alpha}{(c-c\alpha)}=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha}
</math>
ここで、電離度 <math>\alpha</math> が1より十分に小さい場合、 <math>\frac{1}{1-\alpha} \approx 1</math> と近似して、<math>
K_a=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha} \approx c\alpha^2
</math> である。これより、<math>\alpha = \sqrt{\frac{K_a}{c}}</math>を得る。
(無限等比級数を知っている場合、この近似は次のように理解することが出来る。<math>0 \le \alpha < 1</math> のとき、無限等比級数の和より、<math>1 + \alpha + \alpha^2 + \alpha^3 + \cdots = \frac{1}{1-\alpha}</math> である。つまり、<math>
\frac{c\alpha^2}{1-\alpha} = c\alpha^2(1 + \alpha + \alpha^2 + \cdots) = c\alpha^2 + c\alpha^3 + c\alpha^4 + \cdots \approx c\alpha^2.
</math>)
この水溶液の水素イオン濃度は <math>[\mathrm{H^+}] = c\alpha = \sqrt{cK_a}</math> である。
次に、電離度 <math>\alpha</math> が1より十分に小さくない場合は、 <math>1-\alpha \approx 1</math> と近似することはできない。
<math>
K_a=\frac{c\alpha^2}{1-\alpha}
</math> より、 二次方程式 <math>c\alpha^2 + K_a\alpha -K_a = 0</math> を <math>\alpha</math> について解いて、 <math>\alpha = \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2c}</math> である。
水素イオン濃度は <math>[\mathrm{H^+}] = c\alpha = \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2}</math> である。
この場合も濃度が電離定数よりも十分大きい場合 <math> c \gg K_a </math> と近似すると、
<math>[\mathrm{H^+}] = \sqrt{cK_a}</math>
となる。
電離度がだいたい <math>\alpha < 0.05</math> の場合、<math>\frac{1}{1-\alpha} \approx 1</math> の近似を行うことが出来るが。<math>\alpha \ge 0.05</math> のときは近似は行わない。
=== 水の電離 ===
水はわずかに電離して、'''電離平衡'''の状態になっている。
:<chem> H_2 O <=> H^+ + OH^- </chem>
:化学平衡の法則より、水の平衡定数 <math>K</math> は次のようになる。
:<math>
K=\mathrm{\frac{[H^+][OH^-]}{[H_2O]}}
</math>
水はわずかにしか電離しないので、濃度 <chem>[H2O]</chem> の値はほぼ一定とみなせる。そこで、<math>
K_{\mathrm w}=K\mathrm{[H_2O]}
</math> とすると、
<math>
K_{\mathrm w}=K\mathrm{[H_2O]=[H^+][OH^-]}
</math>
これより、<chem>[H+]</chem> と <chem>[OH- ]</chem> の積の値も温度一定のときに一定値となる。この <math>K_{\mathrm w}</math> を'''水のイオン積'''という。
25 ℃ における <math>K_{\rm w}</math>の値は
:<math>
K_{\mathrm w} = [\mathrm{H^+}][\mathrm{OH^-}] = 1.0 \times 10^{-14} \, \mathrm{mol^2/L^2}
</math><br />
このイオン積の値は酸や塩基中など常に成り立つ。
また、温度がかわると水のイオン積の値は変化する。
水のイオン積と常温付近の温度の関係は、下記のとおり。
{| class="wikitable"
|-
! 温度/℃ !! K<sub>w</sub>/(mol<sup>2</sup>/L<sup>2</sup>)
|-
| 20 || 0.29×10<sup>-14</sup>
|-
| 25 || 1.01×10<sup>-14</sup>
|-
| 30 || 1.47×10-<sup>14</sup>
|-
|}
:
また、水の電離は吸熱反応であり(※ 上の表と関連づけて覚えよう。)、熱化学方程式は
:<chem> H^+ + OH^- <=> H_2O </chem><math>\quad \Delta H = -56\,\mathrm{kJ}</math>
である。
=== pOH ===
水素イオン指数 <math>\rm pH</math> は <math>\mathrm{pH} = -\log_{10} [\mathrm{H^+}]</math> で定義されるものであった。
水酸化イオンについても、 <math>\mathrm{pOH} = -\log_{10} [\mathrm{OH^-}]</math> を定義する。<math>\rm pH</math> と <math>\rm pOH</math> について、イオン積から次の公式が成り立つ。
<math>
[\mathrm{H^+}][\mathrm{OH^-}] = 1.0 \times 10^{-14}
</math>
より両辺の対数をとって、
<math>
\log_{10}[\mathrm{H^+}]+\log_{10}[\mathrm{OH^-}] = -14
</math>
から
<math>\mathrm{pH} + \mathrm{pOH} = 14</math>
あるいは
:<math>\mathrm{pH} = 14 - \mathrm{pOH}</math>
を得る。
=== 加水分解 ===
弱酸と強塩基の塩、または弱塩基と強酸の塩は水に溶けると、ほとんど完全に電離し次のように加水分解する。
弱酸と強塩基の塩(酢酸ナトリウムの場合)
<chem>CH3COONa -> CH3COO^- + Na^+</chem>
<chem>CH3COO^- + H2O <=> CH3COOH + OH^-</chem>
弱塩基と強酸の塩(塩化アンモニウムの場合)
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
<chem>NH4^+ + H2O <=> NH3 + H3O^+</chem>
ここで、酢酸イオンの加水分解の平衡定数 <math>K</math> は
<math>K = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}\mathrm{[H_2O]}}</math>
である。 <chem>\mathrm{[H_2O]}</chem> は一定と考え、<math>K_{\mathrm h} = K\mathrm{[H_2O]}</math> と置くと
<math>K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}}</math>
が成り立つ。この <math>K_{\mathrm h}</math> を加水分解定数という。
アンモニウムイオンについても同様に考える。平衡定数 <math>K</math> は
<math>K = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H_3O^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}\mathrm{[H_2O]}}</math>
加水分解定数 <math>K_{\mathrm h} = K \mathrm{[H_2O]}</math> を定義すると
<math>K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H_3O^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}}</math>
加水分解定数 <chem>K_{\mathrm h}</chem> と、弱酸または弱塩基の電離定数 <math>K_{\mathrm a}</math> または <math>K_{\mathrm b}</math> について
<math>K_{\mathrm w} = K_{\mathrm a}K_{\mathrm h}</math>
<math>K_{\mathrm w} = K_{\mathrm b}K_{\mathrm h}</math>
が成り立つ。
実際、酢酸ナトリウムの場合、
<math>K_{\mathrm a} = \frac{[\mathrm{CH_3COO^-}][\mathrm{H^+}]}{[\mathrm{CH_3COOH}]},\quad K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[CH_3COOH]}\mathrm{[OH^-]}}{\mathrm{[CH_3COO^-]}}</math>
より
<math>K_{\mathrm a}K_{\mathrm h} = \mathrm{[H^+]}\mathrm{[OH^-]} = K_{\mathrm w}</math>
また、塩化アンモニウムの場合、
<math>K_{\mathrm b} = \frac{[\mathrm{{NH_4}^+}][\mathrm{OH^-}]}{[\mathrm{NH_3}]},\quad K_{\mathrm h} = \frac{\mathrm{[NH_3]}\mathrm{[H^+]}}{\mathrm{[NH_4^+]}}</math>
より
<math>K_{\mathrm b}K_{\mathrm h} = \mathrm{[H^+]}\mathrm{[OH^-]} = K_{\mathrm w} </math>
である。
=== 塩のpH ===
弱酸と強塩基の塩を水に溶かすと、塩は完全に電離し、一部が加水分解し水酸化物イオンが生じるため液性は塩基性を示す。
弱酸と強塩基の塩(酢酸ナトリウムの場合)
<chem>CH3COONa -> CH3COO^- + Na^+</chem>
<chem>CH3COO^- + H2O <=> CH3COOH + OH^-</chem>
同様に、弱塩基と強酸の塩の水溶液は酸性を示す。
弱塩基と強酸の塩(塩化アンモニウムの場合)
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
<chem>NH4^+ + H2O <=> NH3 + H3O^+</chem>
ここで、弱塩基と強酸の塩であるモル濃度 <math>c</math> の塩化アンモニウム水溶液の水素イオン濃度を求める。
塩化アンモニウムは完全に電離するため、電離後のアンモニウムイオンのモル濃度は <math>c </math> である。
<chem>NH4Cl -> NH4^+ + Cl^-</chem>
電離したアンモニウムイオンの内、加水分解するアンモニウムイオンの物質量の割合 <math>\beta =</math> 加水分解した<chem>NH4^+</chem>/電離した<chem>NH4^+</chem> を定義し、<math>\beta</math> を加水分解度と呼ぶ。
アンモニウムイオンの加水分解の量的関係は次の表のとおりである。
{| class="wikitable"
|+
!
!<chem>NH4^+</chem>
!<chem>H2O</chem>
!<chem><=></chem>
!<chem>NH3</chem>
!<chem>H3O^+</chem>
|-
|電離後
|<math>c</math>
|
|
|<math>0</math>
|<math>0</math>
|-
|加水分解
|<math>-c\beta</math>
|
|
|<chem>c\beta</chem>
|<chem>c\beta</chem>
|-
|平衡
|<math>c(1-\beta)</math>
|
|
|<chem>c\beta</chem>
|<chem>c\beta</chem>
|}
加水分解度 <math>\beta</math> が1より十分に小さい場合
:<math>
K_{\mathrm h}=\mathrm{\frac{[NH_3][H^+]}{[NH_4^+]}}=\frac{c\beta \cdot c\beta}{(c-c\beta)}=\frac{c\beta^2}{1-\beta} \approx c\beta^2
</math><ref><chem>H^+ = H3O^+</chem> に注意</ref>
より、 <math>\beta = \sqrt{\frac{K_{\mathrm h}}{c}}</math> である。
水素イオン濃度は <math>\mathrm{[H^+]} = c \beta = \sqrt{cK_{\mathrm h}} = \sqrt{c\frac{K_{\mathrm w}}{K_{\mathrm b}}}</math> である。(<math>K_{\mathrm b}</math> はアンモニアの電離定数、<math>K_{\mathrm w}</math> は水のイオン積)
演習問題
モル濃度が <math>c</math> の酢酸ナトリウム水溶液のpHを、酢酸の電離定数 <math>K_{\mathrm a}</math>と水のイオン積 <math>K_{\mathrm w}</math> で表せ。
=== 緩衝液 ===
少量の酸や塩基を加えたり、薄めたりしてもpHがほとんど変化しない溶液を、'''{{Ruby|緩衝|かんしょう}}液'''あるいは'''緩衝溶液'''という。弱酸とその塩、または弱塩基とその塩の混合水溶液などが緩衝液として使われる。また、このようにpHを一定に保つような作用を'''緩衝作用'''という。
代表的な緩衝液として、酢酸 CH<sub>3</sub>COOH と酢酸ナトリウム CH<sub>3</sub>COONa との混合水溶液がある。この溶液中の酢酸ナトリウムは、電離してCH<sub>3</sub>COO<sup>-</sup>とNa<sup>+</sup>とを生じる。一方、酢酸も電離するが、酢酸ナトリウムの電離により生じるCH<sub>3</sub>COO<sup>-</sup>の影響で、ルシャトリエの原理により、電離平衡は大きく酢酸の側に偏る。従って、実際には酢酸はほとんど電離せず、酢酸分子として水中に存在している。このとき、[[高等学校化学基礎/酸と塩基の反応#ブレンステッド・ローリーによる酸・塩基の定義|ブレンステッド・ローリーの定義]]によると、酢酸はブレンステッド酸、酢酸イオンはブレンステッド塩基である。
まず、この混合溶液に酸を加えると、生じたH<sup>+</sup>は酢酸イオンと反応して、酢酸を生じる。これにより、[H<sup>+</sup>] はほとんど増加しない。また、この混合溶液に塩基を加えると、生じたOH<sup>-</sup>は酢酸分子と反応して中和される。従って、[OH<sup>-</sup>] もほとんど増加しない。
この溶液において緩衝作用が最大になるのは、酢酸と酢酸イオンのモル濃度が等しいときである。
生物は体内のpHの変化に弱いため、緩衝液を体液として持っている。詳しくは[[高等学校生物]]を参照。
== 溶解平衡 ==
例えば、塩化ナトリウムを水に加えていくと、やがて溶けきれなくなり、飽和溶液になる。このような状態を'''溶解平衡'''といい、<chem>NaCl ->Na+ +Cl-</chem> の電離平衡が成立する。ここで、この飽和溶液に濃塩酸を加えると、新たに塩化ナトリウムが沈殿してくる。これは、濃塩酸を加えることにより <chem>[Cl-]</chem> が増加し、ルシャトリエの原理により上式の平衡が左に移動するからである。濃塩酸の代わりに塩化水素ガスを吹き込んでも同様の結果が得られる。
このように、ある電解質の飽和溶液に、その電解質を構成するイオンと同じ種類のイオン(共通イオン)を生じる別の電解質を加えることで、もとの電解質の溶解度が減少して沈殿を生じる現象を、'''共通イオン効果'''という。
=== 溶解度積 ===
塩化銀AgClのような難溶性の塩でも、水に加えれば、わずかながら電離をする。
:<chem>AgCl -> Ag+ + Cl-</chem>
この難溶性の塩の場合も、以下のように平衡定数が定義できる。
:<math>
\frac{[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}]}{[\mathrm {AgCl}]}=K
</math>
[AgCl]の濃度の値は、一定値と見なせるから、これを右辺に移項して、
:<math>
[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}] = K[\mathrm {AgCl}] = K_{\rm SP}
</math>
として、式が得られる。この式の、
:<math>
[\mathrm {Ag^+}] [\mathrm {Cl^-}] = K_{\rm SP}
</math>
を塩化銀の'''溶解度積'''(solubility product)といい、記号 <math>K_{\rm SP}</math> で表す。
平衡定数Kが温度のみの関数であり、<chem>[AgCl]</chem> は一定と見なせることから、溶解度積 <math>K_{\rm SP}</math> もまた温度のみの関数で濃度に無関係である。
塩化銀以外の他の難溶性の塩に対しても、同様に溶解度積が定義できる。一般の塩 <chem>A_{\it m}B_{\it n}</chem> に対しては、溶解度積の定義 <math>K_{\rm SP}</math> は、反応式が次の式の場合、
<math>\mathrm{A}_m\mathrm{B}_n \rightleftharpoons m\mathrm{A^{{\it n}+}} + n\mathrm{B^{{\it m}-}}</math>
化学平衡の法則より <math>\frac{[\mathrm{A^{{\it n}+}}]^m[\mathrm{B^{{\it m}-}}]^n}{[\mathrm{A}_m\mathrm{B}_n]} = K</math>
溶解度積 <math>K_{\rm SP}</math> は、
:<math>
[\mathrm {A^{{\it n}+}}]^m [\mathrm {B^{{\it m}-}}]^n = K_{\mathrm{SP}}
</math>
で定義される。
塩化銀の水溶液に、塩化ナトリウムNaClを加えると、塩化ナトリウムは容易に電離することから、溶液中の塩素イオン濃度 [Cl]<sup>-</sup> が増える。すると、平衡定数を一定に保つには、 銀イオン濃度 <chem>[Ag+]</chem> を減らさなければならなくなる。従って、塩化銀の電離が減少し、塩化銀銀の沈殿が生じる。これは共通イオン効果の一種である。
塩化ナトリウムの代わりに、塩酸HClや塩化カリウムKClなどを加えても塩化銀の沈殿現象は起こる。
この場合、銀イオンと塩素イオンのイオン積[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup>が溶解度積 K<sub>SP</sub> よりも大きくなると沈殿を生じる。
:[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> > K<sub>SP</sub> ・・・沈殿を生じて、 [Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> = K<sub>SP</sub> となる。
:[Ag]<sup>+</sup> [Cl]<sup>-</sup> ≦ K<sub>SP</sub> ・・・沈殿を生じない。
== 演習問題 ==
次の水溶液の水素イオン濃度とpH を求めよ。
酢酸の電離定数を <math> K_{\mathrm a} = 1.8 \times 10^{-5}\, \mathrm{mol/L}</math>、アンモニアの電離定数を <math> K_{\mathrm b} = 1.8 \times 10^{-5}\, \mathrm{mol/L}</math>、水のイオン積を <math>K_{\mathrm w} = 1.0 \times 10^{-14}\, (\mathrm{mol/L})^2</math> とする。
<math>\sqrt{1.8}=1.3,\sqrt{3.6}=1.9,\sqrt{56}=7.5,\sqrt{39.2}=6.3,\log 1.3=0.1,\log 7.7=0.9,\log 2.3=0.4</math> とする。
解答は次の形式で行うこと。
<math>[\mathrm H^+] = A \times 10^{-B}\, \mathrm{mol/L}</math>
ここで、<math>A</math>は二桁の小数、<math>B</math> は整数である。
<quiz>
{<math>0.10 \,\mathrm{mol/L}</math> の酢酸水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 1.3 _5} <math> B=</math> { 3 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 2.9 _5}
{<math>0.10\, \mathrm{mol/L}</math> のアンモニア水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 7.7 _5} <math> B=</math> { 12 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 11.1 _5}
{<math>0.10\, \mathrm{mol/L}</math> の酢酸ナトリウム水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 1.3 _5} <math> B=</math> { 9 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 8.9 _5}
{<math>5.0 \,\times 10^{-5} \mathrm{mol/L}</math> の酢酸水溶液
|type="{}"}
<math> A=</math> { 2.3 _5} <math> B=</math> { 5 _5} <math> \mathrm{pH}=</math> { 4.6 _5}
</quiz>
{{解答|解答}}
===0.10 mol/L の酢酸水溶液===
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{H}^+]} &= \sqrt{cK_{\mathrm{a}}}\\
&= \sqrt{0.10\,\mathrm{mol/L}\times 1.8 \times 10^{-5} \,\mathrm{mol/L}} \\
&= \sqrt{1.8 \times 10^{-6}\,(\mathrm{mol/L})^2}\\
&= \sqrt{1.8} \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}\\
&= 1.3 \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\mathrm{pH} = -\log(1.3 \times 10^{-3}) = 3 - \log 1.3 = 3 - 0.1 = 2.9
</math>
===0.10 mol/L のアンモニア水溶液===
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{OH}^-]} &= \sqrt{cK_{\mathrm{b}}}\\
&= \sqrt{0.10\,\mathrm{mol/L}\times 1.8 \times 10^{-5} \,\mathrm{mol/L}} \\
&= \sqrt{1.8 \times 10^{-6}\,(\mathrm{mol/L})^2}\\
&= \sqrt{1.8} \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}\\
&= 1.3 \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{H}^+]} &= \frac{K_{\mathrm w}}{[\mathrm{OH}^-]}\\
&= \frac{1.0 \times 10^{-14}\, (\mathrm{mol/L})^2}{1.3 \times 10^{-3}\,\mathrm{mol/L}}\\
&= 7.7 \times 10^{-12}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\mathrm{pH} = -\log(7.7 \times 10^{-12}) = 12 - 0.9 = 11.1
</math>
===0.10 mol/L の酢酸ナトリウム水溶液===
<math>
\begin{align}
K_{\mathrm{h}} &= \frac{K_{\mathrm{w}}}{K_{\mathrm{a}}}\\
&= \frac{1.0 \times 10^{-14}\,(\mathrm{mol/L})^2}{1.8 \times 10^{-5}\,\mathrm{mol/L}}\\
&= 5.6 \times 10^{-10}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{OH}^-]} &= \sqrt{cK_{\mathrm h}}\\
&= \sqrt{0.10\,\mathrm{mol/L} \times 5.6 \times 10^{-10} \,\mathrm{mol/L}}\\
&= \sqrt{5.6 \times 10^{-11}\,(\mathrm{mol/L})^2} \\
&= 7.5 \times 10^{-6}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
<math>
\begin{align}
[\mathrm{H}^+] &= \frac{K_{\mathrm{w}}}{[\mathrm{OH}^-]}\\
&= \frac{1.0 \times 10^{-14}\,(\mathrm{mol/L})^2}{7.5 \times 10^{-6}\,\mathrm{mol/L}}\\
&= 1.3 \times 10^{-9}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
したがって、
<math>
\mathrm{pH} = -\log(1.3 \times 10^{-9}) = 9 - 0.1 = 8.9
</math>
===<math> 5.0\,\times 10^{-5}\mathrm{mol/L} </math> の酢酸水溶液===
<math>
\begin{align}
{[\mathrm{H}^+]} &= \frac{-K_a + \sqrt{K_a^2 + 4cK_a}}{2}\\
&= \frac{-1.8 \times 10^{-5} + \sqrt{(1.8 \times 10^{-5})^2 + 4 \times 1.8 \times 10^{-5} \times 5.0 \times 10^{-5}}}{2}\\
&= \frac{-1.8 \times 10^{-5} + \sqrt{3.24 \times 10^{-10} + 3.6 \times 10^{-9}}}{2}\\
&= \frac{-1.8 \times 10^{-5} + \sqrt{3.924 \times 10^{-9}}}{2}\\
&= \frac{-1.8 \times 10^{-5} + 6.3 \times 10^{-5}}{2}\\
&= 2.25 \times 10^{-5}\,\mathrm{mol/L}
\end{align}
</math>
したがって、
<math>
[\mathrm{H}^+] = 2.3 \times 10^{-5}\,\mathrm{mol/L}
</math>
<math>
\mathrm{pH} = -\log(2.3 \times 10^{-5}) = 5 - \log 2.3 = 5 - 0.4 = 4.6
</math>
{{証明終わり}}
[[カテゴリ:高等学校化学|かかくへいこう]]
[[Category:高等学校教育]]
[[Category:化学]]
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線型代数学/ベクトル
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9200
299061
298736
2026-05-03T10:56:39Z
Tkkn46tkkn46
89925
/* 補足 */ 関連項目の追加です。>そう、どこかで見た覚えがないであろうか。です。
299061
wikitext
text/x-wiki
[[高等学校数学II 式と証明・高次方程式|複素数]]の概念は既知のものとした。ただし、複素数のことを知らない読者は、複素数に関する記述を読み飛ばしたとしても差し支えない。
== ベクトル ==
===ベクトルの定義===
単一の数で表現される量を'''スカラー'''とよぶ。それに対して、n個の数 <math>a_1, a_2, \cdots, a_n </math>を縦に並べて、括弧でかこんだものを'''n次列ベクトル'''とよび、次のように書く。
:<math>\mathbf a=
\begin{pmatrix}
a_1\\
a_2\\
\vdots\\
a_n\\
\end{pmatrix}</math>
また、これを、横に並べたものを'''n次行ベクトル'''とよび、次のように書く。
:<math>\mathbf a= (a_1 , a_2 , \cdots , a_n)</math>
<math>a_1, a_2, \cdots, a_n </math>をベクトル<math>\mathbf a</math>の'''成分'''(element)と呼び、特に<math>\mathbf a_k</math>を'''a'''の第k成分と呼ぶ。<br>
なお、ここで並べた「数」は、体の元のことを指すが、体のことを知らなければ、実数や、複素数のことであると思って差し支えない。<br>
成分がすべて実数のベクトルを'''実ベクトル'''と言う。対して、成分がすべて複素数のベクトルを'''複素ベクトル'''と言う。
'''K'''を成分とするn次列ベクトル全体の集合を<math>\mathbf K^n</math>で表す。
: <math>\mathbf K^n = \left\{ \begin{pmatrix} a_1\\ a_2\\ \vdots\\ a_n\\ \end{pmatrix} \Bigg| a_1, a_2, \cdots, a_n \in \mathbf K \right\}</math>
<math>\mathbf K = \R</math>のとき<math>\R^n</math>は実数を成分とするn次列ベクトル全体の集合であり、<math>\mathbf K = \Complex</math>のとき<math>\Complex^n</math>は複素数を成分とするn次列ベクトル全体の集合である。
=== 相等関係 ===
2つのn次列ベクトル<math>\mathbf a, \mathbf b</math>が「等しい」とは、2つのベクトルの各成分が全て等しいことをいう。すなわち、
:<math>\mathbf a = \begin{pmatrix} a_1 \\ \vdots \\ a_n \end{pmatrix}, \mathbf b = \begin{pmatrix} b_1 \\ \vdots \\ b_n \end{pmatrix}</math> のとき
:<math>\mathbf a = \mathbf b \iff \forall i, a_i = b_i</math>
なお、2つのn次行ベクトルについても同様に定義される。
===加法===
2つのn次列ベクトル
<math>\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
a_1\\
a_2\\
\vdots\\
a_n\\
\end{pmatrix}
,\
\mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
b_1\\
b_2\\
\vdots\\
b_n\\
\end{pmatrix}
</math>
について、ベクトルの和 <math>\mathbf a + \mathbf b</math>を次のように定義する。<br>
:<math>\mathbf{a}+\mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
a_1+b_1\\
a_2+b_2\\
\vdots\\
a_n+b_n\\
\end{pmatrix}</math>
===スカラー乗法===
またn次列ベクトル
<math>\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
a_1\\
a_2\\
\vdots\\
a_n\\
\end{pmatrix}
</math>
と定数<math>\lambda</math>について、ベクトルの定数倍 <math>\lambda \mathbf a</math>を次のように定義する。<br>
:<math>\lambda\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
\lambda a_1\\
\lambda a_2\\
\vdots\\
\lambda a_n\\
\end{pmatrix}</math>
===零ベクトル===
ベクトルの成分がすべて0であるベクトル<math> \mathbf{0} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ \vdots \\ 0 \\ \end{pmatrix}</math>
を零ベクトルという。<br>
===逆ベクトル===
ベクトルのすべての成分にマイナス1をかけたベクトル<math> - \mathbf{a} = \begin{pmatrix} -a_1 \\ -a_2 \\ \vdots \\ -a_n \\ \end{pmatrix}</math>
を<math> \mathbf a</math>の逆ベクトルという。<br>
===ノルム===
ベクトルの大きさを'''ノルム'''といい、次のように定義する。
:<math>||a||=\sqrt {\sum^{n}_{i=1} a_i^2}</math>
座標に対する長さをn次行ベクトルで一般化したものがノルムであるとも解釈でき、実際に3次行ベクトルのノルムはそのベクトルを空間に描いた際の長さとなる。
==ベクトルの演算の性質==
ベクトルの演算では以下の性質が成り立つ。
#<math> \mathbf{a} + \mathbf{b} = \mathbf{b} + \mathbf{a}</math> (交換法則)
#<math> ( \mathbf{a} + \mathbf{b}) + \mathbf{c} = \mathbf{a} + ( \mathbf{b} + \mathbf{c})</math> (結合法則)
#<math> \mathbf{a} + \mathbf{0} = \mathbf{a}</math>
#<math> \mathbf{a} + (-\mathbf{a}) = \mathbf{0} </math>
#<math>\lambda(\mathbf a+\mathbf b)=\lambda \mathbf a + \lambda \mathbf b</math>
#<math>(\lambda +\mu ) \mathbf a = \lambda \mathbf a + \mu \mathbf a</math>
#<math>(\lambda\mu)\mathbf a= \lambda(\mu\mathbf a)</math>
#<math>1 \cdot \mathbf{a} = \mathbf a</math>
#<math>0 \cdot \mathbf{a} = \mathbf{0}</math>
ただし、<math> \mathbf{a}, \mathbf{b}, \mathbf{c}</math>をベクトル、<math>\lambda, \mu</math>をスカラーとする。
==一次従属と一次独立==
スカラーλ, μ, ν, ...とベクトルa, b, c, ...があるとする。
: <math>\lambda\mathbf{a} + \mu\mathbf{b} + \nu\mathbf{c} + \dots = 0</math>
つまりあるベクトルがその他のベクトルの組み合わせで表せるならば、それは'''一次従属'''であるという。逆にこの式においてスカラー量が全て0でないと成り立たないならば'''一次独立'''であるという。
== 助変数表示 ==
=== 平面上の直線 ===
以後、特に空間ベクトルについて議論する。
まずは、二次元空間上の直線を、助変数を用いて現すことを考える。
<math>\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
\end{pmatrix},
\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
a\\
b\\
\end{pmatrix},
\mathbf{x}_0=
\begin{pmatrix}
x_0\\
y_0\\
\end{pmatrix}</math>
とすると、一般の直線は下の式で表される。
: <math>\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{x_0}</math>
成分を用いて書けば、
<math>
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
a\\
b\\
\end{pmatrix}t
+
\begin{pmatrix}
x_0\\
y_0\\
\end{pmatrix}</math>
である。
成分を用いた式を見れば、この表示によって直線が表されることの妥当性が理解しやすいだろう。
上に挙げた式を直線の助変数表示またはベクトル表示という。また、'''a'''をこの直線の方向ベクトルという。
方向ベクトルはこの直線と平行なベクトルである。
もちろん助変数表示の仕方は一つではないが、方向ベクトルはノルム1のものを選ぶと便利な事も多い。
'''例題'''
*3x+2y=5
を助変数表示にせよ。
:x=2t+1とすると、
:<math>y={{5-3(2t+1)}\over 2} = 1- 3 t</math>
:よって、
:<math>\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
2\\
-3\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
1\\
1\\
\end{pmatrix}</math>
'''演習'''
ベクトル表示は座標表示に、座標表示はベクトル表示にせよ
1.6x-3y=9.5
2.x=a
3.<math>\begin{pmatrix}
x\\
y\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
1\\
-1\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
2\\
1\\
\end{pmatrix}</math>
4.<math>\begin{pmatrix}
x\\
y\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
-1\\
-2\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
1\\
0\\
\end{pmatrix}</math>
=== 空間内の直線 ===
平面内の直線は
:<math>ax+by+c=0</math>
という式で表された。しかし、空間において
:<math>ax+by+cz+d=0</math>
という式の表す図形は平面である。直線は2つの平行でない平面の共通部分として表される。式で書けば、
:<math>\left\{ \begin{matrix} a_1x+b_1y+c_1z=d_1 \\ a_2x+b_2y+c_2z=d_2 \end{matrix}\right.</math>
となる。この式が表す直線をベクトル表示することを考えよう。連立方程式を解く要領で
:<math>\left\{\begin{matrix} y=\alpha_1x+x_1 \\ z=\alpha_2x+x_2 \end{matrix}\right.</math>
(但し,<math>\alpha_1,\alpha_2,x_1,x_2</math>は定数)
と書けることはすぐわかる。この式は、形式的にはxをtと置き換えることで、下のように書ける。
:<math>\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{x}_1</math>
これが空間内の直線の助変数表示である。
'''例題'''
<math>\left\{ \begin{matrix} x+2y+3z=4 \\ 5x+6y+7z=8 \end{matrix}\right.</math>
を助変数表示にせよ。
:x=tとすると、
:2y+3z=-t+4
:6y+7z=-5t+8
これを解いて、
<math>\left\{ \begin{matrix}y=-2t-1\\z=t+2\end{matrix}\right.</math>
よって、
<math>\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
z\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
1\\
-2\\
1\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
0\\
-1\\
2\\
\end{pmatrix}</math>
'''演習'''
1.
:<math>\left\{\begin{matrix}x+2y+3z=1\\3x+2y+z=-1\end{matrix}\right.</math>
を助変数表示にせよ
=== 空間内の平面 ===
前述のとおり、空間内の平面はax+by+cz=dであらわせる。今度は2つの助変数s,tを導入することで、同様にして
:<math>\mathbf{x}=
\mathbf{a}t+
\mathbf{b}s+
\mathbf{c}</math>
と表せる。これを平面の助変数表示という。
'''例題'''
*2x+y+3z=5を助変数表示にせよ。
:x=3t+1,y=3sとすると、
:3z=5-2(3t+1)-3s⇔<math>z=1-2t-s</math>
:よって、
:<math>\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
3\\
0\\
-2\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
0\\
3\\
-1\\
\end{pmatrix}s+
\begin{pmatrix}
1\\
0\\
1\\
\end{pmatrix}</math>
'''演習'''
1.2x-y+3z=1を助変数表示にせよ
2.
:<math>
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
z\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
1\\
2\\
-3\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
5\\
4\\
2.3\\
\end{pmatrix}s+
\begin{pmatrix}
-2\\
-1\\
-3\\
\end{pmatrix}</math>
を、直交座標表示で表せ。
=== まとめ ===
1. 平面上の直線のベクトル表示
:<math>\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{x}_0</math>
2. 空間内の直線のベクトル表示
:<math>\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{x}_0</math>
3. 空間内の平面のベクトル表示
:<math>\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{b}s+\mathbf{c}</math>
'''演習'''
1.
:二点P,Qの位置ベクトルを'''p''','''q'''とすると、線分PQ上の点の位置ベクトルは
:t<sub>1</sub>'''p'''+t<sub>2</sub>'''q''', t<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>=1, t<sub>1</sub>,t<sub>2</sub>≧0
:の形で表される。これを証明せよ。
2.
:三点の位置ベクトルを'''x'''<sub>1</sub>,'''x'''<sub>2</sub>,'''x'''<sub>3</sub>とすると、
:この三点が構成する三角形内の任意の点は、
:t<sub>1</sub>'''x'''<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>'''x'''<sub>2</sub>+t<sub>3</sub>'''x'''<sub>3</sub>, t<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>+t<sub>3</sub>=1, t<sub>1</sub>,t<sub>2</sub>,t<sub>3</sub>≧0
と表される。これを証明せよ。
== 法線ベクトル ==
平面上の直線
:ax+by=c
を考える。この直線の方向ベクトルは
:<math>\mathbf{v}=\begin{pmatrix}
b\\
-a\\
\end{pmatrix}
</math>
である。ここで、
:<math>\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
a\\
b\\
\end{pmatrix}</math>
というベクトルを考えると、
:<math>(\mathbf{a},\mathbf{v})=0</math>
なので、'''a'''とこの直線は直交する。この'''a'''をこの直線の''法線ベクトル''(normal vector)という。
'''例5.1'''
l:'''x'''='''a'''t+'''x'''<sub>1</sub>
という直線を考える。平面内の1点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。この垂線の長さを求めよう。
'''p'''をPの位置ベクトル、'''x'''<sub>0</sub>をP'の位置ベクトルとすると、垂線の長さは
:||'''p'''-'''x'''<sub>0</sub>||
で与えられる。
まずは'''x'''<sub>0</sub>を他のベクトルを用いて表そう。P'はl上の点なので、'''x'''='''x'''<sub>0</sub>をlの式に代入すると
:'''x<sub>0</sub>'''='''a'''t+'''x'''<sub>1</sub>
:'''p'''-'''x<sub>0</sub>'''='''p'''-'''a'''t-'''x'''<sub>1</sub>
となる。このベクトルが'''a'''と直交するので
:('''a''','''p'''-'''x<sub>0</sub>''')=('''a''','''p''')-('''a''','''a''')t-('''a''','''x'''<sub>1</sub>)=0
:<math>t=\frac{(\mathbf{a},\mathbf{p}-\mathbf{x}_1)}{(\mathbf{a},\mathbf{a})}</math>
これを代入して
:<math>\mathbf{x}_0=\mathbf{a}{(\mathbf{a},\mathbf{p}-\mathbf{x}_1)\over (\mathbf{a},\mathbf{a})}+\mathbf{x}_1</math>
:<math>p-\mathbf{x}_0=p-\mathbf{a}{(\mathbf{a},\mathbf{p}-\mathbf{x}_1)\over (\mathbf{a},\mathbf{a})}-\mathbf{x}_1</math>
をえる。
あとは自分自身との内積を計算するだけである。落ち着いて計算すれば
:<math>||\mathbf{p}-\mathbf{x}_0||={{\sqrt{||\mathbf{a}||^2 ||\mathbf{p}-\mathbf{x}_1||^2-(\mathbf{a},\mathbf{p}-\mathbf{x}_1)^2}}\over {||\mathbf{a}||}}</math>
と計算される。空間内の直線についても、同じ事である。
'''演習'''
1.
:空間内の平面の場合についても同様に考えられる。
:F:ax+by+cz=d
:を平行移動し、原点を通る平面
:F<sub>0</sub>:ax+by+cz=0
:<math>\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
a\\
b\\
c\\
\end{pmatrix}</math> <math>\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
z\\
\end{pmatrix}</math>とすれば、
:F:('''a''','''x''')=d
:F<sub>0</sub>:('''a''','''x''')=0
:であるから、'''a'''はF<sub>0</sub>故にFと垂直である。この時'''a'''をF<sub>0</sub>の法線ベクトルと言う。
:さて、F上に無い点Pから、Fに垂線を下ろす。垂線の足をP'とする。
:'''x'''<sub>0</sub>:Pの位置ベクトル,'''x''''<sub>0</sub>:P'の位置ベクトル
:とするとき、||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を求めよ。
2.
:平面Fの法線ベクトル'''a'''と平面F'の法線ベクトル'''a''''の交角を平面Fと平面F'の交角と言う
:F:x+2y+2z=3
:F':3x+3y=1
:の交角を求めよ。
== 内積 ==
ベクトルには方向が伴っているので、純粋なかけ算をすることは難しい。そこでまず2次元もしくは3次元ベクトルで考え、ベクトル間の角度θを用いて<math>|\mathbf{a}|\cos{\theta}</math>とすると<math>\mathbf{a}</math>の<math>\mathbf{b}</math>方向成分がスカラーで出てくる。
ここで'''内積'''を以下のように定義する。
: <math>\mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = |\mathbf{a}||\mathbf{b}|\cos{\theta}</math>
また、[[/内積の成分公式証明|それぞれ直角な単位ベクトルで各ベクトルを分解して考える]]と、一般に
: <math>\mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = a_1b_1 + a_2b_2 + a_3b_3 + \dots + a_ib_i</math>
===内積の性質===
# <math>(\mathbf{a} + \mathbf{b}) \cdot \mathbf{c} = \mathbf{a} \cdot \mathbf{c} + \mathbf{b} \cdot \mathbf{c}</math>
# <math>(\lambda\mathbf{a}) \cdot \mathbf{b} = \lambda (\mathbf{a} \cdot \mathbf{b})</math>
== 外積 ==
=== 二次の行列式 ===
定義(7.1)
<math>A=\begin{pmatrix}
a & b\\
c & d\\
\end{pmatrix}</math>,
<math>\mathbf{a}=\begin{pmatrix}
a\\
c\\
\end{pmatrix}</math>,
<math>\mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
b\\
d\\
\end{pmatrix}</math>
の時、
<math>|A|=
\begin{vmatrix}
a & b\\
c & d
\end{vmatrix}=\det A=\det(\mathbf{a},\mathbf{b})
=ad-bc</math>をAの行列式(determinant)という。
次の性質は簡単に証明できる。
'''a''','''b'''が線形独立⇔det('''a''','''b''')≠0
det('''a''','''b''')=-det('''b''','''a''')
det('''a'''+'''b''','''c''')=det('''a''','''c''')+det('''b''','''c''')
det(c'''a''','''b''')=det('''a''',c'''b''')=cdet('''a''','''b''')
|AB|=|A||B|
ここで、'''a''','''b'''が線形独立とは、'''a''','''b'''が平行でないことを表す。
===平行四辺形の面積===
関係ないと思うかもしれないが、外積の定義に必要な情報である。
'''a'''と'''b'''の張る平行四辺形の面積を求める。二ベクトルの交角をθとする。
'''b'''を底辺においたとき、高さは||'''a'''||sinθなので、求める面積Sは
S=||'''a'''||||'''b'''||sinθ
⇔S<sup>2</sup>=||'''a'''||<sup>2</sup>||'''b'''||<sup>2</sup>
-||'''a'''||<sup>2</sup>||'''b'''||<sup>2</sup>cos<sup>2</sup>θ
=||'''a'''||<sup>2</sup>||'''b'''||<sup>2</sup>-('''a''','''b''')<sup>2</sup>
よって、
<math>S=\sqrt {||\mathbf{a}||^2||\mathbf{b}||^2-(\mathbf{a},\mathbf{b})^2}</math> (7.1)
'''演習'''
<math>\mathbf{a}=\begin{pmatrix}
a\\
b\\
\end{pmatrix}</math>,
<math>\mathbf{a}'=\begin{pmatrix}
a'\\
b'\\
\end{pmatrix}</math>
とすれば、<math>S=|\begin{vmatrix}
a & a'\\
b & b'\\
\end{vmatrix}|</math>.
これを証明せよ。
=== 外積 ===
内積が有るなら外積もあるのでは?と思った読者待望の部ではないだろうか。(余談)
定義(7.2)
'''c'''は次の4条件を満たすとき、'''a''','''b'''の外積(exterior product)、あるいはベクトル積(vector product)と呼ばれ,'''a'''×'''b'''='''c'''と表記される。
(i) '''a''','''b'''と直交する。
(ii) '''a''','''b'''は線形独立
(iii) '''a''','''b''','''c'''は右手系をなす。
(iv) ||'''c'''||が平行四辺形の面積
ここで、右手系とは、R<sup>3</sup>の単位ベクトル'''e'''<sub>1〜3</sub>が各々右手の親指、人差指、中指の上にある三次元座標系のことである。
定理(7.3)
右手座標系で、
<math>\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
a\\
b\\
c\\
\end{pmatrix}</math>,
<math>\mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
a'\\
b'\\
c'\\
\end{pmatrix}</math>
とすると、
<math>\mathbf{c}=\mathbf{a} \times \mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
\begin{vmatrix}
b & b'\\
c & c'
\end{vmatrix}\\
\begin{vmatrix}
a & a'\\
c & c'
\end{vmatrix}\\
\begin{vmatrix}
a & a'\\
b & b'
\end{vmatrix}\\
\end{pmatrix}</math> (7.2)
(証明)
三段構成でいく。
(i)'''c'''と、'''a'''と'''b'''と直交することを示す。要するに、
('''c''','''b''')=0且('''c''','''a''')=0を示す。
(ii)||'''c'''||が平行四辺形の面積Sであることをを証明。
(iii)'''c''','''a''','''b'''が、右手座標系であることを証明。
(i)は計算するだけなので演習とする。
(ii)
||'''c'''||<sup>2</sup>=(bc'-b'c)<sup>2</sup>+(ac'-a'c)<sup>2</sup>+(bc'-b'c)<sup>2</sup>
=(a<sup>2</sup>+b<sup>2</sup>+c<sup>2</sup>)(a'<sup>2</sup>+b'<sup>2</sup>+c'<sup>2</sup>)-(a
a'+bb'+cc')<sup>2</sup>=||'''a'''||^2||'''b'''||^2-('''a''','''b''')^2
||'''c'''||≧0より、式(7.1)から、
<math>||\mathbf{c}||=\sqrt {||\mathbf{a}||^2||\mathbf{b}||^2-(\mathbf{a},\mathbf{b})^2}=S</math>
(iii)
'''a'''='''e'''<sub>1</sub>, '''b'''='''e'''<sub>2</sub>ならば、式(7.2)は両辺とも'''e'''<sub>3</sub>である。'''e'''<sub>1</sub>,'''e'''<sub>2</sub>を、線形独立性を崩さずに移すと、
'''a''','''b''','''c'''は右手系のまま移る。もし、左手系なら、その瞬間||'''c'''||=0となり、([[中間値の定理]])'''a'''、'''b'''は平行になるから、線形独立が崩れたことになる。 #
外積に関して、次の性質が成り立つ。
'''a'''×'''b'''=-'''b'''×'''a''' c('''a'''×'''b''')=c'''a'''×'''b'''='''a'''×c'''b'''
'''a'''×('''b<sub>1</sub>'''+'''b<sub>2</sub>''')=
'''a'''×'''b<sub>1</sub>'''+'''a''''''b<sub>2</sub>'''
('''a<sub>1</sub>'''+'''a<sub>2</sub>''')×'''b'''=
'''a<sub>1</sub>'''×'''b'''+'''a<sub>2</sub>''''''b'''
=== 三次の行列式 ===
定義(7.4)
<math>A=\begin{pmatrix}
a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3}\\
a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3}\\
a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3}\\
\end{pmatrix}</math>,
<math>\mathbf{a}=\begin{pmatrix}
a_{1,1}\\
a_{1,2}\\
a_{1,3}\\
\end{pmatrix}</math>,
<math>\mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
a_{2,1}\\
a_{2,2}\\
a_{2,3}\\
\end{pmatrix}</math>
<math>\mathbf{c}=
\begin{pmatrix}
a_{3,1}\\
a_{3,2}\\
a_{3,3}\\
\end{pmatrix}</math>
の時、
<math>|A|=
\begin{vmatrix}
a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3}\\
a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3}\\
a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3}\\
\end{vmatrix}=\det A=\det(\mathbf{a},\mathbf{b},\mathbf{c})
=(\mathbf{a} \times \mathbf{b},\mathbf{c})</math> をAの行列式という。
二次の時と同様、
*'''a''','''b''','''c'''が線形独立⇔det('''a''','''b''','''c''')≠0
*'''a''','''b''','''c'''のどれか二つの順序を交換すればdet('''a''','''b''','''c''')の符号は変わる。絶対値は変わらない。
*det('''a'''+'''a'''','''b''','''c''')=det('''a''','''b''','''c''')+det('''a''','''b''','''c''')
'''b''','''c'''に関しても同様
*det(c'''a''','''b''')=cdet('''a''','''b''')
'''b''','''c'''に関しても同様
*|AB|=|A||B|
一番下は、大変面倒だが、確かめられる。
'''例題'''
次の二直線は捩れの位置(同一平面上にない関係)にある。この二直線に共通法線が一本のみあることをしめし、
最短距離も求めよ
l:'''x'''='''a'''t+'''x'''<sub>1</sub>
l':'''x'''='''b'''s+'''x'''<sub>2</sub>
l.l'上の点P,Qの位置ベクトルを
'''p'''='''a'''t+'''x'''<sub>1</sub>
'''q'''='''b'''s+'''x'''<sub>2</sub>とすると、
PQ⊥l,l'⇔('''a''','''p'''-'''q''')=('''b''','''p'''-'''q''')=0
これを式変形して、
('''a''','''p'''-'''q''')=
('''a''','''a'''t+'''x'''<sub>1</sub>-'''b'''s-'''x'''<sub>2</sub>)
=('''a''','''a''')t-('''a''','''b''')s+
('''a''','''x'''<sub>1</sub>-'''x'''<sub>2</sub>)=0
⇔('''a''','''a''')t-('''a''','''b''')s=('''a''','''x'''<sub>2</sub>-'''x'''<sub>1</sub> (7.3)
同様に、
('''b''','''a''')t-('''b''','''b''')s=('''b''','''x'''<sub>2</sub>-'''x'''<sub>1</sub> (7.4)
(7.3),(7.4)をt,sに関する連立一次方程式だと考えると、この方程式は、ちょうど一つの解の組(t<sub>0</sub>,s<sub>0</sub>)が存在する。
∵
'''a'''//'''b'''('''a''','''b'''は平行、の意味)'''a''','''b'''≠'''o'''より、
<math>\begin{vmatrix}
(\mathbf{a},\mathbf{a}) & -(\mathbf{a},\mathbf{b})\\
(\mathbf{b},\mathbf{a}) & -(\mathbf{b},\mathbf{b})\\
\end{vmatrix}=-[||\mathbf{a}||^2||\mathbf{b}||^2-(\mathbf{a},\mathbf{b})^2]</math>≠0
あとは後述する、連立二次方程式の解の公式による。(演習1)
'''a'''t<sub>0</sub>+'''x'''<sub>1</sub>,'''b'''s<sub>0</sub>+'''x'''<sub>2</sub>を位置ベクトルとする点をP<sub>0</sub>,Q<sub>0</sub>とおけば、P<sub>0</sub>Q<sub>0</sub>が、唯一の共通法線である。
この線分P<sub>0</sub>Q<sub>0</sub>の長さは、l,l'間の最短距離である。そこで、
<math>\mathbf{c}=\overrightarrow{P_0Q_0}</math>(第一章「ベクトル」参照)
P<sub>1</sub>:'''x'''<sub>1</sub>を位置ベクトルとする点
Q<sub>1</sub>:'''x'''<sub>2</sub>の位置ベクトルとする点
とすれば、
<math>\mathbf{x}_2-\mathbf{x}_1=(\overrightarrow{P_1Q_1})
=(\overrightarrow{P_1P_0})+(\overrightarrow{P_0Q_0})+(\overrightarrow{Q_0Q_1})</math>
=(['''x'''<sub>1</sub>+t<sub>0</sub>'''a''']-[<u>'''x'''<sub>1</sub></u>])
”P<sub>0</sub>の位置ベクトル↑ ↑P<sub>1</sub>の位置ベクトル”
+'''c'''+["'''x'''<sub>1</sub>"-"('''x'''<sub>1</sub>+t<sub>0</sub>'''a''')"]
”Q<sub>1</sub>の位置ベクトル↑ ↑Q<sub>0</sub>の位置ベクトル”
='''c'''+t<sub>0</sub>'''a'''-s<sub>0</sub>'''b'''
よって、
('''c''','''x'''<sub>2</sub>-'''x'''<sub>1</sub>)=('''c''','''c''')+t<sub>0</sub>('''c''','''a''')-s<sub>0</sub>('''c''','''b''')
'''a''','''b'''と'''c'''が垂直なので、('''b''','''c''')=('''a''','''c''')=0.
すなわち、('''c''','''x'''<sub>2</sub>-'''x'''<sub>1</sub>)=('''c''','''c''')
'''c'''=k('''a'''×'''b''') (k≠0)
'''c'''≠'''o'''より、求める距離||'''c'''||は、
<math>||\mathbf{c}||={||\mathbf{c}||^2\over ||\mathbf{c}||}={|(\mathbf{c},\mathbf{c})|\over ||\mathbf{c}||}={|(\mathbf{c},\mathbf{x}_2-\mathbf{x}_1)|\over {|k|||\mathbf{a}\times {\mathbf{b}}||}}</math>
<math>={{|(\mathbf{a}\times \mathbf{b},\mathbf{x}_2-\mathbf{x}_1)|}\over {||k|||\mathbf{a}\times \mathbf{b}||}}={|\det (\mathbf{a},\mathbf{b},\mathbf{x}_2-\mathbf{x}_1)| \over ||\mathbf{a}\times \mathbf{b}||}</math>
'''演習'''
1.
:二元一次連立方程式
:<math>\begin{vmatrix}
a & b\\
c & d\\
\end{vmatrix}</math>≠0の時、
:<math>\begin{cases}
ax+by=c\\
dx+ey=f\\
\end{cases}</math>
:の一般解が、
:<math>x={\begin{vmatrix}
e & b\\
f & d\\
\end{vmatrix}\over \begin{vmatrix}
a & b\\
c & d\\
\end{vmatrix}}</math>,
<math>y={\begin{vmatrix}
a & e\\
c & f\\
\end{vmatrix}\over \begin{vmatrix}
a & b\\
c & d\\
\end{vmatrix}}</math> である事を示せ
2.
:多面体Pの二頂点を結ぶ線分上の全ての点がやはりPに含まれる時、Pは凸多面体と呼ばれる。
:Pのk個の頂点P<sub>i</sub>(i=1,2,...,k;k(∈'''N''')>3)の位置ベクトルを'''v'''<sub>i</sub>とすると、P内の任意の点の位置ベクトル'''v'''が、下の式で表せることを証明せよ。
:<math>\mathbf{v}=\sum_{j=1}^k t_i\mathbf{x}_i</math>, t<sub>i</sub>≧0, <math>\sum_{j=1}^k t_i=1</math>
:このような'''v'''のことを、'''x'''<sub>i</sub>の凸結合と言う
3.
:P<sub>1</sub>(x<sub>1</sub>,y<sub>1</sub>),P<sub>2</sub>(x<sub>2</sub>,y<sub>2</sub>)を通る直線の式は、
:<math>\begin{vmatrix}
1 & 1 & 1\\
x & x_1 & x_2\\
y & y_1 & y_2\\
\end{vmatrix}=0</math>と表せる。
これを示せ。
4.
:空間において、('''a''','''x''')=0への折り返しの変換に対応する行列を求めよ
5.
:<math>\begin{vmatrix}
(\mathbf{a},\mathbf{a}) & (\mathbf{a},\mathbf{b}) & (\mathbf{a},\mathbf{c})\\
(\mathbf{b},\mathbf{a}) & (\mathbf{b},\mathbf{b}) & (\mathbf{b},\mathbf{c})\\
(\mathbf{c},\mathbf{a}) & (\mathbf{c},\mathbf{b}) & (\mathbf{c},\mathbf{c})\\
\end{vmatrix}=\det (\mathbf{a},\mathbf{b},\mathbf{c})</math>
:を示せ。
6.
:||'''x'''||=||'''y'''||=||'''z'''||=1の時、det('''a''','''b''','''c''')の最大最小を求めよ。
7.
:(1)
::('''a'''×'''b''')×'''c'''=-('''b''','''c''')'''a'''+('''a''','''c''')'''b'''
:(2)
::('''a'''×'''b''')×'''c'''+('''b'''×'''c''')×'''a'''+('''c'''×'''a''')×'''b'''='''o'''
::を、R<sup>3</sup>について証明せよ。
このページで述べるベクトルの代数学的説明はここまでである。このまま、代数学の学習を続けたい読者は次に、[[行列 (線型代数学)|行列]]を読まれる事を勧める。今までの内容と、密接に関係している。もし、ベクトルの解析的扱いについて学習したい場合は、このページの次の章に進まれるとよい。参考文献:東京大学出版会 『基礎数学1 線型代数入門』齊藤正彦著
== スカラー・ベクトル三重積 ==
{{節stub}}
== ベクトル関数 ==
{{節stub}}
この節は現在執筆中です。概要は[[物理数学I_ベクトル解析]]を参照してください。
== 補足 ==
線型代数学でいう「空間」や「次元」は、物理的な意味の「空間」や「次元」のうち、一部の性質だけを取り出して定義した抽象的な概念である。したがって、大枠では類似しているが、物理的なイメージばかりを気にしすぎると細部の印象が異なることがある。たとえば、物理においてしばしば「空間3次元、時間1次元、合わせて4次元の線型空間である時空」を考えるが、数学的な意味での4次元線型空間は空間と時間という意味合いを持ってはおらず、単に一次独立なベクトルが4本取れるというだけの意味である。4次元線型空間の中でさらに特殊な性質を仮定したものを「ミンコフスキー空間」といい、これはただの4次元線型空間よりもより4次元時空の性質を反映したモデルだが、それでも数学的なモデルに過ぎないことに変わりはない。
一般に数学的な概念は、その定義を作る際には物理などのイメージを元に概念を作ることが多いが、ひとたび定義されたあとはそのイメージから離れて定義のみを基に議論を進めることができる。これが数学を発展させる原動力であり、また数学が汎用的に役に立つ理由である。しかし、数学の持つこのような特性は、初学者にとってはわかりにくく感じられるだろう。以上で述べたことは線型代数学に限った話ではないが、抽象的な数学理論に初めて本格的に触れるのが線型代数学という学生も多いだろうから、ここで述べておく。
== 関連項目 ==
*[[初等数学公式集/解析幾何/コラム#外積の計算]]
*[[物理数学I ベクトル解析#三重積と四重積]]
{{DEFAULTSORT:せんけいたいすうかくへくとる}}
[[Category:ベクトル]]
[[Category:線形代数学|へくとる]]
khepsl0snl9cdbnk745upgvsrtq64uk
高等学校卒業程度認定試験/数学
0
35890
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H.Takechi
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/* 教科書 */ 情報更新
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text/x-wiki
== 概要 ==
ここでは、高認の数学を解説します。
高認の数学は[[高等学校数学I|数学I]]のみが試験範囲です。
そして、高認の中でも'''過去問演習が最も重要な科目'''です。なぜなら、'''高卒認定の数学は過去に出たものは必ず出る・出ないものは出ないという傾向が明確'''だからです。
== 準備 ==
ここでは、高卒認定試験の数学受験に必要な小中学内容を紹介します。そのため、この章は小中学内容ができているならば飛ばしてかまいません。対象となるのは小中学内容に不足があると考えている方向けです。具体的には……
#小中学で不登校だった。
#高齢で、既に小中学の内容を忘れてしまった。
#小中学校の内容が分からずにドロップアウトしてしまった。
実を言うと、高卒認定試験合格だけであれば、全てを復習する必要はありません。特に図形の多くはカットしてもよいです。
=== 小学校高学年内容 ===
*小数の計算
*分数の計算
*比
*図形の面積
=== 中学内容 ===
==== 1年 ====
*正負の数
*文字と式
*1次方程式
*比例と反比例
==== 2年 ====
*式の計算
*連立方程式
*1次関数
==== 3年 ====
*式の展開と因数分解
*平方根
*2次方程式
*2次関数
*三平方の定理
== 問題解説 ==
=== 大問1 ===
数学Iの「[[高等学校数学I/数と式|数と式]]」の「多項式の整理」「式の展開」「因数分解」「集合と論理」から出題されます。
*「多項式の整理」「式の展開」「因数分解」
難しい問題ではないので、式の展開と因数分解はしっかり練習しておくことが必要です。ここは演習量が最もものをいうところです。また、後の大問3・4とも関連の深いところです。何度も何度も練習しましょう。
*集合と論理
集合は<math>A \cap B</math>と<math>A \cup B</math>の意味を理解していれば、ごく単純な問題ばかりです。
論理は命題の真偽を選ばせるものか、逆・裏の命題を選択させるものです。特に否定した場合の不等号の扱いに気を付けたいところです。
=== 大問2 ===
「数と式」の一次不等式から出題されます。例年2問のみしか出題されず、1問目は簡単な一次不等式を解く問題、2問目は問題文から適切な1次不等式を導き出す問題が出されます。
'''1問目は絶対に落とさないようにしましょう'''。できれば、2問目も解いて全問正解したいところです。
=== 大問3・4 ===
[[高等学校数学I/2次関数|2次関数]]が出題されます。大まかに言えば、大問3が「2次関数のグラフ」「2次関数の式」、大問4が「2次関数の最大値・最小値」「2次不等式」となっています。
=== 大問5 ===
[[高等学校数学I/図形と計量|三角比]]が出題されます。
2022年現在、出題内容はほぼ例年同じです。しっかり対策すれば満点も狙えます。中学内容が十分でなかったり、学習時間が少ない(残り1月未満)なら最初の2問にしぼるといいでしょう。最初の2問は必ず、三角比を用いた測量と三角比の値です。相互関係の問題も確実に出されるため、できればこれもできるようしたいところです。相互関係はこの二つだけで十分です。
*:<math>\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1</math>
*:<math>\tan\theta = \frac{\sin\theta}{\cos\theta}</math>
余弦定理はほぼ確実に出ますが、正弦定理は三角形の面積と入れ替わりになることが多いです。
#三角比を用いた測量
#三角比の値(鋭角・鈍角)
#三角比の相互関係
#正弦定理
#余弦定理
#三角形の面積
=== 大問6 ===
[[高等学校数学I/データの分析|データの分析]]が出題されます。言葉の意味さえ理解すれば、計算はごく単純(算数レベルの計算しか使わない)ため、'''数学Iの中でも最も易しい'''ところです。数学が苦手な人でも4問中3問は普通に狙えます。
# データの特徴(範囲・平均値・中央値・最頻値)
# 箱ひげ図
# 平均値・分散・標準偏差
# 相関係数と散布図
この中で少し厄介なのは箱ひげ図でしょう。これは、箱ひげ図の意味を読み取らなければならないので、少し練習が必要です。しかし、その他は言葉の意味を正しく理解していれば、全く難しくありません。分散の計算をする場合もありますが、'''分散の公式は問題文中にちゃんと書いています'''。そのため、どういう計算かを大まかに覚えるだけでよいです。
相関係数も計算は全く必要なく、相関係数の意味するところを覚えておけば直観的に解くことが可能です。
== 学習方針 ==
=== 小学校内容 ===
まず、小中学校の内容ができているかです。もし、それが不十分だと思うのでしたら、まずそこから始めた方がよいでしょう。既に述べたように、小学校内容は1.小数の計算 2.分数の計算 3.比 4.図形の計算 の4つを復習するといいでしょう。これは、'''数学だけでなく理科でも使います'''。
小学校内容はサポートしてくれる人や場所があるのなら、計算ドリルでの復習でよいでしょう。
=== 中学校内容 ===
中学内容もじっくりと取り組んでいく時間の確保が難しいでしょう。しかし、ある程度ここで基礎固めをすれば高校数学の内容はかなり楽になるのも事実です。もし、不登校などで中学校内容を習っていない場合、1年間を高認学習期間として大体6か月ほどを見ておいた方がよいでしょう。
既に学習すべき点は書いていますが、特に重要なのは正負の数と文字式、1次方程式(以上、1年次)、文字式の計算、1次関数(以上2年次)です。これはしっかり時間をかけてください。3年内容は高校内容と重なるので、残り時間によっては高校内容と同時に進めてもよいでしょう。
=== 高校内容 ===
==== 教科書 ====
高卒認定試験合格を目指すのでしたら、教科書があった方がよいです。おススメは東京書籍の『[https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/hs/sugaku/16707/ 新数学I]』か数研出版の『[https://www.chart.co.jp/kyokasho/26kou/sugaku/shinkousu/ 新 高校の数学I]』です。どちらか一つでかまいません。なお、教科書は教科書販売書店で購入すれば安価で購入できます。
中学の復習が要らないのであれば、東京書籍の『[https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/hs/sugaku/16707/ 新数学I]』がよいでしょう。独学するなら『解答編』も買っておきましょう。これは、多くの通信制高校でも採用されているもので、小中学の復習や高卒認定試験でも出やすい内容にしぼった内容となっています。
中学の復習が欲しいのでしたら数研出版の『[https://www.chart.co.jp/kyokasho/26kou/sugaku/shinkousu/ 新 高校の数学I]』がいいと思われます。こちらは中学内容の復習も充実しています。
高認「数学I」ならばこの『新数学I』または『新 高校の数学I』と過去問に取り組むだけで十分です。チャート式などの他の問題集や参考書は、大学受験まで視野に入れているのでなければ不要です。
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[[Category:資格試験]]
[[Category:高等学校教育]]
[[カテゴリ:数学]]
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高等学校日本史探究
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Kwawe
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/* 第1章 日本文化のあけぼの */ 節内容概要を追加。
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text/x-wiki
[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>高等学校日本史探究
高等学校日本史探究のページです。{{進捗状況}} 本ページの目次と項目の配列は、実教出版株式会社の新課程教科書「[https://www.jikkyo.co.jp/book/detail/23010423 日本史探究]」(日探702・日探007-901)に合わせて作成しています。文章の配列も原則上記教科書会社さんに従いました。学習指導要領に定められた日本史探究の標準単位数は'''3単位です。'''
※本ページは大学の二次試験まで対応させるため、日本史探究の完成時期は未定です。当面の間は日本史Bを参照して下さい。
== 第1部 原始・古代の日本と東アジア ==
INTRODUCTION
=== 第1章 日本文化のあけぼの ===
# [[高等学校日本史探究/日本列島最古の文化Ⅰ|日本列島最古の文化Ⅰ]]{{進捗|100%|2024-09-21}}(人類の誕生と日本列島への居住)
# [[高等学校日本史探究/日本列島最古の文化Ⅱ|日本列島最古の文化Ⅱ]]{{進捗|100%|2024-10-01}}(日本の旧石器時代)
# [[高等学校日本史探究/縄文時代の社会と文化|縄文時代の社会と文化]]{{進捗|25%|2026-04-24}}(縄文文化の成立~縄文社会と縄文人)
# 弥生時代の社会と文化Ⅰ{{進捗|00%|2023-11-11}}
# 弥生時代の社会と文化Ⅱ{{進捗|00%|2023-11-11}}
=== 第2章 ヤマト政権の成立と古墳文化 ===
# 小国の分立と邪馬台国{{進捗|00%|2023-11-11}}
# 古墳の出現とヤマト政権の成立{{進捗|00%|2023-11-11}}
# ヤマト政権の展開と統治の進展{{進捗|00%|2023-11-11}}
# 古墳時代の生活と文化{{進捗|00%|2023-11-11}}
=== 第3章 律令国家の形成 ===
# [[高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅰ|古代国家の形成Ⅰ]]{{進捗|100%|2024-11-18}}(6世紀の朝鮮半島と倭~7世紀の東アジアと倭国)
# [[高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅱ|古代国家の形成Ⅱ]]{{進捗|100%|2025-02-01}}(大化の改新~東北遠征と白村江の戦い)
# [[高等学校日本史探究/古代国家の形成Ⅲ|古代国家の形成Ⅲ]]{{進捗|100%|2025-02-11}}(近江朝廷と壬申の乱~天武・持統期の政治改革)
# [[高等学校日本史探究/飛鳥文化・白鳳文化|飛鳥文化・白鳳文化]]{{進捗|100%|2024-11-06}}
# [[高等学校日本史探究/律令制度|律令制度]]{{進捗|100%|2025-06-03}}(大宝律令の官制~土地・人民の支配制度)
# [[高等学校日本史探究/奈良時代の政治Ⅰ|奈良時代の政治Ⅰ]]{{進捗|100%|2025-07-21}}(遣唐使派遣と平城京遷都)
# [[高等学校日本史探究/奈良時代の政治Ⅱ|奈良時代の政治Ⅱ]]{{進捗|100%|2025-11-22}}(奈良時代初期の政策~度重なる遷都と鎮護国家の仏教)
# [[高等学校日本史探究/奈良時代の政治Ⅲ|奈良時代の政治Ⅲ]]{{進捗|100%|2025-12-21}}(公地公民制の修正~奈良時代後半の政争)
# 天平文化
STEP UP 1 [[高等学校日本史探究/奈良時代の人々の暮らし|奈良時代の人々の暮らし]]{{進捗|100%|2026-04-09}}(奈良時代の貴族生活~生活文化の発展と庶民の苦難)
=== 第4章 古代の国家・社会の変容 ===
# 律令体制再編期の政治と社会
# 摂関政治の成立と支配体制の転換
# 国風文化
== 第2部 中世の日本と世界 ==
INTRODUCTION
=== 第1章 荘園公領制の成立と院政 ===
※荘園公領制の成立と院政は2027年4月に記述します。
* 荘園公領制の成立と院政Ⅰ
* 荘園公領制の成立と院政Ⅱ
* 荘園公領制の成立と院政Ⅲ
* 荘園公領制の成立と院政Ⅳ
=== 第2章 中世の国家・社会の展開 ===
# 鎌倉幕府の成立と朝廷
# 中世に生きる人々
# 蒙古襲来と幕府の衰退
# 鎌倉文化
=== 第3章 中世の国家・社会の変容 ===
# 南北朝の動乱
# 室町幕府の政治と外交
# 室町社会の展開と応仁の乱
# 室町文化
# [[高等学校日本史探究/戦国大名の分国経営Ⅰ|戦国大名の分国経営Ⅰ]]{{進捗|100%|2025-02-15}}(戦国時代の特質~戦国の争乱)
# 戦国大名の分国経営Ⅱ{{進捗|00%|2023-00-00}}(分国経営)
# 戦国大名の分国経営Ⅲ{{進捗|00%|2025-02-15}}(都市の発達と町衆~経済の混乱)
STEP UP 2 東アジアのなかのアイヌ文化・琉球文化
STEP UP 3 女性と仏教
== 第3部 近世の日本と世界 ==
INTRODUCTION
=== 第1章 東アジア世界の変容と天下統一 ===
# 織豊政権
# 天下統一の完成
# 近世成立期の文化
歴史資料と近世の展望
=== 第2章 幕藩体制の成立と展開 ===
# 幕藩体制の成立
# 貿易の統制と対外関係
# 近世社会のしくみ
# 幕府政治の展開
# 経済の発展
# 元禄文化と学芸の発展
STEP UP 4 近世の遊郭
=== 第3章 近世の国家・社会の変容 ===
# 幕藩体制の動揺と幕政の改革
# 欧米列強の接近と天保の改革
# 近世文化の成熟と変容
STEP UP 5 百姓一揆と義民物語
== 第4部 近現代の地域・日本と世界 ==
INTRODUCTION(近代)
=== 第1章 開国から倒幕へ ===
歴史資料と近代の展望
=== 第2章 明治維新 ===
# 明治維新
# 文明開化
=== 第3章 近代国家の形成 ===
# 立憲国家への道
# 議会政治の展開と日清・日露戦争
# 産業革命と社会の変化
# 近代文化の形成と展開
STEP UP 6 日露戦争のアジアへの影響
=== 第4章 両大戦間の日本 ===
# 第一次世界大戦
# 政党政治の展開
# 市民文化の展開
STEP UP 7 近代日本の「食」と米
=== 第5章 十五年戦争と日本 ===
# 満洲事変
# 日中戦争
# アジア・太平洋戦争(太平洋戦争)
INTRODUCTION(現代)
=== 第6章 戦後日本の形成 ===
# 占領と民主改革
# 独立と日米安保体制の形成
# 高度経済成長下の日本
STEP UP 8 エネルギー革命
=== 第7章 グローバル化のなかの現代日本 ===
# 「国際化」する経済大国Ⅰ{{進捗|00%|2023-00-00}}(ドル=ショックと石油危機~安定成長への転換まで)
# 「国際化」する経済大国Ⅱ{{進捗|00%|2023-00-00}}(経済大国への道と国際化の時代)
# 「国際化」する経済大国Ⅲ{{進捗|00%|2023-00-00}}(貿易摩擦とバブル経済~「豊かさ」と社会・生活の変容まで)
# [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅠ|新たな世紀の日本へⅠ]]{{進捗|100%|2026-04-10}}(冷戦の終結とグローバル化~湾岸戦争と平和維持活動まで)
# 新たな世紀の日本へⅡ{{進捗|00%|2023-09-03}}(政界再編と55年体制の終結~行政改革と日米安保の変化まで)
# [[高等学校日本史探究/新たな世紀の日本へⅢ|新たな世紀の日本へⅢ]]{{進捗|75%|2026-04-18}}(「構造改革」と対テロ戦争~新しい世界を目指してまで)
【STEP UP 9】[[高等学校日本史探究/多文化共生|多文化共生]]{{進捗|100%|2024-09-24}}
現代の日本の課題の探究
== 読書案内・学習方法 ==
* [[高等学校日本史探究/資料出所・読書案内|資料出所・読書案内]]
* [[学習方法/高校日本史|高校日本史学習方法]]{{進捗|100%|2026-04-29}}(新試験対応)
[[カテゴリ:高等学校日本史|探]]
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初等数学公式集/解析幾何/コラム
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/* さらに発展:外積と行列 */ 関連項目の追加です。>そう、どこかで見た覚えがないであろうか。です。
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text/x-wiki
このページは、[[初等数学公式集/解析幾何|初等数学公式集の解析幾何に関係する数学的な事項]]についてのコラムである。
高校数学における三次元の問題の多くは、「計算すれば求まる」ように作られている。しかしその計算は、しばしば試行錯誤的であり、どこに向かっているのか見えにくい場合もある。
本コラムで扱う内容は、そのような計算の背後にある構造を示すものである。すなわち、「なぜその形の計算をすればよいのか」「どの方向に進めばよいのか」という見通しを与える“地図”のような役割を果たすものである。
学習指導要領に定められた高校数学の範囲を超える事項について言及する場合があり、このページの内容や登場する数式を暗記することはもちろん必要ないし、すべてを理解することを目的とはしていない。しかし、入試問題をはじめとした高校数学に隠された意図等について伝わることによって、この単元の理解が深まることが期待できる。それを踏まえ、本ページに記載されたことが理解できるか否かを気にせず、直観を養うための一種の頭の体操として読んでほしい。
なお、ここで現れる関係式は公式として暗記することも可能であるが、本来は計算によって導くことができるものであり、その構造を理解することが重要である。このような見通しを持つことで、個々の計算は単なる作業ではなく、一定の方向性をもった操作として理解できるようになる。
また、本コラムや[[初等数学公式集/解析幾何/証明|本章の証明]]では、できるかぎり計算過程を残すようにしている。大学など高等数学で取り扱う場合には、多くは結論を理解することが目的であり、逆に結論さえ理解していれば、結論への過程は忘れていいものであるが、ここでは、上で述べたとおり実際の過程(計算)の結果として結論(公式)が導き出せることの「発見」を期待するものだからである。
==三次元空間上で一次独立である2つのベクトルと直交するベクトル==
:本節のタイトルである「三次元空間上で一次独立である2つのベクトルと直交するベクトル」は本章の「三次元空間」節に繰り返し登場するものである。
:この方向ベクトル(大きさは考慮する必要がない)の計算は、数値が与えられていれば、ごく簡単に求められ、一般式にしても比較的容易に求めることができる。
:
:(計算例)
::<math>\vec{v}=(p,q,r), \vec{V}=(P,Q,R)</math> とするとき、各々に直交するベクトル<math>\vec{n} = (a,b,c)</math>を求める(なお、法線は英語でnormal又はnormal line、フランス語でnormaleであるので、しばしば、法線ベクトルは<math>\vec{n}</math>と表される。)。
:::直交の条件から
::::<math>\vec{v} \cdot \vec{n} = ap + bq + cr = 0</math> - ①
::::<math>\vec{V} \cdot \vec{n} = aP + bQ + cR = 0</math> - ②
:::これを満たす<math>a,b,c</math>を求めるのに、①× <math>R</math> - ②× <math>r</math> として、
::::<math>apR + bqR + crR = aPr + bQr + cRr</math>
::::<math>apR + bqR = aPr + bQr</math>
::::<math>(pR - Pr)a = (Qr - qR)b</math> - ③
:::<math>a,b</math> 2変数を解くものであるが、方向ベクトルを得ることが目的であるので、この場合、<math>a,b</math> の比が求まれば足りる。したがって、③を満たす<math>a,b</math>の一つは、
::::<math>a = Qr - qR</math>
::::<math>b = pR - Pr</math> (符号を揃えるために順序を入れ替えた)
:::となる。これを①に代入して、
::::<math>cr = -ap - bq = -(Qr - qR)p - (pR - Pr)q = -pQr + pqR - pqR + Pqr = -pQr + Pqr </math>
::::辺々<math>r</math> で割って <math>c = Pq -pQ</math>
:::これらは、<math>p,q,r,P,Q,R</math> に関して、対称性を示しているので整理すると、
::::<span id="外積式1"></span><math>a = Qr - qR</math>
::::<math>b = Rp - rP</math>
::::<math>c = Pq - pQ</math>
:::と表すことができ、これが「<math>\vec{v}=(p,q,r), \vec{V}=(P,Q,R)</math> 各々に直交するベクトル<math>\vec{n}</math>の『ひとつ』<sup>※</sup>」である。
::::::※このようなベクトルは無数に存在し、ここで求めたものはその一例である(定数倍しても同様に直交する)。
:
:このベクトルは、<math>\vec{v}, \vec{V}</math>の <math>x</math>成分、<math>y</math>成分、<math>z</math>成分の6個の要素により構成されてるが、単純なルールにより構成されており、比較的覚えやすい(ただし、繰り返し述べるが、高校範囲における試験等の出題では、この関係は計算で出すことができるようになっており、公式として形を暗記することを目的としてはいけない)。
::ここで、<math>\vec{n}</math>の<math>x</math>成分(<math>a</math>)を例にとると以下のようになっていることがわかる。なお、前提として、ここに登場する成分は<math>p \to q \to r \to p, P \to Q \to R \to P</math>のような循環順序とする。
::*<math>x</math>成分には、<math>\vec{v}, \vec{V}</math>の <math>x</math>成分は含まれない。
::*2番めのベクトル(<math>\vec{V}</math>)の2番め(<math>y</math>成分)と1番めのベクトル(<math>\vec{v}</math>)の3番め(<math>z</math>成分)の積から、1番めのベクトル(<math>\vec{v}</math>)の2番め(<math>y</math>成分)と2番めのベクトル(<math>\vec{V}</math>)の3番め(<math>z</math>成分)の積を引いたものとなる。
::同じ、性質が<math>y</math>成分(<math>b</math>)にも<math>z</math>成分(<math>c</math>)にも当てはまっていることがわかる。
:
:ここで、添字を使って表記すると対称性がより明らかになる。
::<span id="外積式2"></span><math>\vec{v_1}=(p_1,q_1,r_1), \vec{v_2}=(p_2,q_2,r_2)</math> とするとき、各々に直交するベクトルを<math>\vec{n} = (x,y,z)</math>とすると。
:::<math>x = q_2 r_1 - q_1 r_2</math>
:::<math>y = r_2 p_1 - r_1 p_2</math>
:::<math>z = p_2 q_1 - p_1 q_2</math>
:
:'''注目点'''
:#「三次元空間において2個のベクトルに直交するベクトル」は、三次元空間を扱う場合、頻繁に利用される。公式集とその証明においては、以下のように繰り返し微妙に形を変えて登場している。
:##点と直線がなす平面
:##:直線<math>l</math>の方向ベクトル<math>\vec{d}=(p,q,r)</math>と直線外の点<math>P</math>と直線上の点<math>Q</math>による方向ベクトル<math>\overrightarrow{PQ} = (x_1 - x_0,y_1 - y_0,z_1 -z_0)</math>に直交するベクトル<math>\vec{d}=(a,b,c)</math>として、
:##::<math>a = r (y_1 - y_0) - q (z_1 - z_0)</math>
:##::<math>b = p (z_1 - z_0) - r (x_1 - x_0)</math>
:##::<math>c = q (x_1 - x_0) - p (y_1 - y_0)</math>
:##:を得ている([[初等数学公式集/解析幾何/証明#外積1|→参照]])。ここで、<math>x_1 - x_0 = P, y_1 - y_0 = Q , z_1 -z_0 = R</math>とすれば、[[#外積式1|上で示した式]]に一致する。
:##平行な2直線が属する平面
:##:平行な2直線<math>l_1.l_2</math>において方向ベクトル<math> \vec{d}=(p,q,r)</math>であり、<math>l_1.l_2</math>上の点を<math>P_1 (x_1,y_1,z_1), P_2 (x_2,y_2,z_2)</math>とするとき、<math>\overrightarrow{P_1P_2}=(x_2-x_1,y_2-y_1,z_2-z_1) </math>。この2つのベクトルに直交するベクトルを<math>\vec{n}=(a,b,c)</math>とすると、その例として、
:##::<math>a = r(y_2 - y_1) - q(z_2 - z_1)</math>
:##::<math>b = p(z_2 - z_1) - r(x_2 - x_1)</math>
:##::<math>c = q(x_2 - x_1) - p(y_2 - y_1)</math>
:##:を得ている([[初等数学公式集/解析幾何/証明#外積2|→参照]])。ここで、<math>x_2 - x_1 = P, y_2 - y_1 = Q , z_2 -z_1 = R</math>とすれば、やはり、[[#外積式1|上で示した式]]に一致する。
:##交点を持つ2直線が属する平面
:##:交点を持つ各々の方向ベクトルが<math>\vec{v_1}=(p_1,q_1,r_1), \vec{v_2}=(p_2,q_2,r_2)</math> である2直線<math>l_1, l_2</math>について、<math>l_1, l_2</math>に直交するベクトルを<math>\vec{n} = (a,b,c)</math>とすると、これを満たす例としてのベクトルは、
:##::<math>a = q_2 r_1 - q_1 r_2</math>
:##::<math>b = r_2 p_1 - r_1 p_2</math>
:##::<math>c = p_2 q_1 - p_1 q_2</math>
:##:であり([[初等数学公式集/解析幾何/証明#外積2|→参照]])、まさに、[[#外積式2|添字を使って上で示した式]]に一致する。「[[初等数学公式集/解析幾何/証明#直線がねじれの位置にある場合|直線がねじれの位置にある場合]]」の解法にも用いる。
:##同一直線上にない3点を通る平面の式
:##:[[初等数学公式集/解析幾何/証明#外積4|証明]]参照。
:#ところで、上記の3例では、「三次元空間において2個のベクトルに直交する」ということで、その方向ベクトルの性質が利用されてきた。ところが、この形の係数の組み合わせが、長さや面積といった量の表現にも出てくる。
:##点と直線の距離([[初等数学公式集/解析幾何#点と直線の距離|公式集]]、[[初等数学公式集/解析幾何/証明#三次元空間上の点と直線との距離|証明]])
:##:<math> d = \frac{ \sqrt{ \{(y_0 - y_1)r - (z_0 - z_1)q\}^2 + \{(z_0 - z_1)p - (x_0 - x_1)r\}^2 + \{(x_0 - x_1)q - (y_0 - y_1)p\}^2 } }{ \sqrt{p^2 + q^2 + r^2} } </math>
:##::ここに登場する数式を以下のように置く。
:##:::<math>(y_0 - y_1)r - (z_0 - z_1)q = s</math>
:##:::<math>(z_0 - z_1)p - (x_0 - x_1)r = t</math>
:##:::<math>(x_0 - x_1)q - (y_0 - y_1)p = u</math>
:##::そうすると、<math>\vec{v}=(s,t,u)</math>は、直線の方向ベクトル<math>\vec{p}=(p,q,r)</math>と直線外の点<math>P</math>と直線上の所与の点<math>Q_0</math>によるベクトル<math>\overrightarrow{PQ_0} = \vec{a_1} = (x_1 - x_0, y_1 - y_0 , z_1 - z_0)</math>と直交するベクトルの形をしていることがわかる。
:##<span id="2直線がねじれの位置にある場合"></span>2直線がねじれの位置にある場合
:##:ねじれの位置にある2直線の各々の方向ベクトルが<math>\vec{v_1} = (p_1,q_1,r_1), \vec{v_2} = (p_2,q_2,r_2)</math> であって、各々、点<math>P_1 (x_1,y_1,z_1), P_2 (x_2,y_2,z_2)</math> をとおる場合、この2直線<math>l_1,l_2</math> は以下の式で表される。
:##::<math>l_1: \frac{x-x_1}{p_1}=\frac{y-y_1}{q_1}=\frac{z-z_1}{r_1}</math>, <math>l_2: \frac{x-x_2}{p_2}=\frac{y-y_2}{q_2}=\frac{z-z_2}{r_2}</math>
:##:また、<math>\overrightarrow{P_1 P_2} = \vec{a} = (x_2 - x_1, y_2 - y_1 , z_2 - z_1)</math>である。
:##::2直線が最も接近する箇所は、各々の直線と直交する共通垂線の箇所であり、その距離<math>d</math>は以下の式で表される。
:##:::<math> d = \frac{|(x_2 - x_1)(q_2 r_1 - q_1 r_2) + (y_2 - y_1)(r_2 p_1 - r_1 p_2) + (z_2 - z_1)(p_2 q_1 - p_1 q_2) |}{ \sqrt{(q_2 r_1 - q_1 r_2)^2 + (r_2 p_1 - r_1 p_2)^2 + (p_2 q_1 - p_1 q_2)^2} } </math> - ①
:##:<math>\vec{v_1}, \vec{v_2}</math>に直交するベクトルのひとつは、今まで述べてきたことから、
:##::<math>\vec{n}=(q_2 r_1 - q_1 r_2, r_2 p_1 - r_1 p_2, p_2 q_1 - p_1 q_2)</math> であることがわかる。
:##:登場する数式を再構成すると、①式の分子は、<math>\vec{a}</math> と<math>\vec{n}</math> の内積であり、分母は <math>\vec{n}</math>の大きさ(長さ)となっていることがわかる。
:##:この理由については、「[[初等数学公式集/解析幾何/証明#2直線がねじれの位置にある場合|証明]]」にて解説する。
:
:実は、<math>\vec{v_1}, \vec{v_2}</math> の各成分を用いて<math>\vec{n}</math> のように表す操作は「外積」と言って、高等数学(大学以上の課程で取り扱う数学)で用いる重要な操作、すなわち、「2つのベクトルに直交するベクトルを系統的に与える公式」であり、外積ではこれを一つの演算としてまとめて扱うものであるが、高校数学では範囲外であるので、その操作が直接教えられることはない。しかし、三次元空間での取り扱いでは、点・直線・平面の関係を表す操作として各種出題に埋め込まれている場合が少なくない。この背景を理解しておくことで、出題意図の見通しが多少でも良くなることを期待して、次節以降で入門編として解説したい。
==外積とは==
:(高等数学での取り扱いは[[線型代数学/ベクトル#外積]]を参照)
===定義に先立って===
さて、ここで「外積」について考えるが、「外積とは何か」という定義に先立って、これから取り扱うものは、あくまでも高校数学における三次元空間の具体的な成分計算による演算に関するものである。
すなわち、このコラムで想定する「外積」とは、成分表示された2個の空間ベクトル<math>\vec{v_1}=(p_1,q_1,r_1), \vec{v_2}=(p_2,q_2,r_2)</math> の各成分を用いて、以下の形式で表されるものである、
:<math>\vec{n} = (x,y,z)</math>
::<math>x = q_2 r_1 - q_1 r_2</math>
::<math>y = r_2 p_1 - r_1 p_2</math>
::<math>z = p_2 q_1 - p_1 q_2</math>
ここでは、この形により外積を具体的に理解することを目的とする。
ここでは、「外積」の利用法の一つとして、三次元空間の問題にどのように現れるかを中心に扱うが、「外積」の本質は、空間幾何に限らず、さまざまな局面で利用される概念であり、成分による表示は、その一つの具体的な表現に過ぎないからである。さらに、これまで、外積によって得られるベクトルは「向き」に注目して扱ってきた。しかし実際には、このベクトルは「大きさ」にも重要な意味を持っている。さらに、この成分表示そのものが計算の中で直接用いられることにも注意が必要である。
===外積の定義===
あらためて、ここで「外積」を定義する。外積とは、
:<span id="定義"></span>'''3次元空間において定義される、2つのベクトルから新たなベクトルを与える二項演算(2つの対象から新たな対象を決定する規則)であり、3次元空間の2つのベクトルに対し、①両者に垂直で②両ベクトルのなす平行四辺形の面積と等しい長さを③右手系の方向にとったベクトルを得るもの(二項演算)である。'''
::2つのベクトルを<math>\vec{a}, \vec{b}</math>として、外積は乗算記号または角括弧を用いて以下のように表される。
::* 乗算記号を用いる場合:<math>\vec{a} \times \vec{b} </math>
::* 角括弧を用いる場合:<math>[\vec{a}, \vec{b}] </math>
{{wikipedia|クロス積}}
:;「外積」の呼称
::「外積」は"exterior product"の訳だけではなく、さらに高次の高等数学で用いられる関連概念である"outer product"の訳(ただし、一般には「直積」や「テンソル積」と訳される)に当てられる場合もあり、明確に区別するため「'''クロス積'''(ウィキペディアの見出しにはこちらが用いられている)」と呼んだり「'''ベクトル積'''」と呼んだりすることもあるが、本稿においては[[#定義|上の定義]]によるものを「外積」と呼称することで統一する。
[[ファイル:Cross_product_parallelogram.svg|右|260px|サムネイル|3次元ベクトル <math>\vec{a}, \vec{b}</math>の外積(<math>\vec{a} \times \vec{b} </math>)。]]
:以下、定義について解説する。ここでは、2つのベクトルを<math>\vec{a}, \vec{b}</math>として、外積となるベクトル <math>\vec{e} = \vec{a} \times \vec{b} </math>とする。
:#3次元空間の2つのベクトルに対し、両者に垂直 - ①
:#:これは、今まで繰り返し出てきた性質である。すなわち、
:#::<math>\vec{a} \cdot \vec{e} = 0</math>
:#::<math>\vec{b} \cdot \vec{e} = 0</math>
:#:となる。
:#ベクトルの長さは両ベクトルのなす平行四辺形の面積と等しい長さ - ②
:#:すなわち、
:#::<math>|\vec{e}| = | \vec{a} | | \vec{b} |\sin \theta </math>(<math>\theta</math>は、<math>\vec{a}</math>と<math>\vec{b}</math>がなす角)
:#:ということになる。この計算の形は、内積の形が<math>| \vec{a} | | \vec{b} |\cos \theta </math>であることと、好対照である。
:#::(コラム in コラム)
:#:::外積の大きさが面積に等しいとされることに違和感を覚えるかもしれない。「長さ」と「面積」という異なる「次元」の量(実際には、これは「面積を長さとして表現する」ために方向(法線方向)を付け加えた量とみなすことができる)が対応しているように見えるためである。
:#:::しかし、数学においては、このように異なる意味を持つ量であっても、共通の構造に基づいて同一の形式で扱われることがある。すなわち、対象の「属性」そのものよりも、それらの間に成り立つ関係や構造が重視されるのである。
:#:::外積の場合、2つのベクトルが張る平面の「向き」と「広がり」を同時に表す量として、その大きさが面積に対応し、その方向が平面に垂直な方向を与える。
:#:::このように、外積は「向き」と「面積」という異なる意味を同時に扱う量であり、数学における抽象化の考え方と、現実の計算(例えば三次元空間における図形の扱い)における有用性とを結びつける代表的な例の一つである。
:#2つのベクトルに対し、右手系の方向 - ③
:#:[[File:Right hand rule cross product.svg|サムネイル|右|200px|右手の法則による外積の向き]]
:#:「2つのベクトルに対し、両者に垂直」という場合、方向が2つあるということがイメージできるだろうか。すなわち、3次元空間において、<math>z</math>軸は、<math>xy</math>平面<math>(z=0)</math>に対して垂直であるが、<math>z>0</math>の領域と<math>z<0</math>の領域を持っている。ベクトルの始点からの方向は一意に決まる必要があるから、いずれかの方向に決めなければならない。
:#:外積においては、「[[w:右手系|右手系]]」(右図で、<math>\vec{a}</math>を人差し指、<math>\vec{b}</math>を中指の方向とした時、親指の方向)の方向と定める。
:#:このように方向を定めることは単なる約束ではなく、空間における向きの一貫性(向きづけ)を保つために必要なものである。
:#:
:#:これを決めることにより、何が起こるかというと、<math>\vec{a} \times \vec{b} \neq \vec{b} \times \vec{a}</math> ということ、すなわち、外積には交換法則は適用できないということである。
:#:すなわち、2つのベクトルのうち、どちらを先に扱うかで正負が逆転し、<math>\vec{a} \times \vec{b} = - \vec{b} \times \vec{a}</math> ということになる。これを交換法則に代えて、'''反交換法則'''と呼ぶことがある。
:#:これは、ベクトルの並び順そのものが幾何的な意味(向き)を持つことを示している。
:#::(注意点)
:#:::[[初等数学公式集/解析幾何/証明|本章の証明]]や[[#三次元空間上で一次独立である2つのベクトルと直交するベクトル|上記の振り返り]]などでは、正負いずれの方向であっても支障がなかったため、「向き」を特定した解法をとっておらず、また、上で説明したベクトルの量が関係する算式であっても2乗するなり絶対値を取るなりすることで正負の違いが解消されていたこともあって、この性質を厳密に適用していないが、「外積」計算自体では「向き」を一方に特定する必要がある。
:以上をまとめると、
::<math> \vec{a} \times \vec{b} = \left| \vec{a} \right| \left| \vec{b} \right| \sin \theta \ \vec{n}</math>
:::なお、<math>\theta</math>は、<math>\vec{a}</math>と<math>\vec{b}</math>がなす角、<math>\vec{n}</math>は<math>\vec{a}, \vec{b}</math>に直交する右手系に従って定まる方向の単位ベクトル(<math>\vec{a} \cdot \vec{n} = \vec{b} \cdot \vec{n} = 0, |\vec{n}|=1</math>)である。
====外積の計算====
外積の計算は、上記の通り交換法則が成り立たないなど、スカラーの計算を主とする初等数学とは、かなり異なっている。以下に外積の計算のパターンを示すが、高校の数学の範囲で、本来、外積の計算(ベクトル演算)をすることはないので、これも参考程度で眺めておけば良い。なお、"・"は、内積を表す。
#<math>\lambda \vec{a} \times \vec{b} = \vec{a} \times \lambda \vec{b} = \lambda (\vec{a} \times \vec{b})</math>
#<math>\vec{a} \times \vec{b} = - \vec{b} \times \vec{a}</math>
#:[[交換法則]]は成り立たない。
#<math>\vec{a} \times (\vec{b} + \vec{c})= \vec{a} \times \vec{b} + \vec{a} \times \vec{c}</math>、また、<math>(\vec{a} + \vec{b})\times \vec{c}= \vec{a} \times \vec{c} + \vec{b} \times \vec{c}</math>
#:[[分配法則]]は成り立っている。
#:*定義に従った簡易な証明
#:*:<math>\vec{a}</math>を固定し、<math>\vec{b}, \vec{c}</math>を考えると、<math>\vec{a} \times \vec{b} , \vec{a} \times \vec{c}</math>はそれぞれ、<math>\vec{a}</math>と各ベクトルが張る平行四辺形の向き付き面積を表す。一方、<math>\vec{a} \times (\vec{b} + \vec{c})</math>は、<math>\vec{a}</math>と<math>\vec{b} + \vec{c}</math>による平行四辺形を表すが、この図形は、<math>\vec{b}</math>による部分と<math>\vec{c}</math>による部分に分解することができる。
#:*:したがって、面積は加法的であり、向きも一致することから、<math>\vec{a} \times (\vec{b} + \vec{c})= \vec{a} \times \vec{b} + \vec{a} \times \vec{c}</math>が成り立つ。
#<math> \vec{a}\times (\vec{b}\times \vec{c}) \ne (\vec{a} \times \vec{b}) \times \vec{c}</math>
#:すなわち、[[結合法則]]は成り立っていない。これらは、以下の等式となる([[ベクトル三重積の公式]]・ラグランジュの公式)。
#::<math>\vec{a}\times (\vec{b}\times \vec{c}) = (\vec{a}\cdot\vec{c})\vec{b} - (\vec{a}\cdot\vec{b})\vec{c}</math>
#::<math>(\vec{a}\times\vec{b})\times \vec{c} = (\vec{a}\cdot\vec{c})\vec{b} - (\vec{b}\cdot\vec{c})\vec{a}</math>
#<math>\vec{a} \times \vec{a} = \vec{0}</math>
#:<math>\because</math> <math>\vec{a}</math>と<math>\vec{a}</math>がなす角<math> \theta = 0</math>であるので、<math> \vec{a} \times \vec{a} = \left| \vec{a} \right| \left| \vec{a} \right| \sin \theta \ \vec{n} = \vec{0}</math>
#<math> \vec{a}\cdot (\vec{a} \times \vec{b}) = 0</math>
#<span id="計算則7"></span><math>\vec{a}\cdot (\vec{b}\times \vec{c}) = (\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c}</math>
#*[[スカラー三重積]](その意味などについては後述)
#*:なお、循環形として、以下を理解しておくと良い。
#*::<math>\vec{a}\cdot (\vec{b}\times \vec{c}) = \vec{b}\cdot (\vec{c}\times \vec{a}) = \vec{c}\cdot (\vec{a}\times \vec{b}) </math>
#*:::内積には交換法則が成立しているので、右端の辺は<math>\vec{c}\cdot (\vec{a}\times \vec{b}) = (\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c}</math> であって、同じことを意味している。
#*:この演算は、「スカラー三重積」と呼ばれ、ベクトルの順序さえ意識すれば良いので、<math>[\vec{a},\vec{b},\vec{c}]</math> とも表記される。
#*:演算の性質から、<math>[\vec{a},\vec{b},\vec{c}]=[\vec{b},\vec{c},\vec{a}]=[\vec{c},\vec{a},\vec{b}]</math>、であるが、<math>[\vec{a},\vec{b},\vec{c}] \neq [\vec{a},\vec{c},\vec{b}](=[\vec{c},\vec{b},\vec{a}]=[\vec{b},\vec{a},\vec{c}])</math> であることに注意。
#<span id="計算則8"></span><math> (\vec{a} \cdot \vec{b})^2 + |\vec{a} \times \vec{b}|^2 = |\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2</math>
#:<math>\because</math> 内積の定義より<math>\cos \theta = \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{| \vec{a} | | \vec{b} |} </math>、したがって、<math>{\cos}^2 \theta = \frac{(\vec{a} \cdot \vec{b})^2}{| \vec{a} |^2 | \vec{b} |^2} </math>
#::また、外積の定義より<math>\vec{a} \times \vec{b} = | \vec{a} | | \vec{b} |\sin \theta \vec{n}</math>、したがって、<math>|\vec{a} \times \vec{b}|^2 = | \vec{a} |^2 | \vec{b} |^2 {\sin}^2 \theta </math>(<math>\because</math> <math>\vec{n}</math>は単位ベクトルであるから、<math>|\vec{n}|^2 = 1</math>)
#::よって、<math>{\sin}^2 \theta = \frac{|\vec{a} \times \vec{b}|^2}{| \vec{a} |^2 | \vec{b} |^2 }</math>
#:※内積は「同じ方向の成分」、外積は「垂直方向の成分」を表しており、この式はそれらが直交的に分解されていることを意味している。
====外積の成分表示====
:成分表示された空間ベクトル<math>\vec{a}=(x_1,y_1,z_1), \vec{b}=(x_2,y_2,z_2)</math> を用いて<math>\vec{a} \times \vec{b}</math>の定義を検証する。
:ここでは、<math>\vec{a} \times \vec{b} = \vec{e} = (x_e,y_e,z_e)</math>とする。
:
:成分表示による計算にあたって、基本ベクトル([[標準基底]])<math>\vec{e_1}=(1,0,0), \vec{e_2}=(0,1,0), \vec{e_3}=(0,0,1)</math>相互の計算結果について確認し、これを利用する。
:#<math>\vec{e_1} \times \vec{e_2} = \vec{e_3}</math> が成り立っている。
:#::なぜならば、<math>\vec{e_1} \times \vec{e_2}</math> は、定義から<math>\vec{e_1}=(1,0,0), \vec{e_2}=(0,1,0)</math> に垂直、すなわち、<math>z</math>軸上にある位置ベクトル<math>(0,0,z)</math>であり、右手系であることから、<math>z>0</math>である。また、<math>\vec{e_1}, \vec{e_2}</math>が形成する平行四辺形の面積は、1辺が1である正方形であるので1。従って、<math>\vec{e_1} \times \vec{e_2} =(0,0,1)=\vec{e_3}</math>となる。同様にして、基本ベクトル間には以下の関係(<span id="※"></span>※)が成立している。
:#::*<math>\vec{e_1} \times \vec{e_2} = \vec{e_3}</math>
:#::*<math>\vec{e_2} \times \vec{e_3} = \vec{e_1}</math>
:#::*<math>\vec{e_3} \times \vec{e_1} = \vec{e_2}</math>
:#<math>\vec{e_1}, \vec{e_2}, \vec{e_3}</math>を用いると、
:#::<math>\vec{a}=x_1 \vec{e_1} + y_1 \vec{e_2} +z_1 \vec{e_3}</math>
:#::<math>\vec{b}=x_2 \vec{e_1} + y_2 \vec{e_2} +z_2 \vec{e_3}</math>
:#:と表すことができる。外積は一般には結合法則を満たさないが、ここで行う計算は分配法則とスカラー倍に関する性質、および基底ベクトル間の関係を用いることで展開することができる。
:#::<math>\vec{a} \times \vec{b} = (x_1 \vec{e_1} + y_1 \vec{e_2} +z_1 \vec{e_3}) \times (x_2 \vec{e_1} + y_2 \vec{e_2} +z_2 \vec{e_3})</math>
:#:::<math> = x_1 x_2 \vec{e_1} \times \vec{e_1} + x_1 y_2 \vec{e_1} \times \vec{e_2} + x_1 z_2 \vec{e_1} \times \vec{e_3} + y_1 x_2 \vec{e_2} \times \vec{e_1} + y_1 y_2 \vec{e_2} \times \vec{e_2} + y_1 z_2 \vec{e_2} \times \vec{e_3} + z_1 x_2 \vec{e_3} \times \vec{e_1} + z_1 y_2 \vec{e_3} \times \vec{e_2} + z_1 z_2 \vec{e_3} \times \vec{e_3}</math>
:#:::<math> = x_1 y_2 \vec{e_1} \times \vec{e_2} + x_1 z_2 \vec{e_1} \times \vec{e_3} + y_1 x_2 \vec{e_2} \times \vec{e_1} + y_1 z_2 \vec{e_2} \times \vec{e_3} + z_1 x_2 \vec{e_3} \times \vec{e_1} + z_1 y_2 \vec{e_3} \times \vec{e_2}</math>(<math>\because \vec{v} \times \vec{v} = \vec{0}</math>)
:#:::<math> = x_1 y_2 \vec{e_1} \times \vec{e_2} - x_1 z_2 \vec{e_3} \times \vec{e_1} - y_1 x_2 \vec{e_1} \times \vec{e_2} + y_1 z_2 \vec{e_2} \times \vec{e_3} + z_1 x_2 \vec{e_3} \times \vec{e_1} - z_1 y_2 \vec{e_2} \times \vec{e_3}</math>(<math>\because \vec{v} \times \vec{u} = - \vec{u} \times \vec{v}</math>)
:#:::<math> = x_1 y_2 \vec{e_3} - x_1 z_2 \vec{e_2} - y_1 x_2 \vec{e_3} + y_1 z_2 \vec{e_1} + z_1 x_2 \vec{e_2} - z_1 y_2 \vec{e_1}</math>(<math>\because</math> [[#※|上記※より]])
:#:::<math> = (y_1 z_2 - z_1 y_2) \vec{e_1} + (z_1 x_2 - x_1 z_2)\vec{e_2} + (x_1 y_2 - y_1 x_2)\vec{e_3} </math>
:#:文字順を揃え、
:#::<math>\vec{a} \times \vec{b} = ( y_1 z_2 - y_2 z_1,\; z_1 x_2 - z_2 x_1,\; x_1 y_2 - x_2 y_1 )</math>
:#:となる。
:以上を踏まえて、
:#3次元空間の2つのベクトルに対し、両者に垂直であれば、以下の式を満たす。
:#::<math>\vec{a} \cdot \vec{e} = \vec{b} \cdot \vec{e} = 0</math>
:#:上記の結果を代入すると、
:#::<math>\vec{a} \cdot \vec{e} = x_1 x_e + y_1 y_e + z_1 z_e = x_1 (y_1 z_2 - y_2 z_1) + y_1 (z_1 x_2 - z_2 x_1) + z_1 (x_1 y_2 - x_2 y_1) = 0</math>
:#::<math>\vec{b} \cdot \vec{e} = x_2 x_e + y_2 y_e + z_2 z_e = x_2 (y_1 z_2 - y_2 z_1) + y_2 (z_1 x_2 - z_2 x_1) + z_2 (x_1 y_2 - x_2 y_1) = 0</math>
:#:となり、成立している。
:#外積<math>\vec{e}</math>の長さ<math>|\vec{e}|</math>はベクトル<math>\vec{a},\vec{b}</math>のなす平行四辺形の面積<math>S</math>と等しい長さである。
:#:<math>S = | \vec{a} | | \vec{b} |\sin \theta = | \vec{a} | | \vec{b} | \sqrt{1 - {\cos \theta}^2} </math>。ここで、<math>\vec{a}\cdot\vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}| \cos \theta </math> より <math>\cos \theta = \frac{\vec{a}\cdot\vec{b}}{|\vec{a}||\vec{b}|} </math>
:#:与式に代入して、<math>S= |\vec{a}||\vec{b}|\sqrt{ 1 - \frac{(\vec{a}\cdot\vec{b}) ^2 }{|\vec{a}| ^2 |\vec{b}| ^2 } } =\sqrt{|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2-(\vec{a}\cdot\vec{b})^2} </math>
:#:<math>|\vec{a}|^2 = {x_1}^2 + {y_1}^2 + {z_1}^2</math>、<math>|\vec{b}|^2 = {x_2}^2 + {y_2}^2 + {z_2}^2</math>、<math>\vec{a}\cdot\vec{b} = {x_1}{x_2} + {y_1}{y_2} + {z_1}{z_2}</math> であるから、
:#::<math>S= \sqrt{({x_1}^2 + {y_1}^2 + {z_1}^2)({x_2}^2 + {y_2}^2 + {z_2}^2)-({x_1}{x_2} + {y_1}{y_2} + {z_1}{z_2})^2}=\sqrt{(y_1 z_2 - y_2 z_1)^2+(z_1 x_2 - z_2 x_1)^2+(x_1 y_2 - x_2 y_1)^2}</math>
:#:となり([[初等数学公式集/初等代数#式の変形]]の[[w:ラグランジュの恒等式 (曖昧さ回避)|ラグランジュの恒等式]]参照)、これは、成分表示した<math>\vec{e}</math>の長さ<math>|\vec{e}|</math>に一致する。
:#::なお、[[#計算則8|上記外積の計算8.]]を用いると、<math> |\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 - (\vec{a} \cdot \vec{b})^2 = |\vec{a} \times \vec{b}|^2 </math> であり、式を展開せず外積を利用できる。
===外積の応用と用途===
====平行六面体====
{{wikipedia|平行六面体}}
[[File:Parallelepiped volume - dot and cross products.svg|右|250px|サムネイル|ベクトル <math>\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}</math>による平行六面体]]
:原点<math>O</math>ではない、空間上の異なる点<math>A, B, C</math>について<math>\overrightarrow{OA} = \vec{a}, \overrightarrow{OB} = \vec{b}, \overrightarrow{OC} = \vec{c}</math> として、点<math>D, E, F, G</math>を<math>\overrightarrow{OD} = \vec{a}+\vec{b}, \overrightarrow{OE} = \vec{b}+\vec{c}, \overrightarrow{OF} = \vec{c}+ \vec{a}, \overrightarrow{OG} = \vec{a}+\vec{b}+ \vec{c}</math> となるようにとる。
:この、点<math>O, A, B, C, D, E, F, G</math>で囲まれる立体は、6面の平行四辺形で構成されている立体であり平行六面体と呼ばれる。なお、直方体や立方体も平行六面体の一種である。
:(ベクトル方程式としては、<math>s\vec{a} + t\vec{b} + u\vec{c}</math>(ただし<math>0 \le s, t, u \le 1</math>)を領域とする立体とも表現される)
:;平行六面体の体積
::この平行六面体の体積は、平行四辺形<math>OADB</math>の面積<math>S</math>に、平行四辺形<math>OADB</math>に相対する平行四辺形<math>CFEG</math>までの距離(高さ)<math>h</math>をかけた<math>Sh</math>である。
::この値は、外積を使うことにより、簡単に求められる。
:::平行四辺形<math>OADB</math>は、ベクトル<math>\vec{a}, \vec{b}</math>により、作られる図形であり、外積の定義から<math>|\vec{a} \times \vec{b}|</math>はベクトル<math>\vec{a},\vec{b}</math>のなす平行四辺形の面積<math>S</math>と等しい。
:::また、<math>\vec{a} \times \vec{b}</math>は、平行四辺形<math>OADB</math>に垂直であることから、高さの方向ベクトルの向きになっている。ここで、<math>\vec{a} \times \vec{b}</math>ともう一つの要素である<math>\vec{c}</math>の成す角を<math>\theta</math>とすると、<math>h = |\vec{c}| \cos \theta</math>となる。
:::<math>\cos \theta</math> を得るのには内積を用いれば良いので、<math>\vec{a} \times \vec{b}</math>と<math>\vec{c}</math>の内積を計算する。
::::<math>| (\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c} |= ||\vec{a} \times \vec{b}| |\vec{c}| \cos \theta| = Sh</math>
:::と、<math>\cos \theta</math>の値を得るまでもなく、体積を得ることができた。
:したがって、ベクトル <math>\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}</math>による平行六面体の体積は、<math> |(\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c}|</math> と表すことができる。
:;四面体の体積
::原点<math>O, A, B, C</math>による四面体の体積は上記平行六面体の体積から簡単に求めることができる。
:::点<math>C</math>を頂点とし、平行四辺形<math>OADB</math>を底面とする四角錐は、上記平行六面体と共通の高さを持つので、体積は平行六面体の<math>\frac{1}{3}</math>である。
:::原点<math>O, A, B, C</math>による四面体は、点<math>C</math>を頂点とし<math>\triangle OAB</math>を底面とする三角錐であり、<math>\triangle OAB</math>は平行四辺形<math>OADB</math>の一部であり、その面積は平行四辺形<math>OADB</math>の<math>\frac{1}{2}</math>であるので、体積は上記四角錐の<math>\frac{1}{2}</math>である。
:::したがって、原点<math>O, A, B, C</math>による四面体の体積は<math>\frac{|(\vec{a} \times \vec{b}) \cdot \vec{c}|}{6}</math> と表すことができる。
::::※[[初等数学公式集/解析幾何#四面体|公式集]]における以下の式は、原点<math>O(0, 0, 0)</math>および3点<math>P,Q,R</math>について、<math>\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OQ},\overrightarrow{OR}</math>として、成分表示によったものである。
:<span id="四面体の体積"></span>
:::::<math>\frac{|a_1 b_2 c_3 + a_2 b_3 c_1 + a_3 b_1 c_2 - a_1 b_3 c_2 - a_2 b_1 c_3 - a_3 b_2 c_1 |}{6}</math>
:::::<math>= \frac{|(b_1 c_2 - b_2 c_1) a_3 + (c_1 a_2 - c_2 a_1) b_3 + (a_1 b_2 - a_2 b_1) c_3 |}{6} = \frac{|(\overrightarrow{OP} \times \overrightarrow{OQ}) \cdot \overrightarrow{OR}|}{6}</math>
:::::<math>= \frac{|(b_1 c_3 - b_3 c_1) a_2 + (c_1 a_3 - c_3 a_1) b_2 + (a_1 b_3 - a_3 b_1) c_2 |}{6} = \frac{|(\overrightarrow{OP} \times \overrightarrow{OR}) \cdot \overrightarrow{OQ}|}{6}</math>
:::::<math>= \frac{|(b_2 c_3 - b_3 c_2) a_1 + (c_2 a_3 - c_3 a_2) b_1 + (a_2 b_3 - a_3 b_2) c_1 |}{6} = \frac{|(\overrightarrow{OQ} \times \overrightarrow{OR}) \cdot \overrightarrow{OP}|}{6}</math>
::::::※順序の違いにより符号は変わりうるが、絶対値は一致する。
:::::::なお、これを、右手系を意識して表記すると、
::::::::<math>(\overrightarrow{OP} \times \overrightarrow{OQ}) \cdot \overrightarrow{OR}=(\overrightarrow{OQ} \times \overrightarrow{OR}) \cdot \overrightarrow{OP}
=(\overrightarrow{OR} \times \overrightarrow{OP}) \cdot \overrightarrow{OQ}</math>
:::::::となる(内積は交換法則が成立している)。
:::::::これは、[[#計算則7|上記「外積の計算」の第7番目]]に登場する「スカラー三重積」になっている。すなわち、3個のベクトルで形成される平行六面体の体積は、3個のスカラー三重積の値の絶対値となっている(スカラー三重積自体はマイナスの値も取りうる)。
====外積の用途====
外積は、空間の位置関係の把握だけでなく様々な分野で用いられる。
=====物理計算=====
;力のモーメント(トルク)
{{wikipedia|力のモーメント}}
[[File:Torque_animation.gif|thumb|right|400px|<small>固定された回転軸をもつ系に対して、力を作用させた時の物理量の関係。力のモーメント <math>\vec{\tau}</math>と位置ベクトル <math>\vec{r}</math> と力 <math>\vec{F}</math> との関係(上の式:本文に示す)、なお、下の式は角運動量 <math>\vec{L}</math> と位置ベクトル <math>\vec{r}</math> と運動量 <math>\vec{p}</math> との関係である(参考)。</small>]]
::ある点<math>P</math>のまわりの、物体を回転させる作用の強さを表す「力のモーメント(特に回転軸を持つものを「トルク」という)」は、
:::<math>r</math>:点<math>P</math>と力の及ぼされる点(作用点)を結ぶ位置ベクトル
:::<math>F</math>:力
::として、
:::<math>\vec{\tau}=\vec{r} \times \vec{F}</math>
::によって定義されるベクトルである。
::この式から、
::*大きさ:<math>|\vec{r}| |\vec{F}| \sin{\theta}</math>(回転の強さ)
::*向き:右ねじの方向(回転軸)
::が同時に表されていることがわかる。
::力のモーメントは「どれだけ回そうとするか」という量であり、力の大きさだけでなく、作用点の位置と方向の関係によって決まる。特に、力の向きが回転軸に垂直な成分だけが回転に寄与する。そのため、単なる積ではなく、外積という形で表される。
::高校物理では、未履修であるため外積を用いずに「距離×力」や「回転方向の符号」で扱っているが、これらはこの式の一部だけを取り出したものである。
::([[高等学校物理/力学#角運動量と力のモーメント]]参照)
:{{-}}
;磁場中を運動する電荷に働く力(ローレンツ力)
{{wikipedia|ローレンツ力}}
[[File:Lorentzkraft-graphic-part1.PNG|thumb|ローレンツ力の向き。電荷で考えた場合。<br>速度<math>\vec{v}</math>から磁束密度<math>\vec{B}</math>に右ねじを回した向きがローレンツ力<math>\vec{F}</math>の向き。]]
:荷電粒子が磁場中を動いているとき、磁場から力を受ける。これを「ローレンツ力」という。
:ここで、
::<math>q</math>:荷電粒子の電荷
::<math>\vec{v}</math>:荷電粒子の速度(方向と「速さ」を持つベクトル。なお、電荷が負の場合は力の向きは逆になる。)
::<math>\vec{B}</math>:磁束密度(ベクトル)
:とすると、電荷に働くローレンツ力は、
::<math>\vec{F}= q(\vec{v} \times \vec{B})</math>
:とベクトルの形式で表される。
:磁場による力は、速度と磁場の両方に垂直な方向に働く。したがって、磁場は粒子の速さを変えるのではなく、進行方向だけを変える働きをする。
:
:高校物理での取り扱いは、以下を参照。
:*[[高等学校物理基礎/電気と磁気#ローレンツ力]]
:*[[高校物理_電磁気学#ローレンツ力]]
{{-}}
これらの例からわかるように、外積は単なる計算規則ではなく、「空間の向き(右手系)」と「大きさ(面積や回転の強さ)」を同時に表現する統一的な仕組みである。
=====意外な利用法:コンピューター・グラフィック=====
コンピューター・グラフィックでは、物体の表面の向きを求めるために外積が用いられる。ポリゴン(多角形)の2辺ベクトルの外積を取ることで、その面に垂直なベクトル(法線ベクトル)を得ることができ、これが光の当たり方(陰影計算)に利用される。
===さらに発展:外積と行列===
最後に、外積と行列の関係に触れる。現在の高校数学において、「[[行列]]」も本格的に取り上げられているわけではないため、ここでは、あまり深く立ち入らず、「外積」と「行列」という数学的な操作が、何か関係していそうだ、という現象にちょっとだけ触れる。「行列」自体は、本Wikibooks内にも教科書があるので、あまり馴染みのない読者は、斜め読みで良いからその箇所([[行列 (高校数学)]]、[[行列 (高校数学・発展)]]など)を読んで、本稿を読み進めてほしい。
;行列式
:まず、ここで、行列の演算の中で重要な「行列式」について復習しておく。
:二次行列<Math>A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}</Math>に対し、<Math>ad-bc</Math>という式を'''行列式'''といい、<Math>|A|</Math> 又は <Math>det(A)</Math>で表す。
:これは、
:*行列<Math>A</Math>が<Math>\vec{v_1}=(a,b),\vec{v_2}=(c,d)</Math> 又は <Math>\vec{u_1}=(a,c),\vec{u_2}=(b,d)</Math>の組み合わせによるものであるとした場合、<Math>ad-bc=0</Math>ならば、<Math>\vec{v_1} \parallel \vec{v_2}</Math>、<Math>\vec{u_1} \parallel \vec{u_2}</Math>となっている。
:*<Math>\vec{v_1}=(a,b),\vec{v_2}=(c,d)</Math> による平行四辺形の面積<Math>S</Math>は<Math>S=|ad-bc|</Math>で表される。
:*
:*行列<Math>A</Math>に対して、<Math>AB=BA= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}</Math>(単位行列)となる行列<Math>B</Math> を逆行列と言い<Math>A^{-1}</Math> と表すが、<Math>A^{-1}= \frac{1}{ad - bc}
\begin{pmatrix}
d & -b\\
-c & a\\
\end{pmatrix}</Math> である。
:*:従って、<Math>ad-bc \neq 0</Math>は、行列<Math>A</Math>に逆行列が存在する必要十分条件となっている。
:*行列<Math>A</Math>に対して、<math>A^2 - (a+d) A + (ad-bc) E = O</math> が成り立つ([[ケイリー・ハミルトンの定理]])。
:と繰り返し登場する重要な式である。
;外積の各成分と行列式
:以下、三次元空間ベクトル<math>\vec{a}=(x_1,y_1,z_1), \vec{b}=(x_2,y_2,z_2)</math> について考察する。
:この2個のベクトルで外積<math>\vec{a} \times \vec{b} = ( y_1 z_2 - y_2 z_1,\; z_1 x_2 - z_2 x_1,\; x_1 y_2 - x_2 y_1 )</math> が得られることは、繰り返し述べてきたところである。
::ここで、<math>\vec{a}, \vec{b}</math> から、<Math>x</Math>成分を取り去ったベクトル<math>\vec{a_x}=(y_1,z_1), \vec{b_x}=(y_2,z_2)</math> を各々列ベクトルとした行列を<Math>A_x = \begin{pmatrix} y_1 & y_2 \\ z_1 & z_2 \end{pmatrix}</Math> とする。
::同様に、<Math>A_y = \begin{pmatrix} z_1 & z_2 \\ x_1 & x_2 \end{pmatrix}</Math>,<Math>A_z = \begin{pmatrix} x_1 & x_2 \\ y_1 & y_2 \end{pmatrix}</Math>
:さて、ここで突然ではあるが <math>(det(A_x), det(A_y), det(A_z))</math> というベクトルを考えてみる。
::<math>(det(A_x), det(A_y), det(A_z)) = ( y_1 z_2 - y_2 z_1,\; z_1 x_2 - z_2 x_1,\; x_1 y_2 - x_2 y_1 ) = \vec{a} \times \vec{b}</math>
:という結果を得るのである。
:(すなわち、外積の各成分は、他の2成分を取り出した小行列式として表される)
;三次行列の行列式
:[[File:Schema sarrus-regel.png|alt=|thumb|サラスの方法: 左三列の行列式は、赤線で結んだ斜め三項の積の和から青線で結んだ逆斜め三項の積の和を引いたものになる。]]
:行列式は二次行列だけではなく3行3列の三次行列でも定義できる。
:
:この場合
:<math>A = \begin{pmatrix}
a_{1 1} &a_{1 2} &a_{1 3} \\
a_{2 1} &a_{2 2} &a_{2 3} \\
a_{3 1} &a_{3 2} &a_{3 3}
\end{pmatrix}</math>
:に対して、
::<math> det(A) = a_{1 1}a_{2 2}a_{3 3}
+ a_{1 2}a_{2 3}a_{3 1}
+ a_{1 3}a_{2 1}a_{3 2}
- a_{1 3}a_{2 2}a_{3 1}
- a_{1 1}a_{2 3}a_{3 2}
- a_{1 2}a_{2 1}a_{3 3}</math>
:となる。
:これは、一見覚えにくいように思えるが、右図のように考えると、二次行列同様、右下りの要素をかけあわせたものから、右上がりの要素を掛け合わせたものを引くという操作であることがわかる([[w:サラスの方法]]、これは3次行列式の計算規則の一つの見方であり、外積の成分表示と同じ構造が現れている。なお、四次以上の行列には適用できない)。
;三次行列の行列式と外積
:ここで、互いに一次独立であるベクトル <math>\vec{p}=(a_1, b_1, c_1)</math>, <math>\vec{q}=(a_2, b_2, c_2)</math>, <math>\vec{r}=(a_3, b_3, c_3)</math> を考える。これも、各々を列ベクトルとした行列にすると、
::<math>A = \begin{pmatrix}
a_1 &a_2 &a_3 \\
b_1 &b_2 &b_3 \\
c_1 &c_2 &c_3
\end{pmatrix}</math>
:が得られ、この行列式を計算すると、
::<math>det(A) = a_1 b_2 c_3 + a_2 b_3 c_1 + a_3 b_1 c_2 - a_1 b_3 c_2 - a_2 b_1 c_3 - a_3 b_2 c_1</math>
:となる。どこかで見た覚えがないであろうか。そう、これは<math>\vec{p},\vec{q},\vec{r}</math> で作る[[#四面体の体積|四面体の体積の成分表示]]の分子の中の式である。この体積を6倍すると、<math>\vec{p},\vec{q},\vec{r}</math> で作る平行六面体の体積の絶対値の中の式となり、これはすなわち <math>(\vec{p} \times \vec{q}) \cdot \vec{r}</math> (スカラー三重積)となっている。
この関係がなぜ成立するかなどについては、もはやコラムの領域を超えるので割愛するが、このように、外積は「面積」や「体積」といった量を、行列式という形で統一的に表す仕組みと深く結びついているということを心に留めておいてもらいたい。
== 関連項目 ==
*[[物理数学I ベクトル解析#三重積と四重積]]
*[[線型代数学/ベクトル#スカラー・ベクトル三重積]]
[[Category:初等数学公式集|かいせききかこらむ]]
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高等学校日本史探究/縄文時代の社会と文化
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/* 縄文文化の成立 */
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text/x-wiki
[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>縄文時代の社会と文化
※本節では縄文時代を扱います。最新の歴史研究結果をもとに叙述しています。
== 縄文文化の成立 ==
気候の温暖化は更新世末期から<span style="color:#f29100">'''完新世'''</span>初期にかけて進みました。氷河が気候の温暖化から溶け始めると、海面も次第に上昇しました。その結果、日本列島は約1万年前までにユーラシア大陸から切り離されて現在の形になりました。約7000年前、日本列島の海面は現在より平均2~3メートル高くなりました。約6000年前、陸地部分が海面上昇で一時的に海になりました(縄文海進)。浅くて砂泥質の環境が日本列島各地に広がり、魚介類もそこへ住み着きました。気候の温暖化から亜寒帯性・冷温帯性の針葉樹林が東日本で減少しました。東日本の樹木は落葉広葉樹林[ブナ・ナラなど]に変わりました。一方、照葉樹林[シイ・カシなど]は西日本で広がりました。
ナウマンゾウ・ヘラジカは更新世末期までに日本列島から絶滅しました。また、オオツノジカも縄文時代草創期までに日本列島から絶滅しました。その後、中型動物と小型動物[ニホンシカ・イノシシ・ウサギ・鳥類など]が日本列島に残りました。この変化に合わせて、日本人の生活も大きく変えました。中型動物と小型動物を狩るために<span style="color:#f29100">'''弓矢'''</span>を作ったり、<span style="color:#f29100">'''土器'''</span>を作って食料を煮たり、石を川辺で拾って全体を綺麗に磨いて<span style="color:#f29100">'''磨製石器'''</span>を作ったりしました(<span style="color:#f29100">'''縄文文化'''</span>)。<gallery mode="packed">
ファイル:Cervus nippon (male) eating grass.jpg|ニホンジカ
ファイル:Ausgewachsenes Wildschwein beim Suhlen.JPG|イノシシ
</gallery>縄文文化は最新のAMS法[加速器質量分析法]と年輪補正から約1万6500年前より開始と考えられています。当時、青森県大平山元遺跡の無文土器などが作られていました。なお、無文土器は日本最古の土器になります。ユーラシア大陸北東部のアムール川中流でも中国湖南省・中国江西省の洞穴遺跡でも無文土器より古い土器が見つかっています。こうして、人間は土器を使って食料を煮炊き出来るようになりました。木の実を土器に入れてアク抜きまで出来るようになりました。
縄文人は粘土をこねて縄文土器を作りました。土器の表面に縄を転がして目立つ文様を数多く付けました。縄文土器は低温の野焼きで仕上げました。縄文土器はその仕上がりから耐久性ほとんどなく厚くて黒褐色の土器でした。その中でも煮炊きをするため深鉢形の土器は縄文土器の中心でした。縄文時代早期から晩期まで深鉢形の土器を大量に作り続けました。縄文時代前期から盛り付け用の浅鉢も新しく作られるようになりました。縄文時代後期から注口土器・皿壺なども新しく作られるようになりました。こうして、縄文土器の種類が増えました。縄文土器は草創期・早期・前期・中期・後期・晩期とそれぞれ文様の付け方も変わりました。草創期の縄文土器は爪形文か隆起線文でした。早期と前期の縄文土器は縄文か貝殻・竹管文様を付けました。中期の縄文土器は立体的で複雑な装飾的文様でした。特に、火炎土器が中期の縄文土器として有名になりました。後期と晩期の縄文土器は磨消縄文を付けました。
縄文人は豊かな自然の恵みを上手く採り入れながら、食料を森・川・海で集めていました。この事実は土器の窪み・種実・脂質分析結果でも明らかになっており、縄文時代からクリ・アズキ・エゴマなどを集落の近くで大切に育てたり、自然の恵みを上手に活かしたりしました。縄文人は縄文土器を毎日使ったり、磨製石器を作ったり、弓矢の改良をしたりしました。同じ場所にずっと住み続けながら、食料を狩猟と採集で集めていました。磨製石器と土器の使用はユーラシア大陸の新石器時代で共通していても、動物飼育と農業は縄文文化で取り入れていません。なお、様々な学説が縄文時代の開始時期で挙げられています。竪穴住居と貝塚の出現〈約1万1500年前〉からなのか、土器の使用時期〈約1万5000年前〉からなのか、土器の出現時期〈約1万6500年前〉からなのかで現在でも争われています。
石鏃を弓矢に取り付けたり、地面を深く掘って落とし穴を作ったり、様々な罠を上手に使い分けていました。縄文時代早期の落とし穴が東京都・神奈川県の多摩丘陵に数多く見つかっています。また、イヌを狩猟仲間として一緒に連れていきました。
潮位が約6000年前に上がると、縄文人も'''丸木舟'''を沖に出して魚を取りました。縄文人の男達は鹿の角を削って釣針を作り、動物の骨を尖らせて銛・ヤスを作りました。石製・土製の丸い重り[網錘]を網につけて真鯛・鰹漁・鱸・黒鯛を捕まえました。また、九州西北部は組み合わせ式釣針も見つかっています。各地で丸木舟が見つかりました。伊豆諸島八丈島・沖縄小島の遺跡から九州産の土器と同じ土器が見つかりました。その理由として、島伝いの丸木舟移動が挙げられます。一方、縄文人の遺伝子を調べたら大陸の集団遺伝子からほとんど完全にかけ離れています。縄文時代草創期から早期にかけて東日本を中心に日本列島内の人口増加が最近のゲノム研究から明らかになっています。
植物性食料は狩猟採集生活で最も大切でした。その中でも栗・胡桃・栃・団栗(落葉性ナラ・常緑性カシ・シイの硬い実)などの木の実は炭水化物を賄うための貴重な主食になりました。木の実は貯蔵穴に入れて保存しました。木の実を取り出したら石皿・摩石・打製石斧で細かくしました。苦味の強い栃・団栗は土器で煮たり、水に長くつけたりして丁寧に苦味を抜きました。その痕跡は草創期の遺跡でも見つかっています。また、縄文時代後期から晩期にかけて、木組みの水さらし施設が東日本を中心に見つかっています。三内丸山遺跡などの栗林は栗の木を人間の手で大切に育てて栗の実を増やしていたと判断されています。ヤマイモなどの根茎類も石鍬を使って土を掘り起こして採っていたかもしれません。
== 縄文時代の生活と習俗 ==
== 縄文社会と縄文人 ==
== 資料出所 ==
* 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年
* 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年
* 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年
* 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年
* 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年
* 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[原始~鎌倉]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本)
* 全国歴史教育研究協議会編『[新課程版]日本史用語集』株式会社山川出版社 2023年
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/* 縄文文化の成立 */
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>縄文時代の社会と文化
※本節では縄文時代を扱います。最新の歴史研究結果をもとに叙述しています。
== 縄文文化の成立 ==
気候の温暖化は更新世末期から<span style="color:#f29100">'''完新世'''</span>初期にかけて進みました。氷河が気候の温暖化から溶け始めると、海面も次第に上昇しました。その結果、日本列島は約1万年前までにユーラシア大陸から切り離されて現在の形になりました。約7000年前、日本列島の海面は現在より平均2~3メートル高くなりました。約6000年前、陸地部分が海面上昇で一時的に海になりました(縄文海進)。浅くて砂泥質の環境が日本列島各地に広がり、魚介類もそこへ住み着きました。気候の温暖化から亜寒帯性・冷温帯性の針葉樹林が東日本で減少しました。東日本の樹木は落葉広葉樹林[ブナ・ナラなど]に変わりました。一方、照葉樹林[シイ・カシなど]は西日本で広がりました。
[[ファイル:Periodo jomon medio, vasellame, 02.JPG|サムネイル|188x188ピクセル|縄文土器]]
ナウマンゾウ・ヘラジカは更新世末期までに日本列島から絶滅しました。また、オオツノジカも縄文時代草創期までに日本列島から絶滅しました。その後、中型動物と小型動物[ニホンシカ・イノシシ・ウサギ・鳥類など]が日本列島に残りました。この変化に合わせて、日本人の生活も大きく変えました。中型動物と小型動物を狩るために<span style="color:#f29100">'''弓矢'''</span>を作ったり、<span style="color:#f29100">'''土器'''</span>を作って食料を煮たり、石を川辺で拾って全体を綺麗に磨いて<span style="color:#f29100">'''磨製石器'''</span>を作ったりしました(<span style="color:#f29100">'''縄文文化'''</span>)。
縄文文化は最新のAMS法[加速器質量分析法]と年輪補正から約1万6500年前より開始と考えられています。当時、青森県大平山元遺跡の無文土器などが作られていました。なお、無文土器は日本最古の土器になります。ユーラシア大陸北東部のアムール川中流でも中国湖南省・中国江西省の洞穴遺跡でも無文土器より古い土器が見つかっています。こうして、人間は土器を使って食料を煮炊き出来るようになりました。木の実を土器に入れてアク抜きまで出来るようになりました。
縄文人は粘土をこねて縄文土器を作りました。土器の表面に縄を転がして目立つ文様を数多く付けました。縄文土器は低温の野焼きで仕上げました。縄文土器はその仕上がりから耐久性ほとんどなく厚くて黒褐色の土器でした。その中でも煮炊きをするため深鉢形の土器は縄文土器の中心でした。縄文時代早期から晩期まで深鉢形の土器を大量に作り続けました。縄文時代前期から盛り付け用の浅鉢も新しく作られるようになりました。縄文時代後期から注口土器・皿壺なども新しく作られるようになりました。こうして、縄文土器の種類が増えました。縄文土器は草創期・早期・前期・中期・後期・晩期とそれぞれ文様の付け方も変わりました。草創期の縄文土器は爪形文か隆起線文でした。早期と前期の縄文土器は縄文か貝殻・竹管文様を付けました。中期の縄文土器は立体的で複雑な装飾的文様でした。特に、火炎土器が中期の縄文土器として有名になりました。後期と晩期の縄文土器は磨消縄文を付けました。
縄文人は豊かな自然の恵みを上手く採り入れながら、食料を森・川・海で集めていました。この事実は土器の窪み・種実・脂質分析結果でも明らかになっており、縄文時代からクリ・アズキ・エゴマなどを集落の近くで大切に育てたり、自然の恵みを上手に活かしたりしました。縄文人は縄文土器を毎日使ったり、磨製石器を作ったり、弓矢の改良をしたりしました。同じ場所にずっと住み続けながら、食料を狩猟と採集で集めていました。磨製石器と土器の使用はユーラシア大陸の新石器時代で共通していても、動物飼育と農業は縄文文化で取り入れていません。なお、様々な学説が縄文時代の開始時期で挙げられています。竪穴住居と貝塚の出現〈約1万1500年前〉からなのか、土器の使用時期〈約1万5000年前〉からなのか、土器の出現時期〈約1万6500年前〉からなのかで現在でも争われています。
石鏃を弓矢に取り付けたり、地面を深く掘って落とし穴を作ったり、様々な罠を上手に使い分けていました。縄文時代早期の落とし穴が東京都・神奈川県の多摩丘陵に数多く見つかっています。また、イヌを狩猟仲間として一緒に連れていきました。
潮位が約6000年前に上がると、縄文人も'''丸木舟'''を沖に出して魚を取りました。縄文人の男達は鹿の角を削って釣針を作り、動物の骨を尖らせて銛・ヤスを作りました。石製・土製の丸い重り[網錘]を網につけて真鯛・鰹漁・鱸・黒鯛を捕まえました。また、九州西北部は組み合わせ式釣針も見つかっています。各地で丸木舟が見つかりました。伊豆諸島八丈島・沖縄小島の遺跡から九州産の土器と同じ土器が見つかりました。その理由として、島伝いの丸木舟移動が挙げられます。一方、縄文人の遺伝子を調べたら大陸の集団遺伝子からほとんど完全にかけ離れています。縄文時代草創期から早期にかけて東日本を中心に日本列島内の人口増加が最近のゲノム研究から明らかになっています。
植物性食料は狩猟採集生活で最も大切でした。その中でも栗・胡桃・栃・団栗(落葉性ナラ・常緑性カシ・シイの硬い実)などの木の実は炭水化物を賄うための貴重な主食になりました。木の実は貯蔵穴に入れて保存しました。木の実を取り出したら石皿・摩石・打製石斧で細かくしました。苦味の強い栃・団栗は土器で煮たり、水に長くつけたりして丁寧に苦味を抜きました。その痕跡は草創期の遺跡でも見つかっています。また、縄文時代後期から晩期にかけて、木組みの水さらし施設が東日本を中心に見つかっています。三内丸山遺跡などの栗林は栗の木を人間の手で大切に育てて栗の実を増やしていたと判断されています。ヤマイモなどの根茎類も石鍬を使って土を掘り起こして採っていたかもしれません。
== 縄文時代の生活と習俗 ==
== 縄文社会と縄文人 ==
== 資料出所 ==
* 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年
* 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年
* 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年
* 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年
* 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年
* 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[原始~鎌倉]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本)
* 全国歴史教育研究協議会編『[新課程版]日本史用語集』株式会社山川出版社 2023年
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/* 縄文文化の成立 */ 複数の写真を追加。
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text/x-wiki
[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>縄文時代の社会と文化
※本節では縄文時代を扱います。最新の歴史研究結果をもとに叙述しています。
== 縄文文化の成立 ==
気候の温暖化は更新世末期から<span style="color:#f29100">'''完新世'''</span>初期にかけて進みました。氷河が気候の温暖化から溶け始めると、海面も次第に上昇しました。その結果、日本列島は約1万年前までにユーラシア大陸から切り離されて現在の形になりました。約7000年前、日本列島の海面は現在より平均2~3メートル高くなりました。約6000年前、陸地部分が海面上昇で一時的に海になりました(縄文海進)。浅くて砂泥質の環境が日本列島各地に広がり、魚介類もそこへ住み着きました。気候の温暖化から亜寒帯性・冷温帯性の針葉樹林が東日本で減少しました。東日本の樹木は落葉広葉樹林[ブナ・ナラなど]に変わりました。一方、照葉樹林[シイ・カシなど]は西日本で広がりました。
ナウマンゾウ・ヘラジカは更新世末期までに日本列島から絶滅しました。また、オオツノジカも縄文時代草創期までに日本列島から絶滅しました。その後、中型動物と小型動物[ニホンシカ・イノシシ・ウサギ・鳥類など]が日本列島に残りました。この変化に合わせて、日本人の生活も大きく変えました。中型動物と小型動物を狩るために<span style="color:#f29100">'''弓矢'''</span>を作ったり、<span style="color:#f29100">'''土器'''</span>を作って食料を煮たり、石を川辺で拾って全体を綺麗に磨いて<span style="color:#f29100">'''磨製石器'''</span>を作ったりしました(<span style="color:#f29100">'''縄文文化'''</span>)。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="150">
ファイル:Cervus_nippon_002.jpg|ニホンジカ
ファイル:Sus_scrofa_leucomystax.jpg|イノシシ
ファイル:Lepus_brachyurus.JPG|ウサギ
ファイル:Néolithique_0001.jpg|磨製石器
</gallery>縄文文化は最新のAMS法[加速器質量分析法]と年輪補正から約1万6500年前より開始と考えられています。当時、青森県大平山元遺跡の無文土器などが作られていました。なお、無文土器は日本最古の土器になります。ユーラシア大陸北東部のアムール川中流でも中国湖南省・中国江西省の洞穴遺跡でも無文土器より古い土器が見つかっています。こうして、人間は土器を使って食料を煮炊き出来るようになりました。木の実を土器に入れてアク抜きまで出来るようになりました。[[ファイル:Periodo jomon medio, vasellame, 02.JPG|サムネイル|188x188ピクセル|縄文土器]]縄文人は粘土をこねて縄文土器を作りました。土器の表面に縄を転がして目立つ文様を数多く付けました。縄文土器は低温の野焼きで仕上げました。縄文土器はその仕上がりから耐久性ほとんどなく厚くて黒褐色の土器でした。その中でも煮炊きをするため深鉢形の土器は縄文土器の中心でした。縄文時代早期から晩期まで深鉢形の土器を大量に作り続けました。縄文時代前期から盛り付け用の浅鉢も新しく作られるようになりました。縄文時代後期から注口土器・皿壺なども新しく作られるようになりました。こうして、縄文土器の種類が増えました。縄文土器は草創期・早期・前期・中期・後期・晩期とそれぞれ文様の付け方も変わりました。草創期の縄文土器は爪形文か隆起線文でした。早期と前期の縄文土器は縄文か貝殻・竹管文様を付けました。中期の縄文土器は立体的で複雑な装飾的文様でした。特に、火炎土器が中期の縄文土器として有名になりました。後期と晩期の縄文土器は磨消縄文を付けました。
縄文人は豊かな自然の恵みを上手く採り入れながら、食料を森・川・海で集めていました。この事実は土器の窪み・種実・脂質分析結果でも明らかになっており、縄文時代からクリ・アズキ・エゴマなどを集落の近くで大切に育てたり、自然の恵みを上手に活かしたりしました。縄文人は縄文土器を毎日使ったり、磨製石器を作ったり、弓矢の改良をしたりしました。同じ場所にずっと住み続けながら、食料を狩猟と採集で集めていました。磨製石器と土器の使用はユーラシア大陸の新石器時代で共通していても、動物飼育と農業は縄文文化で取り入れていません。なお、様々な学説が縄文時代の開始時期で挙げられています。竪穴住居と貝塚の出現〈約1万1500年前〉からなのか、土器の使用時期〈約1万5000年前〉からなのか、土器の出現時期〈約1万6500年前〉からなのかで現在でも争われています。
石鏃を弓矢に取り付けたり、地面を深く掘って落とし穴を作ったり、様々な罠を上手に使い分けていました。縄文時代早期の落とし穴が東京都・神奈川県の多摩丘陵に数多く見つかっています。また、イヌを狩猟仲間として一緒に連れていきました。
[[ファイル:Biwakomarukibune.jpg|サムネイル|205x205ピクセル|丸木舟]]
潮位が約6000年前に上がると、縄文人も'''丸木舟'''を沖に出して魚を取りました。縄文人の男達は鹿の角を削って釣針を作り、動物の骨を尖らせて銛・ヤスを作りました。石製・土製の丸い重り[網錘]を網につけて真鯛・鰹漁・鱸・黒鯛を捕まえました。また、九州西北部は組み合わせ式釣針も見つかっています。各地で丸木舟が見つかりました。伊豆諸島八丈島・沖縄小島の遺跡から九州産の土器と同じ土器が見つかりました。その理由として、島伝いの丸木舟移動が挙げられます。一方、縄文人の遺伝子を調べたら大陸の集団遺伝子からほとんど完全にかけ離れています。縄文時代草創期から早期にかけて東日本を中心に日本列島内の人口増加が最近のゲノム研究から明らかになっています。
植物性食料は狩猟採集生活で最も大切でした。その中でも栗・胡桃・栃・団栗(落葉性ナラ・常緑性カシ・シイの硬い実)などの木の実は炭水化物を賄うための貴重な主食になりました。木の実は貯蔵穴に入れて保存しました。木の実を取り出したら石皿・摩石・打製石斧で細かくしました。苦味の強い栃・団栗は土器で煮たり、水に長くつけたりして丁寧に苦味を抜きました。その痕跡は草創期の遺跡でも見つかっています。また、縄文時代後期から晩期にかけて、木組みの水さらし施設が東日本を中心に見つかっています。三内丸山遺跡などの栗林は栗の木を人間の手で大切に育てて栗の実を増やしていたと判断されています。ヤマイモなどの根茎類も石鍬を使って土を掘り起こして採っていたかもしれません。
== 縄文時代の生活と習俗 ==
== 縄文社会と縄文人 ==
== 資料出所 ==
* 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年
* 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年
* 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年
* 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年
* 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年
* 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[原始~鎌倉]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本)
* 全国歴史教育研究協議会編『[新課程版]日本史用語集』株式会社山川出版社 2023年
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[[小学校・中学校・高等学校の学習]]>[[高等学校の学習]]>[[高等学校地理歴史]]>[[高等学校日本史探究]]>縄文時代の社会と文化
※本節では縄文時代を扱います。最新の歴史研究結果をもとに叙述しています。
== 縄文文化の成立 ==
気候の温暖化は更新世末期から<span style="color:#f29100">'''完新世'''</span>初期にかけて進みました。氷河が気候の温暖化から溶け始めると、海面も次第に上昇しました。その結果、日本列島は約1万年前までにユーラシア大陸から切り離されて現在の形になりました。約7000年前、日本列島の海面は現在より平均2~3メートル高くなりました。約6000年前、陸地部分が海面上昇で一時的に海になりました(縄文海進)。浅くて砂泥質の環境が日本列島各地に広がり、魚介類もそこへ住み着きました。気候の温暖化から亜寒帯性・冷温帯性の針葉樹林が東日本で減少しました。東日本の樹木は落葉広葉樹林[ブナ・ナラなど]に変わりました。一方、照葉樹林[シイ・カシなど]は西日本で広がりました。
ナウマンゾウ・ヘラジカは更新世末期までに日本列島から絶滅しました。また、オオツノジカも縄文時代草創期までに日本列島から絶滅しました。その後、中型動物と小型動物[ニホンシカ・イノシシ・ウサギ・鳥類など]が日本列島に残りました。この変化に合わせて、日本人の生活も大きく変えました。中型動物と小型動物を狩るために<span style="color:#f29100">'''弓矢'''</span>を作ったり、<span style="color:#f29100">'''土器'''</span>を作って食料を煮たり、石を川辺で拾って全体を綺麗に磨いて<span style="color:#f29100">'''磨製石器'''</span>を作ったりしました(<span style="color:#f29100">'''縄文文化'''</span>)。<gallery mode="nolines" widths="200" heights="150">
ファイル:Cervus_nippon_002.jpg|ニホンジカ
ファイル:Sus_scrofa_leucomystax.jpg|イノシシ
ファイル:Lepus_brachyurus.JPG|ウサギ
ファイル:Néolithique_0001.jpg|磨製石器
</gallery>縄文文化は最新のAMS法[加速器質量分析法]と年輪補正から約1万6500年前より開始と考えられています。当時、青森県大平山元遺跡の無文土器などが作られていました。なお、無文土器は日本最古の土器になります。ユーラシア大陸北東部のアムール川中流でも中国湖南省・中国江西省の洞穴遺跡でも無文土器より古い土器が見つかっています。こうして、人間は土器を使って食料を煮炊き出来るようになりました。木の実を土器に入れてアク抜きまで出来るようになりました。[[ファイル:Periodo jomon medio, vasellame, 02.JPG|サムネイル|188x188ピクセル|縄文土器]]縄文人は粘土をこねて縄文土器を作りました。土器の表面に縄を転がして目立つ文様を数多く付けました。縄文土器は低温の野焼きで仕上げました。縄文土器はその仕上がりから耐久性ほとんどなく厚くて黒褐色の土器でした。その中でも煮炊きをするため深鉢形の土器は縄文土器の中心でした。縄文時代早期から晩期まで深鉢形の土器を大量に作り続けました。縄文時代前期から盛り付け用の浅鉢も新しく作られるようになりました。縄文時代後期から注口土器・皿壺なども新しく作られるようになりました。こうして、縄文土器の種類が増えました。縄文土器は草創期・早期・前期・中期・後期・晩期とそれぞれ文様の付け方も変わりました。草創期の縄文土器は爪形文か隆起線文でした。早期と前期の縄文土器は縄文か貝殻・竹管文様を付けました。中期の縄文土器は立体的で複雑な装飾的文様でした。特に、火炎土器が中期の縄文土器として有名になりました。後期と晩期の縄文土器は磨消縄文を付けました。
縄文人は豊かな自然の恵みを上手く採り入れながら、食料を森・川・海で集めていました。この事実は土器の窪み・種実・脂質分析結果でも明らかになっており、縄文時代からクリ・アズキ・エゴマなどを集落の近くで大切に育てたり、自然の恵みを上手に活かしたりしました。縄文人は縄文土器を毎日使ったり、磨製石器を作ったり、弓矢の改良をしたりしました。同じ場所にずっと住み続けながら、食料を狩猟と採集で集めていました。磨製石器と土器の使用はユーラシア大陸の新石器時代で共通していても、動物飼育と農業は縄文文化で取り入れていません。なお、様々な学説が縄文時代の開始時期で挙げられています。竪穴住居と貝塚の出現〈約1万1500年前〉からなのか、土器の使用時期〈約1万5000年前〉からなのか、土器の出現時期〈約1万6500年前〉からなのかで現在でも争われています。
石鏃を弓矢に取り付けたり、地面を深く掘って落とし穴を作ったり、様々な罠を上手に使い分けていました。縄文時代早期の落とし穴が東京都・神奈川県の多摩丘陵に数多く見つかっています。また、イヌを狩猟仲間として一緒に連れていきました。
[[ファイル:Biwakomarukibune.jpg|サムネイル|205x205ピクセル|丸木舟]]
潮位が約6000年前に上がると、縄文人も'''丸木舟'''を沖に出して魚を取りました。縄文人の男達は鹿の角を削って釣針を作り、動物の骨を尖らせて銛・ヤスを作りました。石製・土製の丸い重り[網錘]を網につけて真鯛・鰹漁・鱸・黒鯛を捕まえました。また、九州西北部は組み合わせ式釣針も見つかっています。各地で丸木舟が見つかりました。伊豆諸島八丈島・沖縄小島の遺跡から九州産の土器と同じ土器が見つかりました。その理由として、島伝いの丸木舟移動が挙げられます。一方、縄文人の遺伝子を調べたら大陸の集団遺伝子からほとんど完全にかけ離れています。縄文時代草創期から早期にかけて東日本を中心に日本列島内の人口増加が最近のゲノム研究から明らかになっています。
植物性食料は狩猟採集生活で最も大切でした。その中でも栗・胡桃・栃・団栗(落葉性ナラ・常緑性カシ・シイの硬い実)などの木の実は炭水化物を賄うための貴重な主食になりました。木の実は貯蔵穴に入れて保存しました。木の実を取り出したら石皿・摩石・打製石斧で細かくしました。苦味の強い栃・団栗は土器で煮たり、水に長くつけたりして丁寧に苦味を抜きました。その痕跡は草創期の遺跡でも見つかっています。また、縄文時代後期から晩期にかけて、木組みの水さらし施設が東日本を中心に見つかっています。三内丸山遺跡などの栗林は栗の木を人間の手で大切に育てて栗の実を増やしていたと判断されています。ヤマイモなどの根茎類も石鍬を使って土を掘り起こして採っていたかもしれません。
== 縄文時代の生活と習俗 ==
== 縄文社会と縄文人 ==
== 資料出所 ==
* 平雅行、横田冬彦ほか編著『日本史探究』実教出版株式会社 2023年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史探究』株式会社山川出版社 2023年
* 渡邊晃宏ほか編著『日本史探究』東京書籍株式会社 2023年
* 伊藤純郎ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社清水書院 2023年
* 大橋幸泰ほか編著『高等学校日本史探究』株式会社第一学習社 2023年
* 山中裕典著'''『'''改訂版 大学入学共通テスト 歴史総合、日本史探究の点数が面白いほどとれる本'''』'''株式会社KADOKAWA 2024年
* 佐藤信、五味文彦ほか編著『詳説日本史研究』株式会社山川出版社 2017年
* 河合敦著『世界一わかりやすい河合敦の日本史B[原始~鎌倉]の特別講座』株式会社KADOKAWA 2014年(絶版本)
* 全国歴史教育研究協議会編『[新課程版]日本史用語集』株式会社山川出版社 2023年
[[カテゴリ:高等学校日本史探究]]
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トーク:高等学校数学C/ベクトル
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Tkkn46tkkn46
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/* 確認をお願いします。>...円に他ならない。 */ 新しい節
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wikitext
text/x-wiki
== 確認をお願いします。>...円に他ならない。 ==
:[[高等学校数学C/ベクトル#球面の方程式]]
:>よって...これは中心 (a,b,c)半径rの円に他ならない。
: ↓
:>よって...これは中心 (a,b,c)半径rの球面の式に他ならない。
: ↓
:>よって...これは中心 (a,b,c)半径rの球面の方程式に他ならない。
:???気持ちは、わかります。他ならない_文でした。
:(参考)
:[[初等数学公式集/解析幾何#球面の式]]
:今後の参考にして下さい。
--[[利用者:Tkkn46tkkn46|Tkkn46tkkn46]] ([[利用者・トーク:Tkkn46tkkn46|トーク]]) 2026年5月3日 (日) 11:05 (UTC)
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